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本日、臨床工学技士100人カイギ | NES’s blog

 本日、第19回目の『臨床工学技士100人カイギ』が開催されました。

 弊社代表取締役の西謙一も登壇させて頂きました。

 100人カイギとは、1回5人のスピーカーで構成するイベントを20回開催し、スピーカーが100人に達した時点で解散するというものです。
 今回が19回目でしたので、残すはあと1回です。最後のスピーカーはどなたになるのか気になります。

 臨床工学技士版の100人カイギは森ノ宮医療大学の西垣孝行先生が中心となって、有志の集まりで運営されてきました。

 運営に携わる皆様に、心より感謝申し上げます。

[Link] 臨床工学技士100人カイギ




臨床工学技士100人カイギ vol.19

 第19回は2021年10月9日19時スタート、ゲストスピーカーは今回も5名でした。

19:00~19:15 概要説明/100人カイギとは
19:15~19:20 アイスブレイク
19:20~19:35 登壇者1
19:35~19:50 登壇者2
19:50~20:05 登壇者3
20:05~20:10 休憩
20:10~20:25 登壇者4
20:25~20:40 登壇者5
20:40~20:50 ブレイクアウトルーム
20:50~21:00 次回案内 / 写真撮影

  • 菊池雄一さん
  • 中島章夫さん
  • 大塚勝二さん
  • 石飛航太さん
  • 西謙一

[Link] OneCE: 臨床工学技士100人カイギ Vol.19




【登壇】西謙一(NES株式会社)

 当社代表取締役の西謙一が登壇しました。

 自らの歩みを紹介し、なぜそのようになったのか、何を軸に持っているのかなどをお話しする事になっていました。

 そこで決めたテーマは『学際領域・境界領域は誰のモノ?』としました。

 演者は『邪道』な臨床工学技士人生を歩んできました。

 人工透析や人工呼吸器などの臨床系業務に携わっては来たものの、専門を名乗るほどの深入りはしていません。
 2000年代には脳血管内治療のチームの中核メンバーとして参加していました。ほぼ全例に関わっていました。
 再生医療に専従したのも2000年代です。

 医工連携に関わり始めたのが2009年、そして2010年には国立循環器病研究センターで医工連携の専門職員として雇用されました。恐らく当時、臨床工学技士では全国で初めての常勤者だと思いますし、臨床経験者という医療従事者全体で見ても珍しい人だったと思います。

 会社経営する医療従事者はたくさん居るので珍しくはありませんが、臨床工学技士の世界で王道では無いと思います。




講演要旨(演者より)

 臨床工学技士免状は昭和62年(1987年)に法制化された、医療の中では若い職種です。

 医師にはヒポクラテス、看護師にはナイチンゲールという大きな存在がありますが、臨床工学技士にはありません。

 臨床工学技士には業務独占もありません。法律上では名称独占しかないことを否定的に捉えず、どんな業務にもチャレンジできると考えています。

 業務独占が無いという事は、業務を手放しても他職種がカバーできるという事も意味します。

 臨床工学技士は医学と工学の学際領域に生まれた職種ですので、何が専門なのかと問われれば『境界領域を専門』と答えても不思議ではない職種です。
 境界領域を専門とする職種が無いとすれば、事実上の業務独占ができる領域は境界領域だけかもしれません。

 『透析が専門です』『心外手術が専門です』というスペシャリストが居る事に否定的ではありません。医師や看護師から絶大なる信頼を得て仕事をしている人も多く、その医療チームにおける専門家として地位が確立されていると思います。

 院内で誰も担当者と言える部署や職種がなく困っているという仕事を見つけて、担当者になり、いずれ専門家になっていくというのも、スペシャリストとしてあり得る姿だと思います。

 今回の講演ではこのような表現をしました。

『ほかの職種の誰よりも臨床工学技士が担うべきしごと』

 これを見つけることが、臨床工学技士らしさを発揮できる場になると考えています。




境界領域への新たな視点

 今回は10分間という限られた時間でしたので、各論についてはお話ししませんでした。

 たった10分ではなく、意義のある10分でしたので、主催者には本当に感謝しています。

 そして、その10分で境界領域に関心を持ってくださった方々がこのページを閲覧していると期待して、各論について少し触れたいと思います。




境界領域(例)ゴミ

 院内で発生する『ゴミ』には、どのような情報が関わるでしょうか。

 ゴミを捨てる人は誰でしょう。スタッフ、患者、納品業者、通りすがりの人、色々と考えられます。

 ゴミを集めるのは誰でしょう。大きな施設では委託業者、小さな施設では自院のスタッフが思い浮かぶと思います。

 ゴミを処分するのは誰でしょう。産業廃棄物処理業者が思い浮かびそうですが、近年はリサイクルも進化していますので、何が廃棄で、何が資源なのかは十分考える必要があります。

