DIYでチャレンジしたいという方が居られますので、使用物品等をお買い求めになりやすいようにリンクを張っておきます。一部、プロ仕様と市販品が不一致な点がありますがご容赦ください。 免許が必要な作業や、高所作業等で危険を伴う場合は電気工事業者を要請する事を強くお勧めします。 |
シャッターにイタズラ描き
大阪の天神橋筋商店街にあるテナントビルの1階、お店のシャッターに落書きをされてしまったそうです。
現場を見に行くと、ちょうどペンキ屋さんが作業に来ていました。

抑止力としての防犯カメラ
できれば犯人を捕まえて欲しいとビルオーナーさんはおっしゃっていましたが、捜査は警察の仕事なので捕まるかどうかはビル側では管理できません。
しかしながら、犯罪が起こりにくいビルづくりには方策がいくつかあります。
今回は防犯カメラを設置して、抑止力にしようという事でご相談頂きました。

目次
- シャッターにイタズラ描き
- 抑止力としての防犯カメラ
- 管理室⇒共用部⇒カメラ
- 情報盤
- 縦と横
- カメラ設置
- 高い所から、失礼します。
- カメラの固定方法
- 屋外から屋内へ
- 共用部にHUB
- HUBは電化製品
- 共用部~管理室
- 端末処理
- ケーブル点検
- レコーダーHDD換装
- ケーブル接続
- 片付け前に試運転
- フォーマット
- カメラ設定
- 録画は始まっている
- アプリで閲覧
- 画角調整
- 数週間録画
- 防犯カメラ
管理室⇒共用部⇒カメラ
今回は管理室にレコーダーを設置、カメラは屋外に設置、管理室とカメラ位置はフロアが異なります。
途中の配線・配管はテナントさんのエリアを通る訳にはいかないため、共用部を通るしか方法がありません。
配線ルートを確認する作業から始めました。
情報盤
こちらのビルは昭和40年代築ですが、各階に情報盤(MDF: Main Distributing Frame)があり、電話の端子盤が使われていた形跡は残っていましたが、ほとんどが光ファイバに置き換えられていたので、配管内は線が詰まっている割には使われていない物が多く、今後の追加配線の余地はありそうでした。

縦と横
情報盤(MDF)を使う事で階と階の縦の通線はできそうな事がわかりました。
情報盤はクローズド環境のため、共用部に配線を出す方法が必要になります。
各階を調べてみると、ある階で盤から天井裏への配線ルートが確立されていたので、そこを利用する事にしました。

カメラ設置
配線ルートが確立できる事を確認した後、カメラの設置を行いました。
どこかのテナントさんがPF管を垂らしていたので、それを避けながらの設置になりました。
最初の2台は1階の天井の高さあたりに設置しました。
おおよそ、ビルの入口を捉える感じで考えています。


高い所から、失礼します。
今回はビル全体を俯瞰できるように高い位置にも設置しました。


カメラの固定方法
ここまで簡単にカメラが設置されたかのように書いてしまいましたが、一応プロらしいの技を使っています。
カメラはすべて、アウトレットボックスの蓋に取り付けています。
アウトレットボックスは壁にビス固定しています。
BOSCHのハンマードリルに、6mmのコンクリートビット(ドリル刃)を装着して壁に下穴を開け、カールプラグを打ち込んでビス固定しています。
カメラ・ボックスの位置決めは画角が最優先ですが、配線・配管ルートや、カメラ自体へのいたずら防止などを考慮して、最適化しています。
屋外から屋内へ
外壁に配管を敷設する事は比較的容易です。
問題は、屋外から屋内へ線を取り込む方法を考える事です。
下図はまだ敷設の途中、共用部の窓から配管を降ろしているだけの状態なので窓から配管が出ています。これでは雨仕舞も防犯も悪いので、どこかから屋内へ線を取り込みます。
今回、防犯上の理由で画像ではお示ししませんが、プロらしい仕事はさせて頂きました。
配管ごと壁内に入り、共用部の天井裏に入り、共用部の点検口まで行っています。そこまで配管されたので、もしカメラを追加するとか、LANケーブルを差し替えるといった事が起きた際には共用部の点検口からカメラの所まで、管内配線ができるのでラクですし、足場など不要で安全性も高いです。

