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感染性廃棄物に志向した医療機器開発 | NES株式会社

 医療機器等の開発と言えば、用途や機能に意識が集中しがちですが、廃棄物処理という視点は見落とされている部分かもしれません。

 産業界では既にSDGs活動として廃棄物を減らす動きが出ているが、医療現場から出される廃棄物には独特の事情がある。

 廃棄物処理だけをシーズに参入する方法もあれば、既存商品との差別化に廃棄物処理を提示する方法も考えられる。




廃棄物処理法

 本邦でのゴミ処理は廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に規定されています。

 この法律の目的を簡単に述べると、ゴミを減らす事と、適正な処理による公衆衛生の維持向上です。

 ゴミは大きくは一般廃棄物と産業廃棄物に分類されます。

[Link] 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

[Link] 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(廃棄物処理法施行令)




感染性廃棄物

 感染性廃棄物は産業廃棄物の中の『特別管理廃棄物』に指定される物が想定されます。

 実際、細かい事を言えば病院で鼻血が付いたガーゼは感染性廃棄物ですが、家の中で鼻血を拭いたティシュなどは一般廃棄物として処理されていると思いますので、色々な事を踏まえて廃棄物は分類されます。

[Link] 環境省: 廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル(平成30年3月)




医工連携の要素はどこに?

 廃棄物処理法の目的にも合致する部分として、ゴミの減量があります。

 ゴミを増やさない方法か、現に存在するゴミを減らす方法があります。

 人工透析では体外で血液を処理するための血液回路や人工腎臓(ダイアライザ)がありますが、治療後は生理的食塩水と残血で満たされています。
 この液体を抜き捨てる事でゴミの重量を減らす事ができるので治療後に液体を抜いている施設も少なくありません。

 液体を抜いた後の容器等は空気が充填されています。
 この容器等を破砕して小さくすることで、ゴミの容積を圧縮する事ができます。1回あたりの運搬量が増やせるため経済効果が期待できます。

 感染性廃棄物は更に細分化され、感染性一般廃棄物か感染性産業廃棄物かで処理料は変わりますし、そもそも『感染性』を付けられなければ一般ゴミと同じ様に処分できます。




小さな気づき

 あるデバイスを使う際に、毎回トレーを用意している事がわかりました。

 トレーは汚染されるため、毎回洗浄が必要でした。

 あるデバイスの梱包を工夫し、使い捨てトレーを兼ねられるようにしたところ、現場では積極的に採用され他社との差別化につながりました。

 元々はゴミとして捨てられていた梱包材が、1つ仕事をこなしてからゴミになる事でそこに価値が生まれ、さらにトレーの洗浄手間を省く事にもつながりました。

 同じように、病院でよく使われるゴミ袋と同じサイズに調整したパッケージは、やはりゴミ袋として使われるようになりました。

 現場に出入りし、現場の意見を拝聴しなければわからない事ですが、些細な事がビジネスに大きな影響を与える可能性があります。




分別しやすい

 先日、ある開業医とゴミの分別について意見交換しました。

 滅菌済のパッケージは感染性ゼロのはず、それを上手に捨てれば感染性廃棄物では無いというのは論理的に正しい事だと思います。

 一般ゴミの世界では紙ごみとプラごみが分別されています。
 この滅菌済みのパッケージも紙とプラを分ける必要がありますが、そもそも全体がプラか紙のどちらかで作られていれば分別も簡単であるという意見で一致しました。

 典型的な滅菌パックは背面が紙、前面が透明ビニルという物です。紙には通気性があり、滅菌インジケーターも印刷できて良かったのですが、近年は全面が同じ素材のパックも珍しくありません。




固い段ボール

 医療で使われる物の多くが高単価です。

 そして清潔を維持しなければなりません。

 必然的に外装の段ボールは堅牢な物になります。

 解体は手間ですし、潰した段ボールを重ねていくと、1つ1つが分厚いのですぐに山のように積みあがります。

 以前、透析病院の技士長をしていたとき、1日200人の透析患者を迎えていたのでゴミの量も相応に多かったです。
 生理的食塩水だけでも10本入が20箱、ダイアライザや血液回路、注射針、ガーゼ等の処置パック、透析液などすべてが箱単位で消費されるので、毎日段ボールが山積みでした。
 これの処理に時給換算2千円の人員を毎日1~2時間充当していたので、何とか集約化して時給千円のパートタイマーさんにスイッチできないかと模索しました。

 メーカーに梱包の変更を依頼しても、全国32万人の透析患者の内の400人では影響力がありませんでしたが、もう少し経済性をシミュレーションして賛同者を増やせば、変わったかもしれません。

 梱包の堅牢性は必要かもしれませんが、分厚い段ボールに代わる何かには期待があると思います。




ゴミの二次利用

 感染性廃棄物は処理されて終わりという事になっていますが、この廃棄物が何かに利用できれば処理費用を軽減する事ができます。

 安直な考えで言えば燃料です。
 ビニル製のディスポ製品が多いので、燃やす事はできそうですが、発生するガスの処理など課題はあります。

 まとめて滅菌して感染性を無くせば有効活用できるかもしれません。

 ほとんどの人が使って捨てる事を考えていますので、医工連携の視点で言えば、捨てた後の事をひそかに考えてみるのも有意義だと思います。




品目別処理

 ほとんどの医療機関が、廃棄物処理は1社に委託していると思います。
 受託する側も1社にまとめてもらう事で人員配置や車両配備のコスト軽減にもつながります。

 あえて、そこに切り込むビジネスもあるかもしれません。

 採血管などの筒状容器専門、包帯やガーゼなど布製品専門、注射針専門、カテーテル等の長尺物専門など、何か専門とした処理業者あるいは、処理機があっても良いかもしれません。

 病院側も処理業者側も困っている品目があれば、咎められることなく参入できると思いますが、誰も困っていない領域で無理に市場をこじ開けようとしても、そこは参入余地が無いかもしれません。




当社では

 新規の医療機器開発等では梱包なども細かく助言させて頂いております。

 また、廃棄物だけにフォーカスした新規開発についてもコンサルティングさせて頂きます。

 更に、シングルユースデバイス(SUD)の再使用(再製造)に関する開発にも注力しています。回収から分解や洗浄、再組立、再滅菌、再製造品流通までトータルでサポートします。




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クラス分類ルールとGHTF | NES株式会社

 2013年の薬事法改正により旧薬事法は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に変わりました。

 今日は久々に内容を見直してみたいと思います。

[Link] 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律


 この頃の話題の1つにクラス分類がありました。

 医療機器をリスクに応じたクラスに分類する方法を国際ルールのようなものであるGHTF (The Global Harmonization Task Force) に近づけるという話題です。

 もう1つ、医療機器の承認/認証のルールがクラス分類や承認基準の有無により審査が変わるというものでした。




厚生労働省資料

 厚生労働省の審議会で配られた資料は今でも参考にしていますが、そのときの資料ではこのようなチャートでクラス分類の大筋を見立てる事ができるとされていました。

[Link] 厚生労働省: 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会(2013年12月2日)




クラス分類ルール(分析機器を除く)


I.非侵襲型機器


1.すべての非侵襲型機器は、ルール2、ルール3、またはルール4が適用されない限り、クラスIである。

2.最終的に体内に注入、投与または導入する目的で血液、体液もしくは組織、液体、もしくは気体を供給または保存するように胃としたすべての非侵襲型機器はクラスIである。

  • 2-1
    例外:クラスIIまたはそれよりも高いクラスの能動型医療機器に接続される場合、クラスIIである
  • 2-2
    例外:血液もしくはその他の体液を保存または供給し、あるいは臓器、臓器の一部もしくは対組織を保存するように意図した場合、クラスIIである。

3.体内への注入を意図した血液、その他の体液もしくは他の液体について、その生物学的または科学的組成を変化させる事を目的としたすべての非侵襲型機器はクラスIIIである。

  • 3-1
    例外:その他の処置が濾過、遠心または気体/熱交換から成る場合はクラスIIである。

4.損傷した皮膚に接触するすべての非侵襲型機器は:
滲出駅の圧迫または吸収のために機械的なバリアとして使用するように意図した場合はクラスIである。

  • 4-1
    例外:主として真皮を超えた創傷で、二次治癒でのみ治癒の可能な創傷に使用するように意図した場合はクラスIIIである。
  • 4-2
    主として創傷の局所管理をするように意図した機器を含め、その他の場合はすべてクラスIIである。

II.侵襲型機器


5.人体開口部に関与し、外科的侵襲型機器以外のものであって、
a)能動型医療機器への接続を意図しない、
 または
b)クラスIの医療機器との接続を意図したすべての侵襲型機器は:

  • 5-1
    一時的使用を意図した場合はクラスIである。
  • 5-1
    例外:眼粘膜に使用することを意図した場合は、クラスIIである。
  • 5-2
    短期的使用を意図した場合はクラスIIである。
  • 5-3
    例外:咽頭までの口腔、鼓膜までの外耳道または鼻腔で使用する場合はクラスIである。
  • 5-4
    長期的使用を意図した場合はクラスIIIである。
  • 5-5
    例外:咽頭までの口腔、鼓膜までの外耳道または鼻腔で使用し、かつ粘膜に吸収されにくい場合はクラスIIである。
  • 5-6
    人体開口部に関与し、外科的侵襲型機器以外のものであって、クラスIIまたはそれよりも高いクラスの能動型医療機器に接続するように意図したすべての侵襲型機器はクラスIIである。

6.一時的使用を意図したすべての外科的侵襲型機器はクラスIIある。

  • 6-1
    例外:再使用可能な手術器具はクラスIである。
  • 6-2
    例外:電離放射線の形でエネルギーを供給するように意図した場合はクラスIIIである。
  • 6-3
    例外:生物学的影響を及ぼすように、或いは全体的にまたは主に吸収されるように意図した場合はクラスIIIである。
  • 6-4
    例外:デリバリー・システムにより医薬品を投与するよう意図した際、これが使用モードによっては潜在的に危険な方法である場合はクラスIIIである。
  • 6-5
    例外:特に、心臓または中心循環系の欠陥について、これらの部位に直接接触し、診断、監視または矯正するように意図した場合はクラスIVである。

7.短期的使用を意図したすべての外科的侵襲型機器はクラスIIである。

  • 7-1
    例外:医薬品を投与するように意図した場合はクラスIIIである。
  • 7-2
    例外:体内で化学変化を受けるように意図した場合は(歯牙に適用する場合を除く)クラスIIIである。
  • 7-3
    例外:電離放射線の形でエネルギーを供給するように意図した場合はクラスIIIである。
  • 7-4
    例外:生物学的影響を及ぼすように、あるいは全体的にまたは主に吸収されるように意図した場合はクラスIVである。
  • 7-5
    例外:特に、中枢神経系に直接接触して使用するように意図した場合はクラスIVである。
  • 7-6
    例外:特に心臓または中心循環系の欠陥に対して、これらの部位に直接接触し、診断、監視または矯正するように意図した場合はクラスIVである。

8.すべての植込み型機器および長期外科的侵襲型機器はクラスⅢである。

  • 8-1
    例外:歯牙に適用するように意図した場合はクラスIIである。
  • 8-2
    例外:心臓、中心循環系または中枢神経系に直接接触して使用するように意図した場合はクラスIVである。
  • 8-3
    例外:生命維持を意図した場合はクラスIVである。
  • 8-4
    例外:能動型植込み型医療機器を意図した場合はクラスIVである。
  • 8-5
    例外:生物学的影響を及ぼすように、あるいは全体的にまたは主に吸収されるように意図した場合はクラスIVである。
  • 8-6
    例外:医薬品を投与するように意図した場合はクラIVである。
  • 8-7
    例外:体内で化学変化を受けるように意図した場合は(歯牙に適用する場合を除く)クラスIVである
  • 8-8
    例外:胸部インプラントの場合はクラスIVである。

III.能動型機器に関する追加ルール


9.エネルギーを投与または交換するように意図したすべての能動型治療機器はクラスIIである。

  • 9-1
    例外:人体へ、あるいは人体からエネルギーを投与または交換するような特性を備えた際、エネルギーの性質、密度および使用部位によっては、潜在的に危険な場合はクラスIIIである。
  • 9-2
    クラスIIIの能動型治療機器の性能を制御または監視するように意図した全ての能動型機器はクラスIIIである。
    また、そのような機器の性能に直接影響を及ぼすように意図した全ての能動型機器はクラスIIIである。

10.診断を意図した能動型機器はクラスⅡである。

  • 10-1
    人体に吸収されるエネルギーを供給するように意図した場合(可視または近赤外で患者の身体を照明するために単独で使用する場合はクラスIである)、または
  • 10-2
    放射性医薬品の生体内分布を造影するように意図した場合、または
  • 10-3
    重要な生理学的プロセスの直接的な診断または監視ができるように意図した場合。
  • 10-4
    例外:特に例外:特に、
    a)例えば心機能、呼吸、中枢神経系活動などの、その変動が即座に患者の危険となるおそれがあるような、重要な生理学的パラメータを監視するように意図した場合、
    または
    b)即座に危険となる臨床状態にある患者を診断するように意図した場合はクラスIIIである。

11.医薬品、体液もしくはその他の物質を人体へまたは人体から投与および/または除去するように意図したすべての能動型機器はクラスIIである。

  • 11-1
    例外:含有物質の性質、関係する身体の部位または使用モードによっては潜在的に危険な方法である場合はクラスIIIである。

12.その他のすべての能動型機器はクラスIである。


IV.追加ルール


13.分離して使用すれば医薬品と考えられる物質を不可欠な成分として含有し、その物質が機器の働きを補助する目的で人体に作用を及ぼす場合、すべての機器はクラスIII又はクラスIVである。

14.活性または不活性を問わず、動物またはヒトの細胞/組織/その由来物から製造されまたはこれを含有する場合、すべての機器はクラスIII又はクラスIVである。

  • 14-1
    例外:不活化した動物組織もしくはその由来物から製造または含有し、正常な皮膚のみに接触する場合はクラスIである。

15.特に、医療機器を消毒または滅菌するために使用するように意図したすべての機器(消毒剤を除く)はクラスIIである。

(備考)
クラス分類ルールにおける用語の定義については、GHTFのクラス分類ルール案における用
語の定義に準拠することとする。


2.分析機器のクラス分類のルール


クラスIII

1.誤った診断結果が得られた場合に、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある検査項目を測定する自己検査用測定機器

2.主たる反応系を内蔵する専用分析機器のうち、体外診断用医薬品で承認を必要とする検査項目を測定するもの

クラスII

1.誤った診断結果が得られた場合に、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある検査項目以外の検査項目を測定する自己検査用測定機器

(当該診断機器による診断結果が医学的に重要な状態を確定しないもの、又は診断結果が暫定的で、適切な追加の検査によるフォローアップを必要とするものを含む)

2.主たる反応系を内蔵する専用分析機器のうち、標準品の無いもの(クラスIII品目を除く。)

クラスⅠ

その他の分析装置

(備考)
新検査項目、新測定原理、新たに自己検査用に移行するもの、新たな検査項目を測定する主たる反応系を内蔵する専用分析機器は大臣承認とし、承認の際にクラス分類を決定するものとする。




解釈

 これらの解釈は開発や製造を担う者が決めるのではなく、厚生労働省やPMDAの解釈が優先されます。

 とはいえ、どこに配慮して開発すると良いかを示しているルールになります。

 例えば一時的、短期、長期などという留置期間でクラス分類が分かれる製品の場合、性能としては1か月の留置ができても薬事承認手続きでは3日以内の留置にしてクラス分類を低く抑えようと考える場合もあります。
 まずは急性期の治療に用いて、有効性や安全性が確立されてから亜急性期や回復期にも適用していくという考え方があります。

 また、CDCガイドラインなどで、何日以内に交換するという目安が示されている物は、何カ月留置できるデバイスを作った所で臨床では受け入れられない可能性もあります。

 用途も重要になりますので、例えば同じ太さの針でもどの血管に、どのような目的で刺すのかでクラス分類が異なります。人工透析のように生体機能代行装置に接続して生命維持に関わる場合は、採血などとは目的が異なりますのでクラス分類はハイリスクの方へ属します。

 弊社が関わる医療機器開発において、このルールは確認させて頂いております。
 侵襲性があるか、血液等に触れるか、粘膜などから吸収されやすい構造かなどでおおよそのクラス分類がわかり、その企業が開発できるレベル感に合っているか、ターゲットプライスと一致するかなどを見極める事ができます。

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看護業務用の動画マニュアル制作 | NES株式会社

看護業務は多種多様

 1人の患者に対する診療をみても、いくつもの業務が関わります。採血や血圧測定、問診、点滴、食事、精算、ベッドメイクなど1泊の検査入院でも数十はあります。

 一般病棟であれば50床分の業務が並行して行われます。

 病院全体でみれば病棟や外来以外に、手術室、検査室、処置室、中央材料室など専門分化された部門ごとに業務があります。

 日常業務としての看護はマルチタスク、さまざまな事を習得していなければ業務ができません。




ME機器は多種多様

 医療機器の高度化や普遍化により診療水準は底上げされてきましたが、機器を扱う側にとっては覚える事が増えました。

 聴診器、体温計、血圧計、パルスオキシメータなどは以前から測定原理が変わらず形状も似ているため新機種が発売されても学習すべき差分は少ないです。

 バイタルサインモニタ(ベッドサイドモニタ)や人工呼吸器などもさほど新しい機能は加わっていませんが、メーカー毎に操作性が異なるため機種毎に覚えるべきことが発生してしまいます。
 また、心電図や呼吸管理について自信がない看護師にとっては機種間の差の前に、そもそもの原理や用語の理解にも苦しむ場面があります。

