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複雑な構造のスイッチの方が安い!? | 登録電気工事業者 | NES株式会社

 どこの家庭の壁にもあるようなスイッチ。

 そのスイッチの市場価格に大きな変化が訪れています。




  1. スイッチの種類(外観)
  2. 昔はネジ式
  3. 挿し込み式へ
  4. フルカラーの価格
  5. コスモシリーズの価格
  6. Bスイッチ vs. Cスイッチ
  7. 単品 vs. 箱買い
  8. Cスイッチは構造が複雑
  9. 三路スイッチとは
  10. 三路スイッチ結線図
  11. 四路スイッチとは
  12. 五路スイッチは無い
  13. 複雑な方が安い現象
  14. なぜ、安くなったのか?
  15. コスモシリーズのイノベーション
  16. ポケットに1つ
  17. ホームセンターは定価ベース
  18. Bスイッチ消滅!?
  19. 筆者宅はほぼCスイッチ




スイッチの種類(外観)

 スイッチの外観は数十年毎に大きな変化があります。そのけん引役は松下電工、パナソニック電工、パナソニックです。

 スイッチの原点的なものは、露出型です。既存の木造住宅、電気があったとして部屋の真ん中に紐でOn/Offする裸電球があったような時代から、壁スイッチで操作する時代に移る中では露出スイッチの方が需要があったと思います。


 パナソニックのカタログには現在も『国民ソケット』が掲載されています。


 『1号新国民ソケット』『2号新国民ソケット』『3号国民ソケット』は、E26の口金に挿入して使う、紐付きのソケットです。LED電球にも対応しています。


 高度経済成長期に建った住宅やビルの多くに『ハイ角連用器具』、通称『ハイ角』が使われていました。プレートの右下をよく見ると『National』のロゴが在ると思います。ナショナルがトップシェア、だいたいナショナルでした。


 昭和50年代に入ると、主流が『フルカラー』に移り変わります。これもナショナルがトップシェアです。

フルカラースイッチ(文字はテプラで上貼)

 フルカラーのカバープレートは当初、プレートの上からネジどめする方式でしたが、途中から外枠にツメで固定するタイプに変わり、正面から見てネジがなくなりました。

正面ネジ付きプレート
フルカラーBLプレート(ダークベージュ)

 昭和の時代はザラザラの表面のプレートでしたが、平成に入るとモダンプレートが主流となりました。スイッチ自体はフルカラーのままで不変です。

フルカラーモダンプレート(ミルキーホワイト)

 スイッチ形状については、下図のようにスイッチ自体が『く』の字になっていたハイ角と、フラット面が大きい三角形になったフルカラーの違いが見てわかると思います。
 共通点は、スイッチオンがどちらかに倒れている状態、Bスイッチ(片切スイッチ)であれば右側に倒れている状態がオンという点です。

ハイ角(手前)とフルカラー(奥)

 左右いずれかに傾けてOn/Offするスイッチとは別に、ワンプッシュで操作できるコスモシリーズが発売されたのは1985年です。記憶が曖昧ですが、フルカラースイッチの10倍くらいの費用がかかったと思います。

コスモシリーズワイド21(ネームなし・トリプルスイッチ)

【参考】Panasonic: フルカラー配線器具:プレート
【参考】Panasonic: モダンプレート1コ用(ミルキーホワイト), 1992年4月1日発売
【参考】Panasonic: モダンプレート1コ用(ホワイト), 1996年4月21日発売
【参考】Panasonic: フルカラーBLプレート1コ用(ダークベージュ), WN7101YP ※.生産終了
【参考】Panasonic: コスモシリーズ ワイド21
【参考】Panasonic: パナソニック100年




昔はネジ式

 露出スイッチは今でもネジ式です。電線の先端をペンチで丸く曲げて端子状にして、ネジで留めます。

 電線を曲げるには、ある程度の技術が必要です。活線状態で線を通し、曲げて、ネジで留めるのは高度な技術が必要です。


 照明器具側も同じ構造です。レセプタクルと呼ばれる器具は、現在でもネジ式の商品があります。


 レセプタクルはLED電球にも対応しています。弊社でも施工実績があり、問題なく使えています。


 『ハイ角』は、設置から50年以上経過した今も交換されずに使われている場面に遭遇します。どれだけ壊れにくい物を作ったのかと感心します。

 一方で、後発の商品に比べると壊れやすさもあります。


 上の画像は1974年頃に施工されたハイ角スイッチです。

 スイッチへの電線の固定はネジ留めでした。ネジはプラスではなく、マイナスです。


 ねじ式の場合、ネジが緩めば線が抜けてしまいます。活線が抜けるということは、漏電や短絡の恐れが高まるということになります。

 実際、このネジを締めるとわかりますが、しっかりと固定されているかどうか、どのくらいのトルクが適正であるかは、手先の感覚に依存し、ときどき『怪しいな』と思うことがあります。

