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臨床工学技士キャリア形成 | NES株式会社

 臨床工学技士とは、医療技術系の国家資格(免許)の1つで、臨床工学技士法により定められています。

 免許が無ければ臨床工学技士を名乗れない名称独占はありますが、臨床工学技士にしかできない業務独占はありません。

 業務独占がないという事はすなわち、同じ仕事を他の免許でも実施できる事になります。

 競合する相手が同じ臨床工学技士だけでなく、他職種にも居る中で、どのようなキャリアを形成していくと良いでしょうか。

 3~4年の養成課程を経て臨床工学技士になった者の、その先の何十年かをどう生きるのか、そのための礎について考えます。




臨床工学技士業務

 臨床工学技士は業務独占が無いので、決められた仕事がある訳ではありません。

 日本臨床工学技士会という職能団体のホームページを見ると長い間、以下の9項目を臨床工学技士業務として掲げています。

  • 呼吸治療業務
  • 人工心肺業務
  • 血液浄化業務
  • 手術室業務
  • 心血管カテーテル業務
  • 集中治療業務
  • 高気圧酸素業務
  • ペースメーカ/ICD業務
  • 医療機器管理業務

 医療機器管理以外は専門とする医系学会があり、専門学会に行けば医師や看護師ともディスカッションしている姿を見ます。
 これらの業務を深く掘り下げて、専門として仕事をなさっている臨床工学技士も少なくありません。




9大業務以外

 前述の業務に従事していない臨床工学技士も、免許を持っていれば臨床工学技士を名乗れます。

 その代表的なものの1つに教育研究系の仕事があります。
 養成課程は50以上ありますので千人前後は教育研究系の仕事に就く臨床工学技士が居ると思います。

 先ほどの9大業務を王道とすれば、筆者は王道の臨床工学技士人生を歩んでいない可能性があります。
 医療機器安全管理は王道の中にありましたが、医療機器安全管理システムの開発や配布は既に病院外の仕事なので、王道より邪道に近いかもしれません。
 臨床系では脳血管内治療や再生医療に専門的に携わりました。どちらも、臨床工学技士が適任者になると思いました。
 医療設備安全管理は比較的新しい考え方で、理想像としてはダブルライセンスで従事するスタイルです。後述します。

 9大業務以外の業務としては他に、以下のようなものが知られています。

  • 内視鏡業務
  • 直介業務
  • 洗浄滅菌業務
  • 事務長・事務系業務



登るべきハシゴ

 出世では『階段をのぼる』という表現が用いられますが、職業人としての知識や技術を身に付けていく過程ではハシゴを用いる事があります。

 臨床工学技士のキャリアを形成する上で、何を身に付けなければならないかを知っている技士は少ないのではないかと思います。

 職能団体として確固たる生涯学習は行われていないですし、その指針や綱領も示されていません。業務指針はありますが、個別の業務ではなく、何を以って臨床工学技士を形づくるのかといった基調するものが示されていません。

 示されていない事は悪い事ではありません。
 自由に形づくっても良いと前向きにとらえる事もできます。

 いま、日本の社会で『臨床工学技士』と言って、何の仕事をする人か答えられる人は、医師や看護師のそれに比べて相当に少ないと思います。
 医療従事者に臨床工学技士の基盤や本分を訊ねても、答えがバラバラになるのではないかと思います。

 臨床工学技士は内外から『こういう人を言う』という確固たるものが無いのが現状です。

 




看護師のラダー(ハシゴ)

 看護師は『切れ目のない看護提供システムが不可欠』という考えの下に、『看護実線能力の保証』に向けた取り組みを何年も続けてきました。

 看護師は大病院でも無床診療所でも雇用され、活躍しています。

 病床規模により教育システムには差が出てしまう事は仕方ない事ですが、教育システムが整わないから低いレベルの看護を提供して良いという事はないですし、低いレベルの教育しか受けられないという事も望ましい姿ではありません。

