カテゴリー
BLOG 医工連携 療養住環境

義務教育医療とセルフメディケーションによる医療崩壊回避 | NES株式会社

 ディズニーランドやUSJの入場料は年々上昇していますが、エリア拡大もしながら入場者数は増加しています。
 施設全体の入場料総額が増えても、それを負担する人が居るので破綻しません。

 高齢者人口の増加や高度な医療の普及などの要因から、医療費総額は増加しています。
 総額が増加しても、それを負担できる人が居れば問題ないのですが、社会保険システムの原資である保険料負担をする総人口は減少傾向、負担額が大きい現役世代である生産年齢人口の高齢者との比率は低下が進み、単価を引き上げる方法で何とかしのいでいるという状況だと思います。

 このままでは、社会保険システムは破綻する可能性があります。その回避策の1つに医療給付費の減少、すなわち保険で医療を受ける額を減らす方法があります。

 その方法として『義務教育医療』と『セルフメディケーション』について、検討すべきかと思います。

 今日は、そのあたりを深く掘り下げてみたいと思います。




給与の何割まで払えるか?

 サラリーマンだと『給料天引き』として健康保険料、厚生年金保険料、源泉所得税などが引かれていると思います。

 当社の所在地である兵庫県の令和3年の健康保険料を見ると、標準月額20万円の人は、介護保険第2号被保険者で24,080円、非該当で20,480円です。これに厚生年金36,600円を加えて額が社会保険料として納められます。

 この額の内、半分が被保険者(社員個人)の負担、もう半分が会社負担です。
 会社負担だから自分のお財布にダメージが無さそうですが、会社の利益が減る訳ですから、社員が押しなべて全体の負担を強いられていることになります。

(クリックで大きな画像)

 月給20万円の30歳の人は健康保険と厚生年金で28,540円天引きされていますので残りは171,460円です。ここから源泉所得税などが引かれるので手取りは15万円くらいです。

 家賃や光熱費で8万円、子供のオムツなど養育費が2万円、食費が3万円、貯金が2万円、娯楽費はゼロという家庭もあるでしょう。

 もし、健康保険料が5%増えると月額1万円、折半で5千円の負担増です。貯金を減らして子供の教育レベルを下げるか、食事を質素にするか、厳しい選択が迫られます。

 健康保険料が10%増えると、もはや子供を持つ事は絶望的になりそうです。

 もし独身であれば、家賃や光熱費で6万円、食費等を1万円、娯楽2万円、貯金3万円として月12万円で生活できるとすれば、社会保険料としてあと3万円増やせます。
 ただし、将来に希望を抱く若者は減るでしょう。結婚資金は貯まらないですし、結婚しても子育てより共働き、高齢者のために働き続ける世の中になってしまいます。
 会社の負担も厳しいです。月給20万円の人で3万円増えるという事は総額で6万円増、すなわち保険料が今の10%から40%に増えることになります。社員全体では相当な金額になります。

[Link] 協会けんぽ: 都道府県毎の保険料額表

[Link] 国税庁: 民間給与実態統計調査

[Link] Yahoo!!: 知っていますか?「年収300万円」を超える人・超えない人の差

[Link] NIKKEI Woman Smart: 年収300万円はリッチ 世界から考える日本の幸福度




現実として負担は増えるのか?

 令和3年度、介護保険の負担が始まる前の40歳未満の健康保険料は10.24%、40歳以上の介護保険負担者は12.04%です。

 この負担率は年々増加しており、2011年は9.52%と11.03%でしたので7.5%も上昇しています。

 今後も増える事は容易に想像できます。
 団塊世代が全員75歳以上になるのは目前、団塊ジュニア世代もやがては高齢者になります。団塊ジュニアの時代でも年200万人超の出生がありました。令和の時代、80万人台と3分の1程度まで落ち込んでいます。

 団塊ジュニアが全員65歳以上になるのが2040年、令和生まれが20歳になり社会に出る頃、in/outの比が3倍近くになります。

和暦西暦40歳未満
健康保険料
40~64歳
健康保険料
厚生年金保険
平成21年度20098.20%9.39%15.704%
平成22年度20109.36%10.86%16.058%
平成23年度 20119.52%11.03%16.412%
平成24年度 201210.00%11.55%16.766%
平成25年度 201310.00%11.55%17.120%
平成26年度 201410.00%11.72%17.474%
平成27年度 201510.04%11.62%17.828%
平成28年度 201610.07%11.65%18.182%
平成29年度 201710.06%11.71%18.300%
平成30年度 201810.00%11.57%18.300%
平成31年度 201910.14%11.87%18.300%
令和2年度 202010.14%11.93%18.300%
令和3年度 202110.24%12.04%18.300%

