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減災に向けた軽トラックの調達検討 | NES株式会社

 当社の中核事業にBCP(事業継続計画)に関するコンサルティング業務があります。

 BCP導入当初は『いま、この瞬間に災害が起きても対処できる計画』を念頭に置きますが、その後のBCP(事業継続マネジメント)では備蓄の見直しや従業員の研修などを重ねていきます。




軽トラック

 軽トラックとはトラック型の軽自動車で『軽トラ』(けいとら)と呼ばれているものです。

 一般的に座席が2つ(ツーシーター)で、車室部分はさほど広くありません。

 11年連続販売台数日本一というダイハツのHIJETは荷台長1,940mm、荷台幅1,410mmです。畳がスッポリと入るサイズです。

 車両重量は800kg程です。軽乗用車でよく売れているN-BOXが900~1,000kgなので、大人2~3人分くらい軽いです。

軽乗用車

[Link] ダイハツ: ハイゼットトラック

[Link] ホンダ: N-BOX




減災と軽トラ

 今回、減災をテーマに軽トラックの調達を検討した理由はいくつかあります。

 非常事態に陥ったとき、物資の枯渇が発生します。

 2018年に大規模停電が発生した際には、概ね30分圏内の商店はほとんど臨時休業となりました。
 当時、勘を頼りにバイクで走行し開店中のお店を見つけて物資調達できましたが、ある程度の備えがあったことや、対象人数が少なかったのでバイクに積める量で事足りました。

 職場や地域コミュニティを想定すると食料だけでも段ボール数箱になります。毛布など軽い物でも容積は大きくなりますので運搬に課題が生じます。

 また地震や台風のあとはゴミ処理も問題になります。大量のごみを処分場まで運ぶ必要がありますが、浸水した場合は泥だらけの物を乗用車の車内に積むのは気が引けます。

 災害自体を止めることはできませんが、発災後の被害を少しでも小さくするために軽トラの導入を検討しました。




合法的ではないが、人も運べる

 1度に何人もを寝かせたまま運びたい、大地震ではそうした状況が起こり得ます。

 阪神淡路大震災で大きな被害を受けた神戸市の病院には当時、リアカーで人を運んでくる光景が見られたそうです。当時でもリアカーは少なくなっていたと思いますが、今はほとんど見かけなくなっています。

 大震災では半径20kmくらいは被災し大混乱、ある程度の遠方まで患者を運ばなければ助からない事も考えられるので、最悪のケースとして人も運べるという事に価値があると考えます。

 また、酸素ボンベや人工呼吸器を搭載した車椅子は乗用車に積載しようとしてもたくさんは積めません。軽トラなら、チューブを患者につないだまま人と車椅子を荷台に積むこともできます。しかも複数積載できると思いますので、緊急避難的な考え方として軽トラの活路があるように思います。




GOA拡大

 私たちは『GOA』を推進しています。

 GOAとはgoal-oriented action、目標志向型の行動です。

 極端に言えば、目標のためには手段を選ばないという事です。

 実際には『良心と秩序に基づくGOA』として、どこまでが許容される行動であるかを事前に議論し、緩い基準を設けておきます。

 あまり強いルールで縛ると救い得る生命を落とす可能性もあるので、縛り過ぎない事が大事です。

 軽トラで何を運ぶことができるのか、軽トラをどのようなシーンで活用するのか、当社ではGOAを踏まえた議論が始まっています。




実勢価格は50~100万円

 軽トラックの車両本体価格は100万円程です。

 値引き交渉はできるのだと思います。オプションの有無でも金額が増減します。スマホ全盛時代なのでナビは要らなそうですがドライブレコーダーは欲しいところです。寒冷地仕様が必要な地域の方々も居ると思います。

 そこに軽自動車税17,300円、自動車重量税6,600円、自賠責保険料20,310円の44,210円の値引き不可な諸経費がかかります。

 新車としてディーラーさんで支払う額は100~120万円程度になると見られます。


 視点を中古車に向けると、年式の新しい物では新車並みの価格で販売されていました。

 10年落ちで10万km未満に絞ると50万円以下でも販売がありました。ただし、殆どが5速マニュアル車です。軽トラの中古車の半数以上がマニュアル車なので仕方ありません。

 走行距離を5万km程度に絞ると、平均して50万円という価格帯でした。

[Link] グーネット中古車: 軽トラック・軽バン




諸費用・維持費

 車の維持費として車検と保険があります。

 自動車保険をシミュレーションしてみました。10年前の軽トラで30歳以上ゴールド免許、本人のみ運転で試算しました。
 業務用とすると年間5万円程、自家用で年間3千km以下なら3万円程でした。災害備蓄としての軽トラであれば走行距離はそれほど多くないでしょう。

 車検については自家用軽トラとして自賠責などの法定費用が4万円程、ここに車検費用が加わって総額10万円程です。

 自動車税は車検が無い年にもかかります。軽自動車(4輪)の自家用貨物は5千円です。

 駐車場を借りる場合は月5千円~2万円くらいですが、減災のための車両を駐車場代を払ってまでという事は少ないかなと思います。




総じて月1万円~

 軽トラを買って10年で廃車にすると仮定します。

 50万円の中古車、2・4・6・8年目に車検を受けて4回で40万円、損害保険が10年で30万円とすると、合計120万円です。

 年12万円、月1万円という計算になります。実にキレイな数字になりましたが、偶然です。

 これが新車だと車両が50万円upなので170万円、120月で除すると14,166円です。

 もし事故などを起こさずに中古で売ると負担額を軽減できます。8年目の車検で手放せば2・4・6の3回車検で30万円、保険は8年分で24万円、中古買取が30万円とすると差引支出124万円となり、96月で除して12,916円となります。
 もしかすると10年目で無価値になる前に、8年で売ってしまった方が総額として安く済むかもしれません。




乗りつぶすならリースより買取(?)

 軽トラのリース費用を調べてみると新車9年リースで月々15,620円でした。下図はボーナス加算ありの場合です。

 走行できる状態を借りる(リース)ので自動車保険は別途かかります。前述の例ですと月3千円程です。

 10年乗って下取りがゼロ円だとしても、買取なら保険込で14,166円という試算でした。車検代が多少高くなったとしても十分に負担額は安いです。

 8年で乗り換えて行けば、リースで9年よりも高頻度で乗換ができて、しかも月額平均の負担額が5千円近く安くなります。




発電機を運べる

 当社では停電対策の研究を行っています。

 研究するために、機材を医療機関等へ持ち込む事もありますが、発電機となるとなかなか運べません。

 某倉庫型店舗で見かけた発電機の重量は92kg、しかもガソリンを使うという事で燃料漏れした際の影響は多大です。

 軽トラなら、そのあたりの事を気にしないで済むのでアリなのかなと思いました。

 ただし、いま当社が推しているのはLPガス(プロパンガス)発電機です。燃料の保管がラクで、災害時にも比較的調達しやすい燃料だからです。




N-BOXなら月2万円

 軽トラではなく軽ワゴンのシミュレーションもしてみます。

 ミリ波レーダーなどのセンシング技術による衝突軽減ブレーキ搭載、アイドリングストップなどのエコカー減税対象の装備を実装できる軽自動車です。

 諸費用込みで160万円くらいのようです。上を見ればオプションもたくさんあるのでキリがありません。

 自家用情報軽四輪の自動車税は7,200円、損害賠償保険(二に保険)は年3万円、車検は10万円とします。

 10年間で総費用240万円とすると120月で2万円/月となります。

 人気の軽乗用車なので、少し高めのグレード、自動スライドドアなどが付いたタイプを買って中古で売る事を想定しても良いと思います。
 8年前の車種でも走行距離が短ければ半値の80万円くらいで売られていますので、買取価格もそれなりに高いと思います。

 




車中泊や長距離ドライブならワゴン型

 『軽キャン』などと言われ軽ワゴンで車中泊する人が増えています。

 軽ワゴンなら確かに寝れます。デスクワークをするならハイエースのようなワゴン車が欲しいですが、ある程度の事は軽ワゴンでもできます。

 長距離ドライブをする際の仮眠にも軽トラより快適です。

 ある程度のグレードの軽ワゴンならドライブアシスト機能もあるので、長距離の運転もラクになります。

 ただし本体価格が倍近くになるので、月々の負担が大きくなります。備蓄用や減災用というレベルではなく、普段使いもしたくなるレベルなので、それであれば自家用車の見直しをした方が良いかもしれません。




非常事態を再考

 今回は物資調達や人の運搬など、非常時に発生する業務を支援する視点から軽トラックを検討しました。

 普段は必要ないが、非常時にのみ使用するという軽トラに月1万円以上も負担するのは少々重いと思います。

 では、常用と非常用を兼用するとどうなるか。そこを考えると軽トラではなく軽ワゴンという方向に傾いていきました。元の考えに立ち戻ると、ベッドや車いすを載せるといったこと、泥だらけのゴミを運搬すること等を考えてみるとN-BOXのような車は勿体ないなとも思います。

 10年に1度も遭遇しない非常事態だとすれば、10年間乗り続けても1度も汚れた物を載せないかもしれません。

 まずは非常時に何をしたいのかをしっかりと考えて、それに合う備蓄としての車両を再検討したいと思います。

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臨床工学部門の基盤構築と業務拡大 | blog

 かつて臨床工学技士は看護部や手術部、麻酔科などの配下で従業する人も少なくありませんでした。

 1987に免許が誕生し、1988年から交付が始まって養成校ができ、1990年頃からやっと新卒者が出始めました。

 移行期間の現任者措置で免許を取得した人は部門を持つことがあったとしても、新卒で免許取得後間もない人が部門を持つという事は考えづらいため、黎明期は他職種の下で働くという事が普遍的でした。

 養成校1期生も30年超のベテラン、年齢的にも50代を迎えマネジャーとしての適齢期を迎えていると思います。

 部下も増え、業務も多様化し、部門としての資質や能力が問われているのではないかと考えます。




基盤なくして発展なし

 何事にも共通しますが、基盤がしっかりしていなければ、いつかは崩れるものです。

 医療従事者はヒトの生命や健康を預かる身であり、外見を装うだけでは安全な医療は提供できません。

 では、臨床工学部門の基盤とは何でしょうか。

 人材、資金、技術、信頼、枚挙にいとまがありません。

 これから部門を発展させていこうという場合、基盤の再構築を検討するところから始めてはいかがでしょうか。







筆者の実務経験

 筆者は総合病院で技士長をしていました。

 院内昇進ではなく、外部から雇われた中途採用の技士長です。

 与えられた仕事は、部門の立て直しです。目下の急務は離職者を減らすこと、そして求職者を集めることでした。

 立て直すと聞くと、マイナスをゼロに戻す作業のようにも思えますが、私の解釈はゼロを大きく超えてプラス、しかも他にはない臨床工学部門にしようと考えました。

 魅力のある職場であれば働き続けたいと思えますし、転職して来てくれる人も多くなると思います。応募者が多ければ当然ながら競争が生まれ、より良い人材を雇う事ができます。

 そこで、部門の中期計画を掲げました。




全員と面談、属性を分類

 ほぼ全員が初対面で『オマエは誰だ』という目で技士長を見ていますので、まずは一人ずつ丁寧に面談をしていきました。

 どうして技士になったのか、今は何が楽しく、何が不満なのか、将来はどうしたいのか、といった個人の考えを聞いて行きました。

 そこでわかった事が、将来に対するプランが無い事です。もう1つわかった事は、将来のプランを持っている人には仕事が集まりすぎてオーバーワークになっている事です。

 将来に対する絵が描けていないのは、技士人生のスタートに問題があったようにも思えました。そして、現状に満足でも不満でもないという感じの人が多い事に気づきました。

 今の仕事の範囲から飛び出さず、自分のやり方は変えず、出世など望まないので自分の領域も侵さないで欲しいという人が何人も居ました。
 これは自己主張ですので、尊重してあげたいと思いましたが、一方で組織としてルールには従ってもらう必要があるので、自己流はやめてもらう必要がありました。

 新しい事をしたい、もっと給与が欲しいといった欲望を持つ若者も居ましたが、自ら天井を決めてしまっている感がありました。先輩方を追い越して、まったくの異次元に行ってしまおうという程の考えが無かったので、自由な発想を持てるように導きました。







根本原因の1つは業務レベル

 意欲を感じられない、目標が低いといった症状の原因の1つに業務レベルの問題があると思いました。

 単に透析を回せばよい、できる範囲の治療だけやれば良いという風潮が根付いてしまっていて『何がベストか』という議論に至らない感じがありました。

 その結果だと思いますが、治療について真剣に議論してくれる医師や看護師は居ないという事を感じました。

 技士がカルテを読めないという事も問題でした。透析記録という1枚の紙を見て、指示されたダイアライザと抗凝固剤を用意して、決まった時間、決められた設定で透析をすれば終わりという流れ作業のような臨床がよく目に入りました。

 急性期の患者に対し、医師と看護師が意見をぶつけ合っている中に、臨床工学技士が入って行こうともしていませんでした。

 技士全体の底上げが必要で、それができなければ業務拡大どころか、評価(賃金)を下げられてしまう可能性すらありました。




マネジャー

 P.F.ドラッカーのエッセンシャル版『マネジメント』に『マネジャーとは何か』(P125)という項があります。

 かつては『人の仕事に責任を持つ者』と定義されたマネジャーであるが、今日では『組織の成果に責任を持つ者』であると述べられています。貢献する責任のある者がマネジャーです。

 そして『専門家にはマネジャーが必要である』とも述べられています。専門家のアウトプットが、他の者のインプットにならない限り活用されないため、臨床工学技士という専門家にも他職種との間をつなぐマネジャーが必要になります。

 臨床工学部門のマネジャーが、臨床工学の専門的な知識や技術で優れている必要はなく、すなわち経験年数や症例数などに依存する必要はありません。年齢も不問です。病院という組織に対し診療や経営など何らかの成果に責任を持ってマネジメントできる事が求められます。スタープレイヤーが居なくても、いま居るメンバーでポテンシャルを引出し、組織や他職種の期待に応える事が臨床工学部門に求められたマネジメントだと考えます。

ピーター・F・ドラッカー: マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

岩崎夏海: もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら







人を活かすマネジメント

 マネジャーはマネジメントをするのが仕事であって、1つ1つを教えるコーチではありません。

 筆者は免許取得後8年でマネジャー(技士長)となったので、現場経験で言えば上はいくらでも居ます。経験のない知識は広く浅く持っていたと思います。

 マネジャーの仕事は、1人1人の能力を知り、ときには潜在する力を引出す手伝いをして、最終的にはチームの総合力を高めることが求められます。

 そして、チームの総合力を持って組織に貢献する事が目標となります。




人を育てる

 部門の全員に共通して行う教育(指導)と、個人の希望や才能に合わせて行うものがあります。

 人材育成には目標が必要です。新人教育であれば『ここに到達すれば独り立ち』といった個人目標があります。

 キャリアラダーに沿って人を育てて人材の層を厚くする事は、指導側にとっては単なる業務になっている事もありますが、ここにも中長期的な目標を掲げる事が重要だと考えます。

 若手が早く育てばベテランと並ぶ、ベテランとしての優位性を損なうので育たない方が良いと考えてしまう人も居るかもしれないことにマネジャーは気づき、配慮する必要があります。







中長期目標

 人材育成は一朝一夕ではありません。

 特に臨床工学技士の場合は誕生からの年月が浅く、自力で現在の地位を確立してきた人が多いためその苦労を簡単には伝授したくないという守りの姿勢をとる人も居ます。

 既に何十年も新しい事をして、成長してきたのでこれ以上を望まない人も居ます。

 その背景をチーム全体で理解した上での中長期的な目標が必要になると考えます。

 いま20代のスタッフが30歳以上になるまで8年前後、その間に若手を育てて優れた30代を揃えるという事は、教育目標としては立派ですが、チーム全体の付加価値と直結しない部分があります。

 若手が育った未来に、中堅やベテランにはどのような特典があり、チームはどう変化するのかを掲げるのが中長期目標です。




希望者全員をマネジャーに

 若手がしっかりと育ち、優秀な中堅が増えれば、それまでベテランが担っていた教育を含めた業務を中堅に移行する事ができます。

 ベテランには時間的・精神的なゆとりが生まれるので『次』を考える余裕も生まれます。

 筆者が実践したマネジメントは、希望者全員がマネジャーになるためのキャリアラダーを持ち、登っていく事です。

 経営層の方針転換により、年齢や臨床経験年数による昇進は無くなった組織ゆえに、誰もが昇進のチャンスを得ていました。

 マネジャーになることを望まないスタッフには、スペシャリストとしての腕を磨いてもらうようにしました。

 院内に用意できるポストには限りがあるため、転職も視野に入れたマネジメントを実施していました。
 元々、地方から就職に来ていた若手が何人も居たので『いつかは地元に帰る?』という確認をしていました。帰郷希望者には特にスペシャリストやマネジャーというキーワードを意識づけるよう努めました。

 マネジメントできる人員が増える事で組織の基盤は強化されます。マネジャー自身の仕事も軽減され、より高みを見るマネジメントができるようになります。







目標の共有

 下図は筆者がマネジャーであったときに内外に向けて発した文書の一部です。マネジャーとして、専門家である臨床工学技士をどう育成し、どう活用するかを示しています。

 この文書は院内で共有されることで、組織における臨床工学部門の役割や責任を明確化しています。

 筆者は剛腕や敏腕ではないので1年で最強チームを作る事はできませんが、まずは5年後の成長を目指しました。

 対外的にも発信したことで、就職希望者が一気に増えました。

臨床工学技士は『医療機器』『工学』をキーワードに院内のあちらこちらで業務が発生します。例えば集中治療領域で血液浄化はわかるが人工呼吸器はわからないという臨床工学技士はニーズが無くなることはお察し頂けると思います。
当部では『臨床工学』を全般的に、かつ他職種に比して専門的に取り組むことができる臨床工学技士を養成しジェネラリストとして従業できるよう人勢育成に力を入れています。概ね5年目までに既存業務を自立して行い得る人材に育て、同時に周辺知識を身につけ医師や看護師らに助言ができる基盤を整えます。5年を超える頃には医師らから意見を求められる存在となり、次第に任せられる存在へと成長していきます。
業務を全般的にできるだけの技士では汎用的で終わってしまうため、各個人には専門を持ってもらいます。透析膜でもよし、ペースメーカーのデバイスでもよし、他人に負けない知識や技術を身につけ『スペシャリスト』へと成長します。10年目までにはジェネラリストであり、スペシャリストである人材になることを目指します。
臨床家として一人前になることは当然ですが、人員配置や時間配分などの日々の管理、機器更新計画や教育計画など中長期的な計画を立てられなければ機械のように従事する専門職として扱われてしまいます。そこで当部ではあらゆる場面でマネジメントを意識し、10年目を過ぎればマネージャーになれるスキルを身に付けていられるよう教育を進めています。

