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ネット服薬指導が適法化 (改正薬機法成立) | NES’s blog

ネット服薬指導が適法化 (改正薬機法成立)


合法的遠隔指導

 調剤薬局で日常的に行われる服薬指導の原則『対面』がテレビ電話などの通信(インターネット)経由でも認められることになりました。

 既に遠隔診療は始まっているため、例えば慢性期の在宅患者が大変な思いをして医療機関まで行って診療を受ける必要性が軽減されています。
 これまで服薬指導の遠隔は明確には認められていなかったため、薬剤師が訪問して指導するなどの方法で遠隔診療との歩調合せをしていましたが、今後は適用される範囲内であれば、在宅に居ながらにして診療と服薬指導の両方が合法的に行われる事になります。



街に薬剤師が居ない現実

 無医村という言葉は聞くことがありますが、国の定義として『無医地区』という言葉があります。
 無医地区とは、医療機関のない地域で、当該地区の中心的な場所を起点として、おおむね半径4kmの区域内に50人以上が居住している地区であって、かつ容易に医療機関を利用することができない地区を指します。

 2014年10月末時点の調査結果では無医地区は全国637地区、無歯科医地区は858地区でした。
 ただし、この数字には『診療日の多少に関わらわず定期的に開診していれば無医地区とはならない』という条件がありますので、週1回でも月1回でも、開診されていれば無医地区とはならないことを申し添えます。

 この統計には出て来ませんが、薬剤師が居ない街というのは現に存在します。
 半径4km・50人という定義ではなく、町村内全体を見渡して、薬剤師が不在という自治体です。

 移動販売者や移動ATMがあるから生活ができているという地域において、せっかく遠隔診療が始まっても服薬指導のために遠い場所まで行かなければ処方薬が手に入らないという現実から、少しは解消される法改正になると期待されています。

厚生労働省: 無医地区等調査

厚生労働省: 無歯科医地区等調査



報道

日本経済新聞: 服薬指導をオンライン化 改正薬機法が成立 (2019年11月28日)




改正法成立経過

成立までの経過

 内閣提出法律案として第198回国会(第54号)に2019年3月19日に提出され、2019年10月4日に衆議院厚生労働委員会に付託され11月13日に可決、2019年11月14日に衆議院本会議で可決、2019年11月19日に参議院厚生労働委員会に付託され11月26日に可決、2019年11月27日に参議院本会議で可決、成立となりました。



医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案

 第198回国会に閣第54号として提出された議案書では、『映像及び音声の送受信』による服薬指導を条文に明文化する法案が提出されています。厚労省通知や規則改正ではなく法律に追記される形なので、その明確さが明らかです。

第一九八回 閣第五四号

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案
(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の一部改正)

第一条 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)の一部を次のように改正する。

(中略)

  第九条の三第一項中「対面」の下に「(映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることが可能な方法その他の方法により薬剤の適正な使用を確保することが可能であると認められる方法として厚生労働省令で定めるものを含む。)」を加え、同条に次の二項を加える。

5 第一項又は前項に定める場合のほか、薬局開設者は、医師又は歯科医師から交付された処方箋により調剤された薬剤の適正な使用のため必要がある場合として厚生労働省令で定める場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に、その調剤した薬剤を購入し、又は譲り受けた者の当該薬剤の使用の状況を継続的かつ的確に把握させるとともに、その調剤した薬剤を購入し、又は譲り受けた者に対して必要な情報を提供させ、又は必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない。

6 薬局開設者は、その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に第一項又は前二項に規定する情報の提供及び指導を行わせたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該薬剤師にその内容を記録させなければならない。
(以下省略)

【参考】衆議院: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案, 第一九八回, 閣第五四号



第198回国会 衆議院 厚生労働委員会 第22号 (2019年6月5日)

 散会直前の最後の議事として根本国務大臣より『 医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案』が説明されました。

 この中で下記で朱塗りしたとおり『テレビ電話等による服薬指導』という言葉が述べられています。

 ただいま議題となりました医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 少子高齢化に伴い人口構造が変化する中で、住みなれた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備することや、技術革新等が進展する中で、国民のニーズに応えるすぐれた医薬品、医療機器等をより安全かつ迅速に提供することを通じて、健康寿命の延伸など保健衛生を向上させていくことが必要です。また、過去に発生した医薬品の製造販売等に関する不適切事案の経験を踏まえ、医薬品、医療機器等の安全性を十分に確保し、健康被害の発生や拡大の防止を図ることが必要です。

