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介護BCPの作り方 | NES株式会社

 産業界では事業継続計画として広がるBCP(Business continuity plan)ですが、医療や介護の現場では止められない業務が多いため『業務継続計画』としてBCPの策定を急いでいます。
 廃業にならないための『事業』を継続するのではなく、目の前の患者や入所者を守り抜いてから復旧・復興へとシフトするこの業界では、独特なBCPが必要になります。

 弊社では、臨床経験のある医療従事者がBCPの策定や運用を支援するサービスを提供しており、ほとんどのお客様が医療や介護などの事業所様です。

 厚生労働省が無償提供している雛型を使ったBCP策定が目立つ介護業界ですが、丸ごとコピーで穴埋め式で策定してしまうと実践性に欠く場面があります。
 医療福祉のBCPを生業とすると社として『こうしたら良いのでは?』と気づいた点についてまとめてみました。
 お役に立つかわかりませんが、参考資料といしてご覧いただければ幸いです。

 このページでは自然災害について述べますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についてはこちら特設ページを設けておりますのでご参照ください。

【参考】介護BCPの作り方 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)




 ├ はじめに
  ├ 厚生労働省の動き(2020~2021年)
  ├ ガイドライン・ひな形(2020年12月)
 ├ 自然災害発生時における業務継続計画
  ├ 表紙
  ├ 目次

  ├ 1.総論
    ├ (1)基本方針
    ├ (2)推進体制
    ├ (3)リスクの把握
     ├ ①ハザードマップなどの確認
     ├ ②被災想定
      ├ 自治体公表の被災想定
      ├ 自施設で想定される影響
    ├ (4)優先業務の選定
     ├ ①優先する事業
     ├ ②優先する業務
    ├ (5)研修・訓練の実施、BCPの検証・見直し
     ├ ①研修・訓練の実施
     ├ ②BCPの検証・見直し

  ├ 2.平常時の対応
    ├ (1)建物・設備の安全対策
     ├ ①人が常駐する場所の耐震措置
     ├ ②設備の耐震措置
     ├ ③水害対策
    ├ (2)電気が止まった場合の対策
    ├ (3)ガスが止まった場合の対策
    ├ (4)水道が止まった場合の対策
     ├ ①飲料水
     ├ ②生活用水
    ├ (5)通信が麻痺した場合の対策
    ├ (6)システムが停止した場合の対策
    ├ (7)衛生面(トイレ等)の対策
     ├ ①トイレ対策
      ├ 利用者
      ├ 職員
     ├ ②汚物対策
    ├ (8)必要品の備蓄
     ├ 飲料・食品
     ├ 医薬品・衛生用品・日用品
     ├ 備品
    ├ (9)資金手当て

 ├ 3.緊急時の対応
    ├ (1)BCP発動基準
    ├ (2)行動基準
    ├ (3)対応体制
    ├ (4)対応拠点
    ├ (5)安否確認
     ├ ①利用者の安否
     ├ ②職員の安否確認
    ├ (6)職員の参集基準
    ├ (7)施設内外での避難場所・方法
    ├ (8)重要業務の継続
    ├ (9) 職員の管理
     ├ ①休憩・宿泊場所
     ├ ②勤務シフト
    ├ (10)復旧対応
     ├ ①破損個所の確認
     ├ ②業者連絡先一覧の整備
     ├ ③情報発信

 ├ 4.他施設との連携
    ├ (1)連携体制の構築
     ├ ①連携先との協議
     ├ ②連携協定書の締結
     ├ ③地域のネットワーク等の構築・参画
    ├ (2)連携対応
     ├ ①事前準備
     ├ ②入所者・利用者情報の整理
     ├ ③共同訓練

 ├ 5.地域との連携
    ├ (1)被災時の職員の派遣
    ├ (2)福祉避難所の運営
     ├ ①福祉避難所の指定
     ├ ②福祉避難所開設の事前準備

 ├ 6.通所サービス固有事項
 ├ 7.訪問サービス固有事項
 ├ 8.居宅介護支援サービス固有事項

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はじめに

厚生労働省の動き(2020~2021年)