先輩から後輩へと受け継ぐ体制のみならず、全く新しい分野への参入に積極的に取り組みます。
2009年には医療機器安全管理体制を新規に構築しました。現在ペースメーカー業務に従事していますが臨床工学技士の関わる意義を再認識した上でペースメーカー業務の確立を進めています。
成長と増員を続けるための基盤として業務拡大が不可欠であり、いくつかの領域について検討をはじめています。
当院のある地域は団塊世代が多く住むベッドタウンとして発展した経緯があり、近年は脳神経領域の患者増がみられますが全国的に専門医不足の状態であり、臨床工学技士が外科手術や血管内治療に参加する意義が高いと考えています。
腎不全治療を含め再生医療は今後の成長分野でありますが、医師や看護師も含め経験者はほとんど居らず人材不足による普及の遅れが懸念されます。当部では再生医療経験者を有しており、他院には無い戦略的な業務確立ができると考えています。
医療機器の使用には電力、水、医療ガス、通信などのインフラが欠かせず、臨床工学技士がマネジメントに介入する必要性は高いと考えています。停電や断水による診療機能の低下を最小限に食い止め、機能が低下したインフラの中で最適な医療を提供できるよう事業継続計画の策定などを進める考えです。



ナレッジマネジメント

 医療従事者の多くは専門課程を卒業した上で国家試験にも合格している人材であるがゆえに『知の底』が高いです。最低限とされる医学系の知識が非常に高いレベルにあると考えられます。

 医学は日進月歩、わずか数年で常識が変わってしまう事もあるため生涯を通じて学ぶ必要があり、個人レベルに頼ることなくチーム全体が知の底を上げていく必要があります。

 誰が何を知っておくべきなのか、どのように教育すれば効率よく確実に身に付くのかをマネジャーは考えなければなりません。







成長戦略の必要性

 新卒1年目の給料と、20年目の給料が同額では働き甲斐や生き甲斐を感じない人が多いと思います。

 しかしながら若手とベテランが同じ仕事しかしていなければ、単に年齢が高いからと言って多くの給料を支払う事は不合理です。

 1人でできる仕事には限界がありますが、2人居れば1人の3倍の仕事ができるという説もあります。2人目をいかにして育てるかによって、単純に言えば1人のときより5割も多く稼げる事になります。

 組織が成長するためには人材育成か設備投資がカギとなります。社会情勢の変化なども無視できませんが、社会を変えられるほどの影響力が無ければ、内から攻めざるを得ません。

 組織を成長に導くための戦略が不可欠となります。




任期付常勤

 単純作業で一定の研修を受ければ誰でも出来てしまう仕事は、だいたい単価も固定されてしまいます。

 スーパーのレジ打ちは高度経済成長の頃であれば値段を覚えていて10キー操作も早い人が高い時給を貰えるというパートタイマーさんの職人技が光る仕事でしたが、現在ではバーコード管理が普遍的、無人レジやレジ無し店舗も登場し現場の時給格差は縮小しました。

 臨床工学技士業務においても、透析液を準備し、透析装置がいつも通り動いている事を確認し、型通りに透析を施行するだけのルーチンワークにフォーカスすれば、3年目と30年目の差は少ないと考えられます。

 患者急変や機械トラブルなどに対応できる専門人材は各勤務帯に1人居れば良いとすれば、そのポストは看護師と臨床工学技士で競い合う事になるかもしれません。

 それ以外のルーチンワークは年齢性差なく『1勤務6時間1万円』のように固定されてしまう可能性があることに気づくべきだと、筆者はマネジャーの立場からスタッフには言っていました。労働基準法では6時間を超えると45分の休憩を与える義務が生じるので、その休憩中も拘束は生じていますし休憩室のエアコンなどもタダではありません。

 臨床工学技士に余剰人材が増えると、任期付常勤というポストが増えるのではないかと考えています。常勤ですので勤務表どおりに出勤して仕事をする義務(債務)が発生します。任期付きですので任期満了で契約解除(退職)となります。

 キビキビと動ける20代と、疲れていそうな中高年が面接に来た時に、どちらが雇われやすいかを考える必要があります。

厚生労働省: 労働時間・休憩・休日関係







成長戦略と業務拡大

 基盤構築にはマネジメントが必要であるという私見を長々と書いてきましたが、その基盤を使って発展していかなければならない事は前述の個人の問題にも関わります。

 医療費が逼迫する中で、単価(診療報酬)を引き上げる事は非現実的です。

 医療機関が現業で得ている医業収入の中で業務を拡大するか、新たな収入源となる仕事を確立するか、いずれにしても経営への影響を考慮した戦略が必要になります。

 残念ながら、真面目に臨床業務をしていても成長できるとは言い難いです。戦略と戦術が噛み合わなければ、どんなに優れた戦術を持っていても宝の持ち腐れになってしまいます。

 過去を振り返れば、心臓血管カテーテル業務を臨床工学業務とした先人たちは優れた戦略と戦術を持っていたのだろうと思います。ポリグラフの操作だけであれば臨床検査技師、放射線を使う装置という面では診療放射線技師、診療の補助という面では看護師が居ます。心臓血管カテーテルが検査から治療へと技術が進歩するにつれ、検査中に治療へとシフトしても対応できる事が臨床工学技士の強みであったのではないかと推察します。

 検査と治療のシームレス化は内視鏡にも当てはまります。現在では多くの内視鏡室で臨床工学技士の姿を見ますが、あの業務も何人かの臨床工学技士が熱心に院内業務を確立し、学会にも積極的に参加して臨床工学技士のポテンシャルを周知した結果であると考えます。

 単に言われたからそこに居るというだけでは、業務負荷は増えますが存在意義や価値を高めることにはつながりにくいです。例えば『臨床工学技士が居ないとこの業務はできない』と医師が言うようになればどのようなメリット/デメリットがあるのかを精査し、そう言われるようになるには何が必要か戦術を練り、その戦術に必要な教育を実施していく事が重要になります。




基盤の上のタスク・シフト

 『タスク・シフト』や『タスク・シェア』などのキーワードで医師の業務負荷軽減が広がっています。

 単にテクニシャンとして医師と同じ作業できるというだけでは、その作業だけ医師から臨床工学技士に移行されます。

 医師には、その作業をするという判断(指示)をするための知識が求められ、その作業の背景にあるエビデンスや、トラブル発生時の対処法、対処の指示(処方)も求められます。

 臨床工学技士が指示(処方)はできないので、その部分は医師に任せるとしても、その作業に関わるエビデンスやトラブルシューティングについては、誰もが当然のごとく持っておくべきですし、それを習得している事を証明する必要があると考えます。

 テクニシャンではなくセラピストとしてその行為に関わる事で臨床での存在意義は高まり、同時に責任範囲も大きくなります。

 COVID-19のワクチン接種の際に、医師不足だからと看護師を打ち手にすれば良いと安易に発言した事が波紋を呼びました。看護協会などは、医師と同じ行為をするのであれば、医師と同じ対価を支払うべきと主張したとのニュースが流れていました。看護師が注射を打つ技術を持っていて、しかも時給が医師より安いからと見るのは間違いです。

 医師とそれ以外の医療職では免許取得までの道のりも、その後の仕事にも大きな開きがあるので単純に『同一労働同一賃金』という世界ではありません。この知的な格差や、責任の重さなどを考慮した上でも妥当な対価を貰えるのか、臨床工学技士も熟慮する必要があると思います。

 せっかく仕事を任せて頂けるチャンスですが、将来を見据えた戦略なくして業務拡大はあり得ませんので、未来の技士に要らぬツケが回らない事を期待します。

厚生労働省: 医師の働き方改革の推進に関する検討会

厚生労働省: 医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリング第1回, 6.日本臨床工学技士会

厚生労働省: 医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会第3回, 参考資料1-3 臨床工学技士によるタスク・シフト/タスク・シェア調査







業務拡大の着眼点

 筆者が取り組んだ業務拡大は、他職種の仕事を奪うという考えではなく、以下の4つの考えに基づいて仕事を探しました。

  1. 誰よりも臨床工学技士が適任である仕事をする
  2. 誰もやっていない担当者不在の仕事をする
  3. 誰もやっていない前人未踏の仕事をする
  4. 誰もやりたがらない仕事をする

 1番の適任であるかどうかは客観性も必要ですので、他職種との会議などで調整を進めていきます。医療機関全体で見ての成果を基準に考えますので、技士から他職種に渡すべき仕事もあると考えられます。

 筆者は再生医療に専門的に関わった事があります。10年以上前ですが、再生医療の研究者である医師に話を伺うと、臨床に実装するためには手が足りないとおっしゃっていました。細胞を抽出し、増やし、投与する過程においては技術提供する人材やデバイスが必要であるとの事でした。その方法としてセルセーバーのような遠心分離法、血液浄化のような膜分離法が有力であるとの話でしたが、そうした技術開発の場に臨床工学技士は不在であり、臨床検査技師や薬剤師が多いのでクリーンベンチでのピペット操作が優位になるだろうというお話もよく耳にしました。もし遠心分離や膜分離が主流となれば、普段から扱っている臨床工学技士が誰よりも適任になると思われますので、実は基礎研究の段階から職能団体等が関わる必要性があると考えられます。

 2番と3番は似ていますが、少し違いがあります。

 例えば医療廃棄物の処理は法人が廃棄業者と契約、院内の廃棄ルールは策定されていても廃物に関する課題解決については『気づいた人がする』という程度である事が多いと思います。この、担当者不在の仕事を見つけて、臨床工学技士が適任者であるかどうか、その仕事を担う事で法人への寄与はあるのか否かを熟考します。

 3番の『前人未踏』は大げさな表現ですが、自施設で誰もしていない事、まだ始まっていない事を始めるだけで十分です。近年ですと物品搬送ロボやAIなどの導入に際し、院内ルール策定やサイバーセキュリティなどの管理の担い手が居ないことが障壁になっている感もありますので、そうした未導入の先端技術を問い入れていく事も重要な業務拡大であると考えます。

 4番の仕事は、比較的簡単に取れる仕事です。スキルやマンパワーとのバランスが必要ですので何でも取れば良いというものではありません。

 例えば車椅子の空気圧管理を考えてみます。面倒ですし誰からも感謝されなさそうなので、誰もやりたかがらないかもしれません。もし、COVID-19の院内感染が車椅子の車輪経由であったとき、車輪に詳しい人が居れば心強いと思います。色々な視点から戦略的に業務を拡大していくことが必要だと思います。




在宅医療

 在宅医療が増えると言われ、がん患者らの在宅シフトがじわじわと進んでいた感じがありましたが、COVID-19によりその関心は高まりました。

 関心高とは裏腹に、現場の担い手不足や、インフラの発達途上などが壁となり患者激増とまではいきませんでした。

 在宅医療は主治医(処方医)と訪問看護、居宅介護サービスの三者で成り立っています。

 在宅医療においては課題が多く、特に医療面では訪問する看護師へ依存性は高まっています。血圧測定や静脈穿刺などの基本スキルだけでなく、多種多様なME機器への対応も求められています。

 介護サービスは身の回りの世話をするにとどまるので、看護師業務との間に開きがあります。医療職であれば看護師以外でもできる仕事が潜在的にあり、それらの担い手が現れることも期待されています。







統合医工学

 小規模な医療機関では常勤の臨床工学技士を必要としていないが、業務が無い訳ではないという場合もあります。在宅医療でも同様の事が言えます。

 免許された範囲を超える事はできませんが、医工学全般において診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士がオーバーラップする部分があり、それらを上手く振り分ける事で合理化策を提案する事ができると考えます。

 臨床工学部門が臨床工学技士だけで構成される必要は無く、 診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士の3職種が『統合医工学センター』のような形で互いに協力し合う部門へと再編されていく事で、医療機関全体での合理化に寄与できると考えます。

 朝の透析室のプライミングには3職種が横並び、外来が開く時間帯には採血室に応援人材を充て、透析室の患者入替ピークには再び透析室に人員を集中するといった事ができます。

 院内PHSやLAN、空調、エレベーターなどインフラ系の管理にはそもそも医療系の免許は不要になりますので、誰が管理者になっても問題ありません。

 複数居たマネジャーを1人のゼネラルマネジャーに集約し、余った人件費は現場の専門家達に配分できれば、マネジャーの人数を少数化することにも理解が得られると思います。




看護師の受け皿

 臨床工学部門の業務拡大をマネジメントするにあたり、『組織の成果に責任を持つ者』がマネジャーでなければなりません。

 前述の診療放射線技師や臨床検査技師との協働にとどまらず、看護師を受け入れる事も視野に入れるべきだと考えます。

 看護師だから看護部で働くのが当たり前ではなく、看護部以外の部門で雇用される看護師が居てもおかしなことではありません。

 筆者が居た高度専門医療研究機関では、臨床研究部門に看護部に属さない看護師が居ました。筆者自身もの臨床工学部門所属ではなく研究開発を支援する部門に居ました。

 看護師の免許を持って、臨床工学技士と類似した業務に就きたいと思う人材が居れば、臨床工学部門で雇い入れる事も考えるべきだと思います。

 筆者も大学受験の際、看護師免許で臨床工学業務をカバーできると知っていれば、おそらく看護学部を受験したと思います。

 臨床工学技士を常勤で雇い入れられる医療機関は限られており、病院の3分の1程度、診療所では1%にも満たないごく少数です。一方で看護師を雇用していない医療機関はごく稀であることから、臨床工学部門で修業した看護師が、それを強みに看護師長や部長職を目指して転職することもあり得ると思います。

 マネジャーは『組織の成果に責任を持つ者』であると同時に、医療や医学に貢献することも医療従事者としての使命であり、広い視野でチームをマネジメントすることが求められています。







あすから始める業務拡大

 これまでマネジメントの重要性や数年がかりの人材育成について述べてきましたが、現実として明日から何をするかについてもヒントを述べておきたいと思います。

 まずは観察だと思います。

 他の職種が何をしているのか、どのようにしているのか、それは苦手そうであったり、非合理であったりしないのか、といった視点で仕事ぶりを見させてもらいます。

 その上で、自分には何ができるか、同僚や同級生には何ができるかを考えてみます。努力さえすれば自分にもできる事を発見したならば、その努力をすぐに始めます。

 臨床工学部門の仕事についても精査します。先輩方からうとまれない程度に、合理化策の立案をし、可能であればこっそりと実証試験をしてみます。

 筆者はマネジャー(技士長)として赴任していた病院では、誰よりも先に透析室に入り、プライミングの合理化を検討しました。早く終われば良いという事ではなく、ミスを減らしロスを減らすことを重要視して、特に異動のある看護師さんが透析室を抵抗に思わないようにと簡便化策を検討しました。

 時間を作るということは、勤務時間内に他の仕事に手を出す事ができるという事につながります。肉体的に耐えられないほどに仕事を詰める必要はありませんが、合理化をすることは悪い事ではありませんので、まずは合理化策を検討し、時間をつくり、新境地の開拓へと着手して行けば良いと考えます。




おわりに

 今回はブログという形で業務拡大や基盤整備について述べさせていただきました。

 よくご質問を頂く部分ですので、私見をたくさん入れてのコメントになっています。一般論ではなく『私に聞かれたらこう答える』という感じになっています。

 途中に私見であること、誹謗中傷は困るという事を載せておりますが、簡単に精神を病んでしまいますので、攻撃的なことはお控えくださいますようお願い申し上げます。

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BLOG 講演

本日、臨床工学技士100人カイギ | NES株式会社

 本日、第19回目の『臨床工学技士100人カイギ』が開催されました。

 弊社代表取締役の西謙一も登壇させて頂きました。

 100人カイギとは、1回5人のスピーカーで構成するイベントを20回開催し、スピーカーが100人に達した時点で解散するというものです。
 今回が19回目でしたので、残すはあと1回です。最後のスピーカーはどなたになるのか気になります。

 臨床工学技士版の100人カイギは森ノ宮医療大学の西垣孝行先生が中心となって、有志の集まりで運営されてきました。

 運営に携わる皆様に、心より感謝申し上げます。

[Link] 臨床工学技士100人カイギ




臨床工学技士100人カイギ vol.19

 第19回は2021年10月9日19時スタート、ゲストスピーカーは今回も5名でした。

19:00~19:15 概要説明/100人カイギとは
19:15~19:20 アイスブレイク
19:20~19:35 登壇者1
19:35~19:50 登壇者2
19:50~20:05 登壇者3
20:05~20:10 休憩
20:10~20:25 登壇者4
20:25~20:40 登壇者5
20:40~20:50 ブレイクアウトルーム
20:50~21:00 次回案内 / 写真撮影

  • 菊池雄一さん
  • 中島章夫さん
  • 大塚勝二さん
  • 石飛航太さん
  • 西謙一

[Link] OneCE: 臨床工学技士100人カイギ Vol.19




【登壇】西謙一(NES株式会社)

 当社代表取締役の西謙一が登壇しました。

 自らの歩みを紹介し、なぜそのようになったのか、何を軸に持っているのかなどをお話しする事になっていました。

 そこで決めたテーマは『学際領域・境界領域は誰のモノ?』としました。

 演者は『邪道』な臨床工学技士人生を歩んできました。

 人工透析や人工呼吸器などの臨床系業務に携わっては来たものの、専門を名乗るほどの深入りはしていません。
 2000年代には脳血管内治療のチームの中核メンバーとして参加していました。ほぼ全例に関わっていました。
 再生医療に専従したのも2000年代です。

 医工連携に関わり始めたのが2009年、そして2010年には国立循環器病研究センターで医工連携の専門職員として雇用されました。恐らく当時、臨床工学技士では全国で初めての常勤者だと思いますし、臨床経験者という医療従事者全体で見ても珍しい人だったと思います。

 会社経営する医療従事者はたくさん居るので珍しくはありませんが、臨床工学技士の世界で王道では無いと思います。




講演要旨(演者より)

 臨床工学技士免状は昭和62年(1987年)に法制化された、医療の中では若い職種です。

 医師にはヒポクラテス、看護師にはナイチンゲールという大きな存在がありますが、臨床工学技士にはありません。

 臨床工学技士には業務独占もありません。法律上では名称独占しかないことを否定的に捉えず、どんな業務にもチャレンジできると考えています。

 業務独占が無いという事は、業務を手放しても他職種がカバーできるという事も意味します。

 臨床工学技士は医学と工学の学際領域に生まれた職種ですので、何が専門なのかと問われれば『境界領域を専門』と答えても不思議ではない職種です。
 境界領域を専門とする職種が無いとすれば、事実上の業務独占ができる領域は境界領域だけかもしれません。