 そこで日本看護協会では、全国レベルで標準化された看護実践能力の育成指標を策定し、看護師の能力を客観的に評価できるシステムを開発しました。

 看護師は皆、1つの体系的な生涯教育システムを用い、誰もが同じ基準で能力を評価され、自らの現在位置や目指すべきレベルを把握する事ができます。

[Link] 日本看護協会: 生涯学習支援 看護師のクリニカルラダー




先の見えないハシゴ

 臨床工学技士がいま、キャリアラダーを作るとどうなるでしょうか。

 おそらく施設間でレベル基準がバラバラ、比較ができないのではないかと思います。

 さらに、そのハシゴを登った先にある到達点は、行ってみなければわからないというあみだくじのようなラダーかもしれません。

 一段ずつ着実に登ってゴールを目指すのがハシゴの本来の目的です。一段抜かしは無用ですし、壊れたハシゴを使うのも誤りです。

 人が一段ずつ登れる間隔にステップがあり、登り切るまで壊れず、登る先の目標が見えるハシゴが必要になります。




テーラーメイド

 登るべきハシゴが見つからないのであれば、作れば良いです。

 自作しても良いと思いますが、目標設定とそこまでの過程については、通った事のある経験者の助言を得る事は重要です。

 本来であれば、諸先輩方が相談員となり、後輩たちのハシゴづくりを手伝ってあげるべきですが、そのようなシステムはありませんし、おそらく信頼関係を築く事も容易ではないと思います。

 まずは、自分の人生設計に必要なハシゴ(キャリアラダー)を作るために必要な情報を与えてくれる人材を探すところから始めなければなりません。

 筆者は、相談を受ければキャリアラダーづくりをお手伝いしようと思っています。
 近々、自らが所属する県の技士会に提案する予定です。




Technician
Therapist
Manager

 臨床工学技士として、目指す像はどこにあるでしょうか。

 キャリア形成を考える際に、今の自分はどこにあり、何を目指すのかを明確にしていく必要があります。

 昭和62年に制定された臨床工学技士法ですが、その審議の段階では4年制大学にするか否かの話題がありました。
 要約すると、マンパワーとして臨床工学技士が必要なので、4年もの教育は必要としないという結論でした。

 私的な解釈ですが、Technicianとしての臨床工学技士像があったように思います。

 2010年の臨床工学技士業務指針改定によりTherapist寄りに考え方は近づいた感じがしますが、養成課程は3年制のままですし生涯教育についても有資格者全員に共通するものは創設されていません。

 海外では人工透析1つをみてもTherapistとTechnicianの差は大きく、給与面でも倍ほどの差があります。日本の臨床工学技士は両方の業務を同じ資格で担っています。

 そして、Managementを身に付けたManagerが少ないように感じます。もしManagerを目指してキャリア形成するのであれば、Managementをどう身に付けていくかを真剣に考える必要があります。おそらく、臨床工学技士以外の世界で身に付ける事が望まれると思います。

 MBA(経営学修士)を取得している臨床工学技士は少なくありません。もちろん、医師や看護師では相当多いです。医療従事者は臨床で活躍してナンボという考えもありますが、臨床家が臨床家らしく働き続けられる環境づくりをするマネジャーの存在も重要です。




ロードマップ

 筆者は大学4回生の夏、自分の歩む臨床工学技士人生についていくつかのマップを作りました。
 東京の大学病院への就職、大阪の専門病院への就職、地元に戻っての就職など、まずは臨床工学技士のスタートをどこで切るかを想像しました。
 そして、10年後の立ち位置、20年後の立ち位置を想像してマップを仕上げていきました。

 キャリアラダーも必要ですが、そもそも自分のゴールはどこにあり、どこを辿って行こうとしているのかオリエンテーションを付ける必要があると思います。

 筆者は大学病院も専門病院も選びませんでした。
 30歳で臨床工学技士免状取得。そこから専門病院の臨床で5年の経験を経て基礎を築き、更に5年で専門性を高めていると40歳です。40歳で専門一本でしか来ておらず、論文も少々というレベルでは、他の40歳と比較されると劣るなと思いました。