 では、65歳以上に負担してもらいましょうという事になりますが、現在45歳を過ぎてそれなりに給料を貰っている団塊ジュニア世代であっても、厚生年金18.3%に見合った年金を貰えるかわかりません。少なくとも70歳までは満足な額を貰えないと考えれば、安易に65歳以上の負担を増やそうとしても、支払えない人が続出する可能性があります。

 65歳以上から取れない分は、現役世代から取られてしまう可能性は否定できません。

[Link] 協会けんぽ: 都道府県毎の保険料額表




医療は何割の自己負担が限界?

 ひと昔前の保険医療といえば、被保険者本人の窓口負担は1割でした。
 筆者は土建組合という滅多に病院に行かない人の集団に居たので、本人負担はゼロでした。レントゲンも薬も手術もタダでしたが、休んでいる暇のない職人さん達なので、周囲で保険を使うとすれば花粉症の薬を処方してもらう時くらいでした。

 いま、3割負担だとしても高額療養費制度があるので手術をした月は8万円程が自己負担の上限になっています。

 しかし、このまま保険財政がひっ迫すれば5割負担や8割負担もあり得ると思いますし、高額療養費制度の自己負担上限も大幅に引き上げられる可能性があります。

 外来受診では、仮に5割負担になったとしても払えない額では無いと思います。
 画像検査などがあったとしても1回の診療で保険算定は3万円程度、5割負担で1万5千円程度です。

 手術などの処置が入ると一気に数十万円まで跳ね上がります。例えば『もうちょう』と呼ばれる虫垂炎の手術をした場合、ざっと30万円程になります。3割負担なら9万円なので高額療養費で少し戻って来るかどうかというところです。

 自己負担割合は5割まで引き上げても何とか払えそうですが、高額療養費制度との兼ね合いが重要になりそうです。




融資制度が先行?

 国の財政が厳しい中での医療保険の窓口負担増が実施される場合、不足を補う補助(助成)制度がつくられるには時間がかかると思われます。

 おそらく、融資制度が先行するのではないかと考えます。

 健康保険証はマイナンバーと連係されます。金融機関などの情報も連係されます。厚生年金や納税情報も連係されます。
 医療機関の窓口での支払いはキャッシュレス化され、そもそも『お金を支払う』という行為自体が窓口では行われず、診療を終えたら診察室からそのまま直帰する事になると考えます。

 処方箋は予め選択したバーチャル薬局にデータが飛ばされ、帰宅するとドローンで配達され、薬剤料なども自動支払いされと思います。

 もし、残高不足で支払いができない場合、それを理由に受診控えが起こらないように、国が無利子や低利子で融資する制度ができるのではないかと考えます。
 医療機関にとっては、回収困難な貸倒金のようなものが減り、国としては保険制度維持ができ、『健康で文化的な最低限度の生活』は担保できるようになると考えます。

