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脅威評価・脅威分析 | NES株式会社

 『脅威に立ち向かう』という見出しの記事を読み、BCPコンサルタントとして、顧客にとっての脅威をしっかりと同定し、分析し、対策を打てているかと自問自答しました。

 誰から見ての脅威なのか、顧客にとって本当に脅威なのか、BCP策定段階では話し合っていますが、最近は『水害のBCP策定を指示された』といったご相談も散見されます。ハザードマップを見ても水害が及びそうにはなく、自院にとって水害は脅威では無いと思われる場合もあります。

 水害の患者を受け入れるという態勢は必要ですが、危害が無い中では『遠くの誰かにとっての脅威に立ち向かう』ためのBCPになってしまいそうです。

 今日は、脅威について再考してみました。




脅威とは?

 脅威とは危害を生む事象です。

 総論として地震は脅威ですが、脅威イコール地震ではありません。
 地震には規模があります。エネルギーとてのマグニチュードや震度などではなく、社会的なインパクトのような規模です。

 地震が生命や財産に及ぼす事象が脅威となります。

 地震そのものの揺れによる危害、揺れによって倒壊した建造物等による危害、停電や断水、電話殺到による通信障害、デマによる人の殺到など、各論を掘り下げればいくつも挙げられます。

 仮に危害を与える因子でも、自身には危害を及ぼさなければ脅威とはなりません。
 筆者が育った埼玉県では波浪警報は出ません。津波も脅威と感じる事はありません。危害が加わる恐れが考えづらいからです。

 脅威と危害は、表裏一体と考えると良いと思います。

コンビニの臨時休業
クリニック前で電柱が折損する交通事故

※.上の2つの画像はいずれも当社徒歩圏で発生した身近な事例




自身の脅威

 市民生活として自然災害は脅威ですが、他にも誘拐や強盗などの犯罪、自動車や落下物などによる偶発的事故、がんや感染症などの病気も脅威と言えます。

 COVID-19で『三密回避』『マスク着用』などが推進された背景には、ウイルスと接触しなければ感染症は起こらないという原則があります。
 ウイルス自体は危害を生み出す因子(ハザード)です。しかし身体に取り込まれなければ感染症は発症できないので、ウイルスとの接触を完全に断っていれば危害はありません。
 自動車事故も、家から出なければ遭う可能性は限りなく低くなりますので、2020年の事故件数は激減しました。

 家の中に居ても自然災害には遭います。遺伝的ながんに罹患する事もあります。巣ごもりが脅威をすべて遠ざける訳ではありません。

 個人の生活を見渡すだけでも脅威はたくさんあります。




自院の脅威

 事業を営む組織にとって廃業は避けたいケースだと思います。

 廃業に近づかないために脅威を特定し、評価し、BCPを策定する事が多いです。
 廃業となると従業員も取引先も困ります。

 廃業の危機は資金ショートや集団離職などが原因として考えられます。大きな損失や売上減、横領や盗難など資金難は様々な要因から生じます。

 医業の場合は廃業よりも、業務が停止してしまう事に対するBCPの策定が多いです。
 『エッセンシャルワーカー』(Essential worker)という言葉を耳にされた方も多いと思いますが、医療がそれにあたります。

 今この瞬間、医療というサービス以外では救い得ない患者が入院や治療を受けています。自院がサービスを停止し放り出せば生命に危機が及ぶかもしれません。

 代替できるサービスが無く、同業者間でしか融通できません。自然災害では同業者も被災するため、自院の患者は自院で守るという選択肢の一択となり、それに向けたBCPを策定します。

 診療の妨げとなる脅威は多種多様です。




脅威分析・評価

 脅威となる要素は何か、その脅威はどのような影響を及ぼす事が想定されるのかを分析します。

 脅威を『台風』とした場合、台風によって発生する事象を抽出し、業務や事業との関りを分析します。影響は直接・間接に大別できます。

 分析した結果は評価します。
 自院にどのような危害を及ぼすのか、その発生頻度や影響の大きさはどの程度か評価します。
 数値化できる要素ばかりではないので、院内で議論を重ねながら、新しい知見があれば取り入れながら評価します。