 30歳で新人というハンデを、イニシアティブに変える方法を模索しました。




Self management index

 看護師であれば標準化された指標がありますが、臨床工学技士には存在しないのであれば、自己評価するしかありません。

 若い内は同級生らと『私は穿刺した』『夜勤をしている』など何の仕事をしたかで競ったりしている姿を見かけますが、これは指標や評価とは直結しません。

 用意したハシゴの何段目まで来たのか、その段階の行動目標を達成できているのか、可能な限り客観的に評価します。

 例えば透析の穿刺については、穿刺を経験したからゴールと言う事ではなく『安全な穿刺』や『トラブルを予見した準備』など臨床家として求められるスキルが身について、それを行動として展開できているかが重要になります。


 褒められる事ではありませんが、筆者は穿刺が上手とは言えませんでした。ゆえに失敗しないように準備は怠りませんし、患者との信頼関係構築のための努力を惜しみませんでした。
 穿刺にかかる時間はベテラン看護師の倍くらい、透析患者さんにとって5分の遅れは苛立ちを覚えるレベルですが、穿刺に来るなとは言われずに済みました。

 筆者が求めていた行動目標は素早い穿刺ではなく、確実な穿刺でしたので、このレベルをいつしかクリアしていました。
 同僚や先輩から『遅い』とは言われ続けましたが、私のラダーに『急ぐ』というキーワードは入っていないので、早める努力はしましたが、キャリアラダーとは別の次元で対応しました。




行動

 キャリア形成には行動が伴います。

 こんな人材になりたいと夢見るのもありですし、定時退勤して確実に給与を貰う人生もありです。それぞれが目指すところが違うのは必然です。

 今は到達していないステージを目指すには、何らかの行動が求められます。痛みや犠牲が伴う事もあります。

 目標への到達が早い方が良いか、遅い方が良いかはわかりませんが、手遅れになってはそれまでの苦労が水の泡です。

 筆者は30歳で臨床工学技士になりましたが、20代であれば許されそうな事でも、年齢の問題でNGという事がありました。
 未熟であれば叱られて終わりの事でも、成熟してからでは呆れられたり、見なかった事にされたりします。

 注意を受けている間が花、若い内に無茶はした方が良いと思います。

 『ここで働かせてください!』という勢いで、20代後半だが大学生という事で東京の大学病院の透析室で勝手に研修を受けた期間がありました。
 学生研修ではゴミ掃除などはさせてはいけないそうですが、任意で勝手に来ている人なので、朝のプライミング後は段ボールを壊して捨てに行く仕事もさせて頂きました。ゴミ捨ての時間が軽減された分、技士さんに色々と教わりました。

 若い時の苦労は買ってでもした方が良いと思います。




鍛錬

 ひと言で『トレーニング』と言っても、色々とあります。

 筆者は『鍛錬』という方がわかりやすいと思っています。

 高みを望むキャリア形成には、鍛錬は欠かせないと考えます。

 ハイレベルなスキルを身に付けるのもその1つです。

 医師は基本的な事として知っている知識の最低レベルが高いです。その上で専門を持ち、その分野での最低レベルを習得しています。この最低レベルが相当なハイレベルです。そこから更に専門と言える特殊能力を身に付けています。

 その超ハイレベルな医師が持つスキルに並べるように腕を磨く事も鍛錬としては有意義だと思います。聴診のスキルを高め、僅かな雑音も聞き逃さず医師に上申できるようになれば、それは特別なスキルと自負できると思います。

 これまで多くの卓越した人材と出会ってきましたが、皆さんの考える最低レベルは相当に高いところにあります。
 その上で、特別と言えそうな知識や技術をいくつも持っており、どの分野でも専門家のように話ができる方々です。

 筆者もそうなれるように努力はしました。
 臨床工学技士ではあまり持っている人が居ないスキルをいくつか身に付ける事はできました。
 専門家と対等に渡り合える程ではありませんが、専門家と意見交換させて頂けるレベルには至ったものもあります。
 独学で習得したコンピュータープログラミングは、情報工学の先生からはチープと言われましたが、暇人しか作らないようなソフトをいくつも完成させ、世の中の役に立つことはできました。

 日々、鍛錬を続けていくことがキャリア形成には欠かせないと考えます。




何をする?

