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急病人に遭遇 | NES’s blog

 今週は幕張メッセで開催されたヘルスケア・医療機器開発展(MEDIX)対応で千葉に出張していました。幕張周辺のホテルは高額ゆえに泊まれなかったため、2駅先の稲毛海岸駅のホテルに滞在しました。

 その千葉で急病人に遭遇しました。

 対処自体が医学的に正しいかどうかという話題ではなく、急病人に遭遇したときに声を掛けるべきかどうか、声を掛けた結果どうなるのか、といったことを考える機会になりました。




朝のバス

 稲毛海岸駅から幕張メッセまでの旅程は2つあります。

 1つは、電車(JR)で稲毛海岸駅から海浜幕張駅へ出る方法です。駅から幕張メッセはやや長めの徒歩です。運賃は167円です。

 もう1つは、稲毛海岸駅南口バス停から幕張メッセバス停まで乗り換えなしで移動する方法です。運賃は230円です。

 8時台の電車は、東京方面ということもあってギュウギュウの満員ではないものの、座れない程度の混雑です。

 8時台のバスは、駅間をつなぐバスのせいかさほど混雑はなく、2人掛けの席に2人で座れば、全員が座れる程度に席があります。
 9時台のバスは、2人掛けに1人で座れるくらい席にゆとりがあります。




乗客が倒れた

 朝9時頃に稲毛海岸駅を出発したバスの中で、乗客の1人が倒れました。

 着席していた客が、倒れる旨の言葉を発して席に寝込んだような形です。バタっと倒れた訳ではないので、外傷の心配はありませんでした。

 事件は最後部座席、5人掛けの席で起きたので寝転がるには十分なスペースがありました。

 筆者は、その1つ前の席に座っていたので、倒れたことにはすぐに気づきました。




『どうしました?』→『あなた医者ですか?』

 急病人が倒れた時、同じ並びには1人の女性客が居ました。

 倒れるとすぐに立ち上がり、離席しました。

 入れ替わるように筆者が『どうしましたか?』と声を掛けて急病人に近づいたとき、

『あなた医者ですか?』

と、離席した女性客に声を掛けられました。




怪しまれたかもしれない

 筆者は男性、急病人さんは女性でしたので、何か変なことをする人ではないかと怪しまれたのかもしれません。

『あなた医者ですか?』

の問いに対しては、

『医者ではありませんが、医療従事者です』

と答えました。

 すると、黙って女性客は立ち去り、やがて降車しました。

 現役ではないことや、何の免許を持っているかという説明はしませんでしたが、細かく問われると、救護に取り掛かるのが遅れてしまうので、質問されなくて良かったです。




細かく聞かれたことも

 以前、福井駅の前で高齢者が倒れた時、たまたまベンチでウェブ会議に参加していたので一部始終を見ていました。

 会議そっちのけで近づいて行って様子を確認、救護を始めた時でした。

『あなたは医者ですか?』

という問いかけがありました。

『医者ではありませんが、医療従事者です』

と回答したところ、

『私は高齢者を見る専門家です。どいてください』

と言われ、救護を任せることにしました。

 ところが、対応が医療従事者っぽくありません。ある女性が

『救急車呼びますか?お医者さんですか?』

と救護している自称専門家の人に問うたところ

『介護施設で働いているので、高齢者はいつも見ている』

ということでした。女性が私を指して

『この人にお願いした方が良いのではないですか』

と言い出したのですが

『私は専門家です』

と介護施設職員さんは譲らず、よくわからない処置を続けました。

 このようなときに、強気に出られる介護職員さんの気力はすごいですが、急病人の救護は、経験のある人に任せた方が良いと思います。




バス内で何があったか

 急病人さんに声を掛けたところ、意識はありましたが、目を開けようとはしませんでした。顔面蒼白、平たく言うと『貧血』『低血圧』のような感じでした。

 話しかけながら橈骨動脈を押さえましたが、触感は微弱でした。わかるような、わからないような。
 筆者の手技が下手なので、脈を触れられないのかもしれないですが、とりあえず橈骨動脈に指を当てたまま次の行動に移りました。