 専門性の高い医療機器は、専門家にとって『普通』のレベルではありますが、関わりの薄い人にとっては難解な機器である場合が多くあります。

20世紀のベッドサイドモニタ
21世紀のベッドサイドモニタ



生命維持管理装置の動画マニュアル

 COVID-19で知られるようになったECMO(エクモ)は体外に血液を導き出して酸素を加え、再び体内に戻す治療法ですが、これに使われる装置はPCPS(percutaneous cardiopulmonary support, 経皮的心肺補助法)と呼ばれる物です。

 心臓や肺が著しく機能を損なっている患者に対して使われるので救急やICU(集中治療室)で使われます。
 ときには1分1秒を争うときもあり、PCPSを組み立てる作業(プライミング)はミスなく最短で行わなければなりません。

 PCPSの保有台数は大病院であっても何十台もある訳ではなく関わるスタッフは限定的です。実際の患者に使用される物でプライミングを経験できるスタッフも限定的です。

 緊張感ある臨床でミスなく、時間通りに作業ができるようにと動画マニュアルを制作した事があります。
 弊社代表の西謙一もこの研究に参加しています。約10年前の研究です。

 平時に見るマニュアルは教育的、要点を説明しながら本番でのミスを回避しようと制作されています。
 実時間バージョンのマニュアルもあり、こちらはベテランスタッフが落ち着いて作業している様子を撮影しており、ノーカットで実際にかかる作業時間分の動画となっています。

 慌ててしまう場面ではありますが、並走者が居る感覚で動画を見ながらプライミングができる、何よりもミスをしては時間ロスが大きいのでミスを生じさせないことが第一、それを実現できる動画を私たちは制作しました。

[Link] 上園惠子: PCPSプライミングにおけるDVDによる教育効果, 2012(平成24)年度循環器疾患看護研究助成研究業績報告集, 公益財団法人循環器病研究振興財団




ミスのポイントをおさえる

 マニュアルづくりで注意を払う点は、予見できるミスを回避することです。

 機器が動作するための方法については習得は早いです。機能しなければ使えない訳ですから、その点は関心事です。

 機器に対する危険予知ができない状況を、危険予知もできるオペレーターに育成するために、動画にも工夫を凝らします。

 現在は国立循環器病研究センターを離れて企業として仕事をしていますが、その生業の中でも看護業務マニュアルの制作に関わることがあります。

 過去の経験を活かし、業務が円滑に進むように、そして安全が守られるように、陰ながらサポートさせて頂いております。

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添付文書の電子化(2021年8月~) | NES株式会社

医療機器添付文書の電子化
 ├ 医療機器等の添付文書電子化
 ├ 著作物
 ├ 文化庁に問合せ
 ├ 指先にA4用紙
 └ バーコードで管理できる

バーコードのしくみとはたらき
 ├ 使うのはGTIN
 ├ 簡単に言えばJANコードで管理
 ├ 本体表示はGS1-128
 ├ バーコードリーダーの違い
 ├ ソフトウェア上の処理
 ├ GS1-128を分解してみる
 └ 0と1に分けてソフトを作る

添付文書電子化の運用イメージ
 ├ 走査方法の確立
 ├ コードと情報を紐づける
 ├ 紐づけはリダイレクトページ
 ├ 添文ナビ(GS1 Japan)
 └ 試用と仕様

NESが想定する課題と対応案
 ├ 課題(1)大規模リコール
 ├ 課題(2)古い機種
 ├ 課題(3)カメラ使用許可
 ├ 課題(4)ネット使用許可
 ├ 課題(5)バーコード本体表示
 ├ サーバーダウン対応策
 ├ オープンデータ化やアクセスフリーに(私案)
 ├ 添付文書コピーOKに(私案)
 ├ 任意登録制度創設を(私案)
 ├ 電子化裏チャンネル(私案)
 └ アプリ手入力対応

おわりに
 └ 電子化を支援したい!




医療機器等の添付文書電子化

 次の薬機法改正の大きな話題として、添付文書の電子化があります。

 添付文書とは、医療機器や医薬品に『添付』される『文書』で、A4用紙8ページ以内、本体に同梱・同封が基本でした。
 20個入1箱で20枚同梱というのは昔の事で、近年は簡略化されていたものの、紙媒体が添付されるのが当然でした。

 薬事法改正があった2005年(平成17年6月)より、PMDAのホームページで添付文書が検索できるようになりましたが、すべてを検索する事ができない、検索できても紙媒体は必要ということで、医療機関での運用には紙媒体が使われてきました。

[Link] 厚生労働省: 医薬品等の注意事項等情報の提供について, 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長, 薬生安発 0219 第1号, 令和3年2月19日

[Link] 厚生労働省: 改正薬機法の施行に向けた対応状況について, 資料4-1, 令和2年度第2回薬事・食品衛生審議会 医療機器・再生医療等製品安全対策部会, 2021年3月25日

[Link] 厚生労働省: 薬機法改正に向けた対応状況について 添付文書の電子化、トレーサビリティの確保, 資料5-1, 令和2年度第1回薬事・食品衛生審議会 医療機器・再生医療等製品安全対策部会, 2020年10月14日

[Link] PMDA: 添付文書の電子化について

[Link] 厚生労働省: 薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律等の施行について, 厚生労働省医薬食品局長, 薬食発第0709004号, 平成16年7月9日


著作物

 筆者は医療機器安全管理システムの開発をしていたので2005年当時のこともよく覚えていますが、電子化されていない添付文書をスキャンして電子化しようとしたとき、著作権の壁に当たりました。

 当時、T社に輸液ポンプ等の添付文書の電子データを請求しましたが平成17年以前の物は紙媒体のみの提供であり、社内でも電子化できないとの事でした。
 病院が勝手に電子化することもできず、本体に紙の添付文書をぶら下げて運用していました。

著作権

文化庁に問合せ

 著作権の所掌は文化庁です。
 当時、文化庁主催のセミナーに参加し質問しました。

 学校教育などでは特例が認められていますが、医療には特例がないので、著作権者が下図のような自由利用マークを付けない限り、普通の著作物として扱われるとのことでした。

 院内でしか利用しないのですが、公正な運用のためには添付されてきた紙媒体を使うしかないようです。

[Link] 文化庁: 著作権


指先にA4用紙

 病院勤務時代、保健所から、医療機器それぞれの添付文書が即座に参照できるようにと指導されました。

 具体的な方法を訊ねると、本体に添付文書(紙)をぶら下げる方法を指導されました。
 パルスオキシメーターという指先に取り付けるタイプも、小さな本体にA4判の紙をラミネートしてぶら下げることになってしまいます。

パルスオキシメーター
パルスオキシメーター

バーコードで管理できる

 法改正後は、情報の取得にバーコードが利用できるようになるため、携帯端末でカシャっとすれば添付文書を閲覧できます。

 院内でカメラを使うことをどうするのか迷う面もありますが、急いでいるときに紙を探すより、便利になります。

 ME機器にぶら下げていた添付文書はラミネートしているとはいえ、拭き取り掃除も大変でしたし、紐は汚いと思っていたので、これでシール1枚で管理できるようになります。

添文ナビ



使うのはGTIN

 "GTIN"とは『ジーティン』と読みますが、Global Trade Item Numberの略で商品の識別を行う記号、識別子です。

 スーパーやコンビニで活用されているバーコードは"JAN"(ジャン)を使っていますが、GTINではJANも包含します。
 JANは国際ルール(GS1)に則り、日本では45か49で始まる事業者コードと、その事業者が任意で決める商品用のコード、チェックディジットの合計13桁の数字で商品を識別しています。
 使える記号は数字だけです。事業者コードが9桁の場合、チェックディジットが1桁あるので商品用に使える数字は3桁です。

GTIN

[Link] GS1 Japan: GTINとは


簡単に言えばJANコードで管理

 今回の添付文書電子化では、GTINの14桁、すなわちJANコードの頭に1桁加えたコード(GTIN-14)を使います。

 一般的に医療機器に本体表示されているGTINコードは、JANの13桁の前に"0"(ゼロ)を付けた14桁の表示だと思います。

GS1-128

[Link] GS1 Japan: GS1事業者コード・JANコード(GTIN)とは


本体表示はGS1-128

 JANだと申し上げた矢先ですが、医療機器本体に表示されているバーコードはJANコードではありません。

 JANコードは数字しか使えないので1桁あたりで0~9までの10種類を識別できれば良く、上限13桁のため全体の幅も狭く、制約が多い分だけ白黒の棒模様(データーバー)はシンプルです。

 一方、医療機器本体表示に使われるGS1-128は、データーバーの種別ではCODE128という物を使います。
 CODE128は数字、アルファベット、記号が使え、更に制御記号を埋め込む事もできます。
 その分、バーは複雑になるため、情報が多いからとバーコード全体を幅広にできないのであれば、バーとバーの間隔を狭くして表示しなくてはならず、密なコードになりがちです。

 CODE128(GS1-128)では『01』という記号を入れて『今からGTIN14を14桁で示します』と宣言してから14桁を表示するので、バーコードリーダーでは最低でも16桁のコードを読み込む事になります。
 実際には16桁の可読記号以外にスタートコード、ストップコード、チェックディジットが入るのでバーコード全体は長くなります。

添文ナビ

[Link] GS1 Japan: 識別コード


バーコードリーダーの違い

 JANコードとCODE128は白黒の縦線で表現するバーコードという意味では共通しますが、その中身は全く異なるものです。

 互換性も共通性も無いコードなので、バーコードリーダー側も相応に調整が必要になります。

 バーコードリーダーは仕様を確認すると、どのタイプのコードを走査できるか記載されています。
 何種類ものコードが走査できる仕様であったとしても、JANとCODE128が同時に走査できるとは限りません。

 物流の世界で考えれば、例えばコンビニの在庫管理システムであればJAN以外のコードは走査させたくないが、レジでは料金代理収納用にCODE128も走査したい、という需要があります。バーコードリーダーをJAN専用にしておけば、CODE128を走査しても反応しません。

 バーコードリーダー本体の相場はCCD式が5千円~1万円程、レーザー式が1万~2万円程です。ワイヤレスになると更に5千円程高くなります。
 機種によってはCODE128(GS1-128)のように密なバーコードを走査できない物があるので、これから調達される場合は注意しましょう。

GS1 Databar対応、0.076mmの高分解能、走査速度200スキャン/秒、走査を音と振動で確認、本体重量85g、USB接続。※.QRコードは走査不可

ソフトウェア上の処理

 JANコードは走査すると素直に13桁(または8桁)の数字がそのままキーボードで打ち込んだように入力されます。

 CODE128は制御記号を使う事ができますし、最小のJAN13桁を読みたくてもゼロ補正されたGTINの14桁と識別子01の16桁が読み込まれるため、ここから必要な情報を選び出す必要があります。

GS1-128
JAN(13)バーコード
GS1-128
GS1-128バーコード

GS1-128を分解してみる

 GS1-128を処理するソフトウェアでは符号から内容を想定しなければなりません。

 頭に『01』が付いたから、次の14桁目まではGTIN14で、その内の下13桁はJANコードだと仕分けする必要があります。

 例示した画像にある『17』という符号は使用期限として使われ、これは6桁という決まりがあるので17のあとは6桁目までYYMMDD形式だと想定して読み取ります。

 『10』から始まる数字はロット番号です。これは桁数に決まりが無く長さは任意、アルファベットが使われる事もあります。
 シリアル番号の場合は『21』から始まります。ME機器の場合はシリアル番号の方が多いと思います。
 バーコードの事を考えるとアルファベットは使ってもらいたくありません。CODE128は2桁の数字が並ぶ場合にはコード幅を短くできる特徴があり、すべて2桁数字ならバー間が密にならずに済みます。

GS1-128
GTIN14(JAN)を表わす01
GS1-128
GS1-128

 下図には人間の視覚情報として不要なものもバーコード内に含まれています。
 冒頭で『今からCODE-Cで始めます』というスタートコードが6本の線で表現されています。
 線は細い、中間、太い、極太の4種類が白黒2種類あるので8種類の線を組み合わせます。ここで使った5本とは、中黒-細白-細黒-中白-太黒-細白の6本です。

 ストップコードは、中黒-太白-太黒-細白-細黒-細白-中黒の7本の線で表現されています。

 CODE-128は基本的に3本の黒(バー)と3本の白(スペース)で表現されます。ストップコードだけ例外です。

GS1-128

0と1に分けてソフトを作る

 以前、筆者はGS1-128バーコードを出力するソフトウェアを開発した事があります。

 そのときは、106種類あるキャラクタコードをすべてプログラムの中に打ち込みました。
 CODE-A、CODE-B、CODE-Cがあるので316種類のデータを取り扱う事になります。

 106種類あるキャラクタ、ストップコードを除く105種類は白黒3本ずつの6本の線で表現されています。
 4種類の線を6本組み合わせてキャラクタを構成していますが、105種類あるキャラクタのどれも幅は同じです。

 そこに着目し、一番細い線の幅でキャラクタを切ると10本分であることがわかりました。
 すなわち、10桁の白と黒、0と1で表現できます。

 キャラクタ1個あたり10桁の2進数、キャラクタ10個でも100桁になります。
 この演算処理を内包したソフトウェアを作ることでGS1-128を扱うことができるようになります。

 下図は開発したソフトウェアで出力したGS1-128バーコード付きラベルの一例です。
 インクが滲むようなプリンタですとバーコードが潰れてしまいますが、家庭用のインクジェットプリンタで純正インクを使えば概ね印刷可能でした。
 名刺サイズで印刷するタイプは管理台帳などを想定し、例えば修理に出している場合でも機器のバーコードは手元に置いておき、間違いが起こりにくい管理ができるようにしました。

GS1-128
汎用プリンタで印刷できるGS1-128バーコード付きラベル(A4判21面)
GS1-128
A4判10面の場合は機器画像も挿入可能



走査方法の確立

 バーコードもQRコードも人間の目での可読性はありません。

 まずは、医療機器本体に表示されているバーコードやQRコードを走査するツールが必要になります。

 最もわかりやすいハードウェアはバーコードリーダーです。そのためだけのデバイスです。
 近年はスマートフォンのカメラ高精細化により、画像認識でバーコード等も走査できますので情報端末でも対応可能です。

添文ナビ
バーコードリーダーなら3歳児でも走査できる(自験例)

コードと情報を紐づける

 13桁のJANコードがわかっても、厚生労働省(実際はPMDA)のデータベースから情報が引き出せなければ意味がありません。

 PMDAの想定している運用方法では『医療機器安全性情報掲載システム』を経由して紐づけするようです。

 『リダイレクト』という表現をしていますが、13桁のJANコードを送ると、医療機器安全性情報掲載システムのデータベースから添付文書IDを抜き出し、その添付文書を表示するという仕組みになります。
 データベースとマッチングという負荷のかかる仕事はPMDAのサーバーで対応してくれるようです。

添文ナビ

[Link] PMDA: 添付文書電子化における外箱の符号からのリンクに関する技術的情報(業者向け)


紐づけはリダイレクトページ

 GTIN-14から該当機種を探して情報提供する流れは、PMDAが提供するリダイレクトページへアクセスします。

 リダイレクトページは下記のURLの仕様になっています。

●添付文書を直接閲覧するためのリダイレクトページ

添文ナビ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/{GTIN14}


●関連文書一覧を閲覧するためのリダイレクトページ

添文ナビ

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/01/{GTIN14}


添文ナビ(GS1 Japan)

 GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)が『添文ナビ』というアプリをリリースしています。

 AppleのiPhoneなどで使えるものと、Android版があります。

添文ナビ
添文ナビ iOS版
添文ナビ
添文ナビ Android版

[Link] 添文ナビ(iOS)
[Link] 添文ナビ(Android)
[Link] GS1 Japan


 アプリを起動すると初回は動作許可を求められます。
 カメラとフォルダ・ファイルへのアクセスを許可します。

添文ナビ
カメラへのアクセス許可
添文ナビ
フォルダ・ファイルへのアクセス許可

 アプリを起動するとスキャン画面が表示されます。

 スキャン画面の画像の枠内にバーコードを映すとスキャンが行われます。

 スキャンしたバーコードがGS1-128であれば、それを自動的に分解してGTIN-14(JANコード)を取り出します。

 下図の例ではGTIN-14が"00681490488624"という商品、滅菌期限が"2009/08/05"、ロット番号"4591M"という商品でしたが、しっかりと読み出しされています。

添文ナビ
スキャン画面
添文ナビ
GS1-128データ内容表示画面

 今回、いくつかの古い医療機器や診療材料をスキャンしてみましたが、添付文書が掲載されていないため下図のような『条件に該当する添付文書はありませんでした。』というメッセージが出てしましました。

 院内にある医療機器で1台でもこれが出てしまうと、完全電子化への移行ができないため当面、機器を廃棄するまでは紙媒体との併用になってしまいます。

添文ナビ

 データ連係が上手くいくと、下図のような画面を見る事ができます。

 今回、スマホで見ましたが、添付文書の文字や画像はかなり鮮明でした。
 タブレットやパソコンなどの大きな画面を用意しなくて良さそうです。

添文ナビ
添付文書ボタンを押した画面
添文ナビ
関連文書ボタンを押した画面

試用と仕様

 添文ナビをダウンロードしても試用できないと思いましたので、お試し用のバーコードを作ってみました。
 今日の時点ではTE-281NはPMDAのサイトには掲載されていないようです。

●超音波診断装置 XARIO 200 TUS-X200

添付文書リダイレクトページ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/04987670100758

関連文書リダイレクトページ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/01/04987670100758

添文ナビ
(01)04987670100758(21)NES

●テルフュージョン輸液ポンプ TE-281N

添付文書リダイレクトページ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/04582270690298

関連文書リダイレクトページ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/01/04582270690298

添文ナビ
(01)04582270690298(21)NES

●テルフュージョン輸液ポンプ TE-161SA

添付文書リダイレクトページ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/bookSearch/01/04987350361455

関連文書リダイレクトページ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/rdSearch/01/04987350361455