 『透析が専門です』『心外手術が専門です』というスペシャリストが居る事に否定的ではありません。医師や看護師から絶大なる信頼を得て仕事をしている人も多く、その医療チームにおける専門家として地位が確立されていると思います。

 院内で誰も担当者と言える部署や職種がなく困っているという仕事を見つけて、担当者になり、いずれ専門家になっていくというのも、スペシャリストとしてあり得る姿だと思います。

 今回の講演ではこのような表現をしました。

『ほかの職種の誰よりも臨床工学技士が担うべきしごと』

 これを見つけることが、臨床工学技士らしさを発揮できる場になると考えています。




境界領域への新たな視点

 今回は10分間という限られた時間でしたので、各論についてはお話ししませんでした。

 たった10分ではなく、意義のある10分でしたので、主催者には本当に感謝しています。

 そして、その10分で境界領域に関心を持ってくださった方々がこのページを閲覧していると期待して、各論について少し触れたいと思います。




境界領域(例)ゴミ

 院内で発生する『ゴミ』には、どのような情報が関わるでしょうか。

 ゴミを捨てる人は誰でしょう。スタッフ、患者、納品業者、通りすがりの人、色々と考えられます。

 ゴミを集めるのは誰でしょう。大きな施設では委託業者、小さな施設では自院のスタッフが思い浮かぶと思います。

 ゴミを処分するのは誰でしょう。産業廃棄物処理業者が思い浮かびそうですが、近年はリサイクルも進化していますので、何が廃棄で、何が資源なのかは十分考える必要があります。

 『ゴミ問題』として課題を抽出すると、大きくは『経営』と『環境』に分けられると思います。もっと多く分けて貰っても構いません。

 ゴミを減らす事は意義深いことですが、努力や根気が必要ですし、継続するためにはシステムを考案する必要もあります。
 ゴミ減量や資源化への仕組み作りは、院内では誰の仕事でしょうか。誰が適任者でしょうか。

 筆者は、看護師か臨床工学技士だと考えます。
 臨床がわからなければ、どこでゴミを減らす事が出来るのか、何が課題で減量できないのかわからないので、事務職員には理解し難いのではないかと考えます。

 感染性廃棄物を1トン減らすと、病院経営にどれだけ影響があるでしょう。

 簡易包装の診療材料を採用する事で、どれだけのCO2削減につながるでしょう。

 その試算から始めるのも良い事だと思います。




境界領域(例)AI

 AIが医療に入って来るぞという雰囲気は感じていると思います。

 2015年頃には議論がありましたが、臨床におけるAIの管理者は誰なのかと言う問題に対し、臨床工学技士の世界からアンサーがありませんでした。

 AIに詳しい工学系の先生方から幾度か訊かれましたが、臨床工学技士が適任者になり得るとは言ったものの、相応のスキルを身に付けている人がどれだけ居るかと考えると、答えに詰まります。

 電子カルテ等の医療情報システムはシステムベンダーが中心となって管理する事が多いですが、システム側から能動的に診断や治療に入っていくことは無いので医療資格が無くても対応できています。大病院では専任の医師を配置していますが多数派ではありません。

 AIは診断や治療を助けます。
 バイタルサインモニタのアラームのレベルではなく、AEDのような診断基準を明確化した上での診断補助よりもハイレベルな物も現れてきます。

 画像診断系では診療放射線技師や臨床検査技師がAIマネジャーになると思いますが、医療機器と同様『その他』に類する多くのAIはマネジャー不在になります。

 臨床とAIツールの間には境界があり、AIツールが使われる臨床とメーカーの間にも境界があります。

 医療では学会が示すガイドラインに従って診療する事が多いです。
 日本では診療報酬の規程に従わなければ費用を回収できないこともあります。
 診療報酬は定期的に改定されますし、ガイドラインも見直しが行われます。
 AIの深層学習が改定・改訂前のデータに基づくものなのか、新しい基準を満たしているのか、その信頼性は改定前後でどのくらい変化しているのか、こうした事を専門的にアナウンスできる存在が院内に居ると強いと思います。

 従来のハードウェアのメンテナンスとは異なりますが、安全な状態を維持するという事に変わりはありません。




境界領域(例)ME機器と設備

 医療機器の電力依存度は高いと思います。
 医療機器に限らず、医療全般、社会全体も電力に依存しています。

 停電すればコンビニのシステムは停止してレジは動かず、自動販売機も停止して、目の前に商品があっても売買できなくなります。

 医療も同様に、目の間に治療デバイスがあっても治療ができないという可能性があります。

 医療機器と設備を別々に管理していることが、少なからず影響を及ぼしていると考えます。

 電気工事士には業務独占があります。
 臨床工学技士が電気工事士免状を取得すれば、医療機器と設備の両面からマネジメントできるようになります。

 免状を取得して自ら手を出さなくても、マネジメントはできます。

 医療現場には、まだ知られていない設備の課題が山積しています。
 知られていても、放置されている課題もあります。

 そのソリューションとしての臨床工学技士に、可能性が潜在していると思います。




 今回は臨床工学技士100人カイギという場に登壇させて頂き、弊社でも改めて考えなおす機会になりました。

 御聴講なさった皆様、何か言いたい事があったり、聞きたいことがあったりするのではないかと思います。

 お問合せフォームはいつでも開放していますので、いつでもお問合せ頂ければと思います。

お問い合わせ
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BLOG 医療機器・設備・環境

臨床工学技士キャリア形成 | NES株式会社

 臨床工学技士とは、医療技術系の国家資格(免許)の1つで、臨床工学技士法により定められています。

 免許が無ければ臨床工学技士を名乗れない名称独占はありますが、臨床工学技士にしかできない業務独占はありません。

 業務独占がないという事はすなわち、同じ仕事を他の免許でも実施できる事になります。

 競合する相手が同じ臨床工学技士だけでなく、他職種にも居る中で、どのようなキャリアを形成していくと良いでしょうか。

 3~4年の養成課程を経て臨床工学技士になった者の、その先の何十年かをどう生きるのか、そのための礎について考えます。




臨床工学技士業務

 臨床工学技士は業務独占が無いので、決められた仕事がある訳ではありません。

 日本臨床工学技士会という職能団体のホームページを見ると長い間、以下の9項目を臨床工学技士業務として掲げています。

  • 呼吸治療業務
  • 人工心肺業務
  • 血液浄化業務
  • 手術室業務
  • 心血管カテーテル業務
  • 集中治療業務
  • 高気圧酸素業務
  • ペースメーカ/ICD業務
  • 医療機器管理業務

 医療機器管理以外は専門とする医系学会があり、専門学会に行けば医師や看護師ともディスカッションしている姿を見ます。
 これらの業務を深く掘り下げて、専門として仕事をなさっている臨床工学技士も少なくありません。




9大業務以外

 前述の業務に従事していない臨床工学技士も、免許を持っていれば臨床工学技士を名乗れます。

 その代表的なものの1つに教育研究系の仕事があります。
 養成課程は50以上ありますので千人前後は教育研究系の仕事に就く臨床工学技士が居ると思います。

 先ほどの9大業務を王道とすれば、筆者は王道の臨床工学技士人生を歩んでいない可能性があります。
 医療機器安全管理は王道の中にありましたが、医療機器安全管理システムの開発や配布は既に病院外の仕事なので、王道より邪道に近いかもしれません。
 臨床系では脳血管内治療や再生医療に専門的に携わりました。どちらも、臨床工学技士が適任者になると思いました。
 医療設備安全管理は比較的新しい考え方で、理想像としてはダブルライセンスで従事するスタイルです。後述します。

 9大業務以外の業務としては他に、以下のようなものが知られています。

  • 内視鏡業務
  • 直介業務
  • 洗浄滅菌業務
  • 事務長・事務系業務



登るべきハシゴ

 出世では『階段をのぼる』という表現が用いられますが、職業人としての知識や技術を身に付けていく過程ではハシゴを用いる事があります。

 臨床工学技士のキャリアを形成する上で、何を身に付けなければならないかを知っている技士は少ないのではないかと思います。

 職能団体として確固たる生涯学習は行われていないですし、その指針や綱領も示されていません。業務指針はありますが、個別の業務ではなく、何を以って臨床工学技士を形づくるのかといった基調するものが示されていません。

 示されていない事は悪い事ではありません。
 自由に形づくっても良いと前向きにとらえる事もできます。

 いま、日本の社会で『臨床工学技士』と言って、何の仕事をする人か答えられる人は、医師や看護師のそれに比べて相当に少ないと思います。
 医療従事者に臨床工学技士の基盤や本分を訊ねても、答えがバラバラになるのではないかと思います。

 臨床工学技士は内外から『こういう人を言う』という確固たるものが無いのが現状です。

 




看護師のラダー(ハシゴ)

 看護師は『切れ目のない看護提供システムが不可欠』という考えの下に、『看護実線能力の保証』に向けた取り組みを何年も続けてきました。

 看護師は大病院でも無床診療所でも雇用され、活躍しています。

 病床規模により教育システムには差が出てしまう事は仕方ない事ですが、教育システムが整わないから低いレベルの看護を提供して良いという事はないですし、低いレベルの教育しか受けられないという事も望ましい姿ではありません。

 そこで日本看護協会では、全国レベルで標準化された看護実践能力の育成指標を策定し、看護師の能力を客観的に評価できるシステムを開発しました。

 看護師は皆、1つの体系的な生涯教育システムを用い、誰もが同じ基準で能力を評価され、自らの現在位置や目指すべきレベルを把握する事ができます。

[Link] 日本看護協会: 生涯学習支援 看護師のクリニカルラダー




先の見えないハシゴ

 臨床工学技士がいま、キャリアラダーを作るとどうなるでしょうか。

 おそらく施設間でレベル基準がバラバラ、比較ができないのではないかと思います。

 さらに、そのハシゴを登った先にある到達点は、行ってみなければわからないというあみだくじのようなラダーかもしれません。

 一段ずつ着実に登ってゴールを目指すのがハシゴの本来の目的です。一段抜かしは無用ですし、壊れたハシゴを使うのも誤りです。

 人が一段ずつ登れる間隔にステップがあり、登り切るまで壊れず、登る先の目標が見えるハシゴが必要になります。




テーラーメイド

 登るべきハシゴが見つからないのであれば、作れば良いです。

 自作しても良いと思いますが、目標設定とそこまでの過程については、通った事のある経験者の助言を得る事は重要です。

 本来であれば、諸先輩方が相談員となり、後輩たちのハシゴづくりを手伝ってあげるべきですが、そのようなシステムはありませんし、おそらく信頼関係を築く事も容易ではないと思います。

 まずは、自分の人生設計に必要なハシゴ(キャリアラダー)を作るために必要な情報を与えてくれる人材を探すところから始めなければなりません。

 筆者は、相談を受ければキャリアラダーづくりをお手伝いしようと思っています。
 近々、自らが所属する県の技士会に提案する予定です。




Technician
Therapist
Manager

 臨床工学技士として、目指す像はどこにあるでしょうか。

 キャリア形成を考える際に、今の自分はどこにあり、何を目指すのかを明確にしていく必要があります。

 昭和62年に制定された臨床工学技士法ですが、その審議の段階では4年制大学にするか否かの話題がありました。
 要約すると、マンパワーとして臨床工学技士が必要なので、4年もの教育は必要としないという結論でした。

 私的な解釈ですが、Technicianとしての臨床工学技士像があったように思います。

 2010年の臨床工学技士業務指針改定によりTherapist寄りに考え方は近づいた感じがしますが、養成課程は3年制のままですし生涯教育についても有資格者全員に共通するものは創設されていません。

 海外では人工透析1つをみてもTherapistとTechnicianの差は大きく、給与面でも倍ほどの差があります。日本の臨床工学技士は両方の業務を同じ資格で担っています。

 そして、Managementを身に付けたManagerが少ないように感じます。もしManagerを目指してキャリア形成するのであれば、Managementをどう身に付けていくかを真剣に考える必要があります。おそらく、臨床工学技士以外の世界で身に付ける事が望まれると思います。

 MBA(経営学修士)を取得している臨床工学技士は少なくありません。もちろん、医師や看護師では相当多いです。医療従事者は臨床で活躍してナンボという考えもありますが、臨床家が臨床家らしく働き続けられる環境づくりをするマネジャーの存在も重要です。




ロードマップ

 筆者は大学4回生の夏、自分の歩む臨床工学技士人生についていくつかのマップを作りました。
 東京の大学病院への就職、大阪の専門病院への就職、地元に戻っての就職など、まずは臨床工学技士のスタートをどこで切るかを想像しました。
 そして、10年後の立ち位置、20年後の立ち位置を想像してマップを仕上げていきました。

 キャリアラダーも必要ですが、そもそも自分のゴールはどこにあり、どこを辿って行こうとしているのかオリエンテーションを付ける必要があると思います。

 筆者は大学病院も専門病院も選びませんでした。
 30歳で臨床工学技士免状取得。そこから専門病院の臨床で5年の経験を経て基礎を築き、更に5年で専門性を高めていると40歳です。40歳で専門一本でしか来ておらず、論文も少々というレベルでは、他の40歳と比較されると劣るなと思いました。

 30歳で新人というハンデを、イニシアティブに変える方法を模索しました。




Self management index

 看護師であれば標準化された指標がありますが、臨床工学技士には存在しないのであれば、自己評価するしかありません。

 若い内は同級生らと『私は穿刺した』『夜勤をしている』など何の仕事をしたかで競ったりしている姿を見かけますが、これは指標や評価とは直結しません。

 用意したハシゴの何段目まで来たのか、その段階の行動目標を達成できているのか、可能な限り客観的に評価します。

 例えば透析の穿刺については、穿刺を経験したからゴールと言う事ではなく『安全な穿刺』や『トラブルを予見した準備』など臨床家として求められるスキルが身について、それを行動として展開できているかが重要になります。


 褒められる事ではありませんが、筆者は穿刺が上手とは言えませんでした。ゆえに失敗しないように準備は怠りませんし、患者との信頼関係構築のための努力を惜しみませんでした。
 穿刺にかかる時間はベテラン看護師の倍くらい、透析患者さんにとって5分の遅れは苛立ちを覚えるレベルですが、穿刺に来るなとは言われずに済みました。

 筆者が求めていた行動目標は素早い穿刺ではなく、確実な穿刺でしたので、このレベルをいつしかクリアしていました。
 同僚や先輩から『遅い』とは言われ続けましたが、私のラダーに『急ぐ』というキーワードは入っていないので、早める努力はしましたが、キャリアラダーとは別の次元で対応しました。




行動

 キャリア形成には行動が伴います。

 こんな人材になりたいと夢見るのもありですし、定時退勤して確実に給与を貰う人生もありです。それぞれが目指すところが違うのは必然です。

 今は到達していないステージを目指すには、何らかの行動が求められます。痛みや犠牲が伴う事もあります。

 目標への到達が早い方が良いか、遅い方が良いかはわかりませんが、手遅れになってはそれまでの苦労が水の泡です。

 筆者は30歳で臨床工学技士になりましたが、20代であれば許されそうな事でも、年齢の問題でNGという事がありました。
 未熟であれば叱られて終わりの事でも、成熟してからでは呆れられたり、見なかった事にされたりします。

 注意を受けている間が花、若い内に無茶はした方が良いと思います。

 『ここで働かせてください!』という勢いで、20代後半だが大学生という事で東京の大学病院の透析室で勝手に研修を受けた期間がありました。
 学生研修ではゴミ掃除などはさせてはいけないそうですが、任意で勝手に来ている人なので、朝のプライミング後は段ボールを壊して捨てに行く仕事もさせて頂きました。ゴミ捨ての時間が軽減された分、技士さんに色々と教わりました。

 若い時の苦労は買ってでもした方が良いと思います。




鍛錬

 ひと言で『トレーニング』と言っても、色々とあります。

 筆者は『鍛錬』という方がわかりやすいと思っています。

 高みを望むキャリア形成には、鍛錬は欠かせないと考えます。

 ハイレベルなスキルを身に付けるのもその1つです。

 医師は基本的な事として知っている知識の最低レベルが高いです。その上で専門を持ち、その分野での最低レベルを習得しています。この最低レベルが相当なハイレベルです。そこから更に専門と言える特殊能力を身に付けています。

 その超ハイレベルな医師が持つスキルに並べるように腕を磨く事も鍛錬としては有意義だと思います。聴診のスキルを高め、僅かな雑音も聞き逃さず医師に上申できるようになれば、それは特別なスキルと自負できると思います。

 これまで多くの卓越した人材と出会ってきましたが、皆さんの考える最低レベルは相当に高いところにあります。
 その上で、特別と言えそうな知識や技術をいくつも持っており、どの分野でも専門家のように話ができる方々です。

 筆者もそうなれるように努力はしました。
 臨床工学技士ではあまり持っている人が居ないスキルをいくつか身に付ける事はできました。
 専門家と対等に渡り合える程ではありませんが、専門家と意見交換させて頂けるレベルには至ったものもあります。
 独学で習得したコンピュータープログラミングは、情報工学の先生からはチープと言われましたが、暇人しか作らないようなソフトをいくつも完成させ、世の中の役に立つことはできました。

 日々、鍛錬を続けていくことがキャリア形成には欠かせないと考えます。




何をする?