 活線作業では特に注意が必要ですが、電線挿し込み穴に電線を入れた状態でも未固定なので、挿入したら速やかにネジを締める必要があります。しかしながら、2本挿入の際には簡単なことではないのと、挿入後にドライバーを当ててネジを回して固定しなければならないので、作業途中で抜けてしまうこともあります。活線状態の裸電線がフリーになることは、危険です。

 この金色の固定ネジ部も帯電するので、活線作業する際にはドライバーの絶縁にも配慮が必要です。電線管に触れたりすると、バチバチと火花を散らすことになり、漏電遮断器が作動したり、ドライバーが溶けてしまったりと、良くないことが起こります。




挿し込み式へ

 ハイ角からフルカラーになって大きく変わったのは、スイッチ等の配線器具と配線の接続です。

コスモ ほたる Cスイッチの背面

 接続できる電線はVVFケーブルなどのIVです。1.6mmか2.0mmに対応しています。

 被覆を剥いて銅線を出す長さは、本体に記載されています。成型前から金型で凹ませてくれているので、実物を見ればすぐにわかると思います。

コスモ ほたる Cスイッチの背面

 電線を挿入する穴は、だいたい4個あります。

 下図はCスイッチ(三路スイッチ)なので、左側2個が共通しており、左上と左下が内部でつながっています。上下どちらに挿し込んでも0番として機能します。

 右側は上が3番、下が1番なので挿入口は1個ずつです。三路配線で1番や3番が2本以上ということはないので、挿入口は1個で十分です。

コスモ ほたる Cスイッチの背面



フルカラーの価格

 昭和~平成の住宅の主流であった、当たり前に使われてきたフルカラーのスイッチの価格を調べてみました。

Panasonic フルカラースイッチ(カタログ)

 フルカラースイッチには、ノーマルタイプ(スタンダードタイプ)と『ほたるスイッチ』があります。

Panasonic フルカラースイッチ(カタログ)

 Bスイッチで比べてみると、定価で300円アップです。

Panasonic フルカラースイッチ(カタログ)

 フルカラースイッチを仕上げるには、取付枠とスイッチプレートが必要になります。
 取付枠は20枚入りで1,400円(1枚70円)、スイッチプレートは10枚入りで1,700円(1枚170円)です。
 ネーム付きほたるのBスイッチ1個を設置すると、スイッチ本体が650円、取付枠70円、スイッチプレート170円、合計890円になります。

種別片切
Bスイッチ
三路
Cスイッチ
四路
Eスイッチ
ノーマル
ネームなし
250円
WN5001
400円
WN5002
1,300円
WN5004
ノーマル
ネーム付き
350円
WN5061
500円
WN5062
1,400円
WN5064
ほたる
ネームなし
550円
WN5151
700円
WN5152
ほたる
ネーム付き
650円
WN5051
800円
WN5052
1,700円
WN5054




コスモシリーズの価格

 コスモシリーズもカタログ上の定価を調べてみました。


 ノーマルタイプのスイッチは、フルカラーと同額です。


 コスモシリーズワイド21のスイッチを仕上げるには、取付枠とハンドル、スイッチプレートが必要になります。
 取付枠は20枚入りで1,400円(1枚70円)、ハンドルは1コ用の表示付き・ネーム付きで255円、スイッチプレートは1連用が1枚170円です。
 ネーム付きほたるのBスイッチ1個を設置すると、スイッチ本体が550円、取付枠70円、ハンドルが255円、スイッチプレート(WTC7101W)170円、合計1,045円になります。

種別片切
Bスイッチ
三路
Cスイッチ
四路
Eスイッチ
ノーマル
(表示なし)
250円
WT5001
400円
WT5002
1,300円
WT50049
ほたる550円
WT50519
700円
WT50529
1,600円
WT50549
パイロット
ほたる(4A)
1,550円
WT5041
1,700円
WT5042
3,850円
WT5044