添文ナビ
(01)04987350361455(21)NES
添文ナビ
添文ナビ
添文ナビ



課題(1)大規模リコール

 普段の管理で添付文書を参照する機会は少ないと思いますので、サーバーがパンクするほどの事はないと思います。

 しかし、大規模な回収情報などが出ると状況は一変します。

 PMDAの安全性情報にはアクセスが集中するため、PMDAのサーバーに使われている回線は輻輳状態になるでしょう。
 回収情報には大抵『添付文書を参考』『添付文書に記載』などの文言が並ぶので、添付文書検索も高負荷になると思います。

[Link] PMDA: 医薬品・医療機器等安全性情報

[Link] PMDA: 回収情報(医療機器)


課題(2)古い機種

 2021年8月の添付文書掲載義務化以前は、義務ではありません。
 すなわち、2021年8月以前に終売となる医療機器は掲載されない可能性があります。

 医療機器は10年や15年は使われる物が多くあります。

 もし2020年調達品で廃番、未掲載の機器があると、その機器を廃棄する2030~2035年頃までは紙媒体での運用をせざるを得ない機器が存在してしまいます。

[Link] PMDA: 添付文書情報を初めて掲載する方へ~医療機器~


課題(3)カメラ使用許可

 院内では情報管理規程により写真撮影が制限され、スタッフに支給されている携帯端末(昔で言うPHS)にカメラが搭載されていない場合や、使用制限が掛けられている場合があります。

 院内でカメラが使えなければ、添文ナビのようなアプリは使えません。


課題(4)ネット使用許可

 電子カルテなどの医療情報システム(HIS)はインターネットから切り離された隔離空間のネットワークを使用している場合があります。

 院内にはインターネット接続できる端末が限られており、添付文書を見る事ができる場所がごく一部に限られてしまう可能性があります。

 また、看護師らが携行する通信端末(PHSやナースコールに代わるスマホ端末)には、ローカルエリア用のWi-Fiは接続できても、インターネットには接続できない場合が多いです。

 推測ですが、添文ナビのようなアプリを指定してネット接続させる方法は存在すると思います。
 ただし、アプリがどのような経路をたどって情報を得るのか、ユーザー側のどのような情報を取得しようとしているのか、そういった情報が公開されていなければ安易に接続はさせてもらえないと思います。


課題(5)バーコード本体表示

 当社で軽く調べた結果ですので詳細はわかりませんが、調達から10年以上経過している医療機器の多くがGS1-128バーコードの本体表示が行われていません。

 比較的新しい医療機器でも、人工透析装置のように場所を移動しない医療機器にはバーコード表示が無いような傾向を感じました。

 バーコードが無いにも関わらず、バーコードでの運用に切り替えるような動きは好ましくありません。
 JANコードやGTIN-14を普段から目にしている医療従事者は稀だと思いますので、手入力しようにもコードを調べる所から始まりますので、当面は困る人が居るでしょう。



サーバーダウン対応策

 サーバーダウンへの対応として、サーバーを強化するのは良いですが、完璧にはならないでしょう。
 医療機関が保有している医療機器の添付文書の電子データをダウンロードして保有しておけば、ある程度の回避策にはなります。

 ただし、見落としが無いとも言い切れません。
 過去に、コンビネーション医薬品と呼ばれる、例えばプレフィルドシリンジやインスリンペンのような筐体は医療機器だが中身の医薬品として販売されている物について、不具合発生時に医療機器側のデータベースに記録がなく、院内薬局では未採用で門前薬局の管理下、院内に情報が無いという事態がありました。


オープンデータ化やアクセスフリーに(私案)

 過去、短時間にたくさんのデータをダウンロードしようとした人が、PMDAサーバーへのアクセスを止められたと話していました。現在もブロックしているかわかりませんが、自院に採用されている数百や数千のアイテムをダウンロードするのに、1日10品しかダウンロードできないとなると困ります。

 PMDA様にはぜひ、オープンソース・オープンデータでどんどん情報公開していただき、色々な人がソフトを開発できる環境を整えて頂ければと思います。


添付文書コピーOKに(私案)

 添付文書は著作物ゆえに、勝手にコピーできません。

 ぜひ、コピーの許可を明示して貰いたいです。

 著作権を侵害しようという悪意ではなく、添付文書という性質を鑑み、著作物を目的通りに活用しようという医療従事者の行動の妨げとならない運用を望みます。


任意登録制度創設を(私案)

 古い機種の添付文書、そもそも電子データすら無いものもあります。

 全国のボランティアとなる医療機関・医療従事者が『ウチにあるので共有しましょう』というとき、PMDAのサーバーに登録できれば、JANコードも接続アプリも活用できます。

 任意登録ができない場合、仮に誰かがネット上に公開しても、それを閲覧するためにはダイレクトにURLを入力できるQRコードなど別運用のシステムが必要になってしまいます。

 良質な医療の提供や患者安全を目的とした添付文書電子化であれば、ぜひ柔軟な運用を認めて頂きたいです。


電子化裏チャンネル(私案)

 旧機種の添付文書等がデータベースに載らないのであれば、私設のデータベースを構築して、PMDAでは検索できなかった場合のバックアップ手段として医療機関が利用できれば良いなと考えています。

 権利関係の課題が解決できるまではローカルで、各院が自院のデータを自前で管理する事になると思います。
 クローズドシステムとして、不特定多数ではなく特定された相手だけが閲覧するシステムとして、運用が開始されれば医療機関としても使いやすくなると思います。

 電子化施行の2021年以降、2030年頃には不要になってしまうであろう旧機種の閲覧システムですので、これを有償化して儲けようという企業は現れないと思います。
 私たちのボランティア活動で運用できるかどうか、検討しているところです。


アプリ手入力対応

 現段階では、添文ナビではバーコード入力以外はできないようですが、ここは手入力も許可してもらえるようにお願いしたいです。

 カメラの使用許可が出るまでの対応としても必要ですが、目の前に機器がなく台帳で確認しているような場合でもバーコードが無い状況での運用を強いられます。

 POSレジ、特にホームセンターなどでは様々な形状の商品があるためバーコードリーダーが使えず手入力することがあります。
 間違い防止のためには手入力は避けたいですが、添付文書検索では誤入力があっても検索結果を見て理解し、確認できる医療従事者が使うと考えられるため、さほど問題にはならないのではと思います。




おわりに


電子化を支援したい!

 当社としての考えは電子化を後押しできるように何らかの支援をしたい、すべきだと考えています。

 紙媒体が悪ではなく、電子化の利便性を高めるために、まずはプラットフォームを構築して、その上で紙媒体と電子媒体のどちらが自院に合っているのかを選べば良いと思っています。

 当社では医療機器安全管理のコンサルティングや業務受託を行っていますので、そちらでご契約いただいている医療機関様には8月までに体制づくりを終えられるように進めていく予定です。

 本件についてのご質問やご意見、お気軽にお寄せ頂ければと思います。

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コロナ自宅療養最適化準備 | NES株式会社

 COVID-19と共存する社会として、感染が拡大していても社会活動は止まりません。

 当然ながら患者が発生し続けるのですが、その発生数と受入可能数がアンバランスになれば医療崩壊が起こります。

 その前段では、自宅療養者が増えます。最初は無症状者が自宅療養、次いで軽症者、そのうち酸素投与前の中等症も軽症扱いとなり自宅、いずれは酸素投与も自宅でという事になるかもしれません。

 どんな事になっても自分は生き延びる、そう考えた時、様々な備えが必要になります。
 大震災や停電に備えるのと同じです。

 今回、筆者はいくつかの取り組みをしましたのでここに共有します。




自宅療養五選
 ├ 1.発症初期
 ├ 2.無症状・軽症
 ├ 3.選択的自宅療養
 ├ 4.退院後自宅療養
 └ 5.入院待機

病床逼迫が増やす自宅療養
 ├ 病床逼迫
 ├ 患者数とのバランス
 ├ 患者数とのアンバランス
 └ 中等症ベッドが空かない

院外療養の高水準化
 ├ ホテルの病床化
 ├ 高齢者施設では昨年末から
 └ 医療から遠い自宅療養

自衛戦略
 ├ 医療崩壊後は受診困難
 ├ まず軽症のケースから想定
 └ 中等症72時間

私の自衛策(孤軍奮闘の籠城戦)
 ├ 陰圧室
    └ 簡易陰圧システム(サイト内リンク)
 ├ 行動範囲を限定し陰圧
 ├ オゾン除菌・消臭
 ├ 呼吸苦をセルフケア
 ├ さらなる呼吸苦をセルフケア
 ├ BVM72hr
 ├ 温水消毒orオゾン3日間
 ├ 不織布の多用
 ├ 食器は使い捨て
 └ 防御マスクとガウン
    └ フルフェイスマスク(サイト内リンク)

これまでと、これから
 ├ 2020年春
 ├ 組立前
 ├ パルスオキシメーター
 ├ 陰圧だけは代用がきかない
 └ ワクチン接種まで半年の注意




自宅療養五選

1.発症初期

 COVID-19は発熱や倦怠感、味覚異常などの自覚症状から検査を受けて発症を覚知するケースがありますが、この感染から発症初期にかけては自宅に居る事になります。

 まだ病気だと気づいていない間は療養ではなく日常生活、普段通りに自宅に居ると思いますが、PCR検査等で感染に気付いていこうも次の行動までは自宅療養となります。


2.無症状・軽症

 COVID-19の検査を受ける経緯は自覚症状が無い場合でも、濃厚接触者に該当する場合や、業務上の都合で受ける場合など様々なケースが想定されます。

 無症候性の場合、措置としての入院はなく自宅療養かホテル療養が一般的です。


3.選択的自宅療養

 入院しても良いレベルであるが、自ら望んで自宅療養を選ぶ人も居られます。

 仕事を続けたい、育児は止められない、親子で感染したので一緒に居たい、理由は様々です。


4.退院後自宅療養

 軽症者に近い位置づけになりますが、入院加療を終えて快方に向かっているという事で自宅療養となるケースです。

 他の疾患でも同じですが、入院の必要が無くなれば外来や往診に切り替わります。
 COVID-19の場合、感染させてしまう恐れがあるため行動制限付きの退院となる場合があります。


5.入院待機

 入院を希望しても調整がつくまで待機期間が発生します。

 病床にゆとりがある場合は入院先は1時間程度で決まり、配車された搬送車両に乗車して入院するまで半日前後です。

 病床が逼迫してくると、この待機期間が長引きます。




病床逼迫が増やす自宅療養

病床逼迫

 平時であっても呼吸器感染症の重症者を受け入れられる医療機関は限定的であり、そのベッド数はさほど多くありません。
 加えて、予防法や治療法が確立していない新興感染症の重症者となると受入も容易ではありません。

 ベッドや人工呼吸器などの製品を買ってきても、ケアする人材が居なければ病床は増えませんし、24時間365日のケアには交代要員が必要なので、増床は容易な事ではありません。


患者数とのバランス

 従前の感染症指定医療機関としては下表のとおりで、新感染症を担当する特定感染症指定医療機関は2床、エボラやペストなどを担当する第一種は4床、SARSなどを担当する第二種の感染症病床は72床でした。

 平時にはエボラもSARSも患者は居ませんし、仮に発生しても今回のCOVID-19のようにまん延する事は無かったので下表の病床数で逼迫する事はありませんでした。

特定一種二種
感染
二種
結核
二種
一般
りんくう総合医療センター226
大阪市立総合医療センター132
堺市立総合医療センター16
市立豊中病院14
市立ひらかた病院8
府立大阪はびきの医療センター6606
大阪刀根山医療センター
高槻赤十字病院6
大阪府結核予防会 大阪病院30
仁泉会 阪奈病院123
大阪市立十三市民病院391
国立近畿中央呼吸器センター40

[Link] 厚生労働省:感染症指定医療機関の指定状況


患者数とのアンバランス

 COVID-19用の重症病床、例えば大阪府では224床(2021年4月15日現在)です。府内の全病床数は106,767(2021年1月現在)なので0.2%です。人口は約880万人なので約4万人に1床です。

 1日の新規感染者が1,000人超、仮に全員が14日間で治るとしても14日目には累計14,000人の患者が居る事になります。
 仮に3%が重症化すると1日30人、重症病床を1週間程で埋める数になります。

 重症化すれば入院期間は長引くため、軽症者にように2週間で治っていく人とは差が出ます。重症病床は簡単には空床にはなりません。

 新規感染者が増えるペースと、増床するペースがアンバランスになりつつあり、この先には医療崩壊があります。

[Link] 厚生労働省:医療施設(静態・動態)調査・病院報告
[Link] 大阪府:令和3年4月14日 知事記者会見内容


中等症ベッドが空かない

 重症病床に入った患者の症状が軽快し中等症になっても退院は容易ではありません。この退院調整の難航も病床逼迫を助長しています。

 中等症を診る医療機関では、重症病床で診てもらいたい患者を送り出せないと中等症病床を空けられないだけでなく、症状が重ければより多くのリソースを割くことになり、それによって利用できる病床数を減らさざるを得なくなります。

 変異株では症状の進行が早まったとも言われており、中等症病床の待機患者は増加、軽症ゆえにホテルや自宅、高齢者施設で待機していた患者の病態が変化しても入院できない状況になりつつあります。




院外療養の高水準化

ホテルの病床化

 ホテル療養は経過観察、大阪で言えば大阪府看護協会が全面的に協力し宿泊者の病態を見ています。

 病床が逼迫する中でホテル療養者に対し、治療を開始する動きが出てきました。

 まずは軽症から中等症に至る過程での、入院までの時間を安全に過ごすための酸素投与ができるように機器が配備され、現場に駐在する看護師へのレクチャーが行われました。


高齢者施設では昨年末から

 あまり報道されていませんが、大都市圏では昨年末、病床が逼迫し入院調整が困難になる時期・地域がありました。

 特に高齢者施設からの入院受入要請が多かったようで、受入までに1日以上かかるケースもあったと言います。

 平時から高齢者施設には医師や看護師による訪問診療が行われており、対症療法のようなケアは実施できるため、生命危機には至らぬ中で入院を待つことができたようです。

日本経済新聞・2020年12月31日朝刊
読売新聞・2020年12月10日朝刊

医療から遠い自宅療養

 ホテル療養や高齢者施設の場合は建物内に看護師らが常駐していますが、自宅には医療従事者は居ません。
 コロナ感染者である事から、救急車を要請しても色々と準備に時間がかかり、入院受入先の照会にも時間がかかります。

 病床逼迫により、自宅から病院への移動にあったハードルはますます高くなり、いよいよ自宅での本格的な診療を考えなければならない時期に差し掛かっていると思われます。

読売新聞・2021年1月18日朝刊
日本経済新聞・2020年12月19日朝刊



自衛戦略

医療崩壊後は受診困難

 2020年2月、まだ『新型肺炎』などと呼ばれていたCOVID-19ですが、マスクや消毒液は枯渇し、大阪のミナミでは中国人観光客の姿が消えました。
 3月、筆者は米国ニューヨーク州の数字を見て警戒感を強めました。新規感染者が倍々と増え、数週で1万人を超えました。死者数は、平時の死亡する人数の倍、遺体安置の場所が足りないほどになりました。

 ニューヨークでは医療崩壊が起こり、拠点病院ではロビーやカフェにも患者を置いて診療せざるを得ない状況でした。

 日本でも医療崩壊が起これば災害時のようにロビーに患者が溢れるような状況になると思いますが、そこへ行っても治療を受けられる確約はありません。


まず軽症のケースから想定

 医療崩壊が起こらなくても、病床逼迫時は軽症者は安易に受診できるとは考えられません。

 自宅療養を強いられたとき、家族に感染させないための対策が求められます。

 そのためには自らを隔離し、あらゆる面で家族との接触を断つ事が必要になります。


中等症72時間

 中等症であっても病床が逼迫していれば入院までに時間を要するでしょう。
 局地的に病床不足であれば遠方への搬送や救援人材により多少の調整ができると思いますが、広域で病床不足の場合は、ベッドが空くまで身動きが取れないでしょう。

 中等症からの軽快化も重症化も72時間の猶予があれば見極めがつくのではないかと考え、中等症で72時間、自宅で療養できる手段を考えました。




私の自衛策
(孤軍奮闘の籠城戦)

陰圧室

 無症状であってもウイルスをばら撒く可能性があるため、感染の可能性のある段階から完治までは隔離が必要だと考えました。

 居室の1つを陰圧化する事で感染拡大を防止できるだろうと考え、陰圧システムを開発しました。

 機材は中核となるファン以外はホームセンターで調達できる物で構築しました。
 まずは完成イメージをデザインし、木材を使ってカタチを作るところからスタートです。

 だいたいイメージした通りのモノが作れました。
 ファンを動かすと轟音を立てて圧のある風を吹き出していましたので、装置自体はひとまず完成です。

 次に排気の方法について検討しました。
 強く吸い出せば、吸われた側は陰圧になると考えると、部屋に装置を置いて屋外に排気する方法が必要になります。
 そこで作ったのが窓用の器材です。スタイロフォームという床下の断熱などで使われる建材を窓の高さにカット、定着カラーというダクトを接続するための金物を押し当てて穴を開け、そのまま装着する事で排気用の器具を自作しました。

 下の動画は2020年4月9日の物です。
 木製の簡易陰圧装置と発泡フォームの排気器具でも陰圧が掛かる事を可視化しようと撮影しました。
 あくまで自宅用、自衛のための陰圧装置ですので厳密な差圧は測定していません。

 この木製のDIY陰圧装置はのちに、弊社とSISM(シズン)様の共同開発品として鋼製ボディに進化し、市販化されています。
 医療機関や高齢者施設で使用される事を想定していますが、上述のとおり在宅用から開発が始まっていますので、自宅療養用にもご利用いただけます。

簡易陰圧システムに関する話題を集めています

行動範囲を限定し陰圧

 呼気中のウイルスはマスク装着で漏出を最小化、換気により浮遊量は安全域になるようにと考えました。

 部屋から出てトイレまでは最短化、感染者がトイレに行く際には家族は廊下に出ることを禁止、療養に使用している陰圧室のドアを開放しトイレの空気を陰圧室に引き込む事で、感染者の動線上の空気は陰圧室に引き込まれるようにしようと考えました。

