大阪関西万博が開幕して1カ月となりました。来場者数はゴールデンウィーク中に200万人を超え、休日には1日10万人超の来場者を数えます。
4月12日の開幕式には天皇皇后両陛下、5月8日~9日は愛子内親王殿下が万博会場を訪れました。ナショナルデーに合わせて各国のVIPも来場しています。
様々なセキュリティがあるようですが、落雷についてどうなっているのか考察してみました。
Security Police
開会式があった4月12日は多くの来賓があったこともあり、大阪府内は特別な警戒態勢でした。
下図は大阪国際空港(伊丹空港)の近くの空き地です。バス型の警察車両が何十台もありました。大阪府警以外の警察官も多く見られました。

下図はYouTubeからの切り抜き画像ですが、警察車両が続々と大阪郊外へ帰っていく様子です。
【参考】YouTube:白バイ×14台・パトカー5台:大阪関西万博開会式の夜に警察車両が引きあげていく様子[阪神高速・扇町カーブ]
セキュリティゲート
大阪関西万博では何かと話題になるセキュリティゲートです。
空港ではお馴染みの手荷物のエックス線検査があります。

スマホを預けなければならないので、エックス線検査後にスマホを操作して二次元コードを表示させて入場するという手順が、入口混雑の一因になっているとの指摘もありました。