 具体的にどのような事をしてキャリア形成の礎を築いていくのか、いくつか要点をお示しします。


(1)やりたがらない仕事

 苦労の1つに『他人がやりたがらない仕事』があります。

 時間を見つけてME機器を磨き上げる、そうした小さなことの積み上げから始めるのも良いと思います。

 筆者は、他職種がやりたがらない仕事で、臨床工学技士でも出来る仕事を探していました。
 例えば臨床統計。学会等から年1回報告を求められますが、この集計は手間です。

 退勤時刻にタイムカードを押して、医局に行って作業した事が何度もあります。
 夜な夜な透析室でカルテをまとめ直し、データ化した事もあります。

 その経験が直接活きる事もあります。
 そうした姿を見て、新たなチャンスを貰える事もあります。


(2)苦手な人

 苦手な人とは関りを減らしたいのが普通です。

 あえて、苦手な人と食事に行ってみるのも人生経験としてはプラスに働く事があります。

 こちらが苦手意識を持っていれば、相手にも気づかれている場合があります。

 苦手に思ってしまう原因を探り、相手がどのような思考に基づいて、自分が苦手だと思ってしまう行動に出るのかを直接聞き出す事ができると、その後の人間関係構築には物凄いヒントになります。


(3)院外活動

 苦労と言うべきかどうかわかりませんが、院外活動に積極的に参加している人は、けっこう打たれ強い人が多い気がします。

 院外で行われる勉強会の手伝いをしたり、研究会の下働きのような事をしても1円も貰えません。
 上司でも無い人に指示を貰い、現場で荷物を運んだり受付をしたり、面識のない人たちと飲みに行ったりするのが初期段階です。

 筆者は職能団体の地方会(都道府県技士会)の学術委員として月1~2回は夜の勉強会の受付などを手伝いに行きました。
 土日に印刷物の封筒詰めをしに大学病院へ行く事もありました。

 職場の医師の手伝いで荷物運びから始めた活動もあります。

 医系職なので医系の団体のお手伝いをするのが一般的ですが、全く異なる事をしている人も居ます。


(4)学術活動

 筆者は免許を取った年から学術活動をしていましたが『生意気だ』と何度も言われました。会場で『俺に挨拶がない』と因縁を付けて来る臨床工学技士も居ました。
 しかし無視して学術活動を続けていました。
 キャリア形成の中で、学術活動は不可避だと考えていたからです。

 臨床工学技士として成功しているように見える方々にお話を伺うと、皆さん何らかの形で学術活動をされています。

 1年に1回は発表する、常に新しいテーマを考えて実験するといった話はよく聞きます。

 学術活動をする事で、自らの研究や考え方に対し示唆に富む至適や批判を受ける事ができます。同僚に同じ専門を持つ人が居なくても、外で評価を受ける事が出来ます。
 レベルの基準はなくとも、その考え方が共感される物なのか否かはわかりますし、例え反対意見が多くても、誤りである事が実証されない限りは仮説として残ります。

 最初は稚拙な発表でも仕方ないと思います。
 回を重ねるごとに自らが成長していくのがわかりますし、周囲からも徐々にレベルの高い指摘を受ける事になります。


(5)学会での質問は出会い

 学会には単に参加して発表、あるいは聴講で終わらせません。

 他人の発表に対し質問するのが礼儀です。フロアーが静まりかえっていると、プレゼンが下手だったのか、場違いな発表だったのかと不安になります。

 質問する事で、自身の考え方が相手に伝わりますし、会場内から賛同や反対の意見が出ることもしばしばです。

 筆者は免許取得後数年目の学会で、ある人の一般演題に質問をしました。セッションが終わって某大学病院のボスが近づいて来て『兄ちゃん、質問してたよね。良いねぇ』と言って飲みに連れて行ってくれました。
 質問から火が付き、セッション後に廊下で延々と意見交換した事もあります。

 リモート開催になって質問の機会を与えられない事が多くなったのは残念です。
 しかし、せっかく聴講したのであれば、何かの機会に発表者に質問を投げかける事ができるようアンテナを張っておく事も良いと思います。


(6)受講

 都道府県技士会や学会等でも多くの勉強会が開催されています。リモート主流の時代に入り、遠隔地にセミナーにも参加しやすくなりました。

 臨床工学技士として基本的な事を知るための受講は本来の価値があって良いと思います。

 視点を変えると、よく知っている事について受講して、講師はどのような方法で受講者を満足させようとしているかを見るのも実は面白いです。
 内容については熟知している分野であれば、それぞれのキーワードの置き方や、理解の深め方などが勉強になります。

 筆者は専門外、医療以外のセミナーも多く受講しました。

 産業廃棄物、食品、防犯、家電、ジャンルは問いません。異業種のスタンダードな考え方を知る事が大事です。
 ある時、ロケットなどを造っているIHIの機械系のセミナーを受講しました。技術力は高いが、それだけで判断しないというお話でした。潜水艦や原子力発電など高度な技術があっても、医療などは市場を知らないので参入しないと話していました。

 どこにどのような技術があり、それが医療に応用できるか否かを知っておくことも臨床工学技士として必要だと思っています。


(7)趣味を極める

 たかが趣味だと侮らない方が良いと思います。

 同好者・愛好者の仲間に意外な人物が居る事もあります。

 そうした棚ぼた的な事よりも、何かを続ける、極めるという事にはキャリア形成において重要な要素があります。

 筆者は学生時代に手話をしていました。サークルに参加して手話を経験した人はたくさん居ると思います。
 筆者は聾唖者と飲みに行くくらい仲良くなり、会話し続けられるレベルの手話も身に付けました。
 手話は言語なので、幼稚園児が言葉を覚えるようにして自然に身に付きますが、人間関係は言葉だけでは形成されません。

 趣味のようなものでも、極めていくと新境地が開けてきます。




こんな事もできる

 一般的に、誰もがしておいた方が良さそうな事とは別に、関心があればチャレンジしてみても良いかなと思う項目をあげておきます。


(1)資格

 検定試験は知識レベルを示すのに役立ちますが、免許ではありません。

 免許とは文字通り免じて許される行為が伴います。
 医療だけでなく弁護士や税理士も免許です。

 臨床工学技士のキャリア形成において、臨床工学技士以外の免許(資格)を取得する事には意義があると考えます。

 臨床工学技士は医学と工学の学際領域に生まれた資格ですので、仮に医学系の資格を臨床工学技士免状とした場合、相対する工学系の免許は持っていない事になります。

 筆者は電気工事士の免許を持っていますが、ME機器と電気設備の密接性から考えると、多くの臨床工学技士が電気工事士免状を取得するべきだと考えます。

 今後の在宅医療を考えると、療養住環境を整備する上で、医学と工学の両方の知識と経験、さらに免許まで持っている人材が居ると強いと思います。


(2)転職・インターンシップ

 1か所で長く勤めあげる事は、立派なことです。称えられて当然だと思います。

 キャリア形成の面では、自身にマッチしたキャリアパスがあれば良いですが、無さそうであれば転職をするというのも良い方法だと考えます。

 海外では、高校卒業後に就職して社会を知り、そこから大学へ行って自分の進路を決め、在学中にインターンシップで色々な仕事を経験するということが普遍的に行われています。

 私の知り合いは、オリンピックに関する仕事のインターンシップを経験し、多国籍の人的ネットワークを築いた人が居ます。


(3)副業・兼業・復業

 いわゆるサイドビジネスです。

 業種を問わず、何でも良いと思います。

 講演活動や執筆活動であれば兼業許可が下りやすいと思います。

 アパート経営など不動産管理も良いビジネスだと思います。中古の集合住宅なら1千万円くらいから投資できます。

 フリマアプリでの物販も良いですが、キャリア形成に役立つという程の量を扱うには大変だと思います。

 スキルを売るプラットフォームも多くありますので、そちらの方がお勧めですが、売れるスキルを身に付けるのは容易ではありません。

 ココナラやビザスク、くらしのマーケット、ジモティなど手軽に利用できる物が多くありますので、まずは自身がユーザーになってみて様子を見るのも良いと思います。

 筆者も、スキルを切り売りして経験を積み、腕が錆びないようにライフワーク的に継続しています。




副業のはじめ方:プチ起業

 副業を始めるにしても、いったい何をすべきかわからないというご相談を受けます。

 職場に隠れてアルバイトをするのも副業の1つですが、キャリア形成という面での副業には幅があると思います。

 『アントレプレナー』(Entrepreneur)とは起業家のことで、綿密に計画を立ててゼロから会社を興し、事業を創出するような人物像が描かれます。人生を掛けてこの事業を成功させるぞという勢いや覚悟を感じる、やや重々しさもあります。この起業家精神を『アントレプレナーシップ』(Entrepreneurship)と呼びます。
 アントレプレナーについては日本での解釈と、海外での解釈は異なる部分がありますので、機会があれば米国などアントレプレナーシップが浸透している国の情報も参考にしてください。

[Link] Entrepreneur.com


 本業では副業の場合には『マイクロアントレプレナー』という考え方があります。
 小さく起業して、小さく稼ぐ、リスクは小さく、開業資金も小さくなります。

 本業としての起業であれば開業費は100万円くらいを目安にし、自身の給与分の売上を出す事が当面の目標となります。
 マイクロアントレプレナーは身の丈にあった起業をするため、開業資金は手持ち金だけで始めることができます。

 以下に、マイクロアントレプレナーの事例を紹介します。すべては筆者が経験した事があるサービスです。


(1)小売・個人取引

 物を仕入れて売るという基本的な商取引を学ぶことができます。

 手段としてはPayPayフリマやヤフオク!などが手軽に始められる個人間取引です。

 もう少しお店らしくするならばBASEというプラットフォームがあります。香取慎吾さんがCMに出ていたので記憶にある方も居られるかもしれません。
 BASEで用意されたスペース(サイト)に商品を陳列すれば開業です。商品写真などは自分で載せる必要があります。このサービスを利用すれば売上金の回収はだいぶ楽になります。当然ながら手数料は取られます。

 仕入れず自作して売る事もできます。
 手芸品は『ハンドメイド』というくくりでかなりの数が販売されています。工業製品と違い一点物、手作りゆえの曖昧さがあってもクレーム対象とはならない点が出品のハードルを下げています。

PayPayフリマ

ヤフオク!

BASE


(2)スキルで個人商店

 自分の持っているスキルを活かした遠隔サービスを展開できるプラットフォームがあります。

 吉岡里穂さんがCMに出演していました。その前は和牛さんたちでした。

 個人のお悩み相談のような物から、プレゼン資料やロゴデザインなどビジネス寄りの物まで多種多様な出品があります。

 単にスキルがあれば売れるものではなく、どのようなサービスに需要があるのかを見抜く力が試されます。

 例えば臨床工学技士養成課程の学生向けのサービスを思いついたとしても、学生は8千人も居ないと思います。その中でサービス利用対象となる人が1%だとすれば80人です。この少人数に訴求するのは骨が折れる仕事です。

 良いサービスを創造できれば、coconalaの中だけでも月数万円の売り上げは出せると思います。

coconala


(3)スキルで覆面コンサル

 覆面というほど匿名性は無いのですが、ビザスクというプラットフォームがあります。

 このビザスクという知見をシェアする仕組みを創出した端羽英子CEOがすごいなと思っていますが、端羽さんのお陰でマイクロアントレプレナーも活躍の場を持つことができていると思います。

 スポットコンサルティングですので、コンサルティング能力が問われます。

 1件1時間で3万円くらいが相場です。依頼する側は大手企業であれば情報力がある中でのスポットコンサルですので相応のレベル感を求めてきます。
 中小企業の場合は限られた予算の中で3万円の負担ですので、色々な事を知りたいと意気込んで面談に臨みます。

ビザスク




副業のはじめ方:個人事業主として受託

 副業はマイクロアントレプレナーだけのものではありません。しっかり起業して副業を続ける事もできます。

 わかりやすいところで言えばアパート経営があります。
 新築でも既築物件でも良いのですが、アパートを持って入居者を募り、家賃を収入としている医療従事者は居るでしょう。立派な経営者です。
 不動産業であれば病院も兼業を認めやすいので、駐車場やビルなど資産は様々ですが兼業申請している人の中には不動産業は多いと思います。

 不動産業には、不動産取得のための資金が必要であり、場合によっては借金もします。何千万円という単位です。

 ここでは臨床工学技士のキャリア形成を話題にしていますので、臨床工学技士らしい事業について紹介します。

 当社では医療機器安全管理業務を病院様から受託して、人材を配置してお仕事をさせて頂いております。
 その中のある事案では、当社が病院様と契約をしていますが、現場の実務は臨床工学技士と受委託契約を締結して、当社から委託しています。
 受託側の臨床工学技士は個人事業主です。税務署にしっかりと届け出て貰っています。

 当社は株式会社です。法人格という物があり、社会的責務があり、一定の社会的信用もあります。病院と契約する上では法人格の有無は重要になりますし、そもそも事前の営業活動も必要です。
 副業として病院と直接契約を締結する事は容易ではないと思います。

 当社ではME管理のスキルが内部にあり、マネジメントは内製化できますので販売を担う商社機能と、マネジメントを担う管理機能、MEサービスと言う商品を生み出す企画開発機能を自社内で行っています。
 サービス提供を担う実務部隊は自社にこだわる必要がないためリーズナブルな方法として臨床工学技士の個人事業主に委託しています。

 このビジネスモデルは何件かのお引き合いを頂いております。今後は受託できる臨床工学技士を増やし、質の高いMEサービスを良心的な価格で提供できるようにと考えています。

 このような仕事があるとわかっていれば、本業として勤めている医療機関でも様々な視点で臨床工学業務に従事するようになると思いますので、キャリア形成との相乗効果は発揮しやすいと思っています。




副業のはじめ方:仕事を創造

 本業とするには需給バランスが悪く、誰も本業とはしないだろうというビジネスを創造することが、副業を生み出す事にもなり得ます。

 例えば、透析室の装置入替を機種選定から図面作成、工事中の工程管理までの請負仕事があったとします。
 このような事案自体が年に数十件しか発生しない上に、それをすべて受託しても1~2人の雇用がギリギリだとします。
 本業にするならば独占的に仕事を確保できるビジネスモデルが必要ですが、それが無理なら副業ですべき仕事になります。

 このような仕事を『私にはできる』と言っているだけでは、お金を払って依頼しようなどという事にならないので、『私に任せればこういうメリットがある』というPRをしなければなりません。

 実際には色々と難しい事があると思います。
 自動車を購入する際にアドバイザーを付ける人は滅多に居らず自動車販売員と購入者は直接やり取りします。
 住宅を建てるときでも同様です。
 透析装置を買う時に、外部のコンサルを雇い入れるという文化を醸成するところから必要になります。

 一方で、パイオニアとなれば競争力があり、価格面や案件獲得などで優位性が出ます。




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地域医療連携推進法人について | NES株式会社

 今日は、私的に地域医療連携推進法人について考えてみることにしました。

 7~8年前だったと思いますが、医療商社に居た頃に一度、真剣に検討したことがありました。

 ここにきて、東広島市などを視察して医療崩壊が近い事を知り、もう一度考える時期に来ていると思いました。

[Link] 厚生労働省: 地域医療連携推進法人制度の概要




内閣総理大臣の発言

 第2次安倍内閣時代のダボス会議で世界経済フォーラム年次会議冒頭演説『新しい日本から、新しいビジョン』で登壇した安倍首相が以下のように述べられました。

 医療を、産業として育てます。
 日本が最先端を行く再生医療では、細胞を、民間の工場で生み出すことが可能になります。
 日本では、久しく「不可能だ!」と言われてきたことです。
 40年以上続いてきた、コメの減反を廃止します。民間企業が障壁なく農業に参入し、作りたい作物を、需給の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってきます。
 日本では、久しく「不可能だ!」と言われてきたことです。
 これらはみな、昨年の秋、現に、決定したことです。
 加えて、昨日の朝私は、日本にも、Mayo Clinicのような、ホールディング・カンパニー型の大規模医療法人ができてしかるべきだから、制度を改めるようにと、追加の指示をしました。

首相官邸: 世界経済フォーラム年次会議冒頭演説

 医療を産業として育成する件については、前年発表された日本再興戦略の中でも述べられている通りです。

 注目すべきは『日本にも、Mayo Clinicのような、ホールディング・カンパニー型の大規模医療法人ができてしかるべきだから、制度を改めるようにと、追加の指示』という部分です。

 メイヨークリニックといえば大規模民間病院グループですが、それを模した物を日本にも設置しようという意気込みを世界に発信した事になります。

[Link] 首相官邸: 平成26年1月22日 世界経済フォーラム年次会議冒頭演説~新しい日本から、新しいビジョン~, 総理の演説・記者会見など

[Link] 首相官邸: 日本再興戦略 平成25年6月14日




当時の私の講演資料

 だいぶ前になりますが、2014年頃に作成した講演資料です。

 当時は"Integrated Healthcare Network"(IHN)という言葉を使っていました。和訳すると統合型医療ネットワークという感じでしょう。
 同じ頃に"Integrated Resort"(IR)、統合型リゾートの担当もしていました。こちらはカジノを含む国際的リゾート拠点化事業でした。私はヘルスケアを活用した誘客について担当し、関西空港の近くで何度か講演もさせて頂きました。

 いずれの『統合型』も核となる事業があるものの、細かいものも含めて周辺の事業があってこそのシナジーを期待しており、単体事業での損得だけでは考えていないという点で共通します。

 IRではカジノが核となる事業ですが、IHNでは急性期医療機関が核となる事が多いようです。
 医業収入として大きいという特性もありますが、地域性や侵襲性という面も重要視されると考えます。急性期疾患で、わざわざ数百キロ先まで治療を受けに行く人は少ないと思いますので、地域医療連携の中で急性期が核となる事は必然であると考えられます。

 スライドの中で例示したピッツバーグやメイヨークリニックは当時、色々と調査していました。

 大阪大学医学部の教授がピッツバーグ留学経験者であったのでお話を聞きに行った覚えがあります。

 メイヨークリニックは実際に、自分の足で現地を訪れてお話を聞きました。
 下の写真は当時撮影させて頂いたものです。院内にはミュージアムのようなコーナーがあり、メイヨー家の歴史などが紹介されていました。

院内のエレベーターホール
馬車の時代の救急車



多角経営容認時代

 大雑把に言うと、昔の医療は利益を残して資産を増やす事が難しいものでした。

 多角経営にも消極的な制度でした。特に開業医と呼ばれる先生方は、多角化には高いハードルがありました。

 第五次医療法改正で医療法人の会計が見直され、分院を開設したり、介護事業に手を伸ばしたりする先生が増えました。

 もちろん、診療が金銭に引っ張られるような利益相反は排除されているため医薬分業などは続いています。







シームレス化

 医療法人が多角経営することのメリットは、シームレス化という面で現れてきます。

 医薬分業が続くので外来診療と処方薬受取は同じ場所ではできない、カルテが共有できないという残念な面が残りますが、医療と介護のシームレス化などは進んできています。

 例えば医療機関による健康増進施設の運営。
 ケガをして診療を受け、健康保険を使ってリハビリを受けるという所まではよくある事です。
 その先、治療が一段落し社会復帰した後も、ケガをしないための運動の継続が求められますが『運動しましょう』と言われてもどうしたら良いかわからないこともあります。

 医療機関が運営する健康増進施設では、例えば外来診療にも携わる理学療法士がインストラクターを務めていて、患者さんであったときの状態を知った上で、民業としての健康増進のアドバイスをしてくれるといったシームレスが生まれます。

 病院と介護施設を行ったり来たりする患者さんも、同じ医療法人の中で動くと情報連携がスムースであったり、早期退院ができたりするメリットが期待できます。







医療崩壊回避のための連携

 1つの医療法人が多角経営するには資金や人材の面で限界があります。

 特に病院については病床規制があるため、簡単に病床数を増減させる事もできませんし、医師の確保も容易ではありません。

 さらに人口減少時代に突入しており、高齢者が増えているからといって病床規模を拡大することは得策ではない場合が多いです。

 人口減少や高齢化率上昇が著しい地域では、医療機関の廃業が迫っている地域もあります。

 医療はお金で計算すべきでは無いのは承知の上ですが、急性期患者が少なく手術や処置が少なければ、外科医を雇ってもフルタイムで働くほどの仕事が無く、必然的に外科部門は不採算となってしまいます。