 具体的にどのような事をしてキャリア形成の礎を築いていくのか、いくつか要点をお示しします。


(1)やりたがらない仕事

 苦労の1つに『他人がやりたがらない仕事』があります。

 時間を見つけてME機器を磨き上げる、そうした小さなことの積み上げから始めるのも良いと思います。

 筆者は、他職種がやりたがらない仕事で、臨床工学技士でも出来る仕事を探していました。
 例えば臨床統計。学会等から年1回報告を求められますが、この集計は手間です。

 退勤時刻にタイムカードを押して、医局に行って作業した事が何度もあります。
 夜な夜な透析室でカルテをまとめ直し、データ化した事もあります。

 その経験が直接活きる事もあります。
 そうした姿を見て、新たなチャンスを貰える事もあります。


(2)苦手な人

 苦手な人とは関りを減らしたいのが普通です。

 あえて、苦手な人と食事に行ってみるのも人生経験としてはプラスに働く事があります。

 こちらが苦手意識を持っていれば、相手にも気づかれている場合があります。

 苦手に思ってしまう原因を探り、相手がどのような思考に基づいて、自分が苦手だと思ってしまう行動に出るのかを直接聞き出す事ができると、その後の人間関係構築には物凄いヒントになります。


(3)院外活動

 苦労と言うべきかどうかわかりませんが、院外活動に積極的に参加している人は、けっこう打たれ強い人が多い気がします。

 院外で行われる勉強会の手伝いをしたり、研究会の下働きのような事をしても1円も貰えません。
 上司でも無い人に指示を貰い、現場で荷物を運んだり受付をしたり、面識のない人たちと飲みに行ったりするのが初期段階です。

 筆者は職能団体の地方会(都道府県技士会)の学術委員として月1~2回は夜の勉強会の受付などを手伝いに行きました。
 土日に印刷物の封筒詰めをしに大学病院へ行く事もありました。

 職場の医師の手伝いで荷物運びから始めた活動もあります。

 医系職なので医系の団体のお手伝いをするのが一般的ですが、全く異なる事をしている人も居ます。


(4)学術活動

 筆者は免許を取った年から学術活動をしていましたが『生意気だ』と何度も言われました。会場で『俺に挨拶がない』と因縁を付けて来る臨床工学技士も居ました。
 しかし無視して学術活動を続けていました。
 キャリア形成の中で、学術活動は不可避だと考えていたからです。

 臨床工学技士として成功しているように見える方々にお話を伺うと、皆さん何らかの形で学術活動をされています。

 1年に1回は発表する、常に新しいテーマを考えて実験するといった話はよく聞きます。

 学術活動をする事で、自らの研究や考え方に対し示唆に富む至適や批判を受ける事ができます。同僚に同じ専門を持つ人が居なくても、外で評価を受ける事が出来ます。
 レベルの基準はなくとも、その考え方が共感される物なのか否かはわかりますし、例え反対意見が多くても、誤りである事が実証されない限りは仮説として残ります。

 最初は稚拙な発表でも仕方ないと思います。
 回を重ねるごとに自らが成長していくのがわかりますし、周囲からも徐々にレベルの高い指摘を受ける事になります。


(5)学会での質問は出会い

 学会には単に参加して発表、あるいは聴講で終わらせません。

 他人の発表に対し質問するのが礼儀です。フロアーが静まりかえっていると、プレゼンが下手だったのか、場違いな発表だったのかと不安になります。

 質問する事で、自身の考え方が相手に伝わりますし、会場内から賛同や反対の意見が出ることもしばしばです。

 筆者は免許取得後数年目の学会で、ある人の一般演題に質問をしました。セッションが終わって某大学病院のボスが近づいて来て『兄ちゃん、質問してたよね。良いねぇ』と言って飲みに連れて行ってくれました。
 質問から火が付き、セッション後に廊下で延々と意見交換した事もあります。