 ドアの取っ手など手を触れる部分は直接触らず、使い捨てのビニル手袋を装着する事で接触感染を予防、更に次亜塩素酸ナトリウム希釈液で消毒して立ち去る事で感染リスクを低減させる事にしました。


オゾン除菌・消臭

 陰圧装置は排気時にウイルス等を強制的に捨ててしまいます。One wayなので屋外に捨てられたら戻って来ません。

 空気清浄機はフィルタで濾すだけなので、フィルタにウイルスが残ります。
 フィルタを通らない空気はウイルスが残ったままの不変です。

 オゾン発生装置は、オゾンをまき散らします。
 オゾンは出会ったウイルス等を酸化分解します。
 ニオイの元も酸化分解します。

 療養中の部屋、トイレ等の周辺空間の除菌にオゾンを利用する予定で準備しています。
 しばらく風呂には入れないので、消臭も期待しています。

オゾン消臭器
オゾン消臭器 Air Success S
普段はゴミ箱の消臭にも利用
小型・軽量・静音。マグネットでどこへでも付き、USBスマホバッテリで動きます。ファンもフィルタも無いので手入れがラク、消耗品も買い足す必要はありません。

呼吸苦をセルフケア

 筆者が臨床に立っていた頃の名残で聴診器があります。

 筆者宅にはネブライザという薬剤を吸入する装置が2機種あります。エアロゾル問題で耳鼻科などでは休眠中ですが、自宅であれば心置きなく使えます。

 聴診器で肺の音を聴く必要性はあまりありませんが、ネブライザは薬液無しで水だけで使うと加湿器のような物になります。
 ネバっとした痰が絡んで来たら、水で使おうと思います。


さらなる呼吸苦をセルフケア

 自らの力で呼吸しても酸素加が追い付かないときには、呼吸を補助するツールが必要になります。

 睡眠時無呼吸症候群ではCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)という持続的陽圧換気が行われます。
 これは気管内挿管というものはせず、マスクを鼻や口に当てて換気を補助します。

 同じような方法で呼吸を助ける方法にバッグバルブマスク(Bag Valve Mask)という用手的な換気方法があります。
 バッグを手で圧迫するとマスクから空気が送り込まれる物で、救急の現場では日常的に使われています。

 筆者はこれをネット通販で買いました。

 筆者が呼吸苦になったときは、自分でBVMを操作するつもりです。
 家族が呼吸苦になったときは、筆者がBVMを操作するつもりです。

BVMを手に取って説明するクオモNY州知事
ネット通販で実際に購入したBVM

BVM72hr

 BVMは数秒に1回のペースで圧迫操作(吸気)が必要です。

 人工呼吸器のように機械式でなければ、人間がタイミングよく圧迫しなければ患者は吸気の機会を失います。

 そこで使うのがメトロノームです。

 医療従事者であっても研修で10分くらいの操作をすることはありますが、30分以上する事は少ないです。
 筆者がメトロノームに関心を持ったのは災害対策、BCPの一環として復電までの72時間、用手換気をするためです。

 COVID-19でも72時間の自宅待機を想定しているので、メトロノームの有用性が試されるかもしれません。

BVMの正確性向上にメトロノーム
BVMは用手操作が必要
メトロノームであればデジタルもアナログも関係なく使えます。コンパクトさでデジタルを選んでいます。もし、どこかへ搬送となれば、荷物は少ない方が良いと思います。これを使うシーンでは、救急車も来ない想定です。

 一般的な呼吸回数は1分間に10回程度、1呼吸は6秒程です。
 メトロノームのリズムは60回/min、そして6回に1回は鐘を鳴らすような設定にすると、そのタイミングでバッグを圧迫するということが条件反射的に実行できます。

 本当にメトロノームが良いのか、実験して学会発表しました。
 なにも使わずに個人の感覚だけで実施する場合と、時計を見ながら6秒に1回する場合と、メトロノームの場合を比較したところ、メトロノームを使う方法が有意差を持って正確である事がわかりました。

[発表スライド] 西 謙一: 医療BCP(事業継続計画)策定における人工呼吸器代替手段の最適化検討と評価法開発(PDF)


温水消毒orオゾン3日間

 身体がウイルスに侵されている状態では、身体から出る汗などにもウイルスが居る可能性があります。

 部屋の掃除は患者自らでもできそうですが、洗濯は道具と水が必要になるため部屋では難しいです。

 ウイルスの付着した布製品の感染制御には『80℃10分』という数字があります。
 家の中で80℃の湯を10分間維持し、洗濯物を浸せる環境は無いと思いますが、自宅療養の準備をする期間があれば検討する価値はあるかもしれません。

 私案では、トタンのタライにドブ漬けのヒーターで80℃をキープ、衣類はチャック袋に入れて湯を汚さないという作戦が良いかなと思っています。
 大きなタライはドリフなどで上から落ちてくる以外は使途が無さそうなので、ブリキのバケツでも良いかなと思います。

ある世代以上であれば、コントで頭上に落ちてくるイメージのあるたらいです。金属製です。
ヒーターが剥き出しになっているような製品です。温度調節器を使って適温のお湯を沸かす事ができます。

 熱湯消毒よりも手軽そうなのがオゾンです。
 メーカーさんは許してくれない思いますが、私は90Lのゴミ袋に布製品を入れて、オゾン発生装置(Air Success)をUSBバッテリに接続して同じゴミ袋の中に入れて消臭に利用する事があります。
 例えばスリッパなんかはニオイが取れます。スーツも焼肉やタバコのニオイから解放されます。

 今回はCOVID-19を対象に考えているので、3日くらい、自然にウイルスが消える分とオゾンのパワーの併用で殺菌しようかと計画しています。

針電極と多重リング電極によるオゾン発生
Air Success Miniをバッテリに接続してビニル袋内でマスクを消毒・消臭

不織布の多用

 ベッドシーツ、枕カバー、あらゆる布製品を使い捨ての不織布に置き換える、これで洗濯物を減らす事ができます。

 不織布は様々なサイズが販売されていますので、中にはベッドシーツくらいの物もありますが、入手困難であればロールタイプの物を買うと良いです。
 数十メートル巻のロールであれば、ベッドの長さ分くらいは簡単に取れます。それを何列か敷くことでベッドシーツにもなります。ただし、段差ができるので褥瘡にならないようにと考えると、やはりタオルやシーツが要りそうです。

 発熱の具合によって、併用もアリだと思います。
 私宅にはロールの不織布を配備済です。

防水のペーパーシーツです。幅90cmなのでシングルベッドくらいです。COVID-19感染拡大初期には長期的に品切れでした。

食器は使い捨て

 食事は家族と同じ物を食べたいと思いますが、食器は使い捨てにする予定です。

 バーベキュー用に買ってある食器を使います。

 飲料はペットボトルで済ませると良いと思います。
 冷蔵庫の予備は持てないと思いますので、常温でも飲める飲料を用意しておくと良いと思います。

シモジマの紙皿(GPY-26)です。50枚で千円ちょっと、1枚20円程は災害備蓄としては安いと思います。昼と夜、1日2枚の消費で1か月近くになります。

防御マスクとガウン

 家族や他人にケアをしてもらわなければならないとき、部屋に入ってもらうのはリスクが高いです。

 どうしてもというときには、以下の個人防護具(PPE)を装着してもらう予定です。

  • フルフェイスマスク(自作)
  • ガウン(医療用)
  • グローブ(ビニル手袋)

 2020年春には工事用のゴーグルと防塵マスクを買いましたが、その後、国立京都医療センターの救急医のリクエストを受けてフルフェイス型のマスクを開発したので、もし自宅療養となれば人工鼻を装着してフルフェイスで対応してもらいます。
 または、患者がフルフェイスマスク、または防塵マスクを装着してウイルスをまき散らさないという方法も考えます。

工事用ゴーグル
工事用防塵マスク

 アイソレーションガウンを着て、人工鼻搭載のフルフェイスマスクをかぶり、ビニル手袋などを身に付ければ病院内での防護に近いレベルになります。
 家族ケアにどのレベルが必要かわかりませんが、安全のため揃えられるものは揃えて、備えています。

アイソレーションガウン
自作の人工鼻搭載フルフェイスマスク
使い捨てのガウンです。簡易な作業であればこれでも十分だと思います。気になるようでしたら、衣服はジャージなどを用意して、その場で脱ぎ着してもらい、生活空間にはウイルスを持ち込まない配慮をすれば良いかと思います。



これまでと、これから

2020年春

 2020年の3月頃に上述のモノは揃えました。

 当時注文した物で、いまだに納入されないパルスオキシメーターはさておき、だいたいの物は調達できています。


組立前

 まだ準備中ですが、園芸用のテントを買いました。

 宅内にテントを張って、ウイルスの漏れをより少なくしようと考えています。

 ただし、何日もテントの中に居るのは精神的に参りそうですし、エアコンの風も行き届かないので、様子観察です。


パルスオキシメーター

 パルスオキシメーターの入手はつい最近です。
 2021年3月に親戚からいただきました。

 ただし、これはパルスオキシメーターとは呼べないと思います。
 医療機器の認証を取っていない製品のようです。

 医療機器であれば本来、本体や箱に表示すべき文言がありますが、この製品にはありませんでした。
 添付文書も付いていません。

親戚にもらった測定デバイス
病院で使われる使われるパルスオキシメーター

陰圧だけは代用がきかない

 ここまで色々と書きましたが、代用がきかないのは陰圧システムとバッグバルブマスクだと思います。

 聴診器やパルスオキシメーターはそのものを代用するものがありませんが肩で呼吸をする、紫の唇、顔面蒼白で血の巡りが悪そうであれば数値で見なくてもわかると思います。

 バッグバルブマスクについては医療機器であり、医療従事者が取り扱うべきものですが、今回は緊急事態を想定しているので、もし入手できれば持っていても良いと思います。

 陰圧装置は雑品です。医療機器では無いので誰でも取り扱うことができます。
 一家に一台という物でもありませんが、自治会に一台以上あっても良いようなレベル感だと思います。
 大阪府内で1日千人、10日で1万人の患者発生という事は、10日もすれば880人に1人が感染経験者、1か月もすると300人に1人が感染経験者になります。
 200世帯、500人くらい居る自治会なら、1か月の内に1~2世帯は感染者がいる計算になります。

 私案ですが、自治会内で感染者が発生したら陰圧装置を買う、それまでは準備だけしておくという事で良いと思います。
 感染者が出たらすぐに買う、治ったら自治会の資産として保有し次の感染者発生時に貸与する、こうすることで何かあっても安心な地域になると思います。

簡易陰圧装置パンフレット(PDF)

簡易陰圧システムに関する話題を集めています

ワクチン接種まで半年の注意

 ワクチンの効果があることを前提に、国民の接種がある程度まで終わるとされる半年後まで、COVID-19に感染しない努力をします。

 社会活動をゼロにしては会社も成り立たなくなってしまいますのでリモートを活用し、人との接触8割減を実践しながら、ビジネスを成り立たせていきます。

 仕事の半分は医療機関・医療従事者との関係ですので、そちらはワクチン接種が先行している関係から、比較的ハードルが下がりそうな気配が見えています。

カテゴリー
BLOG 医工連携 医療機器・設備・環境

臨床工学技士の業務拡大・地位向上・社会進出 | NES株式会社

 今回はブログという場所を借りて、臨床工学技士の過去と未来を見つめ、今後の業務拡大や地位向上がどうなるのか、どうすべきか私見を述べたいと思います。

 なるべくデータなどの客観的なものを引用・参照しますが、あくまで私見です。
 正しくないこと、偏った意見もあるかもしれませんが、どうかご容赦頂ければと思います。
(メンタル弱めですので厳しい言葉で簡単に倒れます)

 『私見』であることをお忘れなく。


臨床工学技士?

 臨床工学技士(りんしょうこうがくぎし)という言葉すら聞いたことが無い、記憶に無いという人が多いと思います。

 試しにGoogle Trendsでどのくらい検索されているか調べてみると、看護師と比較してしまうとほぼゼロでした。

Google Trendsにおける『臨床工学技士』(青)と『看護師』(赤)の比較

 そこで東海道新幹線の駅で比較してみると『三河安城』より少し検索される回数が少ない事がわかりました。

Google Trendsにおける『臨床工学技士』(青)と『三河安城』(赤)の比較

 検索トレンドで言うと、季節やトピックで動くものがありますが、そういったものでもありません。

Google Trendsにおける『臨床工学技士』(青)と『マンゴー』(赤)の比較

 実は2020年のCOVID-19の流行拡大によりテレビで臨床工学技士という名称が取り上げられたのですが、トレンドには反映されていません。
 同時に紹介されていたキーワード『ECMO』『エクモ』はスパイクが見えるほどのトレンドワードになりました。

英字『ECMO』(赤)との比較
カタカナ『エクモ』(赤)との比較

 スパイク状のトレンド急上昇があったのは『集中治療』でした。下図でいうと『集中治療』が急上昇後に『ECMO』が急上昇しています。

『臨床工学技士』(青)と『集中治療』(赤)の比較
『ECMO』(青)と『集中治療』(赤)の比較



これはブログ上の私見です。



臨床工学技士とは

昭和末期

 臨床工学技士とは、臨床工学技士法に基づいて『名称独占』を許された有資格者の事を指します。
 臨床工学技士を名乗る事ができるのは臨床工学技士のみですが、業務は医師や看護師とオーバーラップしますので業務独占ではありません。

 臨床工学技士法は昭和62年法律第60号、すなわち昭和62年(1987年)にできた法律です。


生命維持管理装置の操作/ME機器保守点検

 厚生労働省の職業紹介によれば臨床工学技士は人工呼吸器や血液浄化装置などの生命維持管理装置の操作などを行う仕事と、医療機器全般の点検等を行う職業であると紹介されています。

厚生労働省職業紹介動画(臨床工学技士)

臨床工学技士主体組織は病院オンリー!?

 主たる構成員が臨床工学技士であり、その存在目的が臨床工学である組織は、医療機関に在っても驚きませんが、企業にあるというのは非常に珍しいと思います。

 当社は法人自体が『臨床工学部』のような物なので、珍しい存在かもしれませんが、今後のビジネスの動向によっては医師や薬剤師など多職種連携で構成される可能性もあります。

 以前、東証一部上場企業に居たとき、営業本部の再生医療担当は3人中2人が臨床工学技士でした。再生医療という固有の目的のために組織されていたのですが、営業系とその他で分けると、その他すべては臨床工学技士が担っていました。

 とはいえ、ほとんどの臨床工学技士が医療機関で働く人、組織も医療機関に属するのが普通の事、常識という感があります。


臨床工学技士数

 2021年3月の第34回国家試験を終えての累計合格者数は50,143人(当社集計)です。

 同年の第110回看護師国家試験は受験者数66,124人、合格者数59,769人でした。
 単年で臨床工学技士の34年分の累計を上回ることからも、いかに技士数が少ないかがよくわかります。

 雑な数字ですが、日本には病院が8千軒、診療所が10万軒あります。臨床工学技士の合格者全員が病院勤務した場合でも病院1軒あたり6人程度です。全員が診療所勤務だとすると1軒あたり0.5人、すなわち全病院への常勤配置は不可能です。

受験者数合格者数合格率
医師9,9109,05891.4%
歯科医師3,2842,12364.6%
保健師7,8347,38794.3%
助産師2,1082,10099.6%
看護師66,12459,76990.4%
診療放射線技師2,9532,17773.7%
臨床検査技師5,1154,10180.2%
理学療法士11,9469,43479.0%
作業療法士5,5494,51081.3%
視能訓練士85077491.1%
言語聴覚士2,5461,76669.4%
薬剤師14,0319,63468.7%
義肢装具士22716572.7%
臨床工学技士2,6522,23284.2%
2021年3月 国家試験合格者発表

[Link] 厚生労働省: 国家試験合格発表




生い立ち

学校では教わらない

 臨床工学技士がどのようにして誕生したのか、養成課程の授業で詳しく触れる事はありませんでした。

 医師であればヒポクラテス、看護師であればナイチンゲール、診療放射線技師であればレントゲン、それぞれの職種の原点となる人物が居て、戦前戦後の様々な法改正を経て職業と免許が一致して存在する、その経緯についても養成課程で学びます。

 臨床工学技士の誕生『秘話』について、人工臓器学会誌39巻3号(2010年)に『太田和夫先生の死を悼む』という追悼特集が組まれ、その中で臨床工学技士についても触れられています。


法制化前のエンジニア

 臨床工学技士法が制定される前の現任者はtherapistよりはengineerに寄った存在であったと考えられます。

 therapistとして働く法的根拠が無かった時代は、専門的な技術者としてengineerとtechnicianの職域で働いていました。

 透析技術認定士として透析室付きで働く人も居れば、機械室付きで透析液供給や装置保守点検など完全にバックヤードで働く人も居ました。

 手術室ではいわゆる『立会い』としてメーカーから来て人工心肺を操作する人や、麻酔科に所属して現場雑務をこなす技術者も多く存在しました。

 いまでも臨床工学技士を『テク』さんなどと呼ぶ施設がありますがtechnicianとして働いていた名残りです。


国会での議論スタート(1987年)

 第百八回国会衆議院社会労働委員会議録第三号によれば『臨床工学技士法案』について厚生省の斎藤国務大臣から説明が行われています。

 太田和夫先生のおっしゃった、医療の進歩に伴って法律も変化していくべきとの発言に沿うような『時代とともに』という言葉が添えられ説明されています。

P13抜粋
P19抜粋

名称独占・三年課程

 法案ができるまでに有識者らで素案が作られたと思いますが、出された法案は『名称独占』と『三年課程』が特徴でした。
 主な内容は下記の通りで、いわゆる『チーム医療』が法案に明記されている事は非常にユニークです。