 厚生労働省では介護施設や介護事業所向けのBCP(業務継続計画)のガイドラインとひな形を公表しています。

 予算措置としては令和2年度二次補正予算(2.3億円)で『介護サービスの類型に応じた業務継続計画(BCP)作成支援事業(民間事業者に対する委託費)』が計上され、ガイドラインや様式が示されました。

 2020年には業務継続計画を巡る介護報酬の是非について議論され、令和3年度の介護報酬改定に合わせ、介護サービスの継続的提供を義務化し、3年の経過措置後に施行されることになりました。

感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。その際、3年間の経過措置期間を設けることとする。【省令改正】

令和3年度介護報酬改定における改定事項について, 社保審-介護給付費分科会 第199回

【参考】厚生労働省:社会保障審議会(介護給付費分科会)
【参考】厚生労働省:令和3年度介護報酬改定について
【参考】令和3年度介護報酬改定に向けて(感染症や災害への対応力強化), 社保審-介護給付費分科会 第184回(2020年9月4日)
【参考】令和3年度介護報酬改定における改定事項について, 社保審-介護給付費分科会 第199回(2021年1月18日)

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ガイドライン・ひな形(2020年12月)

 2020年12月に厚生労働省からBCPに関するガイドラインとひな形が示されています。

 テーマは大きく2つあり、新型コロナウイルス感染症対策と自然災害でした。

 自然災害については地震と水害を明確に分ける内容ではないため、突発的な災害と待ちの災害の両方を1つのBCPでカバーすることになりそうです。

 前述のガイドラインなどが掲載されているページには、研修資料も掲載されています。
 研修については2021年2月26日の厚生労働省老健局からの事務連絡で各自治体に周知されました。

BCPガイドラインの通知
BCP研修の事務連絡

【参考】厚生労働省:介護・高齢者福祉
【参考】厚生労働省:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修
【参考】厚生労働省:介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等について, 厚生労働省老健局高齢者支援課長, 厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課長, 厚生労働省老健局老人保健課長, 老高発1214第1号, 老認発1214第1号, 老老発1214第1号, 令和2年12月14日
【参考】介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修について, 厚生労働省老健局高齢者支援課 / 認知症施策・地域介護推進課 / 老人保健課, 事務連絡, 令和3年2月26日

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試入力(NES)

 弊社では、厚生労働省のひな形にダミーデータを入力したファイルを作成しています。
 一部は読みやすいように表なども作成しており、自施設が扱いやすいようにアレンジできうよう配慮しています。

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自然災害発生時における業務継続計画(BCP)

表紙

 ひな形の表紙には法人名、種別、代表者、管理者、所在地、電話番号を記載する欄があります。

 セキュリティの面から対外的に公表していくものでもないので内部資料として使う場合には電話番号まで要るかどうかわかりませんが枠は設けられています。保健所や保険者(介護報酬)に示すときには必要になると思います。
 種別欄は通所や居宅などを記載してもらおうという意図があるのだと思います。

 表紙で重要なことは『業務継続計画』であること、それが『自然災害』を対象にしたものであること、この2点が明確にわかることです。

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目次

 ここは作成してもしなくても良いページです。

 見やすさに配慮すれば、必要性は高いと思います。

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1.総論(1)基本方針

 災害に対する基本方針なので、ここを決定する以前に何を脅威とするのか、どのように被災想定するのか、決めておく必要があります。

 基本方針には、例えば下記のようなことを書きます。

  • 施設内に居るすべての人の生命を守る
  • 職員の雇用を守る

 表現方法は色々ありますが『安全を守る』となると、その安全とは何かという定義をどこかで示す必要性があるかもしれません。

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1.総論(2)推進体制

 ここでは平時の推進体制を示すことになっています。
 そもそも脅威に立ち向かうには何が必要で、何が足りていないのかを考える必要があります。
 また、他の組織や委員会等との関係性も示していかなければ仕事ばかり増え、生産性が低下してしまいます。