 これらを踏まえ、医薬品、医療機器等が安全かつ迅速に提供され、薬剤師及び薬局が地域の中でその専門性に基づく役割を果たし、関係事業者が法令遵守体制の整備を行うことなどを目的として、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、世界に先駆けて開発される医薬品、医療機器等や患者数が少ないこと等の理由により治験が困難な医薬品、医療機器等を患者に速やかに届けるための承認制度の創設等を行います。あわせて、製造販売業者に対し、医薬品、医療機器等の包装等へのバーコードの表示を義務化するなど、安全対策の強化を行います。

 第二に、患者が適切に医薬品を服用できるよう、薬剤師に対し、調剤時に限らず、必要に応じてその後も患者の医薬品の使用状況の把握や服薬指導を行うことを義務づけるとともに、患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう、機能別薬局の認定制度を導入します。また、一定のルールのもとで、テレビ電話等による服薬指導を新たに認めます

 第三に、製造販売業者等に対し法令遵守体制の整備を求めるほか、虚偽、誇大広告による医薬品、医療機器等の販売に対する課徴金制度や承認等を受けない医薬品、医療機器等の輸入に係る確認制度の創設等を行います。

 第四に、医薬品、医療機器等の安全性の確保等に関する施策の実施状況を評価、監視するための医薬品等行政評価・監視委員会を設置します。また、科学技術の発展等を踏まえ、血液由来iPS細胞を医薬品試験に活用する場合の採血の制限の緩和等を行います。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から一年を超えない範囲内で政令で定める日としています。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。
 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

【参考】衆議院: 会議録 (厚生労働委員会)



第200回国会 衆議院 厚生労働委員会 第5号 (2019年11月13日)

 この委員会で『テレビ電話等による服薬指導』という議論がなされています。

 『桜を見る会』の話が途中に入ってしまいますが、薬機法改正の議論はしっかりと行われています。

 出席委員の氏名を見ると三ッ林裕巳氏、新谷正義氏、国光あやの氏、冨岡勉氏、安藤高夫氏、阿部知子氏、中島克仁氏、岡本充功氏らは恐らく医師です。医師が出席しているのは与党だけではありません。医療がわかる方々が加わった中で国会議員の先生方が活発に議論されたようです。

○宮本委員
 それでは、薬機法の審議に移りたいと思いますが、検査院と内閣官房、そして内閣府は退席していただいて結構でございます。ありがとうございました。
 前回に続いて、きょうは、まず、オンライン服薬指導の解禁について質問させていただきたいと思います。
 現行の薬機法では、処方された医薬品の販売は対面による指導となっております。また、前回の薬事法改正の際に、一般用医薬品のインターネット販売が解禁されるという中で、厚労省は要指導医薬品というカテゴリーを新たに設け、医療用医薬品からスイッチしたばかりの一般用医薬品を要指導医薬品に指定して、これについては対面の販売が必要だといたしました。その際、政府は国会でこう説明していたんですね。使用者本人の状態等を直接五感を用いて判断した上で販売することが必要だ、こういう説明でありました。
 ところが、今回の法案では、処方された医療用医薬品についてまでオンライン服薬指導を全面解禁するというものになっております。直接五感を用いて判断することが極めて重要だという、これまでの認識というのは変わったんでしょうか。

○樽見政府参考人
 お答え申し上げます。
 平成二十五年の薬事法改正でございます。そのときに、御指摘のとおり、ほかの一般用医薬品と区別して新たに要指導医薬品という医薬品の区分を設けたということでございまして、これは、医療用医薬品から転用して一般用医薬品にしたもの、いわゆるスイッチOTC、そのスイッチしてから一定の期間が経過していない医薬品というものについては、一般用医薬品としてのリスクが確定しておらない、一般用医薬品でございますので、一般の人がやってきてこの薬を下さいなというふうに言ってくるということでございますので、そうしたものについて、薬剤師が直接の対面によって、まさにその五感をもって、患者さん御本人が気づいていないような症状も含めて患者さんと話をして、その上で確認をして販売することが必要だというふうに言っていたわけでございます。
 今回導入しようとしているテレビ電話等による服薬指導というのは、医師の処方に基づいて調剤された薬剤の服薬に対する指導というものでございますので、一般の人が医療用医薬品からスイッチしたばかりの医薬品を買いに来るというものとは違うものでございます。
 あわせて、今回導入しようとしているテレビ電話による服薬指導については、初回は対面で行うというようなことを条件とするなど、対面による服薬指導と適切に組み合わせるということ、あるいは、医療機関との連携体制の確保等の一定の要件を確保することを求めることにしたいというふうに考えておりまして、そういうこととあわせて、必ずしも一律に対面による指導を義務づけなくても適切な実施が可能と考えたものでございます。
 五年前の要指導医薬品は、まさにスイッチされたばかりのOTCということで、普通の一般の方が来られる、それに、まだ一般薬としてのリスクが確定しておらない、そういう薬を売る場合ということでございますので、そうした要指導医薬品の販売についての扱いというものは、今般の改正後も維持をすることにしているということでございます。