 リモート開催になって質問の機会を与えられない事が多くなったのは残念です。
 しかし、せっかく聴講したのであれば、何かの機会に発表者に質問を投げかける事ができるようアンテナを張っておく事も良いと思います。


(6)受講

 都道府県技士会や学会等でも多くの勉強会が開催されています。リモート主流の時代に入り、遠隔地にセミナーにも参加しやすくなりました。

 臨床工学技士として基本的な事を知るための受講は本来の価値があって良いと思います。

 視点を変えると、よく知っている事について受講して、講師はどのような方法で受講者を満足させようとしているかを見るのも実は面白いです。
 内容については熟知している分野であれば、それぞれのキーワードの置き方や、理解の深め方などが勉強になります。

 筆者は専門外、医療以外のセミナーも多く受講しました。

 産業廃棄物、食品、防犯、家電、ジャンルは問いません。異業種のスタンダードな考え方を知る事が大事です。
 ある時、ロケットなどを造っているIHIの機械系のセミナーを受講しました。技術力は高いが、それだけで判断しないというお話でした。潜水艦や原子力発電など高度な技術があっても、医療などは市場を知らないので参入しないと話していました。

 どこにどのような技術があり、それが医療に応用できるか否かを知っておくことも臨床工学技士として必要だと思っています。


(7)趣味を極める

 たかが趣味だと侮らない方が良いと思います。

 同好者・愛好者の仲間に意外な人物が居る事もあります。

 そうした棚ぼた的な事よりも、何かを続ける、極めるという事にはキャリア形成において重要な要素があります。

 筆者は学生時代に手話をしていました。サークルに参加して手話を経験した人はたくさん居ると思います。
 筆者は聾唖者と飲みに行くくらい仲良くなり、会話し続けられるレベルの手話も身に付けました。
 手話は言語なので、幼稚園児が言葉を覚えるようにして自然に身に付きますが、人間関係は言葉だけでは形成されません。

 趣味のようなものでも、極めていくと新境地が開けてきます。




こんな事もできる

 一般的に、誰もがしておいた方が良さそうな事とは別に、関心があればチャレンジしてみても良いかなと思う項目をあげておきます。


(1)資格

 検定試験は知識レベルを示すのに役立ちますが、免許ではありません。

 免許とは文字通り免じて許される行為が伴います。
 医療だけでなく弁護士や税理士も免許です。

 臨床工学技士のキャリア形成において、臨床工学技士以外の免許(資格)を取得する事には意義があると考えます。

 臨床工学技士は医学と工学の学際領域に生まれた資格ですので、仮に医学系の資格を臨床工学技士免状とした場合、相対する工学系の免許は持っていない事になります。

 筆者は電気工事士の免許を持っていますが、ME機器と電気設備の密接性から考えると、多くの臨床工学技士が電気工事士免状を取得するべきだと考えます。

 今後の在宅医療を考えると、療養住環境を整備する上で、医学と工学の両方の知識と経験、さらに免許まで持っている人材が居ると強いと思います。


(2)転職・インターンシップ

 1か所で長く勤めあげる事は、立派なことです。称えられて当然だと思います。

 キャリア形成の面では、自身にマッチしたキャリアパスがあれば良いですが、無さそうであれば転職をするというのも良い方法だと考えます。

 海外では、高校卒業後に就職して社会を知り、そこから大学へ行って自分の進路を決め、在学中にインターンシップで色々な仕事を経験するということが普遍的に行われています。