Bスイッチ vs. Cスイッチ

 ここまでにまとめたフルカラーとコスモシリーズのスイッチの価格です。

種別片切
Bスイッチ
三路
Cスイッチ
四路
Eスイッチ
フルカラー
ノーマル
ネームなし
250円400円1,300円
フルカラー
ノーマル
ネーム付き
350円500円1,400円
フルカラー
ほたる
ネームなし
550円700円
フルカラー
ほたる
ネーム付き
650円800円1,700円
コスモシリーズ
ノーマル
(表示なし)
250円400円1,300円
コスモシリーズ
ほたる
550円700円1,600円
コスモシリーズ
パイロット
ほたる(4A)
1,550円1,700円3,850円

 この内、BスイッチとCスイッチの差額を出してみました。

種別差額
(C – B)
フルカラー
ノーマル・ネームなし
150円
フルカラー
ノーマル・ネーム付き
150円
フルカラー
ほたる・ネームなし
150円
フルカラー
ほたる・ネーム付き
150円
コスモシリーズ
ノーマル(表示なし)
150円
コスモシリーズ
ほたる
150円
コスモシリーズ
パイロット・ほたる(4A)
150円

 実勢価格をネット通販で調べてみました。

 ここまでにまとめたフルカラーとコスモシリーズのスイッチの価格です。

種別片切
Bスイッチ
三路
Cスイッチ
フルカラー
ノーマル
ネームなし
WN5001
Amazon 1,756円/10個
ヨドバシ 240円/1個
楽天 2,082円/10個
WN5002
Amazon 2,000円/10個
ヨドバシ 276円/1個
楽天 2,500円/10個
フルカラー
ほたる
ネーム付き
WN5051
Amazon 553円/1個
ヨドバシ 422円/1個
楽天 5,525円/10個
WN5052
Amazon 5,980円/10個
ヨドバシ 693円/1個
楽天 6,300円/10個
コスモシリーズ
ノーマル
WT5001
Amazon 2,080円/10個
ヨドバシ 243円/1個
楽天 2,123円/10個
WT5002
Amazon 1,980円/10個
ヨドバシ 343円/1個
楽天 2,376円/10個
コスモシリーズ
ほたる
WT50519
Amazon 3,780円/10個
Amazon 482円/1個
ヨドバシ 530円/1個
楽天 4,197円/10個
WT50529
Amazon 3,742円/10個
Amazon 444円/1個
ヨドバシ 489円/1個
楽天 3,447円/10個




単品 vs. 箱買い

 コスモシリーズワイド21の『ほたる』を見ると、BスイッチよりもCスイッチの方が安くなっています。

 Bスイッチは単品で482円です。

WT50519 (Amazon)

 Cスイッチは単品で444円です。1個あたり38円安いです。定価では150円高いです。

WT50529 (Amazon)

 箱単位のBスイッチは3,780円です。ただし、出品者も配送者もAmazonではありません。

WT50519 (Amazon)

 箱単位のCスイッチは3,742円です。1個あたり3.8円安いです。

WT50529 (Amazon)

 調査中、だいたいの物はAmazonが最安値でしたが、コスモシリーズのほたるのCスイッチの箱単位商品だけは楽天市場が最安値でした。

 10個入1箱で3,447円、1個あたり345円です。Bスイッチの箱単位最安値のAmazonが3,780円でしたので、1箱あたり333円安、1個あたり33.3円安です。

WT50529 (Rakuten)



Cスイッチは構造が複雑

 内部構造の複雑さが定価に反映されているので、Eスイッチ(四路スイッチ)はBスイッチ(片切スイッチ)の3~5倍の定価設定、約1,000円高くなっています。工業製品として1,000円分の部材や工数がかかっていると言えます。

種別片切
Bスイッチ
三路
Cスイッチ
四路
Eスイッチ
ノーマル
(表示なし)
250円
WT5001
400円
WT5002
1,300円
WT50049
ほたる550円
WT50519
700円
WT50529
1,600円
WT50549

 Bスイッチ(片切スイッチ)とCスイッチ(三路スイッチ)の間には150円の差額があります。

 内部構造的に言うと、Bスイッチは下図のように片側は1軸で電極を動かします。他端は接続か非接続の2択になります。下図で言うと部材はバー1本とそれを支える軸1つ、接点1つです。