 想定される役割には以下のようなものがあります。名称は特にこだわる必要はありません。

  • 司令塔(発災後は災害対策本部の中核となる人物・部署)
  • 直接サービス(利用者に直接関わる現場業務)
  • 調達(食料、エネルギー、物資などの備蓄や調達)
  • 防災・減災(消火や避難など消防計画に近い内容、備蓄は調達班と連携)
  • 連携(消防や警察、他施設との連携、受援管理)
  • 庶務(内部支援、情報管理、安否確認、資金管理など管理全般)

 消防署に提出している消防計画と業務が重複する部分は二度手間にならないように吸収します。補足欄に『防火管理者兼務』など明記して、なぜその人なのか、個人のスキルなのか役職で選ばれたのかなどがわかるようにしておくと改訂時の手間が省けます。

 地域の社会福祉協議会や職能団体などの活動についてもBCPと連動できるように努める事で、BCPが特別なことではなくなります。実務が関わるので計画(プラン)ではなくマネジメント、BCM(Business Continuity Management)の領域になります。

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1.総論(3)リスク把握
①ハザードマップなどの確認

 ハザードマップのコピー&ペーストが最も手軽であり、正確性も高いと考えられます。

 ハザードマップは自治体の広報などと一緒に紙媒体が配られているかもしれませんが、電子データとして最新版を入手することができます。

 弊社では独自に検索窓を開発したので、住所や施設名称で近隣のハザードマップを表示することができます。住所は市区町村名と町丁名、例えば『世田谷区成城』『芦屋市六麓荘』のように入力すると表示されます。



検索したい住所を入力(都市名+町丁名 または ランドマーク)

【参考】災害関連データベース



 表示するハザードは自ら選択できます。
 津波や洪水では、想定水深が表示されます。


 ハザードマップには国土交通省提供のものとは別に、各自治体が公表している『わがまちハザードマップ』があります。
 下記検索窓で自治体名を入れるとわがまちハザードマップをご覧いただけます。



フリーワード検索(項目選択): 市町村名 都道府県

【参考】地域防災計画 都道府県・市町村一覧



 いずれのハザードマップを利用する場合においても、著作権者が存在しますので、ルール違反にならない範囲で利用します。
 国土交通省国土地理院のハザードマップについては著作権フリー、申請なしで使用できます。



 パソコンで表示の場合、キーボードのどこかに『Print Screen』や『PrtSc』など画面をキャプチャする手段があると思いますので、適当な位置に合わせた地図を画像化します。
 クリップボードにコピーされた画像をそのままWordファイルなどに貼り付けるのであればそのままで良いですが、サイズなど加工したい場合はWindows標準搭載の『ペイント』を開いて、そこへ貼り付けて画像として保存します。PNGでもJPGでも好きな形式で構いません。

 ここで使う地図がこのあと作成されるBCPの基準となります。自施設にフォーカスした地図でも良いのですが、孤立無援の籠城戦を想定するだけでなく、他施設との連携も厚生労働省では促していますので、半径数キロ圏内のハザードマップも掲載しておくことをお勧めします。
 例えば自施設は高台にあって津波は関係なくても、徒歩1時間以内に津波被災する同業者が居れば、そちらの入所者や職員を一時的に預かるかもしれないことをBCPで想定する場合があります。
 特に医療機関を併設している高齢者施設の場合、頼りにされる範囲が広がりますので市域全体の医療機関の被災想定も計画に盛り込んでおくことをお勧めします。

【参考】ハザードマップポータルサイト

【参考】災害関連データベース

【参考】地域防災計画 都道府県・市町村一覧

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1.総論(3)リスク把握②被災想定
【自治体公表の被災想定】

 被災想定については、自治体が発行している地域防災計画を見るのが一番早いです。

 下記の検索窓に自治体名を入力することで全自治体のリストから対象となる自治体をピックアップできます。



フリーワード検索(項目選択): 市町村名 都道府県

【参考】地域防災計画 都道府県・市町村一覧



 地域防災計画は多い自治体ですと500ページ以上になります。早めにチェックしておくことをお勧めします。

【参考】地域防災計画 都道府県・市町村一覧

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1.総論(3)リスク把握②被災想定
【自施設で想定される影響】