共用部にHUB
今回設置の防犯カメラシステムはPoEという種類で、簡単に言うとLAN配線だけでカメラの電源も信号もやり取りできます。
LAN信号はHUBを介して1本にまとめられるので、屋外にある4台のカメラから出た4本のLANケーブルは、共用部で1本のLANケーブルにまとめました。
カメラそれぞれにIPアドレスを付与するので、パソコンなどと同じようにHUBを使って配線をまとめます。
このHUBにはPoE対応機種が必要です。
カメラからHUBまでは、LANケーブルは途中で接続することなく1本モノで配線しました。
配管を敷設したので、あまり考えなくても上手くいきますが、通すべき穴などを間違えると、手戻りが多くなります。
HUBは埃を被って壊れないようにウォルボックスに納めました。

HUBは電化製品
カメラはPoEなのでHUBやレコーダーからのDC電力供給で動作しますが、HUBには100Vの電源が必要です。
今回、電源の無い共用部にHUBを設置する事になったので、電源を確保する必要が生じました。
共用部にはコンクリ壁に埋込コンセントがあったので、仕方なく壁面は露出配線、そのまま天井裏に配線を入れて、天井裏は隠蔽配線でHUBまでたどり着きました。
コンセントの真上の天井から、点検口まで約10m。
まずはコンセント真上の天井に2cmほどの丸穴をあけて、勘を頼りに通線ワイヤを入れて点検口を目指しました。なんとなく『行ったな』と思ったところで点検口から天井裏を覗くと、しっかりとワイヤが近づいて来てくれていました。
これで天井裏の配線は成功しました。
電源側は既設埋込コンセントの所にモールボックスを設置、モールボックスからモールを天井まで敷設、モール内にVVFケーブルを敷設、目的地まで電源供給します。
モールボックス側は、元の埋込コンセントを取り付けて作業完了です。
負荷側は、今回は露出コンセントを設置しました。
誰かに見られるような箇所でも無いので、頑丈、低価格、という事でパナソニックのコンセントを使いました。
共用部~管理室
いよいよ共用部から管理室へと行きます。
先ほど設置したHUBから管理室まではLANケーブル1本、途中でつなぐことなく一気に向かいます。
今回は、ある階の天井裏から点検口を2つ通ってMDFにたどり着き、そこから管理室のある階のMDFへ配管経由で渡り、MDFから管理室内へと入りました。
管理室内はいくつかの弱電ボックスがありましたので、まずは1個目のジャンクションボックスへ配線、そこから2個目へと配線を通して配線完了となりました。
このルートを、1本のワイヤで往来しました。
LANケーブルは管理室で伸ばして置き、HUBを設置した位置から順にワイヤを通して進み、管理室でワイヤにLANケーブルをつないで、戻ってきました。
この時点でLANケーブルの先端(端末)は処理されておらず、すなわちコネクタはついてません。
端末処理
LANはコネクタ化されないと使えません。
これまで管内を通した配線はすべて、端末処理されていません。
端末処理してあると管内を通せない上、作業途中でツメが折れてしまい使い物にならなくなってしまいます。
端末処理は専用工具と専用材料を使います。
ケーブルには8本の線が入っており、2本ずつツイストしていますので、それをほどいて横並びにします。
並べ方ですが通常は『B配線』を使います。
下方の写真は中国製のカメラに附属していたケーブルですが、B配線です。家電量販店で売っているLANケーブルも、100円均一で売っている物もB配線です。



処理方法は、LANケーブルの外装を剥き、8本の電線を顕わにします。剥きが短いと、後の整線作業が難しくなるので、10cmくらい剥くと良いです。
ツイストされた4組8本の電線をまっすぐに整線し、上述の順番になるように並べます。
キレイに並んだら、崩れないように指で押さえて、まずは電線の長さを調整します。ちょうど良い長さで切り落とします。
ちょうど良い長さは、コネクタの先端部分まで芯線が届き、かつ露出する部分では芯線が見えず外装で守られる長さです。だいたい1cmくらいです。
線を切る作業は、ニッパなどを使うと意外と難しいです。
専用工具で切った方が間違いないです。
専用工具で先端をカットしたら、そのまま工具を置かずにコネクタを固定する作業に入ります。
工具のコネクタ装着部にコネクタを入れて、LANケーブルに嵌めこみます。
そして工具を締め付けます。
これで端末処理は完了です。
ケーブル点検
ケーブル自体が断線してしまっている事はほぼ考えなくて良いと思います。エラーは、端末処理に集中します。
エラー検出のチェッカーを使用します。片端に送信器、他端に受信器を装着し、スイッチを入れると電線1本ずつに電流を流して通電を確認できます。
送信器の1番が点灯中に受信器の1番も点灯する、という流れで8番までチェックできたら完了です。
番号違いで表示された場合には、電線の並び順を間違えています。
点灯しない番号があれば、端末処理に失敗しています。
レコーダーHDD換装
カメラの設置と配線が終わったので、あとはレコーダーを設置して完了です。
今回は録画容量を大きくするためにハードディスク(HDD)を6TB(ロクテラバイト)に増量しました。
作業は簡単です。本体カバーを外すとハードディスクが見えますので、側面のコネクタ(通信用と電源用の2本)を外し、下面の4本のネジを外せばHDDを取り外せます。
続けて、新しいHDDを元の手順で取り付ければ換装完了です。