 ただし、借りた金は返さねばなりません。




セルフメディケーションが普及する

 『リンデロン』(軟膏)や『ロキソニン』(錠剤)がドラッグストアで処方箋なしで買えるようになり、外来受診をする暇が無いという現役世代が便利に利用しています。

 もし、保険医療の自己負担割合が増えれば頭痛や胃痛などで外来受診する人は減り、自己判断で治療を試みる人は増えるでしょう。

 AIの普及もあり、虫刺されなど原因がある程度わかっている炎症なども、自己判断で治療されるようになると思います。

 20年前であればカゼ薬、目薬、湿布薬くらいが家の救急箱に入っていたのが、消炎鎮痛剤やステロイド外用薬はもはや普遍化しました。

 現在の診療報酬制度では、調剤薬局でお薬を受け取ると薬剤技術料などの手間賃のような物がかかり、医薬品によっては薬剤料より高いという事がざらにあります。
 前述の『リンデロン』は、薬価表で見ると『リンデロンVG軟膏』が1g27.70円となっています。手元にあるチューブは5g入りなので138.5円です。この処方箋を持って調剤薬局へ行くと薬剤技術料として調剤基本料が200~400円程、調剤料が100円かかりますので、薬剤本体より周辺費用の方が高くなっています。
 医師から発行された処方箋に『リンデロン』と書いてあった場合、患者は保険適用のある調剤薬局へ行くか、全額自費のドラッグストアへ行くか選ぶ事になります。もし、保険を使って5割負担で300円のお薬が、ドラッグストアで250円で売っていたら、ドラッグストアの方が自己負担が少なくて済みます。
 更に言うと、5割負担で300円という事は保険者も300円負担する事になりますが、患者がドラッグストアに行ってくれれば保険者の負担はゼロで済みます。この不公平感を和らげるため、リンデロンをドラッグストアで買うと100円のクーポンを保険者が発行してくれるとなれば、ドラッグストアで買うリンデロンは150円になります。

 色々な面から、セルフメディケーションは進行していく可能性があると考えます。

 高血圧薬(降圧剤)や抗菌薬など用法や用量を誤ると危険なお薬は今後も処方を必要とすると思われますが、痛みを和らげたり炎症を抑えたりする治療法は、セルフメディケーションが進むと考えられます。

[Link] 田辺三菱製薬: 薬剤技術料







処方箋と自己診断の境界領域にニーズ

 外来受診して医師の診断を受ければ、正しいお薬が処方され、中には医師の処方箋が無ければ手に入らないお薬も服用できるかもしれません。

 医師の存在は必要不可欠ですが、保険医療の自己負担増により自己判断によるセルフメディケーションも増えると考えられます。

 ただし、患者自身に自己判断能力があれば良いのですが、ネットで見て薄い知識の中で誤った薬を服用する危険もあります。
 『これだけはダメ』というお薬を指導してあげられるようなサービスには、一定の価値があると思われます。

 例えば、胸が痛いという事で痛み止めを飲もうとしている人が居た時、その痛み方が心臓疾患のサインを疑うべきであったとき、痛みを軽減してしまうと発見が遅れてしまい致死的な状況に陥るかもしれません。
 誰かが気づいて止めてあげれば良いのですが、痛みから逃れたいという事と、無駄にお金を払いたくないという心理から、自己判断してしまう可能性はあります。

 ブレーキ役だけでなく、アクセル役も求められます。
 『毛虫に刺されて腫れた』『賞味期限切れの牛乳を飲んで気持ち悪い』という相談を受けて、候補となるお薬を紹介する役割も必要だと思われます。
 制度はどうなるかわかりませんが、自由診療の範疇で医師が1回千円で電話相談を受けても良いのではないかと思います。お薬代と合わせて2千円だとしても、外来で順番待ちして5割負担とあまり変わらない額だと思います。




リテラシーを高める義務教育

 いまの義務教育の中に、医療に関する教育はほとんど入っていません。

 応急処置を習う事はありますが『習った』という既成事実はあっても、習得していつでも応用できるというレベルではないと思います。
 AEDや心肺蘇生が典型例だと思います。講習は受けたが、できるとは思えないという人が多く居ます。

 そもそも、胸を押さえながら倒れる人は心筋梗塞以外にどのような場合があるのか、そこから指導しているケースは少なく、AEDや胸骨圧迫のテクニックだけ教えている事が多いです。

 痛みの伝え方も教わる事はないです。
 シクシク、ズキズキ、ジンジン、ガンガン、ジワリとなど、表現方法が色々あり、その伝え方によって疑う病気が変わることもあります。

 頭痛についても、痛み方には色々とあります。
 『金属バットで頭を殴られるような痛み』とは、脳卒中のときに使われる事がある表現ですが、そもそもバットで殴られた経験がある人は少ないですし、近年は体罰を避けるようになったので拳で殴られた事もない子供は少なくありません。

https://youtu.be/c_ATfUKNaAs
https://youtu.be/Jed-hO-fkBE

 小中学校で可能な限り、病気について教えていく事で、自分の身体への診断能力を養う事ができると考えます。

 日焼けして皮がめくれるのは普通だが、水ぶくれができていればケアが必要である。
 鼻水が出るのはよくある事だが、妙なニオイがするときは蓄膿症を疑うべきかもしれない。
 お酒を飲むと呂律が回らなくなるが、そうでないときに呂律が回らないのは脳卒中を疑うべきかもしれない。