Bスイッチ『ON』
Bスイッチ『Off』

 Cスイッチは、Bスイッチの非接続(Off)状態のところに接点を設けて、どちらに傾いていても、いずれかの接点に接続する構造です。部材としてはBスイッチより接点が1つ多くなります。

Cスイッチ
Cスイッチ

 厳密に言えば、Cスイッチの接点が同時に2つ接続してしまわないように絶妙な設計が求められたり、両接点ともに同じ状態で維持できるようにしなければならないので、BスイッチよりもCスイッチの方が要求要件が多くなります。




三路スイッチとは

 Cスイッチや三路スイッチを話題にしてきましたが、そもそも三路スイッチとはどのようなものかを、改めて説明します。

 スイッチに3本線が必要なのが三路スイッチ、電気の経路が3つあるスイッチです。


 3本線の内の1本は電源か照明器具に行く線です。Cスイッチの片側では電源線、他方のスイッチでは照明器具へ行く線が敷設されます。

 残る2本線はCスイッチの両端で共通、Cスイッチ間を結ぶ渡り線です。

 下図では便宜上1番と3番という番号が付いていますが、白線と赤線など、識別できれば何でも良いです。

 両端のスイッチが同じ電線路とつながっていれば、両端で通電するので照明が点灯します。

Cスイッチ
Cスイッチ

 片側が1番で他端が3番など、互いに違う電線路につながっていると、両端に電気は流れないので、消灯状態です。

Cスイッチ
Cスイッチ

 この、渡り線のどちらかに接続する、選択スイッチがCスイッチ(三路スイッチ)です。




三路スイッチ結線図

 三路スイッチの単線結線図を載せておきます。わかりやすくするため色付けや模式化しています。

 100V電源は『B』のブレーカーから出力されます。黒線と白線の2本線で単相100Vを流します。

 白線は接地(アース)側、照明器具に直接接続します。

 黒線はスイッチを経由することで、照明への電力供給を制御します。これで点灯/消灯を制御できます。

 三路スイッチは、制御を2か所で行うための配線方式です。


 スイッチの挙動は下図のようになります。例えば、図の左が階段の1階スイッチ、右側が2階スイッチであるとします。

 両方のスイッチが白線側に傾いているとき、照明が点灯します。

三路スイッチ挙動

 電路で言うと、黄緑色で縁取ったルートが確立します。

三路スイッチ挙動

 上の状態で、1階(左側)のスイッチを操作すると、電路が絶たれるので消灯します。

三路スイッチ挙動

 上の状態で、2階(右側)のスイッチを操作すると、電路が開通するので点灯します。

三路スイッチ挙動

 電路で言うと、黄緑色で縁取ったルートが確立します。スイッチの所に来ている電線は、赤線が活線状態です。

三路スイッチ挙動

 上の状態で、1階(左側)か2階(右側)のどちらかのスイッチを操作すると、消灯します。




四路スイッチとは

 四路スイッチ、4路スイッチ、Eスイッチは、どれも同じです。

 三路スイッチを拡張する、多箇所操作を実現するのが4路スイッチです。

 配線方法は、三路スイッチの電路に割り込むような方法です。

 三路スイッチ同士を白線と赤線の渡り線で結んでいましたが、その白線と赤線を途中で切って、四路スイッチ(Eスイッチ)をつなぐことで、四路スイッチが成立します。

 四路スイッチの所の配線は、下図で言うと中央の部分、白線と赤線のペアが2組、合計4本の電線が配線されます。電路が4つで四路です。


 四路スイッチ(Eスイッチ)の内部構造は、白線と赤線を直通させるか、入替するか、その2つの状態をつくります。したがって、常にどちらかの線とつながっています。

 上図では白線-白線と赤線-赤線の組み合わせで直通でした。

 下図では白線-赤線と赤線-白線の組み合わせで交差です。


 上図の場合、左側Cスイッチが白線、右側Cスイッチも白線、中間のEスイッチが白赤クロスなので、電路は断たれて消灯状態です。


 上の状態で、中間のEスイッチを操作すると、電路がつながるので点灯します。


 電路で言うと、黄緑色で縁取ったルートが確立します。


 上の状態で、左側のCスイッチを操作すると、電路が絶たれて消灯します。


 上の状態で、中間のEスイッチを操作すると、電路がつながるので点灯します。


 電路で言うと、黄緑色で縁取ったルートが確立します。


 上の状態で、右側のCスイッチを操作すると、電路が絶たれて消灯します。