 若い医師がや看護師が集まらないという人材問題は、地方へ行けば行くほど深刻です。

 そこで検討されるのが、地域の医療法人同士での連携です。







業務提携とは異なるアライアンス

 企業対企業の業務提携では、配送トラックをシェアしたり、製造を相互に委託し合い集約化するなど、実業面での協力が多く見られます。

 地域医療連携推進法人では、実業面で相互にリソースを出し合ったり、カバーし合ったりすることは少ないです。
 A病院の手術室でB病院の外科チームが手術するといった事はないです。
 C病院の事務員がD病院へ行って医事計算をして帰って来るとか、E病院のコンビニをF病院が経営するという事もないです。

 共同調達のような受入のシェアはあります。

 おそらく、当面の連携の組み方は、地域での棲み分けになるのではないかと思います。







競合しない協業

 これまでは各施設が単体で診療科などを選択してきました。

 これからは、対象となる患者も減るので地域で必要なボリュームを試算した上で、どの医療機関がそれを担うのか検討する時期に入っています。

 例えば、消化器系の患者が1日3千人の外来診療を受けているとします。
 医師1人あたり30人とすると100人の消化器系の医師が必要になります。
 消化器系の患者には、処置が必要になる事があります。それは内視鏡でできるものと、外科的にすべきものがあります。

 大別すると外来診察、内科的処置(手術)、外科的処置(手術)の3つに分かれることになります。

 これらを1つの医療機関に集約する方法もありますが、外来診察は診療所、処置は病院と分けてしまう事も考えれます。医業経営と患者の利便性の両面から、地域で話し合う事になると思います。







不採算医療の継続

 周産期や小児医療を担う医療機関は年々減っています。

 当社が所在するエリアでは、ここ2年程で産婦人科医院が激減し、年間1,000人分の出生の場が消滅しました。

 小児は1人あたりの診療の手間が多い割に、使用する薬剤等は少なく、手間と収入のアンバランスがあります。

 こうした周産期や小児の医療について、地域で維持していくための取組として、アライアンスに参加するどこかの医療機関が代表して担うという取り組みがあります。

 不採算を押し付けるのではなく、行政からの補助金や地域の基金などを使って補填し、診療体制が維持できる仕組みとしていくことも地域医療連携推進法人の役割です。







海外では保健と保険も担う

 アメリカの例を見ると、アライアンスでは予防を含めた保健や公衆衛生の分野も担っています。

 糖尿病の治療に用いられる血糖測定やインスリンについては患者の自己負担割合が日本に比べてはるかに大きいようですが、糖尿病にならないための無償プログラムが多数あります。

 その裏には医療保険があるため、アライアンスは予防にコミットメントしています。

 日本の国民皆保険制度と違い米国では民間保険が大きなシェアを占めます。
 メディケア・メディケイドという公的保険もありますが、受けられる医療サービスが限定的です。

 この民間保険を、地域の医療法人で運営している場合、保険が使われなければ法人の支出は減ります。
 保険が使われれば保険事業から支出があり、医療事業には収入が発生しますが、医療事業には原価がかかりますので利益率の良い事業とは言えません。

 病気になってから治すのでは法人全体の利益が低下するので、病気にさせないための取り組みを医療従事者が率先して実践する仕組みが、必然的に動いているのが米国の事例です。







日本でも地域限定保険?

 日本の社会保障制度は全国版であり、現役世代の多くが加入する協会けんぽや企業立保険は、地域とはかかわりがありません。

 一方で引退後に加入する国民健康保険や後期高齢者医療制度は自治体が保険者となりますので、地域と関わります。

 この仕組みを変えて、生まれてから死ぬまで、地域の保険に加入する事になれば、地域が一丸となって予防に取組むことができると考えられます。

 現状では医療・保健・福祉は別法人、別人格です。







仮想:人口千人の島で患者ゼロになれば

 もし、人口が1,000人程の離島で、開業医が1人だけ居て、その先生が予防に熱心で島民も相応の努力をするとどうなるでしょう。

 島からは病人が居なくなります(少し極端ですが)。

 外来に来る人は居なくなり、降圧剤や湿布薬も処方されなくなります。

 重い病気の人については、島では診療できないので本土へ行ってしまいます。

 開業医の収入源は外来診療、しかし患者が来なければ収入はゼロになります。

 収入が無ければ、収入のある所へ行くしかないので島を離れることになります。
 唯一の診療所が無くなれば無医地区となってしまいます。

 無医地区というだけでも不安が広がりますが、主導する医師が居なくなれば予防への取り組みも薄らぎ、病人が発生してしまうでしょう。

 いまの社会保障制度で考えると、多くの医療従事者が予防の重要性を理解していても、予防を啓発するための原動力を持っていない事になります。







保険事業とのアライアンス

 30年後の地域の様子を想像すると、団塊ジュニア世代が75歳を迎え、団塊世代は100歳を超えています。

 そして65歳未満の人口比は劇的に低くなります。

 病気になった人を診るにも医療従事者は足りず、あまり医療従事者を増やしても給与を払えなくなるので、おそらく資格取得の人数制限もかかると思います。

 ちょっとした病気では、外来の順番待ちは3日、救急車に乗って行けばすぐに診てもらえるが特別加算が10万円という事にも驚かない2050年だと思います。

 保険に加入していても保険を使う機会が少なくなってしまうのであれば、保険加入者の不満は大きくなります。
 保険を使わなくて済むようにすれば、保険への不満は軽減されます。

 そこで、地域医療連携推進法人とのアライアンスが生まれるのではないかと考えます。

 例えば、アライアンスに参加する医療機関に支払われる保険金が年100億円だったとします。
 保険者は毎年100億円をアライアンスに支払う契約をします。
 医療費がどれだけかかっても100億円、患者が少なくても100億円であれば、アライアンスとしては予防にコミットメントする原動力が生まれます。

 地域住民にとっても、受診機会を得るためのハードルが高いのであれば、そもそも受診機会が発生しない方が良いですし、健康で居られる事は悪い事ではないと思います。







具体的な方策

 保険制度を変えることは容易ではありませんが、地域で新たな健康保険組合を作ることはできると思います。

 仮称『阪神地域健康保険組合』をつくり、地域の企業には協会けんぽから組合に鞍替えしてもらいます。この活動は大変だと思います。

 組合には自治体も参加し、自治体が運営する国民健康保険事業も組合に委託します。
 乳児医療費の補助制度やインフルエンザワクチン接種助成制度などすべての事業管理を組合に委託します。

 地域で最強のワンストップ窓口をつくります。

 組合は、医療アライアンス(地域医療連携推進法人)にも参加します。
 アライアンス先であれば、健康診査は無料、予防のためのプログラムも無料で受けられるサービスを提供します。

 中学校3年間のうち1回は健診を受けるような社会になれば、生活習慣病の予防にも役立つデータが集まると思います。

 アライアンスに参加する医療機関が増えれば、地域の企業等はこの健康保険組合に加入しない理由が少なくなると思います。

 いくつかの規制緩和や法改正が必要ですが、今ある保険制度を崩すのではなく、現行制度で認められている企業立保険のような健康保険組合を地域で興し、サービスを充実させて加入者を募るので、大きな問題はないと思います。







広域診療網と病床確保

 小児や周産期に限らず、重度の熱傷や放射線被ばくなど頻繁には患者は発生しないが、ひとたび発生すれば高度な専門医療を必要とする疾患は多種多様です。

 これまでは概ね半径20km以内で確保されていた医療も、人口減少の深刻化で倍々と広がっていく事が予想されます。

 既に岩手県の沿岸部や石川県の輪島などでは類似の事象が発生しており、県の医学部附属病院まで救急車であっても2~3時間は走らせないと診療が受けられない疾患があります。

 まったくの私案ではありますが、遠く離れた診療機能を通年で買い取るような地域アライアンスも必要であると考えます。

 例えば熱傷治療チームの維持費が年3千万円だとします。
 50km先にあるエリアがこのチームを500万円でシェアに参加すれば、維持費は500万円軽減しますし、患者が来る可能性が僅かでも上昇するため稼働率向上も期待できます。
 50km先にあるエリアでは、重度の熱傷が発生した場合には受入可否の交渉をすることなく、搬送の一報を入れてすぐに救急車を走らせることでデッドタイムを最短化する事ができます。

 実際、医療過疎地では搬送時間中に治療のゴールデンタイムを逸してしまう事があるため、コンタクトに掛ける時間は最短化が望まれています。







大規模センター化

 患者数が多い心臓血管系の手術も集約化が想定されます。

 これまで500床規模の病院の100床を使って行っていた心臓血管系の手術が、1,000床規模の病院の全病床を使って行うような集約化が進むと考えられます。

 心臓血管系は急性心筋梗塞のように時間との闘いになる事が少なく無く、CT→血管造影→手術と進むにしても医療機関は重厚長大な設備を保有している必要があり、救急が重なれば順番待ちが生じてしまい診療が遅れる事も懸念されます。

 その解決策の1つとして集約化があります。
 10軒を1軒にまとめる事で、CTやアンギオの順番待ちの可能性は減らせられますし、これら放射線機器を心臓血管系に特化した装置で揃える事ができます。

 スタッフも専門性を持った人材を集めることができ、診療レベルの向上が期待できます。

 COVID-19の教訓で、院内感染で診療機能が完全ダウンという事を想定し1軒に全部を集約することはないと思いますが、考え方としては集約化に進むと思われます。







アライアンス間のシェアリング

 航空会社のアライアンスでは『コードシェア』という方法で、持っていない路線を確保したり、不採算な時間帯でも旅客機を飛ばしたりしています。

 あくまでコードシェアとすることで、その路線に係る資産は持たない、連携先と競合しないという事を明確にします。
 アメリカの航空会社が羽田⇔伊丹間に路線を持ってしまうと、伊丹空港にもスタッフを置く必要がありますし、JALやANAと競合していかなければなりません。

 同様に、医療の地域アライアンス間でもコードシェアのような事が起こり得ると思います。
 特殊な装置を用いる検査や治療は、例えば人口100万人に1台あれば足りるとすれば、複数のアライアンスの対象人口の総計に匹敵してしまうので、それぞれが資産を持つよりも、お隣の設備を借りる方が合理的です。

 医療の特性に『地域性』というものがあり、大病院でもおおよそ7割は半径20km程度の地元から来ている患者です。
 特殊な診療のために他地域へ患者を出したとしても、その他の大多数は地元の医療機関を受診しますので、経営上の脅威というよりは、経営の合理化の方が大きいと考えられます。







療養住環境

 医療提供体制が個別のものから地域全体のものに変わると、地域住民の生活にも変化が生まれると思います。

 それまで入院による療養が当然だと思ってきたことが、外来診療や訪問診療、遠隔診療などが充実することで自宅で過ごす人も増えると思います。

 医療が予防にコミットメントしづらかった事と同様に、病院での治療を終えた後の自宅等での療養について、住環境まで踏み込んでケアする仕組みはありません。

 しかし、地域における医療・保健・福祉のシームレス化が進めば療養住環境にも医療・医学の知見が入る事になります。

 地元のリフォーム業者等に対しアライアンスが研修を行ったり、何らかの認証制度を設けたりすることが考えられます。

 賃貸住宅等でも医療アライアンスとの結びつきが強まり、リハビリ中の人でも暮らしやすい賃貸住宅のあっせんなどにより、人口減少・高齢化の中でも不動産経営が継続できるようになるかもしれません。







地域の7割は医療アライアンスに関係

 療養住環境だけでなく、あらゆる事業で地域医療アライアンスとのかかわりが生まれると考えます。

 宅配事業者などでは宅配便だけでなく食事や薬の配送、ときには患者自身を運ぶかもしれません。

 自転車屋さんが車椅子の修理に出張し、家電屋さんが医療機器のレンタルをするかもしれません。

 超高齢社会を考えた時、あらゆる産業に比して医療が占める割合が大きくなることから、医療産業に関わらずに事業を営む業種は少なくなると思います。

 地域医療アライアンスが定着すれば、そこから発生する仕事に携わる人が地域の生産年齢人口の7割を超えることもあり得るのではないかと思います。







しぼむ総事業費

 高齢者が増えることでヘルスケア関連の市場規模は増大化しますが、いつかは負担しきれなくなり破綻します。

 破綻させないためにサービスが削られ、単価は下がっていくことが予想されます。

 医療の場合、あまり単価を下げると質が悪くなり健康被害も懸念されますので、おそらくサービス利用の機会が限定されると思います。

 単価は維持されても利用機会が減れば、トータルでの費用は減る事が予想されます。

 まずは生産年齢人口の相対比・絶対数ともに減るため拠出する側がスタックします。

 加えて、高齢者人口が減少に傾く事で、総事業費はみるみる減っていくと考えられます。

 その中でもビジネスが継続できるようにするためには、総事業費の減少に耐えうるビジネスモデルが必要になります。

 コンビニでは無人店舗が増加します。開店準備のための人材育成は不要となり、撤退するときも人員整理は不要になります。
 撤退リスクが減るので、出店のチャレンジがしやすくなり、コンビニは適材適所に存在し、適さない場所には残らないでしょう。

 ヘルスケア周辺ビジネスも、こうした柔軟性あるビジネスモデルを描くようになると思います。







医療サービスで移住

 社会人生活が40年、引退後は20年くらいで人生を終えるという20世紀の形は変わりつつあります。

 仕事を辞めるのが70歳となれば、高卒なら50年以上も働くことになります。
 そこから100歳まで生きられるようになれば引退後30年、その頃にはわが子が70歳以上になっています。

 健康で長生きができる社会になると、高齢者になってからの生活に軸を置いた『住みやすさ』が評価されるようになります。

 予防が充実していて病気にならずに老衰で亡くなる方が多いというのが、地域のPRになるかもしれません。

 受診のために出かける必要がないという事が、移住の決め手になるかもしれません。

 インターネットや物流網が発達し、都会でなくても色々な物が手に入る様になった現在、『どこに住むか』よりも『どんな場所に住むか』という面にこだわる人が増える可能性があります。







私見ばかり

 今回の記事に客観的な情報はほとんどありません。

 基本的に私見です。

 こんなことになるのではという考えを羅列しました。

 自身でも、数年後に読み返してどう思うのかわかりませんが、年をとっても生活に困らない社会があって欲しいと思っています。







参考リンク

厚生労働省: 地域医療連携推進法人制度について, 医療法人・医業経営のホームページ

兵庫県: 地域医療連携推進法人とは

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明日の台風に備えて | NES株式会社

 今夜から明日にかけて関東や伊豆諸島には台風の影響が出ると見られています。

 特に伊豆諸島では電柱が折れるほどの強風が予想されており、すでに強い風が吹いているようです。

 雨の量も伊豆諸島では24時間で300ミリ、関東や東海でも100ミリを超える場所があるようです。




明日はこうなる

 伊豆諸島では様々な被害が出ることが予想されています。

 関東でも太平洋側では高潮や暴風の影響が出る可能性があり、電力会社でも警戒を呼び掛けています。

 鉄道は既に計画運休が発表されていますので、出勤はできても帰宅できない可能性があります。

 停電が起こればスーパーやコンビニ、自動販売機などあらゆるものが臨時休業になります。

 大雨が無ければ自家用車は動かせるかもしれませんが、冠水や倒木などがあれば大渋滞が予想されます。




計画運休

 JR東日本によれば、明日は一部で計画運休、それ以外でも運休の可能性がありそうです。


 JR東日本千葉支社発表の資料では鴨川などに向かう外房線、内房線が午前で打ち切りとなる予定です。

 銚子や鹿島へ向かう電車も同様です。


 下図は2019年の荒天で鉄道が運休した際の千葉市内の様子です。

 撮影者は出張で幕張に行っていたので、この日はホテルを取っていましたので困りませんでしたが、少し前まで幕張で一緒に居た知人は千葉県内の自宅には戻れず、東京へ行って宿泊しました。

 明日は出勤できても帰宅できない、そのような天気です。

 はじめから出勤しないという選択をとるか、今からホテルを予約するか、車中泊覚悟で車で行くか、何か策を持っておくと良いと思います。

[Link] 直面、帰宅困難者(千葉)…帰宅難民が多発した千葉みなと駅に居合わせました




停電

 台風ですから停電の可能性もあります。

 2018年の台風21号、2019年の台風15号・19号は記憶に新しいと思います。

 今回の台風による停電が警戒されている千葉では、2019年には鉄塔の倒壊や、ゴルフ練習場のネット倒壊など暴風による大規模な被害がありました。

 我々は2018年の台風21号で52時間の停電を経験しました。

 停電対策としては、停電しても強く生き延びられるようにしておくことです。

 もっともわかりやすい対策は発電機や蓄電池を使って電力を供給し続けることです。

 その実証結果についてか下記をご参照ください。

[Link] 52時間停電で実証 現場適応性の高いNESの強靭住環境


 電力が数日無くても生きていくことはできますが、かなり不便です。

 もし、今はまだ台風が来ていないのであればスーパーでもドラッグストアでも良いので、食糧などを調達しに行きましょう。

 明日を予想するならば、下図のような状況でしょう。

 停電によりレジも空調も冷蔵庫も使えないので臨時休業になるか、お店は開いても物流が途絶えて日配品などは空の状態になるかのいずれかです。物流が途絶える理由の1つが信号のブラックアウトです。身動きが取れないほどの大渋滞が起こります。




我々は発電機

 2018年の台風では、メインの電源を発電機でまかないました。

 まだ9月4日は暑かったので、エアコンを使って過ごしました。冷蔵庫も使いました。光回線がダウンしていたのでネット等を使えませんでしたが、ビデオを観ることはできました。

 約50ccのエンジン、原付バイク程のものですが、それを何十時間も運転させ続けて電力を地産地消しました。

バイクのホンダから出されている原付バイクほどのエンジンを積んだカセットガスを燃料とする発電機です。約10A程の発電ができます。キャリーバッグのように転がして移動できるので、水平移動にはさほど力は要りません。
ホンダの4ストエンジンオイルです。エネポを動かす際にこれが無いと始まりません。発電機を買って、ガスボンベを用意して安心していると、停電してから困る事になります。
カセットガスの元祖であるイワタニのガスボンベです。発電機は2本1組で使いますので偶数で保管しておくと良いです。最短では1時間くらいで2本使います。長いと2時間以上ですが、12本でも半日分程度です。

[Link] HONDA: 発電機 EU9iGB 取扱説明書




蓄電池

 2018年には無かった物ですが、2021年春には蓄電池を調達しました。

 この蓄電池の特徴は出力400Wまで対応できる点です。

 少し大きめの消費電力の家電品も使う事ができます。

 当方ではバイクに載せて遠方でも使えることを確認しています。

 この蓄電池は新型コロナウイルス感染症の臨床でも使用しました。まさに写真に映っているものを現場に持ち込んで実証試験を実施しています。
※.メーカーとは関係なく自主的に実施した試験です。
※.メーカーからの協力は一切受けておりません。本体の調達も検証費用もメーカーから1円も支援を受けていない弊社の独立した検証です。

