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ポータブル蓄電池を常用/非常用の兼用 | NES’s blog

ポータブル蓄電池

 携帯蓄電池、ポータブル電池、ポータブル蓄電池など呼び方は色々とありますが、要するにコンセントを持ち歩くという感じの事です。

 スマホの充電用に使われるモバイルバッテリはUSBのDC5V専用が多いですが、ポータブル蓄電池は商用電源(AC100V)や車載電源(DC12V)など多彩な電源に対応しているのが使えるのが特徴です。


ポータブル蓄電池

  1. 弊社には数種の可搬電源
  2. 出力は多種多様
  3. 非常時に役立つ
  4. 非常用だけでは、もったいない
  5. 車載
  6. エンジン停止中
  7. バイク搭載
  8. 電源品質
  9. 電源品質を計測してみた
  10. 容量表記
  11. 使用可能容量
  12. 出力容量
  13. 市販機比較

停電シミュレーション

  1. 停電には自助が必要
  2. 停電の影響
  3. 一日の生活と電力
  4. 非常時用の電源があれば
  5. 停電は終わりが見えない
  6. LACITA ENERBOX-SPでシミュレーション
  7. 太陽光発電併用
  8. 専用ソーラーパネルで蓄電
  9. 自助に自助を重ねる

弊社には数種の可搬電源

 弊社ではBCP(事業継続計画)のコンサルティングを生業としており、また電気工事業許可を持つ業者でもあることから、停電対策に力を入れています。

 これまでに停電対策関連の学会発表や講演もして参りましたが、その背景には様々な実験の積み重ねがあります。

 研究目的も兼ねて調達した可搬電源はカセットガス式エンジン発電機『enepo』(Honda)、防沫ポータブル蓄電池『ENERBOX-SP』(LACITA)、ポータブル蓄電池『RP-PB055』(RAVPower)の3機種を保有しています。

enepo
ENERBOX-SP
RAVPOWER
ホンダ発電機 エネポ EU9iGB 900VA
カセットガスボンベ2本で発電できる可搬型発電機です。定格交流出力50/60Hz:100V-0.9kVA、連続運転1.1~2.2hr、365mm×524mm×262mm、騒音79〜84dB
LACITA ENERBOX-SP 444Wh/120000mAh/400W 防塵 防沫 IP44
リチウムニッケルコバルトアルミニウム(NCA)搭載、IP44防水規格取得のポータブル電源。本体電池容量120,000mAh(444Wh)、サイズは303mm×134mm×184mm、5kgの軽量コンパクト。

RAVPower 30000mAh 100W AC出力 PD 60W RP-PB055
リチウムイオン電池を搭載。AC100W出力・30000mAhの充電に対応。60W出力のUSB-Cポート。3時間で満充電。軽量1kg


出力は多種多様

 ポータブル蓄電池といっても種類は豊富です。同じメーカーから複数機種が発売されている事も多いです。

電源種

 大きな違いの1つが電源の種別です。
 下記が主な電源の種類です。

  • AC100V(正弦波)
  • AC100V(矩形波)
  • DV12V(車載電源)
  • DC5V(USB-C)
  • DC5V(USB-A)

 USBの電圧は5Vで共通しても、大容量のUSB-Cに対応しているか否かで流せる電流値には差があります。

容量

 蓄電池は『電池』なので消費すればエネルギーが無くなります。

 電池容量の大小が供給できるエネルギー量に比例し、同時に電池の質量にも関係してきます。さらに、価格にも影響します。


非常時に役立つ

 病院やサーバールームなどに敷設されている無停電電源はバッテリに接続されています。電柱からの電源が途絶えてもバッテリから電源を供給するので停電を免れる事ができます。

 ポータブル蓄電池は商用電源とは別の、独立した電源系統なので世の中が停電していても、電源を使う事ができます。

病院ベッドサイド

非常用だけでは、もったいない

 ポータブル蓄電池は安い物でも1万円前後、数時間使用できるタイプで10万円近く、大容量になると数十万円という物もあります。

 いつ使うかもわからない非常用電源に数万円を使うという事に躊躇する人も少なくないと思います。

 そこで、常用を兼用する非常用電源としてポータブル蓄電池を使えないか検討しました。


車載

 車中泊のキャンプに出掛ける人にとっては車中で家と同じコンセント(AC100V)が使える事は魅力的、あるいは必須電源かもしれません。

 仕事で車を使っている人も、車中で片づけたい事はたくさんあると思いますので、やはり車載電源としてのポータブル蓄電池は活路があります。


エンジン停止中

 AC/DCコンバーターと呼ばれる、車載12Vの電源をAC100Vに変換する装置は比較的安価であり使われている方も多いと思いますが、エンジンを切ると使えない、仮に使えたとしても車のバッテリを消費するので長時間の使用には不向きです。