 私の知り合いは、オリンピックに関する仕事のインターンシップを経験し、多国籍の人的ネットワークを築いた人が居ます。


(3)副業・兼業・復業

 いわゆるサイドビジネスです。

 業種を問わず、何でも良いと思います。

 講演活動や執筆活動であれば兼業許可が下りやすいと思います。

 アパート経営など不動産管理も良いビジネスだと思います。中古の集合住宅なら1千万円くらいから投資できます。

 フリマアプリでの物販も良いですが、キャリア形成に役立つという程の量を扱うには大変だと思います。

 スキルを売るプラットフォームも多くありますので、そちらの方がお勧めですが、売れるスキルを身に付けるのは容易ではありません。

 ココナラやビザスク、くらしのマーケット、ジモティなど手軽に利用できる物が多くありますので、まずは自身がユーザーになってみて様子を見るのも良いと思います。

 筆者も、スキルを切り売りして経験を積み、腕が錆びないようにライフワーク的に継続しています。




副業のはじめ方:プチ起業

 副業を始めるにしても、いったい何をすべきかわからないというご相談を受けます。

 職場に隠れてアルバイトをするのも副業の1つですが、キャリア形成という面での副業には幅があると思います。

 『アントレプレナー』(Entrepreneur)とは起業家のことで、綿密に計画を立ててゼロから会社を興し、事業を創出するような人物像が描かれます。人生を掛けてこの事業を成功させるぞという勢いや覚悟を感じる、やや重々しさもあります。この起業家精神を『アントレプレナーシップ』(Entrepreneurship)と呼びます。
 アントレプレナーについては日本での解釈と、海外での解釈は異なる部分がありますので、機会があれば米国などアントレプレナーシップが浸透している国の情報も参考にしてください。

[Link] Entrepreneur.com


 本業では副業の場合には『マイクロアントレプレナー』という考え方があります。
 小さく起業して、小さく稼ぐ、リスクは小さく、開業資金も小さくなります。

 本業としての起業であれば開業費は100万円くらいを目安にし、自身の給与分の売上を出す事が当面の目標となります。
 マイクロアントレプレナーは身の丈にあった起業をするため、開業資金は手持ち金だけで始めることができます。

 以下に、マイクロアントレプレナーの事例を紹介します。すべては筆者が経験した事があるサービスです。


(1)小売・個人取引

 物を仕入れて売るという基本的な商取引を学ぶことができます。

 手段としてはPayPayフリマやヤフオク!などが手軽に始められる個人間取引です。

 もう少しお店らしくするならばBASEというプラットフォームがあります。香取慎吾さんがCMに出ていたので記憶にある方も居られるかもしれません。
 BASEで用意されたスペース(サイト)に商品を陳列すれば開業です。商品写真などは自分で載せる必要があります。このサービスを利用すれば売上金の回収はだいぶ楽になります。当然ながら手数料は取られます。

 仕入れず自作して売る事もできます。
 手芸品は『ハンドメイド』というくくりでかなりの数が販売されています。工業製品と違い一点物、手作りゆえの曖昧さがあってもクレーム対象とはならない点が出品のハードルを下げています。

PayPayフリマ

ヤフオク!

BASE


(2)スキルで個人商店

 自分の持っているスキルを活かした遠隔サービスを展開できるプラットフォームがあります。

 吉岡里穂さんがCMに出演していました。その前は和牛さんたちでした。

 個人のお悩み相談のような物から、プレゼン資料やロゴデザインなどビジネス寄りの物まで多種多様な出品があります。

 単にスキルがあれば売れるものではなく、どのようなサービスに需要があるのかを見抜く力が試されます。

 例えば臨床工学技士養成課程の学生向けのサービスを思いついたとしても、学生は8千人も居ないと思います。その中でサービス利用対象となる人が1%だとすれば80人です。この少人数に訴求するのは骨が折れる仕事です。