電池容量120,000mAh(444Wh)、iPhoneを約700時間、電気毛布を約18時間、車用炊飯器を約3回利用できる容量です。正弦波AC400Wの出力です。
折り畳み式で81Wハイパワー発電。ポリエステル600Dの生地を採用



冷蔵庫

 冷蔵庫は停電すれば停止します。当たり前のことですが、その後はどうなってしまうのかについては意外にもデータが少ないです。

 弊社では実際の家庭用冷凍冷蔵庫を使って実験をしました。

 幾度か実験を行いましたが、概ね同じような結果になっています。

 冷蔵庫は約1日で常温に近づいてしまいますので、食品は腐っていく事を想定するべきだと思います。

 冷凍庫は、開けなければ0℃に近い温度をキープします。

 この温度データを見て、どのスペースに何を入れるべきかシミュレーションしておく必要があります。

[Link] 停電時の冷凍冷蔵庫の庫内温度調査の公表について


 我々の調査データが医学論文に掲載されました。

[Link] 瀧澤 裕樹, 小川 理, 西田 藍: 令和元年房総半島台風後の真夏日,長時間停電時におけるインスリン保管状況に関する質問票調査, 日本糖尿病学会




最新研究:クーラーボックス

 今週から始めた実験なのでまだ結果が出ていないのですが、クーラーボックスを使った保冷試験を実施中です。

 24時間経過の最新データを初披露します。

 今週は秋らしい天気でしたので昼間は30℃近く、晩は20℃近くになっています。

 そのような中でクーラーボックスに氷を入れて実験してみたところ、24時間後でも5℃あたりを保っています。

 前述の冷蔵庫のデータをご覧いただくと、冷蔵庫は最初から10℃程で24時間後には15℃を超えていますので、クーラーボックスに期待が持てるデータを得ています。

ダイワの最高峰クーラーボックスです。容量は27L、自重は6.9kgです。極厚6面真空で4~5日の保冷力があります。



浴槽

 台風で断水は起こりづらいのですが、マンションなどでは揚水ポンプの停止などで断水が起こります。

 こうした自然災害を前にしたときは、できれば浴槽に満杯の水を張っておくことをお勧めします。

 私たちは、風呂自動運転で湯を最大量まで張り、その湯を桶で取りながら使います。浴槽の湯を腐らせないために慎重に取り扱います。

 そして、使わないときは蓋をして汚れ防止と、湯温維持に努めます。台風シーズンであれば最低気温は20℃前後、湯温も20℃くらいで落ち着くと思います。沸かし直しをする際のエネルギーはなるべく最小化するように気遣っています。

 2018年の台風21号ではガスと水道は使えましたが、停電が続きました。発電機の電力で給湯器を起動させていたので、給湯時間を1分でも縮められた方がよかったので、この保温蓋は役に立ちました。




トイレ

 断水しても、下水が開通していれば水洗トイレは使えます。

 実際に試してみました。上水道を止栓した状態で排水、便器にあった水(汚物)は流れていきます。

 便器に水は貯まらないので、風呂から桶で水を運んできて満たします。


 もし、冠水して下水管が使えない場合や、水をストックしていない場合はドライトイレが使えます。

 方法は動画を見てもらうのが早いのですが、ゴミ袋にオムツを入れて、便座に座って用を足すという方法です。

 子供やお年寄りでも、いつもと同じように排泄するだけで済むので、トレーニングが要りません。




生命を守る行動

 災害時、最大の目標は生命を守る事です。

 次に家屋などの財産を守る事が挙げられるかもしれません。

 生命を守る行動とは何でしょうか。食事は我慢できてもトイレは我慢できない、しかしお腹も空きます。

 ヒトが生きるために必要なこと、サバイバルを考えると良いと思います。

 この1日、無理に出勤や登校をして生命を落とすくらいなら、お休みするという考えを持っても良いと思います。特に今はコロナウイルスの治療法が確立されていないので、感染リスクが高い場所に長時間の滞在を強いられる可能性を考えると、家から出ないという選択肢は生命を守る行動と直結します。

 空腹はどこまで我慢できるかわかりませんが、食糧は備蓄するか、今から買いに行くか、誰かに借りるか、有る物で工夫するか、色々と考えてみましょう。

 火が使えるかどうかは大きく左右します。ルクルーゼのような鍋があると、短時間の加熱でじっくり調理できるので、安全で省エネです。

 可能であれば、電力を確保すると良いです。

 発電機、蓄電池、太陽光発電、何らかの設備を持っていると強いですが、小さなところから言うと、停電前にスマホとモバイルバッテリは充電しておきます。

 出来る限り、スマホの電源は消費しないように準備します。例えば、使っていないアプリは『無効化』や『削除』をして、電池消費を抑止します。機内モードにするのも良い手段です。停電してから設定していると、それだけで電池を消費してしまいます。

 風速30メートル以上が予想されている場合、早めにシャッターを閉めたり、ベニヤ板を貼って飛来物からガラスを守って、巣ごもりを始めましょう。

 皆さんの安全を祈っております。

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BLOG 講演

臨床工学技士100人カイギ | NES株式会社

 100人カイギとは、1回5人のスピーカーで構成するイベントを20回開催し、スピーカーが100人に達した時点で解散するというものです。

 それの臨床工学技士版が森ノ宮医療大学の西垣孝行氏ら有志の集まりで運営されています。

 2021年9月18日に第18回目を迎え、いよいよラストの第20回目が見えてきました。

[Link] 臨床工学技士100人カイギ




『臨床工学技士100人カイギ』とは

 「100人カイギ」とは、それぞれの地域や分野で活躍する面白い人の話を聞きながら、人と人とをつなぐイベントです。100人カイギは「会議」ではありません。著名であることや肩書きなどは関係なく、『人を知ること』、そして『人と人がつながること』を目的としています。 

 2016年1月に「港区100人カイギ」として始まったこのイベントは2021年7月現在、全国1万人以上が参加しています。カテゴリは地域別がほとんどですが、テーマやコラボレーションで行うこともあります。医療職種をテーマとした100人カイギは臨床工学技士が初めてとなります。また各種、医療職をテーマとした100人カイギが発足しています。

 私たちは、臨床工学技士を世の中の人々に知っていただくことや、臨床工学技士の未来を彩るようなゲストを100人お招きします。学生から定年退職した方まで、さらには他職種とも壁を取り払って交流することを目的としております。

 きっと100人目が登壇するころには、従来とはまるで異なる、ワクワクするような未来を想像できるようになっていることでしょう。参加者の誰もが、一歩踏み出す文化を創りたいと考えております。

▼タイムスケジュール▼※場合により変更することがございます

19:00~19:15 概要説明/100人カイギとは
19:15~19:20 アイスブレイク(5min)
19:20~19:35 登壇者①(10min)
19:35~19:50 登壇者②(10min)
19:50~20:05 登壇者③(10min)
20:05~20:10 休憩(5min)
20:10~20:25 登壇者④(10min)
20:25~20:40 登壇者⑤(10min)
20:40~20:50 ブレイクアウトルーム (10min)
20:50~21:00 次回案内 / 写真撮影

 「臨床工学技士」という1つの職種でも、そのビジョンや働き方、取り組みは様々です。病院に限らず、メーカー、教育機関、あるいは医療とは全く違うキャリアを築いている人もたくさんいます。100人カイギでは、そのような人たちと出会うことができます。

 100人カイギは、職場や近隣施設とのつながり、各技士会などの枠を更に超えた新しいコミュニティです。新しい繋がりが、新しい視点や目標に繋がります。「臨床工学技士100人カイギ」をきっかけとした登壇者のブランディングも目標にしています。学生や若手の臨床工学技士にとっても自分たちの将来を考えるきっかけになります。もちろん、学生の登壇も予定しています。
ぜひ、一緒にワイワイ楽しみながら、イベントを盛り上げていただけましたら幸いです。




臨床工学技士100人カイギ vol.18

 第18回は2021年9月18日19時スタート、ゲストは以下の5名です。

  • 大塚招さん
  • 森優子さん
  • 光家努さん
  • 長田優斗さん
  • 安部貴之さん

[Link] OneCE: 臨床工学技士100人カイギ Vol.18




【登壇予定】 臨床工学技士100人カイギ vol.19

 当社代表の西謙一が2021年10月開催の臨床工学技士100人カイギに登壇します。

 お話する内容については調整中ですが、これまでの『邪道』な臨床工学技士人生を振り返る内容になっています。

 当社の西と、100人カイギの西垣氏との出会いは2004年です。当時、西が病院実習として国立循環器病センターの臨床工学技士さんにお世話になったことが始まります。
 2010年には西が国立循環器病研究センターの職員となったため、西垣氏とは同僚として働いていました。ただし、西垣氏は病院、西は研究開発基盤センターという組織も建物も異なるものでした。
 組織体系は異なりましたが、コミュニケーションを取り合っていました。

 今回はそのような縁もあって招聘して頂いたと思います。
 10月9日はフルパワーで臨みます。




臨床工学技士100人カイギ vol.19

 第19回は2021年10月9日19時スタート、ゲストスピーカーは今回も5名です。

  • 菊池雄一さん
  • 中島章夫さん
  • 大塚勝二さん
  • 石飛航太さん
  • 西謙一

[Link] OneCE: 臨床工学技士100人カイギ Vol.19

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BLOG 医工連携 療養住環境

義務教育医療とセルフメディケーションによる医療崩壊回避 | NES株式会社

 ディズニーランドやUSJの入場料は年々上昇していますが、エリア拡大もしながら入場者数は増加しています。
 施設全体の入場料総額が増えても、それを負担する人が居るので破綻しません。

 高齢者人口の増加や高度な医療の普及などの要因から、医療費総額は増加しています。
 総額が増加しても、それを負担できる人が居れば問題ないのですが、社会保険システムの原資である保険料負担をする総人口は減少傾向、負担額が大きい現役世代である生産年齢人口の高齢者との比率は低下が進み、単価を引き上げる方法で何とかしのいでいるという状況だと思います。

 このままでは、社会保険システムは破綻する可能性があります。その回避策の1つに医療給付費の減少、すなわち保険で医療を受ける額を減らす方法があります。

 その方法として『義務教育医療』と『セルフメディケーション』について、検討すべきかと思います。

 今日は、そのあたりを深く掘り下げてみたいと思います。




給与の何割まで払えるか?

 サラリーマンだと『給料天引き』として健康保険料、厚生年金保険料、源泉所得税などが引かれていると思います。

 当社の所在地である兵庫県の令和3年の健康保険料を見ると、標準月額20万円の人は、介護保険第2号被保険者で24,080円、非該当で20,480円です。これに厚生年金36,600円を加えて額が社会保険料として納められます。

 この額の内、半分が被保険者(社員個人)の負担、もう半分が会社負担です。
 会社負担だから自分のお財布にダメージが無さそうですが、会社の利益が減る訳ですから、社員が押しなべて全体の負担を強いられていることになります。

(クリックで大きな画像)

 月給20万円の30歳の人は健康保険と厚生年金で28,540円天引きされていますので残りは171,460円です。ここから源泉所得税などが引かれるので手取りは15万円くらいです。

 家賃や光熱費で8万円、子供のオムツなど養育費が2万円、食費が3万円、貯金が2万円、娯楽費はゼロという家庭もあるでしょう。

 もし、健康保険料が5%増えると月額1万円、折半で5千円の負担増です。貯金を減らして子供の教育レベルを下げるか、食事を質素にするか、厳しい選択が迫られます。

 健康保険料が10%増えると、もはや子供を持つ事は絶望的になりそうです。

 もし独身であれば、家賃や光熱費で6万円、食費等を1万円、娯楽2万円、貯金3万円として月12万円で生活できるとすれば、社会保険料としてあと3万円増やせます。
 ただし、将来に希望を抱く若者は減るでしょう。結婚資金は貯まらないですし、結婚しても子育てより共働き、高齢者のために働き続ける世の中になってしまいます。
 会社の負担も厳しいです。月給20万円の人で3万円増えるという事は総額で6万円増、すなわち保険料が今の10%から40%に増えることになります。社員全体では相当な金額になります。

[Link] 協会けんぽ: 都道府県毎の保険料額表

[Link] 国税庁: 民間給与実態統計調査

[Link] Yahoo!!: 知っていますか?「年収300万円」を超える人・超えない人の差

[Link] NIKKEI Woman Smart: 年収300万円はリッチ 世界から考える日本の幸福度




現実として負担は増えるのか?

 令和3年度、介護保険の負担が始まる前の40歳未満の健康保険料は10.24%、40歳以上の介護保険負担者は12.04%です。

 この負担率は年々増加しており、2011年は9.52%と11.03%でしたので7.5%も上昇しています。

 今後も増える事は容易に想像できます。
 団塊世代が全員75歳以上になるのは目前、団塊ジュニア世代もやがては高齢者になります。団塊ジュニアの時代でも年200万人超の出生がありました。令和の時代、80万人台と3分の1程度まで落ち込んでいます。

 団塊ジュニアが全員65歳以上になるのが2040年、令和生まれが20歳になり社会に出る頃、in/outの比が3倍近くになります。

和暦西暦40歳未満
健康保険料
40~64歳
健康保険料
厚生年金保険
平成21年度20098.20%9.39%15.704%
平成22年度20109.36%10.86%16.058%
平成23年度 20119.52%11.03%16.412%
平成24年度 201210.00%11.55%16.766%
平成25年度 201310.00%11.55%17.120%
平成26年度 201410.00%11.72%17.474%
平成27年度 201510.04%11.62%17.828%
平成28年度 201610.07%11.65%18.182%
平成29年度 201710.06%11.71%18.300%
平成30年度 201810.00%11.57%18.300%
平成31年度 201910.14%11.87%18.300%
令和2年度 202010.14%11.93%18.300%
令和3年度 202110.24%12.04%18.300%

 では、65歳以上に負担してもらいましょうという事になりますが、現在45歳を過ぎてそれなりに給料を貰っている団塊ジュニア世代であっても、厚生年金18.3%に見合った年金を貰えるかわかりません。少なくとも70歳までは満足な額を貰えないと考えれば、安易に65歳以上の負担を増やそうとしても、支払えない人が続出する可能性があります。

 65歳以上から取れない分は、現役世代から取られてしまう可能性は否定できません。

[Link] 協会けんぽ: 都道府県毎の保険料額表




医療は何割の自己負担が限界?

 ひと昔前の保険医療といえば、被保険者本人の窓口負担は1割でした。
 筆者は土建組合という滅多に病院に行かない人の集団に居たので、本人負担はゼロでした。レントゲンも薬も手術もタダでしたが、休んでいる暇のない職人さん達なので、周囲で保険を使うとすれば花粉症の薬を処方してもらう時くらいでした。

 いま、3割負担だとしても高額療養費制度があるので手術をした月は8万円程が自己負担の上限になっています。

 しかし、このまま保険財政がひっ迫すれば5割負担や8割負担もあり得ると思いますし、高額療養費制度の自己負担上限も大幅に引き上げられる可能性があります。

 外来受診では、仮に5割負担になったとしても払えない額では無いと思います。
 画像検査などがあったとしても1回の診療で保険算定は3万円程度、5割負担で1万5千円程度です。

 手術などの処置が入ると一気に数十万円まで跳ね上がります。例えば『もうちょう』と呼ばれる虫垂炎の手術をした場合、ざっと30万円程になります。3割負担なら9万円なので高額療養費で少し戻って来るかどうかというところです。

 自己負担割合は5割まで引き上げても何とか払えそうですが、高額療養費制度との兼ね合いが重要になりそうです。




融資制度が先行?

 国の財政が厳しい中での医療保険の窓口負担増が実施される場合、不足を補う補助(助成)制度がつくられるには時間がかかると思われます。

 おそらく、融資制度が先行するのではないかと考えます。

 健康保険証はマイナンバーと連係されます。金融機関などの情報も連係されます。厚生年金や納税情報も連係されます。
 医療機関の窓口での支払いはキャッシュレス化され、そもそも『お金を支払う』という行為自体が窓口では行われず、診療を終えたら診察室からそのまま直帰する事になると考えます。

 処方箋は予め選択したバーチャル薬局にデータが飛ばされ、帰宅するとドローンで配達され、薬剤料なども自動支払いされと思います。

 もし、残高不足で支払いができない場合、それを理由に受診控えが起こらないように、国が無利子や低利子で融資する制度ができるのではないかと考えます。
 医療機関にとっては、回収困難な貸倒金のようなものが減り、国としては保険制度維持ができ、『健康で文化的な最低限度の生活』は担保できるようになると考えます。

 ただし、借りた金は返さねばなりません。




セルフメディケーションが普及する

 『リンデロン』(軟膏)や『ロキソニン』(錠剤)がドラッグストアで処方箋なしで買えるようになり、外来受診をする暇が無いという現役世代が便利に利用しています。

 もし、保険医療の自己負担割合が増えれば頭痛や胃痛などで外来受診する人は減り、自己判断で治療を試みる人は増えるでしょう。

 AIの普及もあり、虫刺されなど原因がある程度わかっている炎症なども、自己判断で治療されるようになると思います。

 20年前であればカゼ薬、目薬、湿布薬くらいが家の救急箱に入っていたのが、消炎鎮痛剤やステロイド外用薬はもはや普遍化しました。

 現在の診療報酬制度では、調剤薬局でお薬を受け取ると薬剤技術料などの手間賃のような物がかかり、医薬品によっては薬剤料より高いという事がざらにあります。
 前述の『リンデロン』は、薬価表で見ると『リンデロンVG軟膏』が1g27.70円となっています。手元にあるチューブは5g入りなので138.5円です。この処方箋を持って調剤薬局へ行くと薬剤技術料として調剤基本料が200~400円程、調剤料が100円かかりますので、薬剤本体より周辺費用の方が高くなっています。
 医師から発行された処方箋に『リンデロン』と書いてあった場合、患者は保険適用のある調剤薬局へ行くか、全額自費のドラッグストアへ行くか選ぶ事になります。もし、保険を使って5割負担で300円のお薬が、ドラッグストアで250円で売っていたら、ドラッグストアの方が自己負担が少なくて済みます。
 更に言うと、5割負担で300円という事は保険者も300円負担する事になりますが、患者がドラッグストアに行ってくれれば保険者の負担はゼロで済みます。この不公平感を和らげるため、リンデロンをドラッグストアで買うと100円のクーポンを保険者が発行してくれるとなれば、ドラッグストアで買うリンデロンは150円になります。