Disaster prevention and Safety
大阪関西万博の公式サイトには『Disaster prevention and Safety』というページがあります。このページは大きく2つに分かれています。
第一部は『会場の安全対策』です。ここでは4つの項目を紹介しています。
- 大阪市消防局・大阪府警察・海上保安庁の常駐
- 充実した医療体制
- 衛生対策の推進
- 徹底したセキュリティ対策
事件や事故に備えている、何かあれば警察官らが駆け付けるといった内容です。
第二部は『大規模地震に備えて』です。ここでは3つの項目を紹介しています。
- 津波・倒壊に耐える会場整備
- 3日分の備蓄物資を確保
- 関係機関と連携した帰宅支援
地震や津波が来ても安全であり、孤立しても3日分ぼ備蓄物資があるので大丈夫、さらに関係機関と連携しているので帰宅困難にならないといった内容です。
防災実施計画概要
大阪関西万博の防災実施計画はウェブサイト上に公表されています。おそらくエキスパート人材が策定したと思われますので抜け目ないと思いますが、たしか策定業務は入札でしたので価格だけで選定されていないことを願います。
2ページ目には目的が書かれています。単に『すべての人』とせずに、わざわざ『外国人・高齢者・子ども・身体等に障がいを有する方』と書いていることにどのような意味が在るのかわかりません。
会期中に、災害から外国人・高齢者・子ども・身体等に障がいを有する方をはじめ、全ての来場者の安全を確保し、安心して訪れることができる博覧会の実現のため、防災実施計画を策定。
防災実施計画の概要:目的
組織体制としてリエゾン(府市連絡員)を置くことになっているようですが、その目的として物資確保や帰宅支援等となっています。帰宅支援については何ら問題ないですが、物資については被災した府民・市民との優先順についてどうなっているか不明です。おそらく会期中は万博用に10万人分くらいは別予算で確保しているのではないかと思います。
組織体制図としては優れた内容だと思いますが、実際に大規模災害が発生したときに連携先のマンパワーは不足するのではないかと思います。
大阪メトロ、JR西日本、NTT西日本、大阪ガス、関西電力などは民間企業ですので、万博と関係ないお客様から得た対価を万博に注ぎ込むにも限界があります。また、関西圏で大規模災害が起これば既存客が優先されると思いますので、万博にどれだけの人員を割いてもらえるかは不確かです。
災害対策本部については、よくある基準になっています。
ただし、万博の特殊性を考慮すると震度などで輪切りするだけではなく、社会的影響の方にフォーカスすべきではないかと思います。
沿線火災でも浸水でも鉄道が運休となる可能性があります。4月23日には唯一の鉄路である大阪メトロ中央線が運転を見合わせたために夢洲駅に大勢が滞留する事態が発生しました。
40人乗りのバスで100台分、仮に20台手配できたとして5往復ずつ必要、夢洲から弁天町まで片道20分、乗降に20分だとして第2便への乗車は1時間待ち、最終便は4時間待ちです。4月23日のケースで考えると21時半発生なので午前1時半頃にバス乗車、その時間に弁天町まで行っても朝5時頃の始発を待つことになります。
台風については『建物・設備等の被害確認等』などが業務として挙げられていますので、ハード面を中心に計画されているかもしれません。
落雷への対応は、夢洲エリアの落雷リスクという大きなくくりになっていそうです。
猛暑については、待機列の待ち時間短縮が実現すれば、屋内に入ってクールダウンできる機会も増えるので猛暑対策になるのではないかと思います。
学校の遠足などで来た子供たちは自動販売機で飲料を購入することは出来ないであろうことを考えると、給水機の台数が大きく影響しそうです。1クラス30人程度が一度に入れる日陰も必要になりそうです。
大地震が発生した際、万博エリア内の建物は最新基準の耐震構造だと思いますので倒壊の恐れはないかもしれません。ただし、液状化についてはわかりません。
津波については『波の高さ』だけではなく浸水深や遡上高など考慮すべき用語がいくつかあるので安全であるのかわかりません。資料にも津波に対して安全であるとは書いてありません。
会場は嵩上げされており、満潮時の津波に対し、5m以上の余裕がある。
地震・津波への対応
大地震が起これば鉄道は一時運休になると思います。夢舞大橋は一時通行止めになる可能性があります。2018年には関空橋にタンカーが衝突して通行止めになったこともあり、電車もバスも使えない想定は必要かなと思います。津波の恐れがあれば船も使えません。大型ヘリで1回200人搬送しても10万人の搬送には500回必要になります。
孤立を想定した場合を想定しているようですが、食事は60万食を3日分としているようですが、多い日で22万人来場を想定しているはずなので、1人3食分、これを3日分としているので1日1食ずつの配給を想定していると考えられます。
飲料水は190万本備蓄なので22万人で割ると1人9本程度、3日で4.5Lなので1日1.5Lです。孤立している想定なので給水車は来ない、上下水道が寸断した場合には色々と心配ごとがあります。
備蓄品には『幼児用ミルク』がありますが、乳児用は記載がありません。新生児を連れてくる人は稀だと思いますが、乳児は居そうな気もします。乳児を連れていく人は、災害を想定して数日分のミルク持参が良さそうです。
代替輸送については被災地に対して行われる通常の救援方法が記載されている感じです。
大屋根リング自体が崩壊する恐れはないとしても、長いエスカレーターで転倒する人、揺れでケガをする人は少なからず居ると思います。搬送が必要になる人数と、受入先確保のバランスによっては大変なことになるかもしれません。
大阪市内は高層ビルやマンションも多いので、ヘリ要請は多いと思います。ヘリを何機手配できるのか、そのあたりの現実的な数字も欲しいところです。
落雷
概要版の落雷への対応は、基本的なことばかりです。
論理的ではないかもしれないのは『屋内等へ退避誘導』です。資料によると屋内収容人数は10万人程度、休日は15万人程度の来場者を見込んでいるので退避できない人が5万人くらい居ます。
発雷の予想に少しずれがありました。7~9月に雷が多いということですが、万博開会式前日には奈良県で落雷事故が発生しています。
博覧会期間には、雷の原因となる積乱雲が発達しやすい夏季(7~9月)を含むことから、落雷による被害を防止するため下記対策を実施する。

親族が万博に行く予定でしたので、公式サイトから問い合わせをしました。入場ゲート前で2時間くらいの待ち時間があるが、雷の恐れがあるときにどう行動すべきかの質問をして1カ月経過しましたが、いまだに回答がありません。
東ゲートは夢洲駅から柵で誘導されて蛇行しながら向かうことになります。かなり広い平地、屋根は無く、トイレもなく、何もない場所をただ歩いて、止まって、を長時間繰り返すことになります。