 上の状態で、中間のEスイッチを操作すると、電路がつながるので点灯します。


 電路で言うと、黄緑色で縁取ったルートが確立します。


 上の状態で、左側のCスイッチを操作すると、電路が絶たれて消灯します。


 上の状態で、中間のEスイッチを操作すると、電路がつながるので点灯します。


 電路で言うと、黄緑色で縁取ったルートが確立します。


 三路スイッチ(Cスイッチ)、四路スイッチ(Eスイッチ)のいずれを操作しても、状態が反転します。

 これが四路スイッチ、実際的に言うと三路~四路~三路スイッチです。




五路スイッチは無い

 滅多に見ないですが、年1回くらいは『5路スイッチ』を描いている図面に遭遇します。

 『Why Japanese people!』で知られるお笑い芸人の厚切りジェイソンさんが、漢数字を見て『一』『二』『三』と来たら、次の4は4本線だろ、といった突っ込みをしていました。

 設計士が期待するのは、2か所で付け消しできるスイッチを3路スイッチ、もう1カ所増やすと4路スイッチ、であれば更にもう1カ所増やすと5路スイッチだろう、と考えているのではないかと思います。

 3路スイッチの場合、階段の1階と2階の両方の名称が『3路スイッチ』ですから、『3路』が同時に2つある、という点に気づくと3→4→5→6といった増え方はしないと、思えるかもしれません。

 念のため、おさらいです。

 3路スイッチには、3本の電線が配線されます。電路が3つで3路です。

 4路スイッチには、4本の電線が配線されます。電路が4つで4路です。

 2箇所操作のスイッチは3路-3路、3箇所操作のスイッチは3路-4路-3路、多箇所操作は3路-4路-…(4路の繰り返し)…-4路-3路といった具合になります。

【参考】Public relations office, Government of Japan: 厚切りジェイソン(Atsugiri Jason):日本語を揶揄する




複雑な方が安い現象

 BスイッチよりもCスイッチの方が内部構造の複雑で製造コストが大きくなるので、Cスイッチの方が高価で当然です。

 露出スイッチの時代から長年、片切スイッチよりも三路スイッチが高価であったものが、21世紀に入って逆転現象を起こしています。

 静かですが、大きなイノベーションだと思います。




なぜ、安くなったのか?

 なぜ、複雑な方、製造原価が高い方が安くなったのかは市場原理のとおり、消費量が多いためです。

 Bスイッチよりも、Cスイッチの方が圧倒的に多く出荷されるようになれば、設計上の原価がどうであれ、例えば金型の元を取る時期が短縮される、専用の製造装置をたくさん並べられるなど、製造に係る費用を小さくすることができます。

 反対に、Bスイッチは出荷量が減ったことで、製造装置の稼働率が下がり、金型の償却まで遠ざかることになります。

 では、なぜCスイッチの出荷が増えたのかが疑問になります。

 住宅の設計が大きく変わったということはありません。利便性を考慮して寝室の入口と枕元にスイッチ設けるようなことは増えたかもしれませんが、されだけで片切スイッチより三路スイッチが増えるということは無いかなと思います。

 どこの家庭でも、片切スイッチで用が足りてしまう場所が多いと思います。

 それはオフィスや学校など、施設でも同じです。




コスモシリーズのイノベーション

 Cスイッチ(三路スイッチ)の出荷が増えた背景には、施工業者側の事情が大きく関係しています。

 そこには、コスモシリーズのワンプッシュ操作が深く関係しています。

 Cスイッチの片路を使わなければ、機能は片切スイッチです。接点に電線が接続されていなければ、接点から電気が流れていくことはないので、状況としてオフです。

Bスイッチ
Cスイッチの片路不使用

 すなわち、Cスイッチ(三路スイッチ)という製品を用いれば、配線がBスイッチ(片切スイッチ)でもCスイッチ(三路スイッチ)でも、両対応できてしまうことになります。

 従来のフルカラーでも、機能面だけで言えば兼用できたのですが、外観の問題がありました。
 Bスイッチには『こっちがオンですよ』と分かるようなポッチがあり、右に倒せばオンになるということを身体で覚えている人も無数に居たと思います。
 Cスイッチにはポッチがありません。見た目に明らかな違いがあります。Cスイッチも右側か左側かいずれかに倒れるので、外観としてゼロイチ、シロクロがありました。