  1. 臨床工学技士とは、厚生大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示のもとに、生命時管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者
  2. 臨床工学技士になるためには、臨床工学技士国家試験に合格し、厚生大臣の免許を受けなければならない
  3. 国家試験を受験するためには、高等学校卒業後、一定の養成所等において、三年以上臨床工学技士として必要な知識及び技能を修得すること、大学において一定の科目を修めて卒業したこと等を必要
  4. 臨床工学技士は、その業務を行うに当たっては、医師その他の医療関係者との緊密な連携に努めなければならない
  5. 臨床工学技士でない者は、臨床工学技士という名称またはこれに紛らわしい名称を用いてはならない

 法律ができるまでの間に名称独占と業務独占の議論は無かったようですが、三年課程ではなく大学四年間とすべきではないかとの意見は出された記録があります。


想定技士数

 法案の中では人数についても触れられています。

 当時、透析施設が1,587軒、患者数66,300人、透析療法に関わる技術者が約5,700人というデータが示されました。
 人工心肺手術は17,000件というデータも示されました。

 10年後の透析患者数は1.5倍の10万人、人工心肺手術は2倍の35,000件を予想していました。

 必要技士数は15,000~20,000人、毎年400~500人程度の養成が必要と述べています。

 1985年に66,310人であった透析患者は5年後の1990年に103,296人に、10年後の1995年には154,413人に増えました。


中曽根康弘総理大臣の下で法制化

 国会に提出された議案は採決され、臨床工学技士法は法律となることが決まりました。

 法文を読んでいくと、当時の時代背景と今との違いがいくつか見えます。例えば絶対的欠格事由は今の条文とだいぶ違います。

 何はともあれ、臨床工学技士が誕生することになりました。


ロゴマークは体外循環

 ロゴマークについては養成課程で教わることはなく、免許取得後も職場や職能団体で話題に挙がる事もありませんでした。

 下図は免許証に印刷されているロゴマークです。

 いったい何だろうと思い、厚生労働省の免許証を所掌する部署に問い合わせました。
 すると『人工心肺の体外循環を模している』『チューブに血液と酸素が交わる』という意味である事を教えてくれました。
 ただし、誰が、どういった経緯でデザインし、決定したかは不明でした。




これはブログ上の私見です。



マネジャー職

透析医療と臨床工学技士

 臨床工学技士と人工透析は切り離す事の出来ない関係にあります。

 免許誕生から20年程は透析患者数の1割程の数をキープ、透析患者増に合わせて技士も増えていました。

 しかしながら、その関係は2010年頃には解消され、技士はグングンと増えていきました。

臨床工学技士数と透析患者数の相対グラフ

 透析装置の台数との関係を示したグラフです。
 装置の増加率は低く、軽微な増加にとどまっているのに対して技士数は増加曲線が右肩上がり、増え方に相関性が無さそうに見えるグラフになっています。

臨床工学技士数(左軸)と透析装置数(右軸)の実数変遷

[Link] 日本透析医学会: わが国の慢性透析療法の現況


技士長数

 必要技士数を議論する前に、キャリアパスの先にあるポストについて検討します。

 技士長というポストはいったいいくつあるのか、私にとってはこれが重要でした。

 例えば、2007年の第五次医療法改正で新たに設けられた医療機器安全管理という業務に対し、2008年に付いた診療報酬では常勤技士が居れば算定できるかことになっています。
 算定には施設届出が必要で、最初の年は病院2,103、診療所186施設の届出がありました。

 届出数は制度開始からほとんど増えておらず3千に満たない程度、うち診療所は3百程度で横ばいです。

 常勤技士が1人でも居れば算定届出はしていると考えると、技士長のポストは3,000にも満たないと考えられます。


技士長席3千は多い?少ない?

 臨床工学技士の発行免許数は5万を超えました。仮に4万人が医療機関で臨床工学技士として働いているとすれば、3千の技士長ポストに就いている人は7.5%です。

 日本の労働力人口は6,868万人、中小も合わせ企業数は400万社とする5.8%の人が社長です。
 社長以外も含め年収1,000万円超の給与を貰っている人は約5%、これは源泉徴収でのデータですのでフリーランスで稼いでいる人を含めればもっと多いと思います。

 さて、技士長のポスト7.5%は労働力人口全体から見れば高い数字ですが、常勤者に絞ると社長率に近づくかもしれません。

 社会人が社長になれる確率は低そうですが、社長は辞令を受けて任命されるだけでなく、自ら起業すれば社長になれるので、生涯で社長になれる確率は意外と高いです。
 すなわち、現在社長である人の人口比率と、社長になれる確率は一致しないという事です。

 技士長になれるかなれないか、これも確率では言い表せない事がたくさん潜在しています。

[Link] 総務省: 労働力調査
[Link] 経済産業省: 経済産業省企業活動基本調査
[Link] 国税庁: 民間給与実態統計調査


適任・適性

 技士長は実力主義か年功序列か、これは組織ごとに違う事は明らかだと思います。

 実力主義を掲げていても、臨床工学技士にとっての実力とは何かが不明瞭なケースが散見されます。

 臨床能力に長けていても、免許の範囲が限定されるため医師や看護師の代わりを務める事はできないため、臨床については医師や看護師が要職に就くことが必然です。

 マネジャーへの要求は、職種に関係なくマネジメント力です。
 課員を束ね、チーム力を高める事はマネジャーの仕事です。
 業務範疇、特に専門的な部分がつつがなく、平穏に維持される事もマネジャーの仕事です。
 トラブルが発生したとき、速やかに、的確に、確実に収束へと向かわせる事もマネジャーの仕事です。

 マネジメントができない人はマネジャーになれません。
 技士長になるためには、マネジメントが出来る事が要件になります。


順番待ち?

 マネジメント力があり、周りからの人望が厚く、他の職種のマネジャーから推される人が居ても、技士長のポストに空席が無ければ技士長にはなれません。

 現任の技士長が退職するか、降格するか、異動するか、概ねこの3つが技士長ポストが空く状況です。

 技士長が優秀で事務長になったので技士長ポストが空いた、という話題もちらほらと聞きますが、稀です。

 定年退職を待つというのが多くの施設で見られますが、例えば2年先輩の技士が技士長になったとすれば、その人が定年になるまで技士長となり、自分は定年前の2年間だけ技士長になれる可能性がある、という事になります。

 現状、早い者がちの施設も少なくないので、技士長になれない将来を憂慮して退職してしまう技士も少なくありません。


個人攻撃も現実

 マネジャーが降格か退職さえすれば席が空く、席が空けば次は自分だと思う人も中には居ます。

 降格させるにはスキャンダルが必要かもしれません。
 法人が降格人事を発令するにはよっぽどの事件が必要ですので窃盗やわいせつなどが無ければ降格は考えづらいです。

 そうなると退職です。
 精神的に追い込めば退職するかもしれないと考える人が居るようで、SNSなどを通じて誹謗中傷されたというマネジャーさんも居られます。

 患者のために、診療のために課内で意見が対立するのは前向きで良いかもしれませんが、個人を攻撃するだけの衝突は課内の人間関係の悪化のみならず、組織全体から見て課の評判を落としかねません。

 筆者も病院でマネジャー職にあったときはSNSでの誹謗中傷も浴びましたが、病院組織が守ってくれました。
 病院組織としては、自院のスタッフがSNSに書き込んでないと信じる声明を発表した上で病院から警察に相談されました。
 残念ながら自院スタッフが書き込んでしまったという事が警察の捜査で特定されました。
 これを教訓に個人攻撃ではなく、スタッフとしてどうしたいのか、マネジャー個人の問題なのか組織の問題なのか、しっかりコミュニケーションを取りながら課題解決していくことが確認され、課内の結束も緊密になりました。


ポストを増やせば良い!?

 マネジャーのポストが増えれば、技士内での骨肉の争いは減り、順当に勝ち取って行こうとする人が増えるのではないかと思います。

 ポストの増やし方については色々な考え方がありますが、原則として能力を認めてもらう事、他と比べて優れていることを示す必要があります。

 個人として優秀で、臨床工学部門に置いておくのはもったいない、物品管理や情報システムなどMEにも関係する部署で活躍してもらいたいと経営層が考えれば配置換もあるでしょう。
 個人の能力に依存している場合、後任が臨床工学技士となる可能性は低いかもしれませんが、道は開かれます。

 職種としての適任が認められる方が後続へも響くため、課を挙げて新たなチャレンジをする、職能団体としてレベルアップを図るなど1つの塊が動く事の方が影響力も大きくなります。

 まだ臨床工学技士の雇用が無い医療機関が部署を立ち上げればそこには技士長ポストが生まれる可能性が高まります。
 どんなに院内で活躍していても他院に部署が開設される訳ではないので、職能団体による社会活動・社会連携が期待されます。


技士は多忙!?

 充足か不足かと聞かれると、不足しているという意見をあちらこちらで聴きます。

 近年では医療機器の業者立会基準や医療機器安全管理義務化などにより臨床・保守の両面で業務量が増えました。
 内視鏡や心カテなど低侵襲治療の拡大はデバイスの多様性や治療室の効率運用などの二次的影響をもたらし、臨床工学業務を増やしました。

 日々の業務で忙しさを感じる技士が増え、臨床側からも参画を求められ、雇用は伸びているようです。




これはブログ上の私見です。



充足!?不足!?

右肩上がり

 臨床工学技士が足りているか否かを述べる前に、現状について整理しておきます。

 1988年からの移行期間に数千名の有資格者が誕生し、その後は養成校の開設が続き、2006~2010年の5年間は合格者が平均1,529名となり横ばいかと思われましたが、リーマンショックの影響があるのか養成校開設ラッシュが到来し2014年には合格者数が2千人を超え、以降は横ばいとなっています。

 合格者数が2,413人で過去最多となった第30回国家試験の時点で免許誕生から30年、仮に大学新卒で22歳であった第1回の合格者は52歳、定年までまだまだあります。
 移行期間であった最初の5年間の合格者数は7,887人ですが、6年目からの10年間の合格者は8,520と低調でした。

 最近5年間の合格者の平均が年2,205人ですが、このペースのままですと、定年退職者が出始めてもしばらくは新規合格者数が大きく上回るため、生産年齢の有資格者数は増加の一途です。

臨床工学技士合格者推移(未来シミュレーション)
直近5回の合格者数の平均値を元に、合格後38年で現場を去る仮定で現役人数をシミュレーション

医業収入への影響

 臨床工学技士の雇用を増やす事で、医療機関にとっての収入が増えるか否かという点について、詳しい解析をしている医療機関や臨床工学技士はどれだけ居るか私はわかりません。

 『医業』は事業活動ですので原資が無ければ回りません。原資は診療報酬として得ますが、In/Outのバランスが取れなければ続きません。

 医師や看護師は診療の基本的な部分を担っているため、医業収入に直結して考えられる部分が多いです。
 診療放射線技師や臨床検査技師はともに、検査を受ける患者数や装置数などから適正人数を算段しやすく、収支もわかりやすいです。

 臨床工学技士はわかりづらいです。

 自らの費用対効果や資産価値はどのくらいなのか、病院全体の経営的な数字から見た適正人数や実施すべき業務とはどのようなものなのか。

 院内会議で『あなた方の関わる診療報酬の算定額はいくらですか?』と聞かれる事があります。
 企業で言えば売上高です。
 私は、ほぼ『ゼロ』としか回答できませんでした。


個人収入への影響

 一般的に給与は組織全体のベースに、職種や部署における付加価値を掛けたような基本給があり、更に個人は組織全体のベースに、職種や部署における付加価値を掛けたような基本給があり、更に個人の能力や勤続年数に対する付加価値として基本給増額や諸手当が付きます。

 まず、臨床工学技士として医療機関に雇われたときにどのような賃金になるか、ある程度は決まってしまっていると思います。
 医療技術員として検査技師さんらと同列の場合もあれば、建築設備等の技術員の賃金テーブルに準ずる場合、臨床工学技士のための給与体系が用意されている場合など、様々です。

 一般的に給与が増える要因は事業への貢献度です。
 たくさん仕事をして増える場合もあれば、病院のイメージアップになる活躍したり、コストダウンを成功させたりと様々です。


総額からの換算

 透析専門施設などではわかりやすいのですが、透析回数(患者数)が施設収入に直結し、設備費や人件費に充当できる額は年間を通じてだいたい決まっています。

 仮に、施設の人件費総額が2億円、現状で技士は半分の1億円の人件費が充当されている場合、技士が20人でも30人でも技士業務に割り当てられる人件費は1億円が限界です。
 いま、25人で透析を回していれば1人平均400万円ですが、質を落とさず20人で回せれば平均500万円に増額できます。

 外来慢性維持透析の施設ように患者の増減が少ない施設では人件費は予算化されるので、予算増額は容易な事ではありません。

 増額する手段としては他職種の仕事を奪う方法があります。
 免許の範囲を逸脱して看護師業務を担う事はできませんが、免許されている範囲でのタスクシフトは実際に行われています。


成長係数ゼロ??

 一般企業では、会社がある程度の成長をする事で社員の給与も増えていきます。
 新卒で雇用した若者も20年経てばベテラン、20年間同額の給与では働いてくれないと思いますので、少なからず昇給が必要です。

 医療機関では経済的成長というものは構造的に考えづらいのですが、従業員の昇給は必要です。

 ある施設では4人で人件費2,000万円、比較的多いなという印象があったのですが、10年後も同予算でした。段々と若手の給与が増え、反対にマネジャーは漸減しました。
 最終的には、業務内容にベテラン級のスキルは要らない、概ね10年目がスキルとして飽和状態、ゆえに給与もその頃が上限というのが経営側の判断でした。

 部署としての成長を描き、課員の成長も想定し、永続性ある組織運営ができなければ、3年目の若手も20年目のベテランも同じ給与になってしまいます。


仕事を増やす

 課の成長のためには仕事を増やす必要性がありますが、むやみやたらと仕事を抱えれば良い物ではありません。
 増やし方にも精査が必要です。

 透析室の清掃を技士業務に採用する事は悪くないのですが、技士が清掃する必要性については検討が必要です。透析室の繁忙期に臨床業務も清掃業務も中途半端になっては意味がありません。
 清掃をマネジメントし、アウトソーシングの清掃業者を適正管理する事は課の成長に寄与するかもしれません。

 臨床工学技士の専門性を鑑み、どのような業務を広げる事が良い事か考える必要があります。




これはブログ上の私見です。



臨床工学技士の業務拡大

他院に倣う

 業務拡大の第一歩は他院の臨床工学技士の動向を知る事です。

 学会などで『こんなことできました』という発表があるので、聴講し、質問し、吸収します。

 同級生も同業者であると思いますので、仲間に聞いて回るのも良い手立てだと思います。


他職種を観察

 院内には医師や看護師をはじめ多くの職種が働いています。

 その業務の中には、その職種では無くても良い物があります。
 あるいは、他職種に適任者が居る場合があります。

 人手不足で困り、ある特定の時間帯に30分、1~2名の応援が欲しいという業務があるかもしれません。

 私が診療技術部門のマネジメントでは、臨床工学技士、臨床検査技師、診療放射線技師の3職種をミックスした組織運営を試みました。
 早出当番は朝8時まで透析室プライミング、監督者として臨床工学技士1名、他の要因は他職種とし、この時間帯に病棟の人工呼吸器等のラウンドも臨床工学技士が済ませます。
 8時~9時半頃まで採血室と透析室で穿刺ピークを迎えるため人員を集中投下しピークを乗り切ります。後半になると放射線科も徐々に患者が増え1日の中のピークを迎えます。
 昼過ぎには採血はほぼ終了、透析室では回収が始まるため人員は透析に偏り、それが終わると早出当番は退勤となります。

 上記の試みは診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士の3職種の業務を見直した結果ですが、どの部署でも1人を雇用する程ではないが0.1人分の仕事の担い手が欲しい、と思う事があるので、それを見つけ出す事ができると有意義です。


数字を知る

 ビジネスの世界では、数字を制する者が優位に立てる傾向にあります。

 業務拡大を目指す場合、業務や物品の費用や収入について知る必要があります。

 例えば、時給2,500円の看護師が内視鏡の洗浄をしているとします。これを時給1,500円の人が担えれば1時間あたり1,000円のコストダウンになります。
 しかし、処置室でガーゼ交換などの看護業務をしながら、手が空いた時に内視鏡洗浄をしている場合、他の業務をこなせない人を処置室に配置すると無駄が生じます。

 時間、場所、ヒト、モノ、カネ、色々な要素を考慮するためには数字を知る事が重要です。


余地を探す

 余地を探す事が業務開拓に有効に作用します。

 余地を探すには目利きの力が必要です。

 余地を見つけた時、それが臨床工学技士業務になり得るのかを判断する力も必要です。

 そして、技士業務にした場合の効果やデメリットについて検討します。
 検討する視点は技士側だけでなく、医療機関・組織全体にとってどうなのか、患者らサービスを受ける側はどうか、出入業者はどうかなど『三方よし』となるような視点が必要です。


心カテ業務は先人たちのおかげ

 心臓カテーテル検査の実施場所は診療放射線技師の持ち場、検査ゆえに臨床検査技師の業務範疇、様々な処置が発生する事から看護師が欠かせない、というものでした。

 そこに臨床工学技士が進出し、定席を確保するまでの道のりは平坦では無かったと思います。
 私の居た病院でも、臨床工学技士が座る席はありましたが端の方の段差があるところで座りづらい場所でした。
 そのようなアウェイなところから、カテ業務に臨床工学技士が居る事が当たり前になるまで、十年や二十年もの蓄積があったと思います。


近年は内視鏡業務確立

 2010年より前、内視鏡の検査も治療も件数が伸びている中で専門的に関与している臨床工学技士はまだまだ少数でした。

 私も先進的な取り組みをしている臨床工学技士に合うために倉敷まで行ったことがあります。
 なぜ内視鏡専門の技士になろうと思ったのか、医師や看護師からは何を期待されているのか、内視鏡技士に未来はあるのか、色々と聞きました。