 『よくあることですか?』と聴くと、『初めてではないが、よくあることではない』と活舌は普通、呂律が回らないような様子はなかったので次の行動に移りました。

 バスの座席は50cmくらいの高さにあるので、『座席に足を上げましょう』と声をかけて、足を頭より高い位置になるように上げました。

 この状態で様子を見ていたところ、橈骨動脈がわかりやすく脈打つ感じがとれたので、おそらく血圧が平常に戻りつつあるものと思われました。

 並行して、急病人さんは目を開けて会話に応じられるようになりました。

 降車予定を聞くと『海浜幕張駅』ということで、筆者が降車予定のバス停より2つ手前ですが、そこから幕張メッセまでの道はわかりやすそうなので『一緒に降りましょう』と返しました。


 バスが進むにつれ、急病人さんの状態が改善していく様子がわかったので、降りる準備を始めました。
 2つ前のひび野一丁目バス停あたりで急病人さんを仰臥位のまま足を地に下ろして様子を見はじめ、1つ前のイオン海浜幕張店バス停あたりで座位になってもらいました。

 ここまで、めまいなどは無い様子で、普段の顔は知りませんが表情は良くなっていと思います。

 いよいよ海浜幕張駅に到着、ゆっくりですが、しっかりとした足取りで降車できました。




会社の前でお別れ

 急病人さんの職場は、バス停から幕張メッセへ行く道程にあるということで、職場近くまで一緒に歩いて行きました。

 特に問題は無さそうで、雑談にも応じていたので頭もしっかりと回っていたのではないかと思います。

 雑談は『暑いですね』『人が多いですね』といった当たりさわりのないものでした。

 一方で、急病人さんからは、同僚に注意喚起するといった前向きな話題が出ていたので、もう心配には及ばないなと思いました。




バス運転手は….

 急病人発生で少しザワついた車内ですが、バス運転手からは何の声かけもありませんでした。

 筆者は後部の通路にしゃがんだ状態でした。バスが動いている間、10分程度はそこにしゃがんでいましたが、注意されることもなく、大丈夫かと声をかけられることもありませんでした。

 そして降車のときも、特に何も言われることはありませんでした。

 おそらく、気づかなかったのであろうと思いますが、そうなると走行中のバス車内を確認していないことになりそうなので、深く考えないことが良さそうです。




正解は?

 困っている人が居たら声を掛ける、手を貸すということは、悪いことではないと思います。

 ただし、人助けのつもりが、それが善行なのかわからない社会になっています。

 最近では、名古屋市で教師が児童の写真をシェアしていたことが話題となりましたが、聖職者であっても、その立場を利用して悪行を働くので、良かれと思った行為でも、うがった見方をされる恐れがあります。

 こうした記事を書くことも『素人のクセに』『もうプロではないだろう』『そもそも救命とかわかってんのか』などとお叱りを受けることもあるので、良かれと思った行為も、行為者が傷つくことがあります。

 今回は声をかけ、簡単な対処をしたことで卒倒ではないと判断できましたが、脳卒中などであれば、声を掛けて意識レベルを確認しなければ何もわからないままになります。

 座ったままとはいえ、倒れ込んだ人を放置するほど他人に無関心な社会ではないと思いますので、声を掛けて、急病人本人が拒否しない範囲であれば、やっても良い行為であったと振り返れれば良いなと思っています。




おわりに

 今回は、たまたま乗った出張先の路線バスで、たまたま後ろの席で倒れる人が居るという場面に遭遇しました。

 声をかけ、足を高くあげるようにといった医師免許が無くてもできる簡単な行為で、事なきを得ることができました。

 何もしなくても元気に出勤なさったかもしれませんが、声を掛けるということは、人間社会にとって必要なコミュニケーションではないかと考えることができました。

 もし、バスの中で同じような場面に遭遇する人が居たら、参考にしていただければと思います。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。