
├ はじめに
├ 厚生労働省の動き(2020~2021年)
├ ガイドライン・ひな形(2020年12月)
├ 自然災害発生時における業務継続計画
├ 表紙
├ 目次
├ 1.総論
├ (1)基本方針
├ (2)推進体制
├ (3)リスクの把握
├ ①ハザードマップなどの確認
├ ②被災想定
├ 自治体公表の被災想定
├ 自施設で想定される影響
├ (4)優先業務の選定
├ ①優先する事業
├ ②優先する業務
├ (5)研修・訓練の実施、BCPの検証・見直し
├ ①研修・訓練の実施
├ ②BCPの検証・見直し
├ 2.平常時の対応
├ (1)建物・設備の安全対策
├ ①人が常駐する場所の耐震措置
├ ②設備の耐震措置
├ ③水害対策
├ (2)電気が止まった場合の対策
├ (3)ガスが止まった場合の対策
├ (4)水道が止まった場合の対策
├ ①飲料水
├ ②生活用水
├ (5)通信が麻痺した場合の対策
├ (6)システムが停止した場合の対策
├ (7)衛生面(トイレ等)の対策
├ ①トイレ対策
├ 利用者
├ 職員
├ ②汚物対策
├ (8)必要品の備蓄
├ 飲料・食品
├ 医薬品・衛生用品・日用品
├ 備品
├ (9)資金手当て
├ 3.緊急時の対応
├ (1)BCP発動基準
├ (2)行動基準
├ (3)対応体制
├ (4)対応拠点
├ (5)安否確認
├ ①利用者の安否
├ ②職員の安否確認
├ (6)職員の参集基準
├ (7)施設内外での避難場所・方法
├ (8)重要業務の継続
├ (9) 職員の管理
├ ①休憩・宿泊場所
├ ②勤務シフト
├ (10)復旧対応
├ ①破損個所の確認
├ ②業者連絡先一覧の整備
├ ③情報発信
├ 4.他施設との連携
├ (1)連携体制の構築
├ ①連携先との協議
├ ②連携協定書の締結
├ ③地域のネットワーク等の構築・参画
├ (2)連携対応
├ ①事前準備
├ ②入所者・利用者情報の整理
├ ③共同訓練
├ 5.地域との連携
├ (1)被災時の職員の派遣
├ (2)福祉避難所の運営
├ ①福祉避難所の指定
├ ②福祉避難所開設の事前準備
├ 6.通所サービス固有事項
├ 7.訪問サービス固有事項
├ 8.居宅介護支援サービス固有事項
4.他施設との連携(1)連携体制の構築
①連携先との協議

実務が伴わなければ絵に描いた餅ですので、計画(BCP)の前に連携先候補を作ります。
既に連携先がある、候補されているという状態であれば必然的に記載項目は生まれてきます。
全くない場合は『準備中』『20XX年度中の協議開始を目指す』など現況を記載しておくと良いと思います。
4.他施設との連携(1)連携体制の構築
②連携協定書の締結

連携協定書という言葉自体が耳慣れない人も多いと思います。
英語表記ではMemorandum of Understanding、略称でMOUなどと呼ばれるものがこの協定書に近いと思います。
理解したことの備忘録と直訳するとわかりやすいかもしれません。しばしば、覚書や合意文書などとも呼ばれます。
契約ではないので不履行があっても罰や賠償は命ぜられないが、困った時は助け合おうという約束は交わした仲だということを記録するようなものです。
災害に特化したMOUを交わしても良いですし、もっと大きなところで合意しても問題ないです。
例えば専門学校とMOUを交わして、平時は講師を派遣したり実習生を受け入れたりという『社会福祉の教育環境の向上』で協力関係にありながら、非常時には助け合う、どちらかと言えば助けて貰う立場かもしれませんが、非常時協力という項目も入れたMOUを交わすということもできます。
書類作成の細かなところは士業の仕事ですが、弊社では法人間の合意に向けたファシリテーター役を担うことはできます。
相手は自治体でも町内会でも商店街でも、それぞれに応じた内容で協力関係を構築するお手伝いをしています。
4.他施設との連携(1)連携体制の構築
③地域のネットワーク等の構築・参画