脅威分析・評価の実務

 脅威分析の実務は、業務の洗い出しから始まります。

 まずは平時に行われている業務、非常時に特有の業務をリストアップします。

 その上で、非常時に実施する必要のある業務であるか否かの区別や、重要度や優先度などを分類していきます。

 次にハザード(危害要因)を想定・仮定します。
 そのハザードが業務に及ぼす影響を検討します。
 この作業が脅威分析になります。

 ハザードに幾つかのバリエーションがあれば、その比較も行います。
 例えば地震であれば、断水や停電の発生有無によってリスクが異なりますので、例えば停電しないならば脅威にならないが、停電する場合は脅威になる、といった分析から深掘りしていきます。




見直しが必要

 危害が及ぶか否かについては、自院の対応策によって程度が変化します。

 最新の制震構造に建て替えたあとも、築40年と同じ脅威があるとは考えづらいです。
 反対に、老朽化していく設備を新品同様で評価していると、思わぬ危害が及ぶことがあります。

 阪神淡路大震災が起きた1995年、高齢化率は10%程度でしたが現在は25%超の超高齢社会です。相対的に高齢者が増えましたが、若者の絶対数も減っています。
 当時のマンパワーで出来た近隣住民による救出や避難所運営も、25年の歳月で大きく変化しています。
 おそらく、新たな脅威が生まれていると考えられます。

 見直しをしなければ、脅威を正しく捉える事は難しくなります。




米国機関に学ぶ脅威

 アメリカ国務省の外交セキュリティサービスでは諜報活動、訓練、情報提供などを通じ米国の利益に対する脅威を阻止・検出・制圧します。

 対スパイ活動はFBIと緊密に連携し、スパイ活動の脅威を分析し、活動を阻止しています。
 各種資料には"threats"(脅威)という言葉が幾度も出てきます。

 国益を鑑みた際の『脅威』(threat)ではありますが、脅威をどのように評価しているのか勉強になります。

[Link] U.S. Department of STATE: Countering Threats


 アメリカのシークレットサービスにはNTAC、国家脅威評価センターという組織があります。

 脅威を分析し、評価してフィードバックすることができます。

 脅威評価のノウハウを活かして学校を標的とした暴力活動を阻止するための学校保護用の資料を提供、誰もがダウンロードできます。
 拳銃などの武器が教育現場でも脅威となっている点は日本との違いを感じます。

[Link] U.S. Secret Service: NTAC, Protection

[Link] U.S. Secret Service: Protection America's Schoools, 2019

[Link] U.S. Secret Service: Enhancing school safety using a threat assessment model, 2018

※.上記資料にはコピーして良いと明記されています。




おわりに

 脅威を定義するには危害が必要であり、誰がどの程度の危害を受けるかを評価する必要がありました。

 危害要因として仮定したものが、そもそも危害を生み出すものであるかも分析しなければなりません。

 洋服屋さんでセーターを試着して静電気が飛んでも痛いだけで生命や財産に危害は及びません。
 ガソリンスタンドで静電気が火花を散らせば爆発の危険があります。

 当社でこれまで行ってきたBCP策定支援業務では、脅威について院内コンセンサスを得るようにお願いしてきました。
 これからも変わらず、BCPを基底する部分であると考え、脅威の評価や分析を行っていきたいと思います。

[Link] NES: 医療事業継続計画(BCP)

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BLOG 医療機器・設備・環境

看護業務用の動画マニュアル制作 | NES株式会社

看護業務は多種多様

 1人の患者に対する診療をみても、いくつもの業務が関わります。採血や血圧測定、問診、点滴、食事、精算、ベッドメイクなど1泊の検査入院でも数十はあります。

 一般病棟であれば50床分の業務が並行して行われます。

 病院全体でみれば病棟や外来以外に、手術室、検査室、処置室、中央材料室など専門分化された部門ごとに業務があります。

 日常業務としての看護はマルチタスク、さまざまな事を習得していなければ業務ができません。




ME機器は多種多様

 医療機器の高度化や普遍化により診療水準は底上げされてきましたが、機器を扱う側にとっては覚える事が増えました。

 聴診器、体温計、血圧計、パルスオキシメータなどは以前から測定原理が変わらず形状も似ているため新機種が発売されても学習すべき差分は少ないです。

 バイタルサインモニタ(ベッドサイドモニタ)や人工呼吸器などもさほど新しい機能は加わっていませんが、メーカー毎に操作性が異なるため機種毎に覚えるべきことが発生してしまいます。
 また、心電図や呼吸管理について自信がない看護師にとっては機種間の差の前に、そもそもの原理や用語の理解にも苦しむ場面があります。

