これからはじめる方々へ
医工連携をこれから始めてみようかなと思っている人、どのようなものか関心がある人、自分はやらないが同僚がしていることを知りたい人、どのような背景でも構いません。
よくわからない『医工連携』について、ちょっとくらいは説明できるようになる、そのくらいラフに考えてご聴講いただきたいです。
このたび、愛知県臨床工学技士会さんのご厚意により、ウェビナーで登壇させていただくことになりました。

経験談ベース
講師が、経験していないことを話すのはどうかなと思いますので、基本的には経験談ベースです。
いわゆる、『語り部』のようなものです。
演者は2009年には専従的に医工連携に携わっていました。お給料を貰い、医工連携を職業としていた臨床経験者は激レアな時代、民間企業で働いていたのは1人だったかもしれません。

On the Job Training
医工連携の仕事に筋道はありませんでした。
誰かの真似をして学び、自ら失敗をして学び、成功体験をして学ぶといった、険しさのある道を通ってきました。
いわゆるOJTで学ぶことが多く、同じ経験は2度とできない、他の人にも経験させてあげられないものが多くあり、これが唯一無二のノウハウになっていると思います。

不本意な静聴
2011年の近畿臨床工学会で『医療産業における産学連携スペシャリストとしての臨床工学技士の取組み』と題して、一般演題の口演をしたことがあります。
会場はシーンっと静まり返りました。
座長からは『そういうお取り組みがあるのですね。ありがとうございました。』と質問もなく、退席を促されてしまいました。
まだ、臨床工学技士業界に医工連携が知られていないような頃、早すぎたのかもしれません。
ご静聴いただけたと考えるべきか、唖然としてしまったのか、とにかく静かな会場でした。

人手不足を補う1.5万人
臨床工学技士法が成立する前の審議中の議事録を見ると、やや残念に思える記述がみられます。
4年制大学に縛る必要があるだろうという意見に対し、人手不足を補うための人員として高卒で良いだろうという結論に至っているようです。
のちに薬剤師は4年制から6年制に変わりますが、臨床工学技士は未だに高卒後最短3年間の養成課程で国家試験受験資格を得られます。

当時は、現場に1.5万~2万人の技士が居れば良い、年400~500人の新規免状取得者が居れば良いという考えであったようです。
実際は、移行期間中は年間1,000人を超える免状取得者、その後の養成課程1期生からしばらくは500人を少し超える程度の合格者ですが、法施行20年目には1,500人、25年を過ぎると2,000人超過が普遍化します。年2,000人増えるペースである一方で、定年退職するような人はまだまだ現れない業界、人口過密が不可避になります。

業務枯渇を打破する救世主
臨床工学技士の有効求人倍率は0.5になるという試算もありました。半分は臨床工学技士の職に就かないか、給料を半分にして全員が生き残るか、どちらも不幸に見えます。
医工連携は医業外、病院外での仕事が多くあると思います。
臨床工学技士の業務枯渇を救う手立てになるかもしれません。
熊本県臨床工学技士会ではいち早く、医工連携の取り組みを始めています。
『医工連携くまもとモデル』などと呼ばれる、体系的に、関係者が役割を認識た上で相互協力し相乗効果を発揮するような、わかりやすいモデルの中で動きを始めています。

このモデルができたのは2013年、日本臨床工学技士会に臨学産連携推進委員会が発足したのが2016年、だいぶ先取りしています。
モデル構築に先行する下準備には、演者が深く関わっています。既に2011年には熊本でセミナーを開いていますが、それ以前から関係を構築していますので、始まりは2010年です。

事業化は『悪』ではない
人を救う仕事をしている医療従事者から見ると、損得勘定で動かないのが普通のこと、カネのために動くのは品が無いこと、悪いことだと考える人が居るようです。
医工連携においては、金儲けも大事なことになります。
まったく儲からない仕事、赤字の仕事を10年後も続けられるかというと、そんな会社はありません。
儲かる仕事を10年後も続けている可能性は、十分に考えられます。
課題が目の前にあり、優れた解決策を考案したとしても、その恩恵を受けられる人が限られてしまうということに、マイナスのイメージを持つことはないでしょうか。
医工連携は課題解決です。解決策を企業が提供することで利益を得ますが、同時に、均霑化や永続性も持ちます。
演者が手掛けた減塩食事業。国立病院に5,600万円のロイヤルティ収入をもたらしました。最近でも『ビジネスなんて品が無い』とお叱りを受けますが、悪いことだとは思っていません。

ソリューションの創出
医工連携を上手く使えば、臨床に立ち続けながらも、課題解決策の考案者や開発者として、社会貢献できます。
現場で感じた課題を分析し、解決策をいくつかシミュレーションして、優れた解決策を具現化する、このあたりまでは現場の臨床工学技士にもできると思います。
解決策を社会実装するためには、企業の力が必要になります。大量生産したり、在庫したり、届けたり、そのような仕事は病院勤務のサラリーマンがする仕事ではありません。
優れたソリューションであれば、医療現場の課題解決策として医療に貢献できます。場合によっては医学にも貢献します。
売れる商品になれば、企業が利益をあげます。利益が出る仕事となれば相応に労力を割くので雇用が生まれ、利益に対する納税も発生します。産業機械を使う場合は設備投資にもつながります。産業界への貢献になります。
考案者だけでなく、事業化に導いた脇役や黒子も功労者になります。
臨床工学技士の医工連携へのかかわり方、色々とあります。

ゲートキーパー
『ゲートキーパー』というお話をする講師と会ったことがありません。
演者は毎回、この話を入れさせて頂いております。
簡単に言えば学際領域、境界領域を専門とする高度人材です。専門性や文化が異なる高度な領域同士が連携する場合、領域の間に距離が生まれます。そこがオーバーラップしなければ相乗効果が生まれないということに気づかず、距離を空けたまま進むプロジェクトが多くあります。
この距離をグッと縮められるのがゲートキーパーです。
その素質は、臨床工学技士にあると思っています。
なぜなら、臨床工学技士は医学と工学の学際領域を担うことが本分、職責であるからです。

ご聴講ください
このような話を、もう少し細かく、実例を入れながらお話しします。
時間を割いて、ご聴講願いたいです。
詳細は、愛知県臨床工学技士会のウェブサイトをご参照ください。
開催概要
日時:令和8年2月12日(木)19:00 ~ 20:10
アーカイブ配信:2月24日~3月9日
開催形式:Zoomウェビナー形式
対象:愛知県臨床工学技士会会員 または日本臨床工学技士会会員
定員:100名(先着順)
受講料:無料
主催:愛知県臨床工学技士会
後援:日本臨床工学技士会プログラム
「臨床工学技士に伝えたい 医工連携の面白さと可能性」
講師:NES株式会社 代表取締役 西 謙一