 色々な面から、セルフメディケーションは進行していく可能性があると考えます。

 高血圧薬(降圧剤)や抗菌薬など用法や用量を誤ると危険なお薬は今後も処方を必要とすると思われますが、痛みを和らげたり炎症を抑えたりする治療法は、セルフメディケーションが進むと考えられます。

[Link] 田辺三菱製薬: 薬剤技術料







処方箋と自己診断の境界領域にニーズ

 外来受診して医師の診断を受ければ、正しいお薬が処方され、中には医師の処方箋が無ければ手に入らないお薬も服用できるかもしれません。

 医師の存在は必要不可欠ですが、保険医療の自己負担増により自己判断によるセルフメディケーションも増えると考えられます。

 ただし、患者自身に自己判断能力があれば良いのですが、ネットで見て薄い知識の中で誤った薬を服用する危険もあります。
 『これだけはダメ』というお薬を指導してあげられるようなサービスには、一定の価値があると思われます。

 例えば、胸が痛いという事で痛み止めを飲もうとしている人が居た時、その痛み方が心臓疾患のサインを疑うべきであったとき、痛みを軽減してしまうと発見が遅れてしまい致死的な状況に陥るかもしれません。
 誰かが気づいて止めてあげれば良いのですが、痛みから逃れたいという事と、無駄にお金を払いたくないという心理から、自己判断してしまう可能性はあります。

 ブレーキ役だけでなく、アクセル役も求められます。
 『毛虫に刺されて腫れた』『賞味期限切れの牛乳を飲んで気持ち悪い』という相談を受けて、候補となるお薬を紹介する役割も必要だと思われます。
 制度はどうなるかわかりませんが、自由診療の範疇で医師が1回千円で電話相談を受けても良いのではないかと思います。お薬代と合わせて2千円だとしても、外来で順番待ちして5割負担とあまり変わらない額だと思います。




リテラシーを高める義務教育

 いまの義務教育の中に、医療に関する教育はほとんど入っていません。

 応急処置を習う事はありますが『習った』という既成事実はあっても、習得していつでも応用できるというレベルではないと思います。
 AEDや心肺蘇生が典型例だと思います。講習は受けたが、できるとは思えないという人が多く居ます。

 そもそも、胸を押さえながら倒れる人は心筋梗塞以外にどのような場合があるのか、そこから指導しているケースは少なく、AEDや胸骨圧迫のテクニックだけ教えている事が多いです。

 痛みの伝え方も教わる事はないです。
 シクシク、ズキズキ、ジンジン、ガンガン、ジワリとなど、表現方法が色々あり、その伝え方によって疑う病気が変わることもあります。

 頭痛についても、痛み方には色々とあります。
 『金属バットで頭を殴られるような痛み』とは、脳卒中のときに使われる事がある表現ですが、そもそもバットで殴られた経験がある人は少ないですし、近年は体罰を避けるようになったので拳で殴られた事もない子供は少なくありません。

https://youtu.be/c_ATfUKNaAs
https://youtu.be/Jed-hO-fkBE

 小中学校で可能な限り、病気について教えていく事で、自分の身体への診断能力を養う事ができると考えます。

 日焼けして皮がめくれるのは普通だが、水ぶくれができていればケアが必要である。
 鼻水が出るのはよくある事だが、妙なニオイがするときは蓄膿症を疑うべきかもしれない。
 お酒を飲むと呂律が回らなくなるが、そうでないときに呂律が回らないのは脳卒中を疑うべきかもしれない。

 小学校4年生から中学校3年生までの6年間、月2時間ずつでも100時間分くらいは教えられると思います。

 今の子供たち、その親たちはよっぽどでない限りは受診できないような社会になっているとすれば、今からセルフメディケーションの質向上に向けた教育が必要だと考えます。

https://youtu.be/0uVz4GQZHWQ






早期発見、早期治療も教育から

 がんをはじめ、多くの病気が早期発見による早期治療により、良い結果が得られる事があります。

 本当に早期発見が良いのか、時間を割いて苦しい思いまでして胃カメラを飲む必要があるのか、という話をよく耳にします。

 小中学校の間に早期発見・早期治療の利点を知り、同級生の家族がそれで助かったというエピソードまで添えられたら、一生忘れないと思います。
 中学生になったら糖尿病の健診を受け、社会人1年生になったら一度は胃カメラを飲み、その後は定期的に健診を受けて病気を見つけ出す、それが当たり前の社会になると健診の受診率も自然と高まると考えられます。

 健診受診率が高まれば当然ながら早期発見ができ、治療にかかる費用も低減できる可能性があります。

 医療費が逼迫する中で、例えば高血圧の人を増やさないための取組みは、義務教育から始まるかもしれません。




看護師配置

 義務教育に『家庭の医学』のようなものを導入するにあたり、現任の教員を再教育する必要はないと思います。

 いま、徐々にですが学校に看護師を配置する動きが出てきています。

 看護師には『潜在看護師』と呼ばれる、免許は持っているが看護師として働いていない現役世代の看護師が70万人以上居るとされています。
 その数パーセントが小中学校での教育に携わるだけで、全校への配置が可能になります。

 看護師をはじめ医療有資格者は必ず養成課程を経て、臨床実習も経て、国家試験に合格し、免状交付を受けていますので、誰もが一定水準以上の医学・医療の知識を持っています。

 ときには医師に講師を務めてもらう事も有意義ですが、日常的な教育として定着させるためには看護師の配置が期待されます。

 学校への看護師配置は『医療的ケア児』の普通校への通学とも密接に関わります。
 医療的ケア児が通学を希望したから看護師を配置するのではなく、いずれはどこでも看護師が配置されているので、学校で一定のケアが受けられるのが普遍化するのではないかと考えます。




1クラス3~4人、医療従事者

 医師や看護師ら医療従事者(有資格者)は200万人以上居るとされています。

 今後、看護師300万人時代到来などとも言われていますが、医療従事者が増える事は間違いなさそうです。

 看護師の新卒が8万人で40年代分が集まると320万人です。現実は潜在ナースになってしまう人も居るので、日本人だけでこの数になるのは難しいかもしれません。

 令和2年の出生数は84万832人でしたので、もし看護師の新卒が8万人という時代になれば1割が看護師という事です。現状の5万人余りの数字でも同級生の6~7%が看護師です。

 1クラス35人ならば、その内の3~4人は看護師になり、あと1~2人は医師や技師など他の医療従事者になる計算です。




医療従事者は高所得者ではない

 医療従事者は高給取りだという『イメージ』が先行している感がありますが、高所得とは言い難いです。

 年収1千万円を超える医師が居るのは確かですが、週6日以上出勤し、始業時の医局カンファレンス前に病棟をラウンドしたり申し送りを聞き、終業後に1日分のカルテ(診療録)を仕上げたりと週40時間労働を超えているので、時間単価は意外に低いのが日本の医療です。

 下のグラフは業種別の平均給与です。
 医療が401万円、エネルギー系は倍以上の824万円が『平均』です。金融やITも高いです。
 医療は平均給与から見るとサービス業と同等です。提供している内容もサービス業に近いですが、様々な法律の下、原則的に全員が国家資格を持って仕事をしているサービス業は他にありません。

 同級生の1割以上が平均給与が『並』の職業へ就くことになります。

業種別の平均給与

[Link] 国税庁: 民間給与実態統計調査




医療は巨大産業

 全世代を通じて、所得の1割程度が健康保険料として徴収され、更に自己負担する診療費として年数万円~数十万円の出費となると、個人消費に占める医療費の割合は衣食住に匹敵するか、それ以上の割合になる可能性があります。

 人口減少時代ですので建物需要は昭和や平成ほどの伸びは期待できません。
 交通インフラなども老朽化のリニューアルがあっても新規路線は期待できません。

 飲食や観光への考え方は、COVID-19で大きく変わりましたが次世代ではもっと新しい考え方が出てくると思います。

 その時代において、子供たちが選ぶ進路における『医療』というものの位置づけはどうなるでしょうか。

 『人の役に立ちたい』『多くの命を救いたい』という心から生まれる医療への進路だけでなく、合理性や経済性を追求したい、真正面から『稼ぎたい』と医療分野に入る人が増える可能性があります。

 医療に対するリテラシーを高めることで、医療という産業に対するイメージも変わり、上手く経済が回れば高齢者医療費の負担の在り方も変わるのではないかと考えます。







在宅医療にも貢献

 いま現在、多くの家庭で医療も介護も未経験という事で、患者や高齢者を病院や施設へ預ける以外の選択肢を持たないというケースが多いと思います。

 家で痰を吸引するのは難しい、点滴はできないと最初から諦めているケースも多くあります。

 しかしながら、医療に対するリテラシーが高まり、また身近に医療従事者が増えればこの考え方も変わって来ると思います。

 家族の協力を得ながら在宅で人工透析を毎日施行する事も難しくありません。
 テレワークが定着した2020年以降、働き方もフレキシブルになり、在宅で治療を受けながら仕事や学校も並行させる事ができるようになってきました。

 義務教育で医療を学んだ子供たちが、特定の病気に詳しくなくても、知りたいと思ったときに調べ方を知っていれば状況は今と大きく変わります。
 兄弟や友人が大病を患ったとき、それを治すのは病院であったとしても、治療後のリハビリは在宅でもできるかもしれません。その在宅医療に並走できるリテラシーを持つ人が増えれば、患者も積極的に在宅医療を選ぶかもしれません。




感染症対策にも期待

 COVID-19の流行拡大により、社会でも感染対策が広がりましたが、その対応力は千差万別でした。

 食レポなどで『消毒したからキレイ』『マスクをして安全です』というナレーションが入ったりしていましたが、医療従事者からは疑問の声が聞かれます。

 例えば消毒は、菌やウイルスを激減させる効果があったとしても、ゼロになる保証はない手段です。
 大腸菌で言えば15分に1回の細胞分裂、すなわち1個あれば15分後には2個、更に15分後には4個と増えていきます。
 消毒しても、感染しない訳ではありません。

 消毒の方法にも注意が必要でした。
 消毒液を浸した布でテーブルを拭いても、途中からは菌やウイルスを薄く伸ばしており、逆効果も懸念されます。

 どのような状況では感染が起こるのか、正しく教育し、高い水準で議論できる社会になれば、感染制御力も高まると思います。
 COVID-19に集中すれば消毒剤は限定的ですが、菌やウイルス毎に特効薬や無効薬があるので『アルコール消毒したから大丈夫』と過信すると、アルコールが効かないものによる感染症を発症する恐れがあります。

 1つ1つを覚えておく必要はありません。
 菌やウイルスによって消毒剤が異なることだけ知っていて、あとは流行に合わせてネット検索して消毒方法を知るだけで良いのです。この1歩、非常に重要です。

 『正しく恐れる』という言葉がよく聞かれた1年ですが、リテラシーが高まれば、正しく恐れる事もできるようになります。







医療崩壊させたくない

 今回の記事は私見で述べさせていただきましたが、筆者の考えているところは、医療崩壊させたくないという事です。

 保険制度が崩れれば保険医療が混乱し、それに伴って医療自体がおかしくなる可能性があります。

 従来であれば助かった病気が、何らかの混乱により助からなくなってしまう事は避けたいと思います。

 1億円の診療を受けられるようにするかどうかという議論も必要ですが、1千円のお薬をどのようにして手に入れて、どのように使うかについて、まずは考えてはどうかと思っています。

 私のデスクにはリンデロンの大衆薬と、ロキソニンの大衆薬があります。何度か外来受診した後、この薬で症状が改善されるというケースを自己判断して使っています。
 医師の皆さんに対し、私の受診料が蒸発してしまって申し訳ないと思う一方で、保険を使わず自己負担で治療ができているので小さな社会活動かなとも思っています。

 まずは保険を破綻させない、そして医療を崩壊させない、その思いで記事を書きました。

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防災の日 | NES株式会社

 本日は防災の日です。

 1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒発災ですので、今年で98年が経過したことになります。

 まだ調理機器や消火設備なども発達していない時代の正午2分前、被害が広がったであろう事が容易に想像できます。

 死者105,385人、全壊・全焼・流出した家屋は293,387軒です。
 2021年3月現在の東日本大震災の死者・行方不明者は1万8千人余りですので、関東大震災の甚大さが伝わってきます。

 関東大震災の直後には大雨が降ったとされ、土砂災害も多発したとの記録があります。

 関東大震災の最中に流言飛語(流言蜚語)がありました。
 富士山大爆発や井戸に毒が盛られたなどのデマが流れた記録があります。警視庁『大正大震災火災誌』をまとめた文献にも類似の記載がありますが、全体として目立つのが朝鮮人による悪事があるかのようなデマです。デマですので事実ではないのですが、このデマにより虐殺事件がありました。

[Link] 内閣府: 報告書(1923 関東大震災第2編) 第4章 混乱による被害の拡大 第1節 流言蜚語と都市


 近年もフェイクニュースやデマが問題視されています。

 2016年の熊本地震では動物園から猛獣が逃げ出したというデマが写真付きで流されました。
 2018年の北海道地震でもSNS上でデマが拡散されました。
 2020年春、新型コロナウイルス感染症流行拡大に伴い、トイレットペーパーなどの輸入が減るなどのデマが流れ品薄になりました。紙製品は国産が多く品薄にはならないはずでしたが、このデマにより品薄になってしまいました。

 情報を発する側、受ける側の双方のリテラシーを高めていかなければデマを信じてしまう人が絶えないと考えられます。

 2016年の熊本地震の際、知人がNHKニュースの情報を東京から熊本へ発信し続けていましたが、日時を確認せず、発する情報にも日時を付与していなかったため、断水などの情報が前後してしまい現場を混乱させました。
 周囲から止めるよう告げられても、本人は善行だと思い込んでいるため止まりません。悪意のないデマ情報の流布を関係者は目の当たりにしました。

北海道地震の際のデマ
新型コロナウイルスの際のデマ

 今日は情報発信の重要性を鑑みて、当社の2つの取り組みをご案内します。

 1つはホームページの災害モードです。通信が制限される中でアクセス数が増大する非常時には、ライトなページを提供する事が自治体等のサイトでは定着しつつあります。

 もう1つが院内掲示物です。来院した人に状況を正しく明確に伝えることで、限られたマンパワーを説明や謝罪という労務から解放し、診療に注ぐことができます。スタッフ向けにも、わかりやすく情報提供する事で無用なストレスを掛けずに済みます。

 今回は特別に、当社が制作したファイルもダウンロードできるように開放しますので、ぜひご活用ください。


 98年前とは大きく異なる点としてエネルギー依存があります。特に医療は電力依存が高まり、電源喪失にどこまで対処できるかわかっていない部分もあります。

 後半では、停電対策について当社の取り組みなどをご紹介しております。

 電気工事業の業許可を持っている医療BCPコンサルは稀です。臨床工学技士と電気工事士の実務経験に基づく停電対策を、この防災の日に再考してみます。




災害モード

 ウェブサイトは単位時間あたりのアクセス数やデータ量に上限があり、それを超えるとウェブサーバへのアクセスが一定時間遮断されるか、特定本数だけ接続されます。

 災害が発生すると避難所や給水などの情報を求めて市民が役所のサイトにアクセスするため混雑します。

 データ量を抑止するために、ウェブサイトから画像やボタンなどを取り払います。なるべく白背景と文字だけのページにします。

ダウンしてしまった市役所ウェブサイト
災害モードに切り替わったウェブサイト

 市役所などは世帯数からアクセス数を予想できますが、医療機関では予想しづらいです。
 大災害では、エリアで1割程の人が負傷し、持病なども含め2~3割の人が医療に関心を高めると思います。その中の半数はウェブ検索すると想定すると、おおよそのアクセス数を予想できると思います。

 下記ボタンから、災害モードの病院ホームページのデモ版をご覧いただけます。当社ウェブサーバ上に置いています。


 災害モードのウェブサイトはMicrosoft Wordがあれば編集することができます。前述のデモページはWordで制作しています。


 災害モードに関するお問い合わせは下記のお問い合わせフォームよりお願い致します。

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院内掲示物

 当社より提供させて頂いている掲示物です。

 A3判で印刷して頂くと見やすく、貼る場所の確保にも困らないと思います。

 発災後はプリンタの電力を確保するのも容易でない可能性がありますので、印刷して保管しておくと良いです。
 できれば、ラミネートして、両面テープを付けておくと良いです。


 院内掲示物についてのご意見、ご要望、リクエストなどございましたらお気軽に当社宛にお申し付けください。

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令和時代の停電対策

 日本初と言われる電力会社『東京電燈』の創立は1886年、関東大震災は1923年ですので電力の普及や依存度はそう高くないことが想像できます。

 2011年の東日本大震災の時点では多くの電子医用機器が普及し、パソコンの普及率は8割、スマホの普及も急伸している頃でした。2000年問題の時に医療現場では強く警戒しましたが、その比ではないほどに電子機器が多く使われていました。

 2021年のいま、医療現場で電力を使わない機器は非常に少なくなりました。
 体温計や血圧計なども電子化が普遍化しましたが、これらは電池式が多いため停電の影響は軽微です。
 それよりも電子カルテやナースコール、圧縮空気や吸引器、電動ベッドやエレベーターなど生命維持に直結しない部分でも電力依存が強く、人工呼吸器や血液浄化装置など生命維持管理装置はほとんどが電子制御された電子機器となっています。

 停電しない病院を作る事は容易ではありません。どんなに大きな発電機があっても、分電盤が浸水すれば電力供給できません。

 令和時代の停電対策は『分散管理』だと当社は考えます。

 大型の自家発電装置や蓄電池で中央から供給する方式は温存しつつ、その補完、または中央方式に全く依存しない形で分散型を備える事に大きな意義があると考えます。

 例えば病棟のハイケアユニット(HCU)に4床配置があったとして、最低限必要な電力はどの程度とお考えでしょうか。
 仮に1床あたり1000W、圧縮空気や吸引器など共用できる設備で1000Wとした場合、4床のHCUで5000W、100V換算で50Aあれば足りる計算です。
 ここに55Aの発電機が専用で配備されていればHCUの患者を救う事ができます。HCUの患者は病棟を離れてコンセントの無い食堂に移したとしても、発電機を帯同させれば診療を継続することができます。

 このような臨機応変な病床再編にも対応するためには、中央方式だけでは難しい事が窺い知れます。

 当社では発電機メーカーと連携し、分散型の電力保持について研究し、現場配備を進めています。


 病棟や病室よりも小さな単位として『個人』があります。

 在宅医療における人工呼吸療法の患者保護を目指した停電対策を10年以上前から実施してきましたが、当社では2018年の台風21号で実際に停電被災し、その対応を実証しました。

 カセットガスボンベで動く可搬型発電機enepoを使い、52時間の停電にも対応できました。

 いくつかの課題は見えましたが、2018年9月4日~6日の停電期間中、冷蔵庫やエアコン、テレビ、洗濯機などを動かす事が出来ましたので、人工呼吸器を装着した家族が居ても乗り切れると考えています。

 enepoを使った停電対策については、医療的ケア児を抱えるご家庭にも展開していこうと考えております。COVID-19が無ければ昨年にもご家族向けのセミナーを開催予定でしたが、残念ながら実施できていません。

 災害は忘れた頃にやって来ると言われますが、COVID-19が流行しているからといって自然災害が来ない訳ではないので、この防災の日を1つのきっかけに、改めて在宅医療の停電対策についても現場の意見を聴いて回ろうと思います。

停電中に大量のガスボンベを消費
懐中電灯とビニル袋で即席ランタン
作業灯(クリップライト)とラジオ付扇風機

 個人対応用のデバイスとして去年、蓄電池を調達しました。
 それが今年、コロナ専門病院における患者搬送用に使われました。救急車内での患者呼吸管理用の電源について相談があり、当社保有機を貸出ました。
 enepoは救急車には積載できませんので、このような蓄電池が役立つシーンもある事を実感しました。
 常に先読みして実験、その実験結果があったからこそ医療現場でも即時試用できました。試用にとどまらず、同院では同じ機種を調達して患者搬送に使い続けました。

 当社では電源品質アナライザを用いた試験や、現場で想定される環境の再現試験などを実施しています。

 在宅医療にお勧めの機器類は、Amazonで買えるような汎用品です。医療用の物はありません。医療機器に安全に使えるという確約はありませんが、何も手を打てないよりは良いと考えます。


 令和時代、電力なしの医療は考えづらい中、当社は独自に停電対策を研究し、社会実装を目指しています。

 停電対策にご意見、ご相談などございましたらお気軽に当社宛にお申し付けください。

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アーカイブ

 官民を問わず関東大震災を振り返る資料を提供しています。簡単にまとめましたのでご参照頂ければと思います。

公共・公的

内閣府: 防災情報のページ, 報告書(1923 関東大震災)

東京消防庁: 震災対策のはじまり

公立公文書館: 関東大震災と帝都復興事業

国立国会図書館: 史料にみる日本の近代 第3章 大正デモクラシー, 3-11 関東大震災

国税庁: 租税史料, 関東大震災と税務署の対応

横浜市: 関東大震災を調べる

民間

NHK for School: 関東大震災

消防防災博物館(一般財団法人消防防災科学センター):大正期の消防

味の素: 関東大震災。復興への道のりとは!?