 専門性の高い医療機器は、専門家にとって『普通』のレベルではありますが、関わりの薄い人にとっては難解な機器である場合が多くあります。

20世紀のベッドサイドモニタ
21世紀のベッドサイドモニタ



生命維持管理装置の動画マニュアル

 COVID-19で知られるようになったECMO(エクモ)は体外に血液を導き出して酸素を加え、再び体内に戻す治療法ですが、これに使われる装置はPCPS(percutaneous cardiopulmonary support, 経皮的心肺補助法)と呼ばれる物です。

 心臓や肺が著しく機能を損なっている患者に対して使われるので救急やICU(集中治療室)で使われます。
 ときには1分1秒を争うときもあり、PCPSを組み立てる作業(プライミング)はミスなく最短で行わなければなりません。

 PCPSの保有台数は大病院であっても何十台もある訳ではなく関わるスタッフは限定的です。実際の患者に使用される物でプライミングを経験できるスタッフも限定的です。

 緊張感ある臨床でミスなく、時間通りに作業ができるようにと動画マニュアルを制作した事があります。
 弊社代表の西謙一もこの研究に参加しています。約10年前の研究です。

 平時に見るマニュアルは教育的、要点を説明しながら本番でのミスを回避しようと制作されています。
 実時間バージョンのマニュアルもあり、こちらはベテランスタッフが落ち着いて作業している様子を撮影しており、ノーカットで実際にかかる作業時間分の動画となっています。

 慌ててしまう場面ではありますが、並走者が居る感覚で動画を見ながらプライミングができる、何よりもミスをしては時間ロスが大きいのでミスを生じさせないことが第一、それを実現できる動画を私たちは制作しました。

[Link] 上園惠子: PCPSプライミングにおけるDVDによる教育効果, 2012(平成24)年度循環器疾患看護研究助成研究業績報告集, 公益財団法人循環器病研究振興財団




ミスのポイントをおさえる

 マニュアルづくりで注意を払う点は、予見できるミスを回避することです。

 機器が動作するための方法については習得は早いです。機能しなければ使えない訳ですから、その点は関心事です。

 機器に対する危険予知ができない状況を、危険予知もできるオペレーターに育成するために、動画にも工夫を凝らします。

 現在は国立循環器病研究センターを離れて企業として仕事をしていますが、その生業の中でも看護業務マニュアルの制作に関わることがあります。

 過去の経験を活かし、業務が円滑に進むように、そして安全が守られるように、陰ながらサポートさせて頂いております。

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BLOG 医工連携

行き場を無くした医療用ガウン | NES株式会社

 『行き場を無くした医療用ガウン』とは、兵庫県豊岡市の株式会社由利さんが抱える不良在庫です。

 本来はカバンづくり専門の株式会社由利が医療用ガウンを在庫してる理由は新型コロナウイルス感染症流行拡大です。

 2020年、医療用の防護具が不足した際、医療用ガウンも不足していたため政府が何百万枚も調達をしましたが、そもそも国内で製造している会社が少なかったので、調達は容易ではありませんでした。

 そこで、兵庫県鞄工業組合が一念発起し、数十社合同で約100万枚のガウンを製造し、国に納入しました。
 この兵庫県鞄工業組合の理事長が株式会社由利の由利社長です。

 日本政府への納入が終わり、組合としての共同作業は解散しましたが、個社としての由利社長に米国のバイヤーからガウンに関する問い合わせがありました。

 米国向けに提供すべく製造した5万着の医療用ガウンが、米国へ行く事なく在庫になってしまい、今回の不良在庫となりました。

 このお話を弊社代表の西謙一がお聞きしたのが2020年末、本当は2021年1月に由利社長に会うべく豊岡市へ行く予定でしたが大雪で中止、Zoomで面談させて頂き詳細をお聞きしました。
 その後も幾度かリモート面談し、医療ディーラーなどに販売を打診しましたが、品質が良すぎて価格が合わないという事で、どこも見送りとなりました。

 このままでは高額の在庫を抱えたままになってしまうため、私も参加している活動『Medical Design Lab.』に相談したところ、クリエイティブディレクターの北村竜也氏よりクラウドファンディングの提案があり、彼にお願いする形で資金調達が始まりました。

【参考】ReadyFor: 行き場をなくした医療用ガウンを医療従事者に届けたい!


 由利社長からメッセージを頂戴していますので、良かったらご覧ください。