 良いサービスを創造できれば、coconalaの中だけでも月数万円の売り上げは出せると思います。

coconala


(3)スキルで覆面コンサル

 覆面というほど匿名性は無いのですが、ビザスクというプラットフォームがあります。

 このビザスクという知見をシェアする仕組みを創出した端羽英子CEOがすごいなと思っていますが、端羽さんのお陰でマイクロアントレプレナーも活躍の場を持つことができていると思います。

 スポットコンサルティングですので、コンサルティング能力が問われます。

 1件1時間で3万円くらいが相場です。依頼する側は大手企業であれば情報力がある中でのスポットコンサルですので相応のレベル感を求めてきます。
 中小企業の場合は限られた予算の中で3万円の負担ですので、色々な事を知りたいと意気込んで面談に臨みます。

ビザスク




副業のはじめ方:個人事業主として受託

 副業はマイクロアントレプレナーだけのものではありません。しっかり起業して副業を続ける事もできます。

 わかりやすいところで言えばアパート経営があります。
 新築でも既築物件でも良いのですが、アパートを持って入居者を募り、家賃を収入としている医療従事者は居るでしょう。立派な経営者です。
 不動産業であれば病院も兼業を認めやすいので、駐車場やビルなど資産は様々ですが兼業申請している人の中には不動産業は多いと思います。

 不動産業には、不動産取得のための資金が必要であり、場合によっては借金もします。何千万円という単位です。

 ここでは臨床工学技士のキャリア形成を話題にしていますので、臨床工学技士らしい事業について紹介します。

 当社では医療機器安全管理業務を病院様から受託して、人材を配置してお仕事をさせて頂いております。
 その中のある事案では、当社が病院様と契約をしていますが、現場の実務は臨床工学技士と受委託契約を締結して、当社から委託しています。
 受託側の臨床工学技士は個人事業主です。税務署にしっかりと届け出て貰っています。

 当社は株式会社です。法人格という物があり、社会的責務があり、一定の社会的信用もあります。病院と契約する上では法人格の有無は重要になりますし、そもそも事前の営業活動も必要です。
 副業として病院と直接契約を締結する事は容易ではないと思います。

 当社ではME管理のスキルが内部にあり、マネジメントは内製化できますので販売を担う商社機能と、マネジメントを担う管理機能、MEサービスと言う商品を生み出す企画開発機能を自社内で行っています。
 サービス提供を担う実務部隊は自社にこだわる必要がないためリーズナブルな方法として臨床工学技士の個人事業主に委託しています。

 このビジネスモデルは何件かのお引き合いを頂いております。今後は受託できる臨床工学技士を増やし、質の高いMEサービスを良心的な価格で提供できるようにと考えています。

 このような仕事があるとわかっていれば、本業として勤めている医療機関でも様々な視点で臨床工学業務に従事するようになると思いますので、キャリア形成との相乗効果は発揮しやすいと思っています。




副業のはじめ方:仕事を創造

 本業とするには需給バランスが悪く、誰も本業とはしないだろうというビジネスを創造することが、副業を生み出す事にもなり得ます。

 例えば、透析室の装置入替を機種選定から図面作成、工事中の工程管理までの請負仕事があったとします。
 このような事案自体が年に数十件しか発生しない上に、それをすべて受託しても1~2人の雇用がギリギリだとします。
 本業にするならば独占的に仕事を確保できるビジネスモデルが必要ですが、それが無理なら副業ですべき仕事になります。

 このような仕事を『私にはできる』と言っているだけでは、お金を払って依頼しようなどという事にならないので、『私に任せればこういうメリットがある』というPRをしなければなりません。

 実際には色々と難しい事があると思います。
 自動車を購入する際にアドバイザーを付ける人は滅多に居らず自動車販売員と購入者は直接やり取りします。
 住宅を建てるときでも同様です。
 透析装置を買う時に、外部のコンサルを雇い入れるという文化を醸成するところから必要になります。

 一方で、パイオニアとなれば競争力があり、価格面や案件獲得などで優位性が出ます。




臨床工学技士のキャリア相談

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