 地域防災計画で例えば停電3日間、断水1週間と記載があった場合、それを参考に自施設の影響を検討します。

 ひな形には安易に、停電しても自家発電で2日以上持続でき、3日目には復旧すると描いてありましたが、それだけの備蓄ができているか自施設を点検しましょう。

 可搬型の小型発電機はカセットガスを燃料として発電できますので手軽で便利です。
 他方で発電量は1kVAに満たず、ガス交換が1.1時間毎に発生するため3日間で60回以上のガス交換になります。1回2本ですので120本のカセットガス備蓄が必要です。

 照明、湯沸かし、電子レンジ、喀痰吸引など電力の用途は多様ですし、人数が多ければ消費量(ボリューム)も大きくなります。

 喀痰吸引や人工呼吸器などは人命に関わりますので、電力の確実な確保が求められます。
 高齢者施設であれば、プロパンガスの8kVAタイプくらいが設備されていると冗長性が高まると思います。下図の機種は自転車置き場の一角に置けるようなサイズで費用は月10万円くらいです。
 プロパンの良い点は、燃料を借りてきやすいこと、災害時にガソリンほどの調達競争が起こらないことです。

可搬型ガス発電機(1kVA未満)
LPガス発電機(8kVA)

【参考】カセットガス発電機(Amazon)
【参考】至誠電工 ガス電くん

 弊社は発電機は作っていませんが、電気工事業を兼ねているので停電対策には熱が入ってしまいます。
 在宅については、1kVAのタイプでも対応可能であると考えられます。
 自験例ではございますが、52時間の停電を体験し、その間、エアコンや冷蔵庫などを使い続けられました。元々、在宅人工呼吸器に対応できる家づくりを考えて設備した物が役立ちました。

 どのような施設に、どのくらいの発電機を用意すべきか、お見立てすることもできます。

 これまでに停電関係で学会発表も多数しておりますし、医療機関等と連携した研究も実績がありますので、お困りでしたらご相談頂ければと思います。

 水は受水槽の有無が大きく関わります。水道局から引いた水を一旦は受水槽に貯めて使用する施設の場合、断水が発生しても数トンの水は確保できます。

 平時は贅沢にも飲用水と衛生用水は同じ上水道を使っていますが発災後は明確に分ける事が可能です。敷地内にプールする場所があれば雨水などを貯めて置き使用します。浴槽の残り湯も使えます。
 そのとき、水を汲み上げるポンプが必要になりますので、そうした備蓄は必要最低限、これらエネルギーインフラの被災想定と連動して備蓄を増やしていく必要があります。

【参考】リョービ 水中ポンプ(Amazon)

 これらの発電機や揚水ポンプの備蓄有無で、自施設の被災想定が大きく変わります。

 被災想定に下水関係がないので、そこはシミュレーションに含めておくべきだと考えます。
 上水道が活きていても下水道が損壊していれば悲劇的なことが生じます。上水道は漏水すればすぐに気づきますが、下水は気づきづらく、また真水は流れても固形物は流れない程度の損壊があると経時的に詰まりが発生します。
 損壊状況が判明するまでは、ドライトイレを使うなど個々の対策をすることで、排水の被災想定期間が1週間であったとしてもトイレのデッドタイムは短縮が可能です。

 通信インフラの停止期間や復旧メドは、何のために使用するインフラであるかを考慮した上で想定すると良いです。
 極端に言えば、電話やメールを使う必要が無ければ、断絶期間は関係なくなります。

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1.総論(4)優先業務の選定
①優先する事業

 ここでは『事業』(ビジネス)の継続と停止を取捨選択します。

 まずは止められるか否かを考えます。
 入所・通所・訪問で分けた時、入所は止めるか否かの判断の前に、現に利用者が目の前に居ますので全業務が停止したとしても入所者の存在は消せません。

 他方、通所型は発災時期によっては誰も目の前に居ないので、仮に通所施設が全壊しても発災時の危害はゼロです。施設の経済的損失などは別です。人命などへの影響がないという事になります。
 ここで難しくなるのが、発災時刻や曜日の設定です。通所型の利用者が居るのか否かで、想定すべき事項が大きく変わります。