 ワンプッシュ型は、外観としてはオンとかオフとかはありません。押すだけです。
 外から見たら、BスイッチかCスイッチかわかりません。機能は片切か三路か、壁内や天井裏の話であって、スイッチを眺めてもわかりません。
 CスイッチはBスイッチ兼用、住宅であればほぼCスイッチで対応できます。

 施工業者としては、在庫はCスイッチのみで良くなります。

 1軒の家を仕上げるとしても、スイッチは20~30個くらい使います。その内訳がBスイッチ何個、Cスイッチ何個と事前に数えて、必要数を持参して作業していましたが、ワンプッシュ型スイッチの場合は、スイッチの数さえわかれば、BかCかという内訳は気にしなくて良くなります。




ポケットに1つ

 筆者も作業をしていて、そのラクさ加減は実感しています。

 仕上げ作業をする際に、材料を入れたカゴを持ち歩くにしても、そこにスイッチは1種類しかありません。

 腰道具のポケットには、ビニル袋に入って保護されたCスイッチを1つ入れておけば、必要になったときに即応できます。

 以前は腰道具にスイッチを携えることは無かったですが、ワンプッシュ操作のスイッチで仕上げるときは、1個くらいは持っておくと、置場との往復の無駄な労力を割かずに済みます。




ホームセンターは定価ベース

 ホームセンターの価格設定は、定価の何掛けという感じで、まだBスイッチの方が安いです。

 この様子だと、もしかすると電材屋さんなどではCスイッチが安く、ホームセンターなど専門以外の業者さんではBスイッチが安いというダブルスタンダードのような状況が普遍化するかもしれません。




Bスイッチ消滅!?

 20年後には定価が見直されて、Bスイッチの方が高いということに違和感を覚えないかもしれません。

 ワンプッシュ型に限って言えば、Bスイッチ(片切スイッチ)は、何年後には存在しないかもしれません。

 いま廃止されても、プロである電気屋さんは困らないと思います。




筆者宅はほぼCスイッチ

 筆者宅のスイッチは最近、コスモシリーズワイド21の『ほたる』に交換しました。

 新たに買ったのはCスイッチのみです。

 会社の資産ではなく、私費工事のためネット通販で調達しています。
 Amazonの『購入回数』が表示されている下図のとおり、WT50529の箱単位商品を買いました。Amazon以外からも買い、合計40個くらい取り付けています。

WT50529 (Amazon)

 『ほぼ』というのは、数個だけCスイッチではない箇所があります。

 まず、Eスイッチ(四路スイッチ)はCスイッチでは機能しないので仕方ないです。

 『かってにスイッチ』の下流で、点灯させるかどうかを選択するためのスイッチには『ほたる』は不要なので、そこは『ほたる』にしなかったので、手元にあったノーマル(表示なし)のBスイッチを使いました。

 ポーチ灯や庭園灯など自動点滅する照明器具の系統は、基本的には常時オンの状態であり、スイッチを誤ってオフにしないように別枠にしました。このスイッチ群はパイロットランプ付きのBスイッチです。

 あとはWT50529ばかり、上記の特別なスイッチ以外は、どれを取り外してみてもWT50529です。故障時の対応も、何も考えずにWT50529を用意すれば大丈夫です。




おわりに

 今回は、電気屋さん業界でのトレンドが、市場価格に逆転現象を起こしたという話題でした。

 価格を変えるムーブメントは電気屋発ですが、その要因をつくったのはパナソニックのコスモシリーズ ワイド21です。プッシュ操作のスイッチが、BとかCとか言わなくて良い、という環境を生み出しました。

 これから電気屋さんになる人は、Bスイッチは馴染みのない製品になるかもしれない、そのような出来事の黎明期に居るような気がします。

 今回、スイッチの図画を描くのに手間がかかったので、もし引用する場合は著作権法に基づいた出典を明記して頂けるとありがたいです。

  1. 公表要件
  2. 引用要件
  3. 公正慣行要件
  4. 正当範囲要件