業界団体に加入することが第一歩かもしれませんが、法人として加入する団体以外にも、個人が加入する団体もありますので、その性質については色々と考えて行く必要があると思います。
大阪には『大阪連携たこやきの会』(大阪地域医療連携合同協議会)というものがあり、中核メンバーは病院や訪問看護ステーションの方々ですが、介護福祉施設の会員も居りますので、こうした活動に参画するのも有意義だと思います。この会の場合ですと会員であることがメリットというよりは、会活動に職員を参加させて交流していくことに意義があると思います。
COVID-19の感染対策では、感染に詳しい医師や看護師との連携が取れない介護施設が多くあったことで、行政が仲介して医師や看護師を派遣するケースがありましたが、平時から付き合いがあれば簡単にウェブ会議も開くことができ、自施設のとるべき行動が見えたと思います。
弊社が密に連携する感染管理認定看護師は行政の依頼で200施設を4人で分担して回りました。200番目になる施設は相当な期間の順番待ちです。
災害時、この順番待ちを許容できるのかどうかを考えると、平時に連携先を持っておくことは意義深いです。
弊社は医療従事者がBCPを担当していますので、医科との橋渡しに長けています。互いにメリットを生む協定や連携のありかたについて、ノウハウがあります。
4.他施設との連携(2)連携対応
①事前準備

連携協定(MOU)が締結されたのち、実務を行っていくことになります。
- 救援
- 受援
災害時協定の場合、自らが助けに行く『救援』の方が確率が高いのでそちらに目が行くことがありますが、BCPでは『受援』についてどのようなことを期待できるのか、確認します。
連携先との協議を重ねることも重要ですが、できれば合同演習をするなど実務者レベルでの交流があると、互いの強み・弱みを見つけ出し『ウチからコレを提供できる』という流れになることが期待できます。
COVID-19流行前であれば食事会もできたのですが、いまは違った形での交流が必要になっています。
4.他施設との連携(2)連携対応
②入所者・利用者情報の整理

経営上の秘密を漏らす必要はありませんが、互いに利用者を預け/預かる立場になるとき、どのようなケアが必要な人を動かすのか、共通言語のようなものがあると便利です。
例えばトイレは自立か介助か、食事は普通食か否かなど、労務負荷の想定する上でも、また申送り時間の短縮のためにも共通化することは意義深いです。
4.他施設との連携(2)連携対応
③共同訓練

共同での訓練は非常に有意義です。
近隣であれば比較的細かい事の申し合わせを確認していく作業もできます。
遠隔地での協定であれば、実際に救援に来た時の食事や寝泊まりのことであるとか、道路寸断を考えて落ち合う場所をどう定義するかなど、ロジスティックス関係を確認するところから始まります。
ここまでを考えると、費用負担のこともあるので連携先相互で同じコンサルタントを入れておくと、話もスムースになります。
5.地域との連携
(1)被災時の職員の派遣

連携協定の有無に関わらず、業界全体や社会全体で従業者を派遣するシステムが稼働することがあります。
東日本大震災の際には、医療系では学会が主体となって専門医を派遣する事業を展開しており、避難所などニーズのあるところへ専門医が訪問していました。
介護・福祉業界では医科ほどの学会活動がないためどの程度の支援体制が組まれるかは不明なところもありますが、被災地への職員派遣を検討することで、自施設が被災したときにどのような人材に来てもらえるのかをシミュレーションすることにもつながります。
5.地域との連携(2)福祉避難所の運営
①福祉避難所の指定

福祉避難所については制度が浸透しているとはいいがたい部分もあるので、非常時にどのように機能するのかは発災してみないとわからない部分もあります。
型通りに機能したと仮定し、BCPではその想定内での計画を立てます。
- 自施設も被災地内にある場合
- 自施設は被災せず要介護者らを受け入れる場合
想定は上記2種類になると考えられます。後者の場合は定員を超えて入所者が増えるといった程度ですので、エネルギーインフラや備蓄などは考える必要がほとんどありません。
問題は自施設が被災しながらも近隣から要援護者らの受入要請があった場合です。
完全に断るのであれば、断る方法を考えます。
受け入れの余地があれば、どのようなルールで受け入れていくのか、定員なども含め検討していきます。
5.地域との連携(2)福祉避難所の運営
②福祉避難所開設の事前準備