 訪問型については、行って何をしていたのかという事から見直していくと良いです。

 介護用品ショップやコインパーキングなど施設の一角を利用して行われていた事業は停止対象にできると思います。
 介護事業は停止しづらいと思いますので『事業』というくくりで言えば停止しないことになりますので、後述される業務の選定で細かく決めていきます。

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1.総論(4)優先業務の選定
②優先する業務

 前項ではビジネスの継続について検討しましたが、本項では個別の業務について検討します。

 例示にもありますが排泄や食事、入浴など平時であれば当たり前に介助していた内容が、ここで見直されます。

 ひな形では優先する業務と一緒に必要職員数を示していますが、人数は記載しなくても良いかもしれません。
 実際に介助するのは断続的なのであまり意味は持たないと思います。もし、記載するならば1件あたり何人必要か、単身でできるのか複数名でかかる必要があるのかを明らかにしておくと良いです。
 例示にある与薬も排泄も食事も職員1人でできます。できますが50人を対象にすれば50回の関与が必要です。
 与薬は食事のあとに限られるのであれば、食事介助者が与薬介助者を兼務すると思いますし、そもそも食事が用意できなければ食事介助が発生しません。

 食事は我慢できてもトイレは我慢できないとすれば、トイレの方が優先でしょうか。環境を衛生的に保つためにもそちらが優先されるかもしれません。

 優先する業務のリスト化や可視化については、色々と工夫ができる箇所になります。
 ノウハウなのでここでは明かしませんが、弊社ではまた違ったリストを作成しています。その一部をご紹介します。


 ここで重要なことはロジスティックス(兵站)です。どれだけ優秀な介護スタッフが現場に居ても、ロジが崩れればサービスどころではありません。給食の時間になれば食事が運ばれてくるような当たり前の風景も、当たり前ではないことをBCPには記載していかなければなりません。


 この項は『優先する業務』ですが、実際にBCPを策定している者としては『休止する業務』を可視化しなければ、職員全体に理解が広まらないと感じています。

 弊社で策定する場合は『③休止する業務』のような項目を作って、手が空く人を探しやすくします。


 精緻に策定する場合、弊社では年間の仕事を可視化する作業を実施します。年間2,000時間近い勤務時間中、どのような業務をしているのか明らかにします。

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1.総論(5)研修・訓練の実施、BCPの検証・見直し
①研修・訓練の実施

 研修と訓練はガイドライン上で大きく分けられています。

 研修はBCPの内容を熟知するためのもので、訓練はBCPに沿ったシミュレーションであり、経験から学びつつ、課題を抽出するマネジメント的な役割も果たす事を狙っています。
 ガイドラインの19ページ『BCP発動基準』のところでも訓練は重要であることがわかる文言が並んでいます。



 ここでは大きく研修・訓練の方針を掲げます。開催頻度は年2回ずつ、四半期に一度は何らかの形でBCP関連のイベントが発生することで実装を図ります。

  • 研修および訓練はそれぞれ年2回実施する
  • 毎年基礎と応用を並行させ、基礎で底上げを図り、応用では職種や職位を問わず多能な人材育成を目指す
  • 基礎研修は年1回以上開催し、3年以内に全職員が受講、一巡後も目標を変えて3年周期を維持し、BCP改訂も並行して底上げを図る
  • 応用研修は年1回以上開催し、多職種混成で総合力を向上する
  • 訓練は実地を基本とするが目的に応じて図上演習も採用する
  • 外部機関や他施設を互いに訪問して実施する合同演習を実施する

 厚生労働省が強調する『訓練が一過性で終わらず、継続して実施することを担保する』という点に注意が必要です。

 あるテーマパークでは年1,000回の訓練を実施して底上げを図っています。平時の業務でも役立つ判断力や提案力を養うことにもつながっていきます。
 年4回では少ないという見方もできますが、ゼロよりは多いですし、前述のとおり『3年以内に全職員が受講』という文言を入れることで、明確な目標が掲げられ、実効性の高いBCPであると見てもらうことが期待できます。