 今では専ら内視鏡室で働くという臨床工学技士も珍しくなく、養成課程ではあまり触れられなかった消化器の生理や解剖について詳しい技士も多くなりました。

 とは言え、消化器専門のクリニックで雇われる事は滅多になく、常勤するほどの費用対効果が無いと見られているのかもしれません。
 クリニックで雇われるためには、勤務時間内をフルに埋められるだけの仕事を作るか、医師業務の時間短縮や負担軽減につながる付加価値の高い仕事をする必要があります。
 例えば、時短勤務中の女性医師が3時間の勤務中に1人でも多くの内視鏡検査を実施できる体制を確立、臨床工学技士の関与なしではできないとなれば、その3時間に大きな付加価値が生まれます。
 医事課業務、送迎者運転、ビル管理、開業医ならではのニーズに応える事も業務拡大・雇用拡大につながる可能性があります。


安易な拡大は逆効果

 一概には言えませんが、医療機器安全管理業務を手広く実施しようとお考えになる臨床工学技士は少なくありません。

 何を目的とするのか見失ってしまうと、無駄が多いコストセンターと化してしまいます。

 現場から『困った!』と呼び出されてすぐに対応、迅速な解決を目指すための体制づくりは有意義だと思います。

 壊れた機器をすぐに直す事は良いような、そうでもないような曖昧な領域になります。
 故障しないように日頃から予防保全(メンテナンス)をする、誤った取扱いをしないように教育研修するといった事は有意義だと思います。
 故障してしまった後は代替機を提供すれば現場は満足です。院内で修理する必要のある機器かどうか、近年はその判断が求められるようになっています。

 予備機が無く、即時修理が必要な医療機器はそう多くありません。例えば輸液ポンプや人工呼吸器などは、院内でも代替機の手配が比較的容易だと思います。
 これらをいつでも院内修理できるようにするためには、複数名をメーカー研修に派遣し、工具を保有し、部品を在庫する必要があります。
 部品だけで常時100万円も在庫があれば、資産が100万円も眠っている事になります。紛失してしまった、機種変更して使わなくなったとなれば在庫は資産ではなく廃棄物になります。

 私が技士長を務めていたとき、院内修理を徐々に削りました。
 その理由には、人材育成の無駄を実感していた事があります。滅多に使う事のないスキルのために時間とお金を掛ける事の無駄、研修に行った者が退職すれば丸ごと損失になる事、修理よりも他の研修を受けたいと思っているスタッフのストレスや士気低下につながっている事などが挙げられます。

 透析装置は200台近くあったので全員にメンテナンス技術を身に付けてもらいましたが、その教育係には定年退職者を活用しました。ベテランの技を後世に残しつつ、デッドタイムの最短化、適正管理を目指しました。


片道切符

 臨床工学技士の本分、価値とは何でしょうか。

 もし、臨床に重きを置くチームの場合、用度課や施設課などに進出した技士は元のチームには戻れないかもしれません。
 今後、臨床工学技士免状を取得してゼネコンやビルメンに就職する人が居てもおかしくありません。そうした人は最初から臨床のチームには参画して居ませんが、病院という組織に属し、臨床工学技士という共通ライセンスで同じ部署になるかもしれませんん。

 このような非臨床型の臨床工学技士を、非臨床だからと受け入れないのか、多様性を認めて受け入れるのか、業務拡大する上では検討すべき課題であります。


再生医療

 再生医療は臨床のような、非臨床のような、少し曖昧な領域になる可能性があります。

 患者から採取した組織や細胞などを遠心分離やフィルタなどの方法で分類し、増やし、保管し、投与します。

 腹水濾過濃縮再静注や自己血回収では似たような操作を行っているため、臨床工学技士には馴染がある業務かもしれません。

 この業務に我こそはと乗り出している臨床検査技師さんは、ピペット操作や顕微鏡観察のスキルがあり、病理などの現場経験が活かされる仕事として医師からも信頼されています。

 今後、再生医療をどのような位置づけにするのか、臨床工学技士の業界全体の動きが注目されます。


これから開拓

 私見ですが、これから開拓すべきはICT・AI・IoTなどの情報通信技術系と、在宅医療ではないかと考えます。この2つはオーバーラップする部分もあり、私も研究しています。

 電子カルテは医療従事者が記録し、参照する物でした。見読性、保存性、真正性を守るためのエンジニアが必要でした。

 AIでは医療従事者への提案が行われたり、患者に行動変容を起こしたりする機能が備わるため、新たな管理手法が求められます。
 特に診療報酬も算定できる医療機器としてのアプリは、医療機器ゆえの安全管理も求められます。

 10年程前からAIの工学者から『医療側での管理に適した人材は?』との質問を受ける事がありました。
 医療機器として、医療従事者による管理が求められます。

 IoTについても新しい時代に入ります。
 モノの所在管理やログデータ参照など便利に使える一方で、データの盗難やハッキングによる意図せぬ動作などからハードウェアを守る事も重要になります。
 人工呼吸器が在宅でも買物中でも常時監視できる事の有用性と危険性をマネジメントする人材が必要になります。
 ゼロリスクが難しい医療ゆえに、新しい管理手法を確立するのも臨床工学技士の職責ではないかと思います。


在宅医療への進出

 これまでの臨床工学技士業務は医療機関の中、大きなハコに閉じこもって仕事をするのが普通でした。

 2020年はCOVID-19の影響もあり入院患者数は激減、外来も含め病院の往来や滞在は最小化、最短化する動きが加速しました。

 今後、高齢者数は増加しますが病床は減少へ向かい、在宅医療は拡大します。

 療養住環境は様変わりし、一部では病棟模擬とでもいうようなしっかりした設備を備える家庭も出てくるでしょう。
 夫婦や家族の生活環境を残しつつ、療養者の居心地の良い環境づくりも試行錯誤が続くと思います。

 人工呼吸療法、抗がん剤治療、血液浄化療法、様々なME機器を使う高度な治療が在宅で行われ、それを安全に施行するために臨床工学技士の在宅進出が求められます。


過去は私も開拓者

 新しい業務へのチャレンジは、私も経験者の一人です。




これはブログ上の私見です。



私の業務拡大

ME創成期

 ME(エムイー)と言えば、という人物としては小野哲章先生、加納隆先生、高倉照彦先生、挙げればきりがありませんが、諸先生方がMEというモノを確立して下さいました。

 このようなパイオニアに私も直接、ご指導して頂いた事があります。また、雑誌Clinical Engineeringでは特集記事の執筆でご一緒させて頂いた事もあります。貴重な経験です。

 MEは医工学の世界から生まれましたが、臨床工学技士は同じく医工学から派生した人工臓器を生業とする方向に進み、養成課程でも人工腎臓、人工心肺、人工呼吸器に多くの時間を割きました。


医療機器安全管理黎明期

 2000年問題で医療機器安全管理の重要性が認識された頃、臨床工学技士業務の1つとして医療機器安全管理が意識されましたが、普及には至りませんでした。

 その要因の1つに『臨床』があったと思います。

 臨床工学技士は『臨床』or『工学』を選択的に生業とするものではなく臨床の中の工学的分野、医と工の学際領域を担うものですが、臨床寄りの技士が多かったのではないかと考えます。


MEより透析と言われて

 2000年~2005年頃、筆者は多くの医療機関へ見学に行きました。
 免許取得前、学生時代でしたので就職先候補も探しながら、技士の現況も知ろうと思っての見学でしたが、残念な実状を知る事になりました。

『ME管理ソフトを買ってもらえないからME管理はしない』

 異口同音にこうおっしゃる先輩技士が多い事に驚きました。

 そして、このような現状を放置しておくと、医療機器安全管理という仕事は臨床工学技士の業務にはならないだろうと思いました。
 人工透析や人工心肺でご活躍の諸先輩方は生涯、そちらで食べて行けると思いますが、これから技士になろう、技士になって医療機器安全管理を生業にしようと思う技士のタマゴにとって、その道を閉ざされるような、残念な気持ちになりました。

『透析もできないような技士は、技士じゃない』

 これも多くの施設で言われました。
 医療機器安全管理などと言う前に、透析くらいできるようになってから言いなさい、という意味合いでした。


CEME誕生の背景

 『ME管理ソフトを買ってもらえないからME管理はしない』という言葉を逆手にとって、ME管理ソフトがあればME管理をしないなどと言えなくなるだろうと考え、筆者はソフトを独自に開発し、無償提供しました。

 2002年、大学2回生で開発を始め、2005年の国家試験直前に完成、国家試験を終えて間もない2005年4月にリリースしました。

 医療機器安全管理ソフトはタダで手に入るようになり、買ってもらえないから管理しないという言い訳はできなくなりました。

 無償提供の目的は『業務拡大』と『地位向上』です。

 月給が手取りで20万円以下、乳児の居る生活苦の中でも無償提供を続けた結果、4年間で400施設程に無償提供できました。

 この無償提供は順風満帆というものではありませんでした。
 職能団体の長から恐ろしい言葉で圧をかけられたり、大ホールで講演なさる大学病院所属の技士から根拠の無い酷評をされたりと、敵が多いなと感じる出来事はたくさんありました。
 他方で救う神にも出会う事ができました。私の活動に賛同してくださり、応援して下さった先輩技士や医師の存在は、いまでも感謝し続けています。本当に救われました。

 医療機器安全管理業務は私が確立した物ではありません。
 しかし、その普及に少しでも貢献できるようにと起こした活動です。


MEを任されて

 免許を取得して3年目の平社員に白羽の矢が立てられました。
 地方技士会の学術委員会に参加しないかというお誘いで会議に参加すると『ME部門長』の役を命ぜられました。

 これほど光栄な事はありません。多くの皆さんに医療機器安全管理の魅力を知ってもらう、職能団体として横並びでレベルアップを図る絶好の機会だと思いました。

 私費で製本機を調達し、勉強会の資料を私費で製本して配布したところ、勘違いなさった幹部から公費を無駄遣いする悪者として吊るし上げられてしまいました。
 弁明の機会も与えられなかったので、最終的には退会する事になりました。

 同じ頃、ある病院では筆者にME室の立ち上げを任せて下さいました。
 半年はかかると言われた仕事を2カ月程で形づくり院内にME管理を実装しました。
 3か月目には院内で血管内治療センターの開設があり、オープニングスタッフとして参画しました。

機種統一は未実施、点検器具はメスシリンダのみ
3畳程の部屋に机を2つ置いて1人でスタート

2008年には脳血管内治療に専従

 2008年、脳血管内治療を実施する施設はさほど多くはなく、デバイスも新しいものが次々と誕生する頃でした。

 筆者は脳血管内治療は全症例に清潔で参加、各種デバイスの組立やプライミングなどの準備を清潔野で行っていました。

 脳動脈コイルは各社でデタッチツールが異なるため、それぞれの使い方を覚え、特徴を知り、安全・確実な治療に貢献しました。

 毎朝の医局カンファレンス、夕方に行われる症例検討会にも参加させてもらい、技士として何ができるかを検討し、医師らと議論を重ねて技士業務を確立していきました。

 脳神経外科の学会でポスター発表した際、意外にも第一線でご活躍の著名な先生が質問に来られており『臨床工学技士を雇えばそのような仕事をしてくれますか?』と訊かれました。
 これには回答に苦しみました。技士の世界では脳血管内治療について何も議論されていないので『私以外にこのような仕事をして、この学会に参加している技士が居ないと思います』としか答えられませんでした。

 業務拡大のチャンスでしたが、この時点では静観せざるを得ませんでした。


2009年には再生医療に専従

 iPS細胞の山中伸弥先生がノーベル賞を受賞される前、2009年に筆者は再生医療に専従する臨床工学技士として活動していました。
 山中先生のご講演も幾度か聴講させて頂き、anti-iPSを自称する先生からも直接ご意見を聴き、未来の再生医療の姿を想像する日々でした。

 当時の再生医療関連の学会に参加しても、多くが研究者、一部に臨床医が居るという程度で臨床工学技士の姿はありませんでした。

 当時の再生医療では、再生細胞がどのような作用をするのかについて追及する先生と、再生細胞を効率よく集める方法を研究する先生が居られました。
 後者について研究している先生に対し、人工腎臓のようなフィルトレーションや、セルセーバーのような遠心分離は有用かと尋ねるのがルーティーンでしたが、多くの先生がそれらの類似行為で臨床では使われるだろうと話していました。

 再生医療が臨床応用されるためには、こうしたデバイスを現場で扱える人材が必要であり、臨床工学技士への期待感も述べられていましたが、肝心の臨床工学技士が再生医療研究には参画していないため、あまり現実には近づきませんでした。


2010年には医工連携に専従

 2010年、医工連携という言葉はまだメジャーではなかったと思います。2009年の医学系学会で厚生労働省、文部科学省、経済産業省が同時に登壇して議論する姿が『珍しい』『画期的』と言われていたのを覚えています。そういった時代です。

 筆者は国立循環器病研究センターが独立行政法人化と同時に開設した研究開発基盤センターの公募に応募し、医工連携に専従する研究員として雇用されました。当時の応募条件には臨床経験と民間企業での経験が求められていました。

 大学の産学連携では職員の研究シーズなどを熟知し、その価値を高めるための対外的活動が多いようでしたが、筆者はセンター長らと共に現場の『声』に耳を傾ける活動をしました。
 看護師の不満、患者の意見、ここに市場性のあるニーズが潜在しているとの仮説を実証しました。

 筆者は専従者でしたので時間をたっぷりと使いました。
 ある年は180社と面談、週1回は白衣を着てリスクマネジャーと共に病棟をラウンド、ときどき研究所の先生の下へ行き雑談を交わしながら情報収集する、といった事をしていました。

 臨床工学技士が医工連携に関わる価値を創造できるよう、様々なチャレンジをし、一定の成果も残しました。

 この頃、ライフワークとして『医工連携くまもとモデル』の確立に努めていました。
 仕組み作りに対価は貰わないが、地域で医工連携に参画する企業が増えれば技士の需要も高まるだろうと見込んで活動しました。
 目標は参画企業30社、顧問としての技士雇用を年間300万円分。10人が30万円の副業を持てれば、10人の年収が1割増になるのではないかと考えました。

 3年がかりで構築したこのシステムは2014年、経済産業省九州経済産業局・熊本県庁・熊本市役所・熊本県工業連合会の協力を得て、熊本県臨床工学技士会の全面的な参画の下でキックオフすることができました。
 熊本県臨床工学技士会の会長と九州経済産業局を引き合わせたのは筆者です。県庁の担当者と引き合わせたのも筆者です。地道な活動を通じ、地域に医工連携の輪をつくりました。

医工連携くまもとモデル
医工連携くまもとモデル

医療機器・設備同時的管理

 医療機器安全管理は臨床工学技士業務として定着しつつあります。管理ゆえにマネジメントが必要ですが、どこまでマネジメントできているのか、施設間の差が顕著に見られます。

 管理が行き届くかどうかという評価をする上で、リスクマネジメントという視点・手法があります。
 例えば停電や断水が発生したとき、危害を最小化する手立てが構築されているのかを評価します。
 ME機器自体が故障しないのは当たり前の事、そのために予防保全などを実施していると思いますが、これはメーカーなど外部人材でも出来る事です。
 院内の設備や人員などのファクターが関与した時点で外部からのアクセスは急激に弱まり、内部でのリスクマネジメントが重要となります。

 筆者は電気工事士を経て臨床工学技士になった経緯から、設備と機器の両方の安全管理を研究してきました。

 著名な小野哲章先生が設備管理に対し『負荷としての医療機器』という言葉で、医療という独特な環境下での設備管理の在り方を力説されていた事が強く印象に残っています。

 コンビニが停電するとPOSレジが使えず販売ができない、冷凍庫が溶け出す、防犯機能が遮断するなど経済的な危害が生じますが人命や健康への被害は考えづらいです。
 医療機関が停電すると生命維持管理装置やバイタルサインモニタに影響が及び、診療の維持継続が難しくなったとき、生命に危機が及ぶ可能性があります。
 こうした負荷の違いを考えなければ適正な設備管理はできないと小野先生は訴えていたと思います。

 筆者も臨床工学技士の端くれとして、設備に明るいという利点を活かして医療機器と設備の同時管理という新業務の確立に取り組んでいます。

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BCP

 臨床工学技士業界における『BCP』の認知度はわかりませんが、2018年の日本臨床工学会で筆者がBCPを題材にした一般演題を登録したところ、ある関係者から『採点者がBCPを知らないので受賞は難しいと思います』と言われました。

 2011年3月11日、筆者はガス会社の人と病院の停電対策に関する打合せをしていました。その日、東日本大震災が発生し医療機関でも停電が発生、その後には計画停電もありました。
 この震災以前は停電しない病院づくりを研究していましたが、以降は停電しても強靭に立ち向かえる病院を研究しています。

 2000年頃から続けてきた停電や災害に関する研究は20年経過し、様々なデータを蓄積することができました。

 2020年、COVID-19で世間が大変な中、BCPに関する講演依頼を複数頂戴することができました。
 全国自治体病院協議会様の有償セミナーでは多数の方々にビデオ視聴して頂きました。国立宇多野病院様からは1月に院内医療安全研修での講演、12月には筆者が策定したBCPを同院で採用して頂きました。

 災害医療はDMATなど専門家が居ますが、災害時の医療は専門家不在であっても各院が工夫して診療を継続します。
 どのような医療機関であってもBCPは必要であると考え、特に病床規模の小さな病院や、専門性の高い病院からの要望に応えられるよう、BCPの研究を続けています。

 BCPが臨床工学技士業務になるかはわかりませんが、筆者は工学的視点を取り入れたコンサルティングを実践しています。
 例えばBVM、用手換気を何時間もしなければならないときにどうすれば正確に長時間継続できるかを実験しました。メトロノームを聴きながら用手換気すると正確にできそうであることがわかりました。


 同じように、停電すると冷蔵庫の中身はどうなるのだろうという事が、わかっていそうで分からないという状況でした。
 真夏に何度も冷凍冷蔵庫の電源を切っては温度を測定するという事を繰り返しました。
 このデータは、ある医療機関において医薬品保管の参考として使われ、復電後に医薬品を使うべきか否かの議論の材料となっています。
 COVID-19のワクチンの運搬や保管にも是非ご活用頂きたいデータだと思います。




これはブログ上の私見です。



業務拡大するべき?