住友電工: 住友電工の1枚 - あの日、あの時 1923 関東大震災発生

東京海上日動: 1923 関東大震災への対応

鹿島: 関東大震災を知る

Yahoo!天気・災害: 関東大震災(1923年)




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停電分散管理 | BCPと電気工事のNES株式会社

 少し前まで電力会社(電気事業者)は地域に1社、発送電を一括して担ってきました。

 今では発電と送電は分業化され、昔からあった電力会社(電気事業者)は、発電事業者・送配電事業者・小売電気事業者に分けられました。

 寡占は崩れ分担・分業されました。
 太陽光発電の普及により売電も普及したので、発電の分散は始まっていましたが事業としてではなく、買い取りという方式が一般的でした。

 これからは、誰がどのように作ったエネルギーを買うのか、工場などでは自給率100%以上を維持して発電事業者になるという事も考える時代です。

[Link] 経済産業省資源エネルギー庁: 発電事業者一覧

[Link] 経済産業省資源エネルギー庁: 送配電事業者一覧

[Link] 経済産業省資源エネルギー庁: 登録小売電気事業者一覧




中央or分散

 今日の記事は中央管理or分散管理、一括供給or分散供給といった対比的な中で話題を進めます。

 平時の電力は一般的に、発電事業者(東京電力や関西電力等)から送配電事業者を経て受電し、消費していると思います。何百万世帯分もの電力を大きな発電所で発電しています。

 停電時には事業所毎に自前の発電機(自家発電設備)で一時的な対応をすると思います。
 この自家発電設備は、防災用の場合は大型の物が1~2基設置され、関係する設備に供給される仕組みが多いと思います。中央で大きく発電して中央で管理する手法です。

 これに対し、ある範囲内で必要な分だけ電力をまかなう方法があります。
 サーバ室のUPS(無停電電源装置)はその例の1つですが、中央の発電機が動くか否かに関わらず、サーバ室だけ電源を確保するために設置されます。

 今回はこの分散電源や分散管理について述べて参ります。




小出力発電設備

 小出力発電設備は電気事業法施行規則第48条に定義が明文化されています。

 電圧600V以下の発電用の電気工作物であって、以下1から6に掲げるものとなっています。

  1. 太陽電池発電設備であって出力50kW未満のもの
  2. 風力発電設備であって出力20kW未満のもの
  3. 次のいずれかに該当する水力発電設備であって、出力20kW未満のもの
    a.最大使用水量が毎秒1m³未満のもの
    b.特定の施設内に設置されるものであって別に告示するもの
  4. 内燃力を原動力とする火力発電設備であって出力10kW未満のもの
  5. 次のいずれかに該当する燃料電池発電設備であって、出力10kW未満のもの
    a.固体高分子型又は固体酸化物型の燃料電池発電設備であって、燃料・改質系統設備の最高使用圧力が0.1Mpa未満のもの
    b.道路運送車両法第二条第二項に規定する自動車に設置される燃料電池発電設備であって、道路運送車両の保安基準第17条第1項及び第17条の二第5項の基準に適合するもの
  6. 発電用火力設備に関する技術基準を定める省令第73条の二第1項に規定するスターリングエンジンで発生させた運動エネルギーを原動力とする発電設備であって、出力10kW未満のもの

 ただし、同一の構内で1~6の小出力発電設備が電気的に接続された場合の出力合計が50kW以上となった場合は、小出力発電設備ではありません。

 同一種類の小出力発電設備が同一構内に複数ある場合においては、種類毎に合算したその種類の上限値では判断せず、個別の小出力発電設備の合算値が50kWの上限値以上であるかどうかで判断します。

[Link] 経済産業省: 電気工作物の保安

[Link] 電気事業法

[Link] 電気事業法施行規則

[Link] 小型発電設備の規制の見直しについて (2010年1月)




太陽光発電への事故報告制度適用

 以前から法に基づく報告制度はあったのですが、その適用が広がりました。

 電気事業法第106条の規定に基づく、電気関係報告規則が2021年4月1日に改正され、電気事業法第38条第2項で定める小出力発電設備のうち、以下のものが追加されました。

  • 10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備
  • 20kW未満の風力発電設備

 太陽光発電は、パネル損傷による本体の発火、土砂崩れなどによりパネルと配線が断絶され、パネルが発電し続けた事による落ち葉などからの発火などが報告されています。
 また、パネルが小さくても発電能力が高まっていますので、感電事故のリスクも高まっています。

[Link] 経済産業省: 事故報告制度について, 電力の安全




内燃式の発電設備

 内燃力とは、シリンダーとピストンを有しその中で燃料を燃焼させることにより発生する往復運動を回転運動にして動力を取り出すタイプの原動機(エンジン)のことを指します。

 昔からある発電機です。

 エンジンが動かなければ無力、100kVAの高出力発電設備でも不始動なら出力ゼロ、家庭用の1kVAの発電機より小さいです。

 発電機が動かないという事が本当にあります。

 岩手県から出されている資料の40ページに非常用電源のきじがありますが、途中で停止してしまうリスクなどが書かれています。

 日本内燃力発電設備協会の報告書では東日本大震災での始動率が99.6%、阪神淡路大震災が95.3%であった調査報告がされています。

[Link] 岩手県: 東日本大震災津波からの復興 岩手からの提言

[Link] 日本内燃力発電設備協会: 東日本大震災における自家用発電設備の稼働・被災状況 その1, 内発協ニュース 2012年3月号

[Link] 日本内燃力発電設備協会: 東日本大震災における自家用発電設備の稼働・被災状況 その2, 内発協ニュー1ス 2012年4月号

[Link] 日本ガスタービン学会: 東日本大震災におけるガスタービン設備の信頼性の調査研究結果

[Link] 河北医療財団: 河北医療財団の災害対策, かわぴたる 特別号

[Link] 総務省消防庁: 消防用設備等の点検と自家発電設備に関する留意事項, 防火対策の推進等




送電事業者の復電対応は想定外の連続

 発電機が始動しないというのは想定外ですが、報告書で示されているので、ある意味では想定内にしておく必要があります。

 2019年の台風15号は、鉄塔が倒れるというすさまじい風を伴う台風でした。

 倒木により停電した場所へ入れない、建柱車が入れないなどのトラブルが続き、復旧が遅れた事も記憶に新しいと思います。

 このようなトラブルは2018年の台風21号でも関西電力管内で発生しており、山林でなくても商店街のアーケードが崩落して立ち入れないなどの事例がありました。

2018年の台風で折れた電柱(2年後も放置)
2018年の台風で折れた電柱(2年後も放置)

[Link] 経済産業省: 台風15号の停電復旧対応等に係る検証結果取りまとめ




電気自動車による分散型の停電対応

 電気自動車に搭載されている電池は進化しています。

 そして、自動車に見合う価格へと近づいています。

 一般住宅でも、電気自動車用の充電設備を設ける家庭が増えていますが、更に自動車からの給電もできるようにする家庭も増えています。

 当社では以前から、訪問看護などに使われる社用車を電気自動車にし、それを病院の補助電源にしてはどうかと提案を続けてきました。
 電気自動車の購入に補助する制度もありますし、医療機関の行動範囲はさほど広くないので燃料切れ(充電切れ)を起こすような事も滅多にないと思います。

 在宅人工呼吸療法を行う患者宅にも電気自動車を勧めています。

[Link] 国土交通省: 災害時における電動車の活用促進マニュアル

[Link] 経済産業省: 災害時における電動車の活用促進マニュアルを取りまとめました (2020年7月10日)




汎用ガス発電装置

 在宅医療における停電対応の研究のために調達したenepoはカセットガス2本で動作します。

 災害対策本部で使われる電力程度であればまかなえるので、医療機関でも使えると考えています。

 片手でも持ち上げられるくらいなので、ベランダや屋上などに置いて使う事もできるため、使用場所を選ばない発電機だと思います。

 ガス交換時に停電することと、1~2時間程度でガス交換時期を迎える点が難点ですが、医療機器は電池内蔵機種も多いので、さほど大きな問題ではないと思います。




保安用ガス発電装置

 プロパンガス(LPガス)を燃料とする発電機です。

 プロパンガスは可搬性があり、容器に密封されているのでガソリンなどよりは安全です。

 ボンベをマニホールド経由で発電機に接続すれば、ボンベをどんどん交換して何時間でも供給し続けられます。

 当社では昭栄様の『ガス電くん』に対し医家向けのカスタマイズなどをお願いしています。昭栄様と直接連携しています。

[Link] 日本内燃力発電設備協会: 『ガス電くん』納入実績300件超 LPガス非常用発電装置を設計製造, 内発協ニュース 2017年3月号

[Link] 高齢者施設への非常用自家発電設備等の導入に関する調査研究事業報告書

[Link] 日本内燃力発電設備協会: 非常用自家発電設備を電力需給対策に使用する場合の留意点等, 自家発Q&A 33, 内発協ニュース 2018年12月号

[Link] 総務省消防庁: 第24 非常電源(自家発電設備)




透析施設の停電対策

 自治体では透析医療の継続について注力している所が多いですが、その規模感については臨床と一致しているか確認が必要です。

 わが国の透析患者数は30万人以上、人口比で0.3%近くです。人口10万人都市で300人程の計算になります。

 透析は1回4時間、入替時間を考慮すると2日あたり8件が限界に近いと思います。300人を透析するには38床必要です。

 災害に市内患者を全員透析しようと計画するのであれば、10万人都市であれば最低38床が必要であり、クラッシュ症候群などの急性血液浄化にも対応するのであればそれ以上が必要になります。

 市立病院等の透析を維持するために公費を充当する例は多く見られますが、市内透析患者を市外に出さずに治療する計画までは見る事がありません。

 過去の災害では、患者だけ市外に避難させようとして、家族とは離れたくないと拒まれて計画通りには進まなかった事例が多くあります。市内に留めるか、患者数の数倍のバスを用意する必要があります。

 断水に対しては給水車で搬入できますが、電力は容易ではありません。
 市内患者を市内透析施設で対応するためには、透析施設での発電が不可欠になります。

 小出力発電設備は重量0.5トン未満の物も多く、テナントビルのエレベーターでも運べる場合もあります。
 屋上や駐車場などに設置でき、維持管理もさほど難しくなく、キュービクル式であれば消防法にも抵触せずに設置できます。

 透析施設においては機械室と治療室に分けて考えます。
 機械室が動かなければ透析は出来ないため、機械室の最低限の稼働を検討します。
 治療室はベッドサイドコンソール1台あたりの消費電力を実測して調整します。機械室が上手く稼働できない場合はECUMやHFでの治療も視野に調整します。

 当社では独自に透析装置の電力消費量や発災時の配置について研究しています。
 貴院の透析関連の消費電力等を調査したい場合はご相談ください。

ベッドサイドコンソールの電力測定
ベッドサイドコンソールの電力測定

[Link] 日本透析医学会: 東日本大震災学術調査報告書 -災害時透析医療展開への提言-

[Link] 日本透析医学会: 震災による透析医療の被災の実態




過負荷

 発電機にとってボトルネックとなるのが過負荷による遮断です。

 特に医療では、非常電源につなげば安心という意識から、生命危機に関わりそうな医療機器が非常電源に接続されます。

 しかしながら常用電源に比べて供給量が少ない非常電源ですので、過負荷が起こりやすくなります。

 非常時に過負荷を起こさないためのルール作りやトレーニングを推進し、危機的状況に陥らない備えを我々はお手伝いしています。

 一般に『過負荷保護』とは電路上での安全、電線が燃えてしまったりしないように保護するものであって、負荷側にある生命を守る物ではありません。
 医療の特殊性として、負荷である医療機器の動作停止が生命や健康に関わるため、過負荷保護装置(ブレーカー)が作動する事で電路の安全が守られても患者には危険が迫ります。

 過負荷を避ける努力が不可欠です。

[Link] Panasonic: 知っておきたい電気の基礎知識




大規模停電

 大規模停電は毎年のように起きています。

 当社も2018年9月に3日間停電していますし、停電が解消された9月6日には北海道胆振東部地震が発生し全道停電も起きています。

 大停電は起こる事を『想定内』にしておかなければならない時代です。

[Link] Honda発電機: 国内の大規模停電事例

[Link] 停電52時間




大阪北部地震での事例

 2018年6月に発生した大阪北部地震では、国立循環器病研究センターでの停電が話題となりました。
※.詳細はリンク先の新聞記事等をご参照ください。


 停電が発生し自家発電に自動的に切り替わって供給される仕組みは同センターにも備わっていました。
 自家発電設備は正常に動作しても、臨床まで送電されないというトラブルが現に発生し、多くの患者を他院搬送して救うという事態に発展しました。


 このようなケースはどこでも発生し得ると考えられます。
 電気工事業をしていると少なからず経験するのが小動物です。特に農家さんでネズミやイタチなどが感電死したという事で対応した経験が何度かありますが、受変電設備(通称キュービクル)の中に昔ですと猫が、小動物対策された近年でも蛇などが入って電源を喪失するという事故は絶えません。


 構内送電設備の途中で小動物のトラブルが発生するので、自家発電設備が稼働しても、構内での送電ができないので無力化されてしまいます。


[Link] 日本経済新聞: 病院、地震後あわや一大事 自家発電に不備・診療休止も (2018年6月29日)

[Link] Yahoo!ニュース: 【特集】大阪北部地震から3年…あの日起きていた「医療の危機」 命に関わる「非常用電源」をどう守る? (2021年6月18日)

[Link] 朝日新聞: 国立循環器病センター混乱 入院患者40人を他院へ搬送 (2018年6月18日)

[Link] 経済産業省中部近畿産業保安監督部近畿支部: 電気事業法の遵守について(厳重注意), 2018年7月25日

[Link] 国立循環器病研究センター: 国立循環器病研究センターの自家発電機に係る法定の保安検査の状況について (2018年6月22日)

[Link] 厚生労働省: 病院の非常用電源の確保及び点検状況調査の結果 (2019年7月31日)




分散発電による強靭化

 中央から一括供給される自家発電設備は、力強さがありますが構内送電網のトラブルなど脆弱性も顕在化しています。

 それを補完するのが分散型の発電機です。

 すべての需要に対して分散発電で対応しても良いと思いますが、それには課題もありますので、合理的な方法を選択する事が重要になります。

 中央発電の良さは1基の稼働で広範に供給できる事であり、消火設備や避難エレベーターなどが1基の稼働で賄われます。保守点検も1基だけで済みますので経済的です。


 分散発電は中央発電の1基分の電力を10基や20基で賄うので保守点検の件数は増加します。
 一方で不始動や停止の影響は10分の1以下、仮に10基中1基のエンジンがかからなかったとしても、残る9基から延長コードなどを使って補完できればリスクは激減します。


 医療機関における自家発電設備は、診療報酬などの収入に直結しないコストであると言えます。
 また、災害拠点病院等でなければ、災害時に新患を受け入れて積極的に医療を提供し続ける必要は無いと考えられます。
 そのような背景がありながらも、現に入院中の患者を守るためや、地域の求めに応じるために自家発電設備を設置しています。


 自院が守るべき医療、提供すべき医療に合わせて発電も再考していくとなれば、分散発電が非常に便利だと考えます。

 従来の考え方では建築や設備に主導権があり、管理のし易さなどから中央発電方式が採用されてきましたが、消防法や建築基準法に拠らない自助のための自家発電であれば、分散発電でも良いと考えられます。
 『20基も面倒を見られない』ではなく、どのようにすれば20基を管理できるのか、必要に応じて臨床家の手も借りて管理していく方法が必要であると考えます。




小出力・多数・現地

 私たちは小出力発電設備を多数使用し、現場で必要な分の電力供給を担う方法を研究しています。

 2013年には災害対策本部の単独電源としてのカセットガス式可搬型発電装置に関する研究に1つの結果を得ました。
 連絡や情報管理用のパソコンとプリンタ、テレビが視聴できてカンファレンスで情報共有もできる大型テレビ、携帯電話や無線機などの充電器、作業に最低限必要な照明などが1台の発電機で対応できました。


 2019年にはプロパンガス(LPガス)を燃料とするやや大型の可搬型発電機を用いた実験を大学病院で実施しました。
 人工呼吸器などの生命維持管理装置をはじめ、多くの医療機器が正常動作することがわかりました。

 2021年には、分散発電を病院の停電対策に展開するための研究を進めました。

 私たちは、医療機関が停電に負けず事業を継続できるよう、独自の研究結果もまじえてコンサルティングしています。




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