 『ゴミ問題』として課題を抽出すると、大きくは『経営』と『環境』に分けられると思います。もっと多く分けて貰っても構いません。

 ゴミを減らす事は意義深いことですが、努力や根気が必要ですし、継続するためにはシステムを考案する必要もあります。
 ゴミ減量や資源化への仕組み作りは、院内では誰の仕事でしょうか。誰が適任者でしょうか。

 筆者は、看護師か臨床工学技士だと考えます。
 臨床がわからなければ、どこでゴミを減らす事が出来るのか、何が課題で減量できないのかわからないので、事務職員には理解し難いのではないかと考えます。

 感染性廃棄物を1トン減らすと、病院経営にどれだけ影響があるでしょう。

 簡易包装の診療材料を採用する事で、どれだけのCO2削減につながるでしょう。

 その試算から始めるのも良い事だと思います。




境界領域(例)AI

 AIが医療に入って来るぞという雰囲気は感じていると思います。

 2015年頃には議論がありましたが、臨床におけるAIの管理者は誰なのかと言う問題に対し、臨床工学技士の世界からアンサーがありませんでした。

 AIに詳しい工学系の先生方から幾度か訊かれましたが、臨床工学技士が適任者になり得るとは言ったものの、相応のスキルを身に付けている人がどれだけ居るかと考えると、答えに詰まります。

 電子カルテ等の医療情報システムはシステムベンダーが中心となって管理する事が多いですが、システム側から能動的に診断や治療に入っていくことは無いので医療資格が無くても対応できています。大病院では専任の医師を配置していますが多数派ではありません。

 AIは診断や治療を助けます。
 バイタルサインモニタのアラームのレベルではなく、AEDのような診断基準を明確化した上での診断補助よりもハイレベルな物も現れてきます。

 画像診断系では診療放射線技師や臨床検査技師がAIマネジャーになると思いますが、医療機器と同様『その他』に類する多くのAIはマネジャー不在になります。

 臨床とAIツールの間には境界があり、AIツールが使われる臨床とメーカーの間にも境界があります。

 医療では学会が示すガイドラインに従って診療する事が多いです。
 日本では診療報酬の規程に従わなければ費用を回収できないこともあります。
 診療報酬は定期的に改定されますし、ガイドラインも見直しが行われます。
 AIの深層学習が改定・改訂前のデータに基づくものなのか、新しい基準を満たしているのか、その信頼性は改定前後でどのくらい変化しているのか、こうした事を専門的にアナウンスできる存在が院内に居ると強いと思います。

 従来のハードウェアのメンテナンスとは異なりますが、安全な状態を維持するという事に変わりはありません。




境界領域(例)ME機器と設備

 医療機器の電力依存度は高いと思います。
 医療機器に限らず、医療全般、社会全体も電力に依存しています。

 停電すればコンビニのシステムは停止してレジは動かず、自動販売機も停止して、目の前に商品があっても売買できなくなります。

 医療も同様に、目の間に治療デバイスがあっても治療ができないという可能性があります。

 医療機器と設備を別々に管理していることが、少なからず影響を及ぼしていると考えます。

 電気工事士には業務独占があります。
 臨床工学技士が電気工事士免状を取得すれば、医療機器と設備の両面からマネジメントできるようになります。

 免状を取得して自ら手を出さなくても、マネジメントはできます。

 医療現場には、まだ知られていない設備の課題が山積しています。
 知られていても、放置されている課題もあります。

 そのソリューションとしての臨床工学技士に、可能性が潜在していると思います。




 今回は臨床工学技士100人カイギという場に登壇させて頂き、弊社でも改めて考えなおす機会になりました。

 御聴講なさった皆様、何か言いたい事があったり、聞きたいことがあったりするのではないかと思います。

 お問合せフォームはいつでも開放していますので、いつでもお問合せ頂ければと思います。

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