2時間も待った挙句、雷が来るかもしれないので列を壊して避難してくださいと言われても、どれだけの人が従うのかわかりません。7,500円×4人のチケットを持ち、2時間も待たされ、列を壊して再び並ぶと2時間となると、入場後に遊べる時間はだいぶ限られてしまいます。そうならないようにするには、列から離れないことです。しかし、危険が伴います。

そもそも、屋内退避はできそうにありません。
周囲を見渡しても、ゲート外には屋根付きの場所がなく、仮に夢洲駅に退避しても許容人数が大きくないため、ゲート前に並んでいる人を全員収容ということは無さそうです。
チケットを持っているので、中に入れてもらえれば良いのですが、おそらくそういう対応は想定していないと思いますので、雷を恐れながら、傘をさしてゲート前で入場の順番を待つだけです。
落雷自己対応(構外)
調べたり、聞いたりした限りでは、手の打ちようがないと思います。
東ゲート前で並んでいるときに雷の恐れが高まったとしても、退避する屋内というものがないので、どこかの建物に近づくくらいしかできません。
人数の多い時間帯であれば、5千人~1万人くらいがゲート前に居るようですので、群衆雪崩など雑踏事故に巻き込まれないように備えておくことが重要かなと思います。
本当に落雷があって数人が倒れた場合でもそうですが、デマでもパニックが起きます。ある一点から離れようとする人が、例えば構内方面に『早く行け!』と声を荒げると、構内方面に一気に人の圧がかかります。一方で、ゲートが塞がれていれば詰まってしまうので、雑踏事故の危険が高まります。

意味あるかどうかわかりませんが、たくさんあるゲートの内、右端か左端の方のゲートを選べば、建物には近くなります。そして、群衆に押しつぶされるような中心からは離れられると思います。
雷は高いところに落ちる性質がありますが、地上と雲の距離から考えると、傘くらいの数十センチがどれだけ影響するかわかりません。一方で、街灯などの電柱は数メートルの高さがあるので落雷の危険性は高まると言えます。東ゲート前には何本か街灯があるので、そのそばは落雷リスクが高いと考えられるので、それを避けられる列に並ぶのもセルフ・リスク・マネジメントの1つだと思います。
落雷自己対応(構内)
ゲートを入ったあとは、屋内退避できる可能性が高まります。何よりも、ゲート前の順番待ちの列と違い、行動の自由度が高いです。
入場者数が10万人未満の日であれば、どこかしらに屋内退避できる場所があると思います。主催者側が緊急放送で屋内退避を呼び掛けている間は、順番待ちなど関係なしに入れてくれるパビリオンもあると思いますので、それらしき場所を見つけられるように、まずは入場後に建物をよく見ておくと良いと思います。
会場でのアナウンスよりも前に、Yahoo!天気アプリなどで雷の情報をつかんでおくと良いと思います。
神戸方面で落雷が確認されていれば30分程度で夢洲にも雷雲が来ると思います。30分後に屋内に居られるように、30分間の行動をよく考えます。
10万人が動き出す前に、安全確保することが構内でのセルフ・リスク・マネジメントになると思います。
落雷事故後の自己対応
人が多い場所で落雷があったら、とりあえず119番通報した方が良いと思います。
一瞬のことなのでわからないかもしれませんが、電気によるやねど(熱傷)を起こしている人が居るかもしれません。
落雷により心臓の電気信号が狂ってしまい、心停止に陥ることが多くあります。心臓が動いていないかどうかもわからないが、意識がないという場合には心肺蘇生を始めてしまい、何ともないということであれば、それで良いと思います。
命に別条があるのに、何もしなかった方が問題です。卒倒した人の生命だけでなく、周囲に居たバイスタンダーの精神面も傷つくことがあります。
卒倒者が居れば、可能な限り屋内など安全な場所に移す方が良いですが、多数発生している場合には、その場で処置を始めざるを得ないかもしれません。
パニックにならず、冷静に対応できるよう、落雷前から心がまえしておきましょう。
(この記事を読んでいる人は平時・平常だと思いますので)
電気で『しびれている』という人も多く発生すると思いますが、皮膚にやけど(熱傷)を負っていることもあるので、できれば医師に診断してもらった方が良いです。万博会場であれば救護所を訪ねるだけでもした方が良いと思います。