 小学校4年生から中学校3年生までの6年間、月2時間ずつでも100時間分くらいは教えられると思います。

 今の子供たち、その親たちはよっぽどでない限りは受診できないような社会になっているとすれば、今からセルフメディケーションの質向上に向けた教育が必要だと考えます。

https://youtu.be/oe4P-LsexCw?list=TLGGd2Ayoy6RRmoxNTA4MjAyMQ
https://youtu.be/0uVz4GQZHWQ






早期発見、早期治療も教育から

 がんをはじめ、多くの病気が早期発見による早期治療により、良い結果が得られる事があります。

 本当に早期発見が良いのか、時間を割いて苦しい思いまでして胃カメラを飲む必要があるのか、という話をよく耳にします。

 小中学校の間に早期発見・早期治療の利点を知り、同級生の家族がそれで助かったというエピソードまで添えられたら、一生忘れないと思います。
 中学生になったら糖尿病の健診を受け、社会人1年生になったら一度は胃カメラを飲み、その後は定期的に健診を受けて病気を見つけ出す、それが当たり前の社会になると健診の受診率も自然と高まると考えられます。

 健診受診率が高まれば当然ながら早期発見ができ、治療にかかる費用も低減できる可能性があります。

 医療費が逼迫する中で、例えば高血圧の人を増やさないための取組みは、義務教育から始まるかもしれません。




看護師配置

 義務教育に『家庭の医学』のようなものを導入するにあたり、現任の教員を再教育する必要はないと思います。

 いま、徐々にですが学校に看護師を配置する動きが出てきています。

 看護師には『潜在看護師』と呼ばれる、免許は持っているが看護師として働いていない現役世代の看護師が70万人以上居るとされています。
 その数パーセントが小中学校での教育に携わるだけで、全校への配置が可能になります。

 看護師をはじめ医療有資格者は必ず養成課程を経て、臨床実習も経て、国家試験に合格し、免状交付を受けていますので、誰もが一定水準以上の医学・医療の知識を持っています。

 ときには医師に講師を務めてもらう事も有意義ですが、日常的な教育として定着させるためには看護師の配置が期待されます。

 学校への看護師配置は『医療的ケア児』の普通校への通学とも密接に関わります。
 医療的ケア児が通学を希望したから看護師を配置するのではなく、いずれはどこでも看護師が配置されているので、学校で一定のケアが受けられるのが普遍化するのではないかと考えます。




1クラス3~4人、医療従事者

 医師や看護師ら医療従事者(有資格者)は200万人以上居るとされています。

 今後、看護師300万人時代到来などとも言われていますが、医療従事者が増える事は間違いなさそうです。

 看護師の新卒が8万人で40年代分が集まると320万人です。現実は潜在ナースになってしまう人も居るので、日本人だけでこの数になるのは難しいかもしれません。

 令和2年の出生数は84万832人でしたので、もし看護師の新卒が8万人という時代になれば1割が看護師という事です。現状の5万人余りの数字でも同級生の6~7%が看護師です。

 1クラス35人ならば、その内の3~4人は看護師になり、あと1~2人は医師や技師など他の医療従事者になる計算です。




医療従事者は高所得者ではない

 医療従事者は高給取りだという『イメージ』が先行している感がありますが、高所得とは言い難いです。

 年収1千万円を超える医師が居るのは確かですが、週6日以上出勤し、始業時の医局カンファレンス前に病棟をラウンドしたり申し送りを聞き、終業後に1日分のカルテ(診療録)を仕上げたりと週40時間労働を超えているので、時間単価は意外に低いのが日本の医療です。

 下のグラフは業種別の平均給与です。
 医療が401万円、エネルギー系は倍以上の824万円が『平均』です。金融やITも高いです。
 医療は平均給与から見るとサービス業と同等です。提供している内容もサービス業に近いですが、様々な法律の下、原則的に全員が国家資格を持って仕事をしているサービス業は他にありません。

 同級生の1割以上が平均給与が『並』の職業へ就くことになります。

業種別の平均給与

[Link] 国税庁: 民間給与実態統計調査




医療は巨大産業

 全世代を通じて、所得の1割程度が健康保険料として徴収され、更に自己負担する診療費として年数万円~数十万円の出費となると、個人消費に占める医療費の割合は衣食住に匹敵するか、それ以上の割合になる可能性があります。