有効求人倍率0.49

 2018年の日本臨床工学会で一般演題として発表した筆者の研究に『有効求人倍率0.49』という数字があります。

 これは、臨床工学技士数が増え続け、透析患者減少などによる技士需要の低下が重なった時の数字です。

 働きたくても雇ってもらえるのが半数になるか、技士全員の給与を半分にして全員の雇用を守るのか、いずれにしても痛みがあります。

 この数字を改善する方法は技士免許の保有者を減らすか、雇用を増やすかの二択です。


安っぽくない

 低賃金でも働くのが臨床工学技士、そんなステータスは要らないと思います。

 チョット高くても出す価値がある、かつてのMade in Japanの製品のように、一定の信頼や価値があるステータスなら欲しいと思います。

 『おじいちゃんは昔、臨床工学技士だった』と話したときに、孫からどう見られるか、そんなことまで考えて、引退間近の人もこれから技士を目指す人も、皆が協力してステータスの維持向上を図る事にデメリットは無いのではないかと考えます。


技士友愛会

 名称は互助会でも共済会でも何でも良いですが、良いときも悪い時も互いのためになる緩い会があっても良いかなと思います。

 いま、技士が訴えられたとき、臨床工学技士に精通した弁護士を探す事ができるでしょうか。
 医療行為について訴えられたとき、その行為を擁護するための証言者確保や根拠の提示ができるでしょうか。
 こんな悪い事を想像したくなくても、いつか誰かは訴えられると思いますので、備えあれば患いなしです。

 ネガティブな事が起こる前にポジティブに動く、そう考えると臨床工学技士の業務拡大についても『誰かが代表して開拓』という事に、皆で資金を集め、見込みのある人材に突破口を開いてもらう、そうした活動も必要ではないかと思います。

 例えば実用化が期待される再生医療の研究室に出向し、実用化のためのデバイス開発の中で臨床工学技士業務と結びつけ、再生医療の普及が技士雇用の拡大につながるストーリーを実装する、という事もすべきではないかと考えます。


士業を応援

 待機児童問題で騒がれる保育ですが、保育士免状保有者の半数が保育士として働いていません。
 その第一の理由が低賃金、次いで労働環境だそうです。
 キツイ職場であるにも関わらず低賃金であれば、せっかく養成校を出て取得した免許も使わない、という事のようです。

 同じ『士』を名乗る臨床工学技士も明日は我が身です。

 サムライ同士、課題を共有し、助け合うのも1つの手だと思います。




これはブログ上の私見です。



ご意見・ご相談

 臨床工学技士の業務拡大についてご意見やご相談はお気軽にお寄せください。

 無償です。相談したからといって費用はかかりません。

 苦言や批判もお聞きしますが、メンタルはさほど強くないので、匿名で追い詰めるような行為はご遠慮ください。

お問い合わせ


関連する講演等

第23回近畿臨床工学会 (2016年11月13日10:40~12:10・第1会場)
シンポジウム『変革』
Syn-4 臨床工学技士業務枯渇回避に向けた新規業務としての医工連携と経済・社会・産業への関り

[Link] 第23回近畿臨床工学会


第21回近畿臨床工学会 (2014年10月11日15:00~17:00・第1会場)
パネルディスカッション『未来を託す技士を育てるために、負託に応える技士になるために』
オーバービュー…これからの30年に向かって

[Link] 第21回近畿臨床工学会

カテゴリー
BCP BLOG 医療機器・設備・環境 電気工事

ポータブル蓄電池を常用/非常用の兼用 | NES株式会社

ポータブル蓄電池

 携帯蓄電池、ポータブル電池、ポータブル蓄電池など呼び方は色々とありますが、要するにコンセントを持ち歩くという感じの事です。

 スマホの充電用に使われるモバイルバッテリはUSBのDC5V専用が多いですが、ポータブル蓄電池は商用電源(AC100V)や車載電源(DC12V)など多彩な電源に対応しているのが使えるのが特徴です。


ポータブル蓄電池

  1. 弊社には数種の可搬電源
  2. 出力は多種多様
  3. 非常時に役立つ
  4. 非常用だけでは、もったいない
  5. 車載
  6. エンジン停止中
  7. バイク搭載
  8. 電源品質
  9. 電源品質を計測してみた
  10. 容量表記
  11. 使用可能容量
  12. 出力容量
  13. 市販機比較

停電シミュレーション

  1. 停電には自助が必要
  2. 停電の影響
  3. 一日の生活と電力
  4. 非常時用の電源があれば
  5. 停電は終わりが見えない
  6. LACITA ENERBOX-SPでシミュレーション
  7. 太陽光発電併用
  8. 専用ソーラーパネルで蓄電
  9. 自助に自助を重ねる

弊社には数種の可搬電源

 弊社ではBCP(事業継続計画)のコンサルティングを生業としており、また電気工事業許可を持つ業者でもあることから、停電対策に力を入れています。

 これまでに停電対策関連の学会発表や講演もして参りましたが、その背景には様々な実験の積み重ねがあります。

 研究目的も兼ねて調達した可搬電源はカセットガス式エンジン発電機『enepo』(Honda)、防沫ポータブル蓄電池『ENERBOX-SP』(LACITA)、ポータブル蓄電池『RP-PB055』(RAVPower)の3機種を保有しています。

enepo
ENERBOX-SP
RAVPOWER
カセットガスボンベ2本で発電できる可搬型発電機です。定格交流出力50/60Hz:100V-0.9kVA、連続運転1.1~2.2hr、365mm×524mm×262mm、騒音79〜84dB
リチウムニッケルコバルトアルミニウム(NCA)搭載、IP44防水規格取得のポータブル電源。本体電池容量120,000mAh(444Wh)、サイズは303mm×134mm×184mm、5kgの軽量コンパクト。
リチウムイオン電池を搭載。AC100W出力・30000mAhの充電に対応。60W出力のUSB-Cポート。3時間で満充電。軽量1kg

出力は多種多様

 ポータブル蓄電池といっても種類は豊富です。同じメーカーから複数機種が発売されている事も多いです。

電源種

 大きな違いの1つが電源の種別です。
 下記が主な電源の種類です。

  • AC100V(正弦波)
  • AC100V(矩形波)
  • DV12V(車載電源)
  • DC5V(USB-C)
  • DC5V(USB-A)

 USBの電圧は5Vで共通しても、大容量のUSB-Cに対応しているか否かで流せる電流値には差があります。

容量

 蓄電池は『電池』なので消費すればエネルギーが無くなります。

 電池容量の大小が供給できるエネルギー量に比例し、同時に電池の質量にも関係してきます。さらに、価格にも影響します。


非常時に役立つ

 病院やサーバールームなどに敷設されている無停電電源はバッテリに接続されています。電柱からの電源が途絶えてもバッテリから電源を供給するので停電を免れる事ができます。

 ポータブル蓄電池は商用電源とは別の、独立した電源系統なので世の中が停電していても、電源を使う事ができます。

病院ベッドサイド

非常用だけでは、もったいない

 ポータブル蓄電池は安い物でも1万円前後、数時間使用できるタイプで10万円近く、大容量になると数十万円という物もあります。

 いつ使うかもわからない非常用電源に数万円を使うという事に躊躇する人も少なくないと思います。

 そこで、常用を兼用する非常用電源としてポータブル蓄電池を使えないか検討しました。


車載

 車中泊のキャンプに出掛ける人にとっては車中で家と同じコンセント(AC100V)が使える事は魅力的、あるいは必須電源かもしれません。

 仕事で車を使っている人も、車中で片づけたい事はたくさんあると思いますので、やはり車載電源としてのポータブル蓄電池は活路があります。


エンジン停止中

 AC/DCコンバーターと呼ばれる、車載12Vの電源をAC100Vに変換する装置は比較的安価であり使われている方も多いと思いますが、エンジンを切ると使えない、仮に使えたとしても車のバッテリを消費するので長時間の使用には不向きです。

 ポータブル蓄電池なら走行中に充電、停車中に消費ができるので合理的、経済的です。

 家で充電して車中で使う、そうした運用にも対応できます。

この記事は停車中の車中で書いています

バイク搭載

 停車中に使うのであればバイクに搭載しても同じ使い方ができるはずです。

 実際にバイクに搭載して出かけました。

 この日は午後から病院訪問して会議があり、病院までは片道2時間かかります。午前中にビデオ会議の予定があり、病院近くのイオンモールから参加する事にしました。
 10時からウェブ会議が1時間程度、そのあと1時間半ほどパソコンで仕事をして病院訪問、この時点でパソコンのバッテリ残量は1時間分程度でした。

 そこで、移動中にポータブル蓄電池とパソコンを接続しておき充電、午後の訪問先ではある程度の電池容量が回復したパソコンを持ち込んで仕事をすることができました。
 

バイクのメットインに収まるサイズの蓄電池(LACITA)

電源品質

 直流電源は電圧は一定、横一直線の波形を示すため、5Vや12Vの出力させ調整できていれば安定しやすいです。

 交流電源は正弦波(サインカーブ)という波を描く必要があるため、この波をキレイに描けるかどうかが電源の品質に関わります。
 蓄電池の電池自体は直流です。車のバッテリや乾電池と同じく直流です。交流に変換する必要があります。

 こうした装置から出される交流には大きく『正弦波』と『矩形波』の2つがあります。
 家の壁にあるコンセント、すなわち商用電源は正弦波交流です。矩形波とは、四角い波です。
 正弦波は波を描くので電圧は漸減・増を繰り返します。瞬間毎に電圧値は異なります。
 矩形波はOn/Offの繰り返しのような波なので、+100Vと-100Vのどちらか二択、正負が入れ替わるときは高低差200Vの変動が瞬時にあります。

正弦波交流の波形
矩形波の波形

電源品質を計測してみた

 当社は登録電気工事業許可を得ている電気屋でもありますので、電気計測器具がある程度は揃っています。

 今回はHIOKIの3351Tという電源品質アナライザを使って蓄電池の電源品質を評価しました。

 ノートパソコンの充電など、私たちの使用目的の範囲内であれば特に電源品質に異常は見られませんでした。
 粗悪な電源ですとサインカーブが歪み、ギザギザの波形が見られたり、十分な電圧が出なかったりします。

HIOKI 33151T

LACITAの電源品質

 LACITAのENERBOX-SPの電源品質測定結果は下図の通りです。

 100V以上の電圧を維持し、歪んだ波形も出ないので特に問題なく使い続けられると思います。

LACITA ENERBOX-SPの電源品質(2021年3月30日測定)

RAVPowerの電源品質

 RAVPowerのRP-PB055の電源品質測定結果は下図の通りです。

 100V以上の電圧を維持し、歪んだ波形も出ないので特に問題なく使い続けられると思います。

RAVPower RP-PB055の電源品質(2021年1月2日測定)

容量表記

 電池容量は一般的に、電池自体の電圧において、何アンペアの電流を何時間流し続けられるかという数値『Ahr』(アンペア・アワー)で表示されます。

 スマホ用のモバイルバッテリでは『mAh』(ミリ・アンペア・アワー)がよく使われていると思います。

 余談ですが、家の電気代を記録するメーターは図記号で『WH』と描きますが、家庭用電力は『Whr』(ワット・アワー)を単位として電気代が請求されています。
 電力は電圧×電流、すなわちAhrに電圧を掛ければWhrを求める事ができます。

保有機の容量

 保有する2機種の容量はLATICAが12万mAh(120Ahr)、RAVPowerが3万mAh(30Ahr)でした。
 リチウムイオン電池の電圧が3.7Vであるとすれば、LATICAは444Whr、RAVPowerが111Whrの電力容量となります。

LATICAのカタログ値
RAVPowerのカタログ値

使用可能容量

 電池容量はあくまでも論理的に貯留できるエネルギー量であって、実際に使える量ではありません。

 電池は、その電圧を維持できなくなると出力をやめる(やめさせる)構造になっているのが一般的で、特に昇圧や直交変換などをする際にはトランスやインバーターが電池と負荷の間に入るため、電池をフルに使える訳ではありません。

 各社が『誤魔化して』いるかどうかわかりませんが、LACITAは99.10%まで使えるそうです。


出力容量

 電池容量は持続時間に関わりますが、そもそもコンセントを挿した時点でブレーカーが切れてしまうのであれば使い始めることすらできません。

 ご家庭の屋根にあるソーラーパネル、停電時に役立つとされていますが、コンセントとして取り出せる容量は350Wや700Wなど上限が決められています。
 350Wでは冷蔵庫や電子レンジは動かせませんでした。テレビや扇風機は動きました。

 ポータブル蓄電池も同様に容量の上限があります。
 装置の設計の問題ではありますが、蓄電池容量が小さい物は出力容量も小さい傾向にあります。
 小さい貯留槽から短時間に大量に出してしまえば、すぐに枯渇してしまいますので、仕方ない事ですが、大きな出力を得たければ、大きな蓄電池を買わざるを得ないのが現状です。

保有機の容量

  カタログ値ですが、LATICAの方が400W、RAVPowerの方が100Wまでの出力に対応しています。
 400Wはかなり用途が広いです。

 例えば8kgのドラム式洗濯機は約200Wです。インバーター駆動であれば始動電流は定格の2倍程度なのでギリギリ動きそうです。
 ガス給湯機はリモコン等の制御系などで電力を必要としますが最大でも300W程度です。
 停電生活経験者としては給湯器と洗濯機があれば日常生活に近い衛生状態を維持できると考えています。

 停電時の生活まで考えるのであれば、400W程度の出力があるポータブル蓄電池がお勧めです。

LATICAのカタログ値
RAVPowerのカタログ値



市販機比較

大容量タイプ

 私たちの手元にはLACITAのENERBOX-SPがありますが、調達にあたってはこれ以外の機種も比較検討しました。

 比較検討した機種はJackeryとAnkerです。JVCケンウッドの製品はJackeryのOEM商品ですので、電池容量の違い以外はJackeryと同等だと見ています。

 各社共通して『充電しながら電気を取り出す』ことができる『パススルー』機能を搭載しており、ユーザビリティとしてパススルーの需要が高い事が窺えます。
 ただし、充電可能回数を消費しながら使うパススルーは、製品寿命を浪費しているとも言えますので、無停電電源装置として使うならば専用機を使った方が良いのではないかと思います。

 電源種はAC100V(正弦波)、DC12V、DC5V(USB)が使える事は共通、候補外の機種ではUSB-CのPD対応を前面に出す機種もあります。PDは大電流を流せるためスマホ用バッテリでは不足感があり、今後のポータブル蓄電池に必須コネクタになるのかなと思います。

 横並びの中、今回の決め手となったのは重量です。

ブランドLACITAJackeryJVCケンウッドAnker
商品名ENERBOX-SPポータブル電源 700BN-RB6-CPowerHouse II 800
Amazon価格72,80079,80071,28074,800
電池容量120,000mAh
444Wh
192,000mAh
700Wh
172,000mAh
626Wh
216,000mAh
778Wh
電池リチウムニッケルコバルトアルミニウム(NCA)リチウムイオンリチウムイオンリチウムイオン
日本法人株式会社ポスタリテイト株式会社Jackery Japan株式会社JVCケンウッドアンカー・ジャパン株式会社
PSE認証
パススルー(?)
防水IP44(?)(?)(?)
100V出力
100V容量400W500W500W500W
(瞬間最大)(?)1000W1000W1000W
100V口数3222
100V波形正弦波正弦波正弦波正弦波
USB-A
Aポート3334
USB出力10.5W×330W(?)30W
USB-C---
Cポート---2
PD対応---
車用DC12V
12Vポート1111
12V出力110W120W120W
ソーラー
保証1年
(3年)
2年2年2年
サイズ303*134*18430x19.3x19.119.3x30x19.2300*185*204
重量5kg6.3kg6.4kg8.3kg
ラチータ(LACITA)のポータブル電源(エナーボックス)の2020年版です。120000mAh、防塵・防沫のIP44防水規格、5kgの重量で持ち運びしやすいです。
192000mAh/700Wh PSE認証済 純正弦波 AC500W、瞬間最大1000W DC/USB出力 4つの充電方法 液晶大画面表示 24ヶ月保証
高性能リチウムイオンバッテリー搭載、大容量626Wh、最大電力500W、スマートフォン(15W)が約35回、LEDランタン(12W)が約44時間、小型炊飯器(360W)が約3回。国内品質 「Tuned by JVC」モデル。注文日から24ヶ月保証
216,000mAh (778Wh)、最大770W高出力。純正弦波AC出力。USB-Cポート×2、USB-Aポート×4、シガーソケット。最大24ヶ月保証

小型携帯型

 小さいタイプはビジネスバッグに収まるサイズで機種選定をしました。

 AC100Vの正弦波が出力され、持ち運べる程度の外形、重量となるとかなり機種が絞られました。
 2020年12月31日、Amazonで15,999円で売られていたRP-055を購入しました。
 PD充電に対応した30,000mAhです。

リチウムイオン電池を搭載。AC100W出力・30000mAhの充電に対応。60W出力のUSB-Cポート。3時間で満充電。軽量1kg



停電シミュレーション

停電には自助が必要

 停電が発生したとき、どのような対応をとる用意があるでしょうか。

 停電は災害ではないため、原則として『誰も助けてくれない』非常事態です。

 災害対策基本法では以下のように災害を定義しており、停電は災害では無いと読み取る事ができます。
 実際に2018年9月の台風21号では、台風のための避難所は開設されても、停電のための避難所は開設されませんでした。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 災害
暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。