 弊社でも研修支援を行っていますが、基礎研修であっても子供向けではないので『災害とは?』に時間を割く事なく、その先にある『脅威とは?』といったところにフォーカスします。
 弊社でBCPを策定した場合にはかなり深掘りしたところから、例えばハザードマップを鑑みた基礎研修を実施しています。

 医療では迫られる事項が多いのでGOA(Goal-oriented action)についても詳しく説明します。
 GOAに近い考え方は、気にしていると映画やドラマでも出てきます。ドラマ『頭取 野崎修平』の第5話冒頭では『大きく道を外れない限り手段を選びません。もはや引き返せないですから』というセリフがありますが、非常事態に直面すればこのような判断を繰り返していく必要に迫られます。
 並行して演習では『この状況下で、何をするのか』という事を繰り返し、ローカルでのボーダーラインを決めて行きます。完全な法律違反はできませんが、姑息的な手段で危機を回避するというシーンはいくつも生まれてきます。

【参考】GOA – 医療BCPの基本的な考え方と行動



 ここまでは身構えて実施する研修や訓練について述べてきましたが、身構えずに受ける訓練もあります。

 下の研修アンケート画面は安否確認システム(AmpiTa)を応用した使い方です。AmpiTaは平時の利用を通じて使い方をマスターしていくための補助機能を備えています。

 アンケートだけでなく、研修会の出欠管理にも使うので、職員は研修前後で2回、安否確認システムに触れることになります。
 平時に実用しながら、身構えずに訓練を受けることができる仕組みです。

【参考】多用途安否確認システム AmpiTa

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1.総論(5)研修・訓練の実施、BCPの検証・見直し
②BCPの検証・見直し

 総論(2)の『推進体制』と関わるところになりますが、まず初版のBCPを策定する際にはワーキンググループを形成します。そのWGが後に委員会などに発展するかどうかは施設次第です。

 BCPの承認プロセスの最終段階は責任者である施設長や経営層になります。生命や財産に関わるので当然のことです。

 その途中段階では、現場を熟知した者が評価していく必要があります。その評価が低かったとしても、その当時の自施設の限界であれば止む無しとして通していくことも必要になります。

 初版以降の見直しについては、課題を解消していく狙いがありますのでアクセル役とブレーキ役が混在するようなワーキンググループがあると良いです。
 おそらく直接サービスを提供する現場からは、不安や不満の声がたくさん出てくると思います。事務方からは、現場の何を手伝うべきか、何ができるのかといった声が聞かれると思います。そして経営側からは資金や労務法務などの面からできる/できないの意見が出されると思います。

 こうした意見を出す場を設けることが重要であり、結果がどうなるかは施設の現況もあるので理想論とは違って当然です。

  • 防災委員会の分科会としてBCPワーキンググループを設置
  • WGは隔月で会議を持ち、研修や訓練の準備や実施を含め年20日程の活動日を設ける
  • WGの目的は非常時の対応力向上であるため、その手段として外部有識者や他施設からの招聘などを認める
  • 備蓄品強化などについては防災委員会と連携し、予算確保や補助金申請などは防災委員会の裁量で実施する
  • BCPは最長3年の有効期間とし、3年以内に改訂する
  • BCP改訂に合わせた研修・訓練を実施する

 上記のようなことをこの欄には記載することで、BCPに関わる人の目的や権限が明確化できます。
 働き方の見直しが進められる中ですので、年間活動日数も掲げておくことで先が見通しやすくなります。

 他施設との連携をすぐに始めるのは難しいですが、外部の識者を招聘することは比較的容易であると考えられます。
 識者は大学の先生のような人物でなくても問題ありません。往診に来ている医師や看護師でも良いですし、納品に来るレンタル業者でも構いません。弊社のようなコンサルを招聘する、あるいはコンサルに人選してもらうのも良い手段だと考えられます。

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介護施設『新興感染症BCP』雛型無償提供(2022年12月20日プレスリリース)