福祉避難所を開設する場合は、ガイドラインに従って準備を進めます。
ガイドラインは理想的な状況を踏まえているかもしれないので地域の事情などに沿って検討を行います。
例えば、建物を持っている介護事業者が自施設以外にほとんどなく、訪問中心の地域では、要請がある要援護者の状態は幅広いと考えられ、また自施設が多少の無理をしてでも受け入れなければならなという使命感があるかもしれません。
反対に依頼する側としては、多少は環境が悪くても、受け入れてもらえるだけ助かるという状況なのか、平時並みのケアを望むのかでだいぶ違ってきます。
特に施設数が少ないエリアでは、市役所との協議は欠かせず、どのような基準で福祉避難所への要請をしてくるのか、見通しを付けておくことが重要です。
弊社でもこのようなケースに対して、基準づくりなどのサポートをさせて頂いております。ノウハウもありますのでここには詳述しませんが、お困りの場合はご相談頂ければと思います。
【参考】内閣府 防災情報のページ:福祉避難所の確保・運営ガイドラインの改定(令和3年5月)
6.通所サービス固有事項

通所で課題となるのが安否確認と、当日のサービス提供可否の案内になると思います。
安否確認を実施するのであれば、安否確認システムを導入してしまうのが手っ取り早いと思います。
発災後、営業再開に関する情報発信も課題になります。
『お風呂は入れますか?』『送迎は来ますか?』といった問い合わせが殺到しては業務に支障が出ますので、可能な限りホームページを見てもらい、それでは伝わらない人だけ連絡を貰うように絞り込めば、だいぶ業務量は軽減できます。
COVID-19では送迎に関するトラブルが多発しました。
それは、真夏の体温測定です。
真面目な利用者さんたちは送迎車が来る10分以上前から外で待っている習慣があったのですが、運転手さんが非接触のデバイスで測定すると37.5℃以上と表示され、乗車拒否となるケースが多発しました。
体温が高いのではなく、体表面の温度が高い状態であり、感染症でも何でもないのですが、高熱だという連絡が介護施設に入り、そのまま往診や訪問看護が要請されて医療従事者が自宅訪問すると、病気でも何でもない人が、元気そうに家に居るということになります。
それまでの常態を外れるケースですので想定外は仕方ありませんが、多忙な医療を介護施設が振り回す形になると、非常時の混乱を助長することにもなるので、異変に気付くことができるシステムや訓練が重要になります。
7.訪問サービス固有事項

訪問サービスでも安否確認は重要になります。
特に『避難所に居ます』という連絡を入れる手段が見つからないというケースが多いです。
町内会で安否確認システムを導入することもできますので、集まっている情報の中から、同意を得られている利用者の情報を提供してもらうなど、地域とのつながりを作る事も重要になります。
避難所にいる場合は名簿検索も依頼先があって良いのですが、親戚宅などに疎開した場合には連絡をつけることも困難な場合があるので、できれば施設側で安否確認システムを導入しておくと良いです。
8.居宅介護支援サービス固有事項

居宅介護支援サービスでも、やはり重要なことの1つに安否確認が挙げられます。
そもそも利用者が不在であればサービスは発生しませんし、逆に自宅で待たれていてもサービスを届けられない状況では、利用者側で動いてもらうしかありません。
過去の水害や津波では、橋が使えなくなり移動困難となるケースが多発しています。
道路の地割れも、ランドクルーザーくらい大きなタイヤの車は通行できても、訪問車に多い軽自動車などでは乗り越えられない段差が生じていることもあります。
まずは連絡をつける、その優先順位を見極めるためにも安否確認は重要になります。
【参考】一般社団法人日本介護支援専門員協会:災害対応マニュアル
試入力(NES)
弊社では、厚生労働省のひな形にダミーデータを入力したファイルを作成しています。
一部は読みやすいように表なども作成しており、自施設が扱いやすいようにアレンジできうよう配慮しています。