○宮本委員
 要指導医薬品よりも医療用医薬品の方が、これは一般用医薬品に移る前の話なんですから、もっと慎重に扱わなきゃいけないというのは当たり前の話だと私は思いますよ。医療用医薬品に準じた扱いにしたのが、この間の、前回の改正の要指導医薬品ということじゃないですか、位置づけからすれば。その説明は全くおかしいと思いますよ。
 テレビ電話だとかで確認するといったって、それは五感では確認できない方法になるわけですよね、間違いなく。そして、初めは対面を求めるといっても、体調はいつどう変化するかわからないから今まで対面でというのを求めてきたわけですから、そこを規制緩和するというのは本当におかしな話ですし、前回は直接五感で感じるのが大事だと言っておきながら、今度は五感は関係ないですよというのは、本当に朝令暮改が過ぎるというふうに私は思います。
 そして、今回の改正案を見て驚いたんですけれども、対面、映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に確認しながら通話をすることが可能な方法その他の方法により薬剤の適正な使用を確保することが可能であると認められる方法として厚生労働省令で定めるものを含むとあるんですよね。ですから、厚労省令で定める方法は対面に含めるというふうに、何でも逆に言えばできちゃうわけですよね。条件も制約もないわけですよ。
 ですから、直接五感を用いて判断することが大事という本来の原則的な立場からすれば、私はオンライン服薬指導というのは極めて例外的な扱いにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○樽見政府参考人
 まさに近年、情報通信技術というものは著しく進歩しているわけでございまして、質の高い医療を効率的に提供するという観点から、こうした技術を活用していくということもまた大変重要なことであるというふうに考えているわけです。
 そういう中で、オンライン診療、お医者様の診療というところについては、既に平成三十年の三月にガイドラインを策定して、それに基づく診療が行われています。そのときにも、初回は対面診療とすることでありますとか、あるいは、診療計画というものを作成して、それに基づいて診療を受けていただくというようなことを要件にしているわけでございます。
 ただ、診療は三十年からやっているわけですが、一方で医薬品については、服薬指導について、現行の法律上、対面というものが一律に義務づけられているということになっておりますので、そこのところを今回の改正によって改めまして、一定のルールのもとで、薬剤の適正使用を確保することができるというような場合について、テレビ電話等による服薬指導を認めるものということでございます。
 そういう意味でいいますと、服薬指導は対面が原則であるということは変わらないわけでございますので、極めてと言うかどうかというところはあると思いますけれども、いわば例外という扱いになるというのはおっしゃるとおりであろうと思っています。

○宮本委員
 例外だとおっしゃいますけれども、やはり極めて例外なものにしなきゃいけないと私は思います。ところがその制約が法律の文言上ないというのは、私は大変懸念しているということを申し上げておきたいと思います。

○盛山委員長
 これより採決に入ります。
 第百九十八回国会、内閣提出、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案について採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

【参考】衆議院: 会議録 (厚生労働委員会)



第200回国会 衆議院 本会議 (2019年11月14日)

 衆議院本会議の採決で多数、可決されました。

【参考】衆議院: 閣法 第198回国会 54 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案



第200回国会 参議院 厚生労働委員会 (2019年11月26日)

 2019年11月19日に厚生労働委員会に付託され、11月26日に可決しました。

【参考】参議院: 議案情報



第200回国会 参議院 本会議 (2019年11月27日)

 参議院本会議で押しボタンによる採決で多数、可決され成立しました。

【参考】参議院: 議案情報