 人口減少時代ですので建物需要は昭和や平成ほどの伸びは期待できません。
 交通インフラなども老朽化のリニューアルがあっても新規路線は期待できません。

 飲食や観光への考え方は、COVID-19で大きく変わりましたが次世代ではもっと新しい考え方が出てくると思います。

 その時代において、子供たちが選ぶ進路における『医療』というものの位置づけはどうなるでしょうか。

 『人の役に立ちたい』『多くの命を救いたい』という心から生まれる医療への進路だけでなく、合理性や経済性を追求したい、真正面から『稼ぎたい』と医療分野に入る人が増える可能性があります。

 医療に対するリテラシーを高めることで、医療という産業に対するイメージも変わり、上手く経済が回れば高齢者医療費の負担の在り方も変わるのではないかと考えます。







在宅医療にも貢献

 いま現在、多くの家庭で医療も介護も未経験という事で、患者や高齢者を病院や施設へ預ける以外の選択肢を持たないというケースが多いと思います。

 家で痰を吸引するのは難しい、点滴はできないと最初から諦めているケースも多くあります。

 しかしながら、医療に対するリテラシーが高まり、また身近に医療従事者が増えればこの考え方も変わって来ると思います。

 家族の協力を得ながら在宅で人工透析を毎日施行する事も難しくありません。
 テレワークが定着した2020年以降、働き方もフレキシブルになり、在宅で治療を受けながら仕事や学校も並行させる事ができるようになってきました。

 義務教育で医療を学んだ子供たちが、特定の病気に詳しくなくても、知りたいと思ったときに調べ方を知っていれば状況は今と大きく変わります。
 兄弟や友人が大病を患ったとき、それを治すのは病院であったとしても、治療後のリハビリは在宅でもできるかもしれません。その在宅医療に並走できるリテラシーを持つ人が増えれば、患者も積極的に在宅医療を選ぶかもしれません。




感染症対策にも期待

 COVID-19の流行拡大により、社会でも感染対策が広がりましたが、その対応力は千差万別でした。

 食レポなどで『消毒したからキレイ』『マスクをして安全です』というナレーションが入ったりしていましたが、医療従事者からは疑問の声が聞かれます。

 例えば消毒は、菌やウイルスを激減させる効果があったとしても、ゼロになる保証はない手段です。
 大腸菌で言えば15分に1回の細胞分裂、すなわち1個あれば15分後には2個、更に15分後には4個と増えていきます。
 消毒しても、感染しない訳ではありません。

 消毒の方法にも注意が必要でした。
 消毒液を浸した布でテーブルを拭いても、途中からは菌やウイルスを薄く伸ばしており、逆効果も懸念されます。

 どのような状況では感染が起こるのか、正しく教育し、高い水準で議論できる社会になれば、感染制御力も高まると思います。
 COVID-19に集中すれば消毒剤は限定的ですが、菌やウイルス毎に特効薬や無効薬があるので『アルコール消毒したから大丈夫』と過信すると、アルコールが効かないものによる感染症を発症する恐れがあります。

 1つ1つを覚えておく必要はありません。
 菌やウイルスによって消毒剤が異なることだけ知っていて、あとは流行に合わせてネット検索して消毒方法を知るだけで良いのです。この1歩、非常に重要です。

 『正しく恐れる』という言葉がよく聞かれた1年ですが、リテラシーが高まれば、正しく恐れる事もできるようになります。







医療崩壊させたくない

 今回の記事は私見で述べさせていただきましたが、筆者の考えているところは、医療崩壊させたくないという事です。

 保険制度が崩れれば保険医療が混乱し、それに伴って医療自体がおかしくなる可能性があります。

 従来であれば助かった病気が、何らかの混乱により助からなくなってしまう事は避けたいと思います。

 1億円の診療を受けられるようにするかどうかという議論も必要ですが、1千円のお薬をどのようにして手に入れて、どのように使うかについて、まずは考えてはどうかと思っています。

 私のデスクにはリンデロンの大衆薬と、ロキソニンの大衆薬があります。何度か外来受診した後、この薬で症状が改善されるというケースを自己判断して使っています。
 医師の皆さんに対し、私の受診料が蒸発してしまって申し訳ないと思う一方で、保険を使わず自己負担で治療ができているので小さな社会活動かなとも思っています。

 まずは保険を破綻させない、そして医療を崩壊させない、その思いで記事を書きました。