ケーブル接続
必要なケーブル類を接続します。
ここまでに敷設したカメラのLANケーブル、インターネット用のLANケーブル、ディスプレイ用のケーブル、マウス、本体電源ケーブル(ACアダプタ)です。
今回、間に合わせで古い4:3ディスプレイを持ち込みましたが1万円台でもキレイな商品があるのでワイド画面(16:9)のHDMI入力ディスプレイをお勧めします。

片付け前に試運転
外装カバーをかぶせる前に、試運転してみました。
未フォーマットのハードディスクですが、基板からソフトウェアが立ち上がって、フォーマットできる状態になっていました。
これで、HDD換装に問題がないことが確認されました。

フォーマット
フォーマット(format)とは初期化を意味しますが、このハードディスクを、この防犯カメラレコーダーに合った形に初期化します。
画面上で『システム設定』を選択し、『一般設定』タブから『HDD設定』を選択します。
未フォーマットのハードディスクがあると思いますので、『フォマット』をクリックします。若干日本語がおかしいのはご愛嬌、無視して先に進みます。
フォーマット後、6TBを認識できていれば完了です。
カメラ設定
原則、不要です。
特に何も触らなくても勝手に設定されています。
ただし、ネット接続が確立されていないとIPアドレスの付与がどうなるのかわかりません。
今回のネットワークは、よくある『192.168.11.**』というもので、自動的にIPアドレスが付与されていました。
奥深い設定をしていくと、MACアドレスが関係する何かが出てきます。
今回は触りません。

録画は始まっている
電源を投入して起動した時点で、自動的に録画が始まっています。
今回はHDDのフォーマットがあったので少し遅れてですが、それでも何の設定もなしに録画されています。
今回、特に何も設定せずに、起動後放置していたら約3時間分のデータがたまっていました。

アプリで閲覧
アプリを使って遠隔監視できるようにします。
方法は2種類あり、パソコンか、スマホ・タブレットです。
パソコン用はWindows用とMac用に分かれています。下記リンクから進むとGoogle Driveが開いてダウンロードできるようになっています。
スマホやタブレットはOSごとにダウンロード先が異なります。
パソコン
Android (Google Play)
iOS (Apple Store)
アプリをダウンロードした後は、装置を見つけ出します。
本体のIDを手入力するか、QRコードで読み込みます。
レコーダーの『ウィザード』という機能を使うと、下図のようなQRコードが3つ出てきます。
一番シンプルなQRコードが、レコーダーのIDです。下図は加工していあるので読めません。

アプリでは閲覧だけでなく、録画データを取得する機能があります。
アンドロイド携帯ですと、録画ボタンを押して得たデータは、下記のファイルパスに保存されます。
\Android\data\com.juanvision.eseecloud30\files\downloads\video
画角調整
遠隔監視ができるようになったところで、端末を持ってカメラの所へ行きます。
画面を見ながら、カメラの角度を調整します。
カメラには3つのネジが付いています。プラスドライバーで調整できます。

数週間録画
これですべての作業が完了したので、あとは何かが起こるまで放置です。
今回、保存記録を見てわかりましたが概ねカメラ1台あたり、1時間あたり700MB~1GBの容量を使います。
仮に4台設置であれば1時間あたり2.8GB~4GBです。
6TBから逆算すると1,500時間~2,143時間です。
約60日~90日分の録画が残ります。

防犯カメラ
今回は既築ビルに防犯カメラを設置する工事をさせて頂きました。
工事は1人で2日間でした。
800万画素のPoEカメラは、相当に画像がクリアで、深夜でもよく映ります。
スマホで見ていても、駐輪された自転車のスポークが見えますので、かなり鮮明です。
使用機器は下記の商品です。
DIYでチャレンジされても良いと思いますが、配線を隠蔽しないと犯罪前に線を切られてしまったりしますので、守りたい物があるお宅では、プロに要請するのも賢い選択だと思います。