 ゆえに、停電への備えは『自助』として重要な位置にあり、備えを怠ると大変な不便や不都合が生じる事になります。

 自助とは自身のために、自身で自身を助ける事です。対比的に公助や共助という言葉があります。
 公助は行政等による救援物資や避難所開設、見舞金給付などが該当します。
 共助は隣近所や自治会、会社など公設ではない組織や団体による互助のような手助けです。自衛消火隊なども共助に含まれますが、飲み水を分け合う、お弁当を代わりに取りに行ってあげる、そうした小さな活動も共助には含まれます。

[Link] 内閣府 防災情報のページ:災害対策基本法

停電の影響

 停電すると、日常生活はストップします。

 あらゆる家電品が動きません。

 信号機は消灯し、バス等は運休、一般車両は混雑、救急車到着は遅延します。そもそも119番通報ができないかもしれません。

 お店のレジも冷蔵庫も停止し、多くの商店が休業します。自動販売機も停止します。通信を使う電子決済は取引停止となります。

停電を理由に休業(実際の停電中)
停電を理由に休業(実際の停電中)

一日の生活と電力

 ぜひ、1日の生活と電力の関係を見つめなおしてください。

 就寝中にスマホを充電します。そのスマホを目覚まし代わりに使う人も多いと思います。ニュースなど情報収集にはスマホ端末と通信回線を使います。

 トイレや洗面の水、水道管から直圧であれば停電は無関係ですが、マンション等ではポンプ停止で高置水槽が渇水となります。
 ウォシュレットや自動水栓は停止します。
 ドライヤーは使えません。洗髪用のお湯も、給湯器が動かなければ給湯できません。

 朝食にポットやトースターなどは使えません。
 冷蔵庫内は冷たさは残っていますが、新たに冷やす能力はありません。
 電子レンジも炊飯器も使えません。ガスであればコンロが使えますがIHなら加熱調理全般ができません。

 洗濯機には電源が要ります。
 コインランドリーの洗濯機も恐らく動きません。

 電車に乗るための自動改札には電源が必要です。
 切符を買う券売機も電気式です。
 そもそも電車を動かすには動力にも信号制御にも電気が必要です。

 職場の自動ドア、エレベーター、ゲートのセキュリティなどは電気式です。
 パソコン、サーバー、複合機、ビジネスフォン、どれも電気が必要です。
 トイレの水、照明、自動水栓、換気扇、やはり電気が必要です。

 夕食の材料を買うスーパーマーケットは看板、自動ドア、エスカレーター、冷蔵庫、冷凍庫、照明、レジ、在庫管理システム、勤怠管理システム、どれをとっても電気が必要です。
 特に在庫管理システムは未入力で販売してしまうと膨大な棚卸作業が発生しますので休業した方が合理的・経済的です。
 それ以前に生鮮食品は冷凍冷蔵庫停止で壊滅的、信号消灯によりデイリー食品は未入荷、スタッフも出勤困難で販売員も販売商品も無い状態になります。

 夜、入浴するにも給湯器が動きません。
 トイレも流せないまま、就寝の時間を迎えます。

 翌朝、もうスマホの充電がありません。
 世の中、どうなっているのかもわかりません。

自動水栓でも手桶で流せる
冷凍食品は壊滅的被害

非常時用の電源があれば

 非常時に電源があれば助かります。当たり前のことです。

 では、どのような電源があれば、どのように助かるでしょうか。

 よくあるシンプルな壁掛ガス給湯器は消費電力は50W以下です。浴槽一杯にお湯を沸かすのに30分かかるとすれば50W×0.5hrで25Whrの電力を消費します。RAVPowerの携帯型電源RP-PB055は定格で111Whrですので4回は風呂を満杯にできる計算になります。

 43インチの4Kテレビで定格消費電力が85Wという商品がアイリスオーヤマ(43UB10P)から発売されています。111WhrのRAVPowerを使うと1.3時間、約78分間視聴できる事になります。
 ただし、TVが光回線であれば停電中は映りません。屋根のアンテナであってもブースターなどの機器に電力供給できなければ結局映りません。

 停電中に何をしたいのか、どれだけの期間の停電を見込むのかで備えるべき非常用電源の種類は大きく変わります。

シャワーの湯にも電力
停電中にビデオ視聴(実際の停電中)

停電は終わりが見えない

 計画停電であれば、計画どおりに停電は終わります。

 落雷ないよる局所停電であれば概ね数時間で解消します。

 しかし広域の暴風雨雪で何百万戸も停電すると先が見えません。

 2018年の台風21号では同じ町丁内でも明暗が分かれ、弊社は52時間停電しましたが、お隣さんは29時間で解消しています。
 丸1日も差が出るほど大規模停電の解消は不透明です。

停電解消地域(中央奥側)と停電中の地域(手前全域)

LACITA ENERBOX-SPでシミュレーション

 444Whをどう使うか、考えてみました。
 3日間・72時間の停電と仮定しました。

 浴槽の湯沸かし3回で50W×0.5hr×3回=75Wh、残り369Whです。

 スマホ1台あたり10Wh、家族4人が2回ずつ充電したとして10Wh×4人×2回で80Wh、残り289Whです。

 洗濯機を1日1回、洗濯とすすぎを1回ずつで30分、平均200Wを1回だけ使って200W×0.5hで100Whr、残り189Whです。

 台風シーズンで暑いと思いますので40Wの扇風機を使うと189Whでは189Wh÷40W=4.725h、すなわち4時間43分30秒だけ扇風機の風を受ける事ができます。
 間違えて扇風機をつけて寝落ちしてしまうと444Whフル充電でも11.1時間で電池切れになります。

 お風呂に入れて、洗濯ができて、スマホが充電できる、これだけでも比較的質の良い生活ができると思います。

充電式非常用扇風機
停電中の湯沸かし(実際の停電中)

太陽光発電併用

 もし、家の屋根に太陽光パネルが載っていれば、もしかするとリモコン操作で自立運転ができるかもしれません。

 これは、太陽光パネルで発電した電力を売電には使わず、自宅の自立運転専用コンセントで使うものです。

 年代や機種にもよりますが350Wか700Wのいずれかが最大電力である可能性があります。

 昼間は太陽光で洗濯機やスマホ充電、同時にポータブル蓄電池にも充電。
 夜間は蓄電池で扇風機等を動かせば、24時間、何かしらの電源を使う事ができます。

 朝8時頃から16時頃まで8時間も発電できれば、蓄電池にはそこそこの電力が溜まっていると思います。

太陽光は日没で発電終了
自立運転中の太陽光発電

専用ソーラーパネルで蓄電

 屋根のソーラーパネルではなく、蓄電池専用のソーラーパネルを使って充電することもできます。

 キャンプ場などで昼間蓄電、夜に消費という場合に使います。

 パネルが一式で2.5万円くらいなので、買う価値のある人は買った方が良いですが、家に太陽光パネルがあり、停電時のみ使用という事であれば家のソーラーでも十分です。

折畳式、81W発電18V/4.5A、夏場の晴天時では約8時間でエナーボックスが満充電。USB出力10W(5V2A)、発電効率20%、ケーブル長3.5m、展開時サイズ350mm×2310mm×25mm、3.3kg。アウトドアメーカー採用もあるポリエステル600D生地を採用、パネル表面フッ素樹脂コーティング。

自助に自助を重ねる

 前にも述べた通り停電は災害ではないので、公助は期待できません。

 共助といってもエネルギーを分け合う事ができないので、トイレや食糧の貸し借りをする程度だと思います。

 ポータブル蓄電池は停電中の生活の質向上に役立ち、さらにソーラーパネルなどがあるとその強さを増します。

作業灯(AC100V)
ローソク

 2018年の停電時、私たちは照明器具を使っていました。
 電源が無ければローソクで過ごしていたことでしょう。

 9月のまだ暑い日、私たちは窓を閉め、エアコンをつけて就寝しました。近所では皆、窓を開けて暑さにうなされながら寝るか、車中泊をしていました。

 自助ゆえに、誰も電気を分けてくださいとはきませんでしたが、スマホ数台の充電程度であれば供給できる程度の余剰電力はありました。

 エネルギーの重要性を知る機会を設け、ポータブル蓄電池の有用性についても深く考えていきたいと思います。

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お知らせ 医工連携 医療機器・設備・環境

第31回日本臨床工学会(熊本) | NES株式会社

 2021年の日本臨床工学会は熊本で開催されます。

 5年前の4月14日と4月16日、熊本には大きな地震が二度あり、熊本城の損壊など様々なニュースが流れました。
 地震のダメージが大きかった熊本市民病院は全患者の転院を余儀なくされましたが『災害に強い病院』として移転・再建され、2019年に新病院がオープンしました。

 その苦労を重ねた熊本では今年、COVID-19という新たな強敵と対峙し、医療現場の課題を共有し、解消するべく様々なセッションが予定されています。

 学会長は弊社代表とも10年以上の親交がある山田佳央先生です。
 開催に至るまでに相当な苦労をなされていますが、参加者の皆さんが充実した顔でお帰りになっていくのを楽しみにされていると思いますので、ぜひ参加される皆さんは有意義な期間を過ごして頂ければと思います。

[Link] 第31回 日本臨床工学会

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第一種電気工事士定期講習 | NES株式会社

 第一種電気工事士は、5年を期限に講習を受講しなければなりませんが、COVID-19流行拡大による緊急事態宣言が出されている中、一日がかりの講習に参加すべきなのか迷うところです。

 私は医療系の仕事をたくさんしているので、医療従事者から相当に厳しい状況である事を聞いています。
 この状況下で、わざわざ会場まで行き、9時~17時まで限られた空間で知らない人たちと濃厚接触者となる必要があるかと言われれば、先送りしましょうという決断になります。

 所掌する政府当局としてどうなのか、調べてみました。



経済産業省

新型コロナウイルス感染症に伴う電気保安規制への対応について(よくあるご質問)

 電気工事士の所掌は経済産業省です。

 そこで同省のウェブサイトを調べてみると、該当項目がありました。

【参考】経済産業省:新型コロナウイルス感染症に伴う電気保安規制への対応について(よくあるご質問)



無理はしなくても良い

 私なりの解釈ですが『無理はしなくて良い』と読みました。

 しっかり受講は申し込みましょう、その上でキャンセルとなった場合は仕方ないです、といった主旨の文章だと思います。

 ハッキリとは延期を認めるとも書いてないので、判断は都道府県庁に委ねられるのかな、と思いました。

電気工事士法に基づく集合講習がキャンセルされたことに伴い、期限内に講習を受講できなかった場合、直ちに電気工事士免状は失効してしまうのでしょうか。

(回答)
 一部の講習実施機関において、オンラインでの講習受講が可能となりましたので、まずはオンライン講習の受講もご検討ください(詳細は、各講習実施機関のウェブサイトをご参照ください。)。未実施の講習機関においても準備が整い次第、順次オンライン講習を開設する予定です。
 また、既に申し込まれた講習が新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐ目的で講習が延期されたことにより、電気工事士の方が免状の交付を受けた日又は前回の講習から5年以内に講習を受講できない場合、都道府県が直ちに免状の返納を求めることはありません。
 なお、講習がキャンセルされたことにより受講できなかった旨を証明するものとして、申し込みを行ったことを確認できる書類をお手元に保管していただくようお願いいたします。ただし、国の講習延期要請により申し込み受付が中止になった場合は除きます。


遠方で受講!?

 今日の時点で空きを探すと、大阪府内は全滅、兵庫県内は姫路で少しの空き、あとは京都にも空きがありました。あとは滋賀、奈良、和歌山にも空きがありました。

 ここから電車を使うルートで姫路会場や京都会場まで2時間、舞鶴会場になると3~4時間、和歌山・滋賀・奈良は2~3時間を見込む必要があります。

 感染拡大地域で2時間も電車等の『人との接触』がある場に居るのは居合わせたお互いが危険であり、更に9時~17時まで8時間も同じ空間に人が居る、休憩は昼50分と午後10分という中でどのように換気されるかもわからない、感染制御の面からはかなり厳しい状況だと思います。



オンライン受講

 去年からオンライン受講が認められるようになりました。

 とはいえ『定期受講講習』という枠は2月、3月とも満席、4月以降にはスケジュールが入っていないので受講できません。



様観

 当面の間、様子観察とします。

 期限は秋なので、それまでに判断したいと思いますが、受講募集は6か月先までできるので2月時点では7月の募集も始まっています。その7月も既に満席で締め切られているので、4月頃には決断をしなければならない状況です。




解決!!

 本日、ウェブでの定期講習に申込しました。6月に自宅から出席することになりました。
 さきほどの申し込み時点で残13席でした。

2021年3月17日13:17

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隠蔽配線でコンセント増設 | NES株式会社

キレイなカベに、キレイにコンセント

 今日のお仕事は、既存住宅において、壁に配線を露出させることなく、あたかも最初からコンセントがあったかのように、隠ぺい配線でコンセントを増設する仕事です。




設置場所は廊下、近くにトイレと食品庫

 今回の施工場所は廊下にある収納庫の下段、ネコのトイレを置くために開放になっている部分にコンセントを増設します。

 場所は階段下ではありません。しっかり天井まで収納があります。
 床は大判タイル、廊下の壁は、施工位置は石膏ボードにビニルクロスですが、その近くまでエコカラットです。




食品庫からアプローチ

 今回の工事は、事前の現場調査の段階で食品庫からアプローチしようと決めていました。

 トイレは手洗水栓があるボウルの下部収納にコンセントがあり、この収納は化粧板仕上げなので穴あけが容易でないですし、壁内の様子を覗うのも容易ではありません。
 すなわち、隠蔽配線が難しいのです。

 それに比べると食品庫はビニルクロス貼り、作業するに十分な広さ、目的地とは同じ壁を共有している部分があるといった事で作業がしやすいことが既知でした。

 難点は、階段下であるという事です。




天井開孔

 まずは天井に一発、125mmで開孔しました。

 ここから全体を見渡し、作業方法を決定していくことにします。




八方ふさがり!?

 天井裏を見て少し冷や汗が出ました。

 ドリルを使わないと通線できないような壁に囲まれている感じでした。

 125mmの穴から充電ドリルを入れて作業するという事はできなくはないのですが、ここは階段下なので傾斜天井のため、道具を置いておくことができません。
 気が緩んで置いてしまえば、滑って下まで行ってしまいます。

 画像ではわからないので、手を突っ込んで探索すると、感触として石膏ボードの表面が何か所かあることがわかりました。

 感覚的に言うと、食品庫内に見えている壁の位置より少し手前のような感じもしますが、線を通したい壁に近いので、ここから攻める事にしました。




電源側開通

 まずは電源が確保されないと、コンセントがあっても意味がありません。

 その重要な電源確保の作業が早々に完了しました。

 天井裏から壁に配線、壁の高い位置に仮にコンセントを設置して経由地とし、その下にはスイッチ、そこを経由して足元にある既存コンセントまでVVFケーブルを開通させました。

 これで電源が壁から天井裏まで来ていることになります。

 ここは触る必要がなくなったので配線器具を設置して掃除を済ませてしまいます。




負荷側も開通

 食品庫の天井裏から、目的としていた壁へ配線ができ、負荷側も開通しました。




仕上げ

 最後の仕上げは配線器具の設置と掃除です。

 天井は125mmのダウンライトを設置します。
 配線の都合上、2か所となりましたが、これは計画どおりです。2台用意していました。

 配線器具・照明器具ともにすべてPanasonic製品です。松下電工時代から多用しています。




完成・引き渡し

 コンセントの使われ方はこんな感じです。

 お猫様用の電動式自動トイレ(Petree)の電源でした。

 一緒にオゾン発生装置(Air Success)も設置されています。

 消費電力測定をさせて頂きましたところ、自動トイレは平均で6Wくらいでした。1回の動作が2分程度、このコンセントで十分に供給できます。


 食品庫側の仕上がりはこのような感じです。

 工事前は照明器具が無く、入口に人が立つと暗い感じになっていましたが、中から電球色の照明が当たるようになったので雰囲気が一変しました。




同じものを買いたい

 こちらからお譲りする事もできますが、だいたいの物はネット通販でも売っていますので、DIYでという方々のためにリンクをご用意しておきます。


器具類

ネコが入った後、出て行ってから30秒経つと自動で掃除してくれるロボトイレです。細かい猫砂と、固まった排泄物をふるいにかけて分離するフィルトレーション機能で、庫内を清潔に保ちます。私宅ではこの機種を買いました。
耳を澄まさないと音は聞こえません。ファンやモーターが無いので省エネ、軽量。どこでも使えます。USBモバイル電源をつないで、鉄製のゴミ箱に取り付けて使ったりもしています。居室の入口に設置して不在時は部屋全体の消臭、出入りが多いときはニオイの往来を阻止する目的で使ったりしています。

道具

 壁や天井に押し当てて、強く押し込むと針が飛び出して下地に当たれば止まる、何もなければ貫通するという器具です。何十年も前からあるシンプルな商品です。針の交換もできるので、たぶん手元にあるワンプッシュ本体は20年以上前に買った物ですが、針を交換しながら使い続けています。
 石膏ボードを切るのに適している引廻しノコギリです。今回の作業では壁や天井にたくさん穴を開けましたが、廻し引きがなければスムースには進みませんでした。
 ステンレスワイヤーをツイストした通線用のワイヤです。かなり便利です。

材料

 壁に開けた穴に、スイッチやコンセントを固定するための金具です。
片切スイッチのセットです。これだけで本体、カバー、枠などが揃います。
埋込ダブルコンセントのセットです。
標準的なVVFケーブルです。50m巻や100m巻があります。
開孔125mmのダウンライトです。明るさや色温度などに種類があるので、お好きな物を選ぶと良いと思います。