 ポータブル蓄電池なら走行中に充電、停車中に消費ができるので合理的、経済的です。

 家で充電して車中で使う、そうした運用にも対応できます。

この記事は停車中の車中で書いています

バイク搭載

 停車中に使うのであればバイクに搭載しても同じ使い方ができるはずです。

 実際にバイクに搭載して出かけました。

 この日は午後から病院訪問して会議があり、病院までは片道2時間かかります。午前中にビデオ会議の予定があり、病院近くのイオンモールから参加する事にしました。
 10時からウェブ会議が1時間程度、そのあと1時間半ほどパソコンで仕事をして病院訪問、この時点でパソコンのバッテリ残量は1時間分程度でした。

 そこで、移動中にポータブル蓄電池とパソコンを接続しておき充電、午後の訪問先ではある程度の電池容量が回復したパソコンを持ち込んで仕事をすることができました。
 

バイクのメットインに収まるサイズの蓄電池(LACITA)

電源品質

 直流電源は電圧は一定、横一直線の波形を示すため、5Vや12Vの出力させ調整できていれば安定しやすいです。

 交流電源は正弦波(サインカーブ)という波を描く必要があるため、この波をキレイに描けるかどうかが電源の品質に関わります。
 蓄電池の電池自体は直流です。車のバッテリや乾電池と同じく直流です。交流に変換する必要があります。

 こうした装置から出される交流には大きく『正弦波』と『矩形波』の2つがあります。
 家の壁にあるコンセント、すなわち商用電源は正弦波交流です。矩形波とは、四角い波です。
 正弦波は波を描くので電圧は漸減・増を繰り返します。瞬間毎に電圧値は異なります。
 矩形波はOn/Offの繰り返しのような波なので、+100Vと-100Vのどちらか二択、正負が入れ替わるときは高低差200Vの変動が瞬時にあります。

正弦波交流の波形
矩形波の波形

電源品質を計測してみた

 当社は登録電気工事業許可を得ている電気屋でもありますので、電気計測器具がある程度は揃っています。

 今回はHIOKIの3351Tという電源品質アナライザを使って蓄電池の電源品質を評価しました。

 ノートパソコンの充電など、私たちの使用目的の範囲内であれば特に電源品質に異常は見られませんでした。
 粗悪な電源ですとサインカーブが歪み、ギザギザの波形が見られたり、十分な電圧が出なかったりします。

HIOKI 33151T

LACITAの電源品質

 LACITAのENERBOX-SPの電源品質測定結果は下図の通りです。

 100V以上の電圧を維持し、歪んだ波形も出ないので特に問題なく使い続けられると思います。

LACITA ENERBOX-SPの電源品質(2021年3月30日測定)

RAVPowerの電源品質

 RAVPowerのRP-PB055の電源品質測定結果は下図の通りです。

 100V以上の電圧を維持し、歪んだ波形も出ないので特に問題なく使い続けられると思います。

RAVPower RP-PB055の電源品質(2021年1月2日測定)

容量表記

 電池容量は一般的に、電池自体の電圧において、何アンペアの電流を何時間流し続けられるかという数値『Ahr』(アンペア・アワー)で表示されます。

 スマホ用のモバイルバッテリでは『mAh』(ミリ・アンペア・アワー)がよく使われていると思います。

 余談ですが、家の電気代を記録するメーターは図記号で『WH』と描きますが、家庭用電力は『Whr』(ワット・アワー)を単位として電気代が請求されています。
 電力は電圧×電流、すなわちAhrに電圧を掛ければWhrを求める事ができます。

保有機の容量

 保有する2機種の容量はLATICAが12万mAh(120Ahr)、RAVPowerが3万mAh(30Ahr)でした。
 リチウムイオン電池の電圧が3.7Vであるとすれば、LATICAは444Whr、RAVPowerが111Whrの電力容量となります。

LATICAのカタログ値
RAVPowerのカタログ値

使用可能容量

 電池容量はあくまでも論理的に貯留できるエネルギー量であって、実際に使える量ではありません。

 電池は、その電圧を維持できなくなると出力をやめる(やめさせる)構造になっているのが一般的で、特に昇圧や直交変換などをする際にはトランスやインバーターが電池と負荷の間に入るため、電池をフルに使える訳ではありません。

 各社が『誤魔化して』いるかどうかわかりませんが、LACITAは99.10%まで使えるそうです。


出力容量

 電池容量は持続時間に関わりますが、そもそもコンセントを挿した時点でブレーカーが切れてしまうのであれば使い始めることすらできません。

 ご家庭の屋根にあるソーラーパネル、停電時に役立つとされていますが、コンセントとして取り出せる容量は350Wや700Wなど上限が決められています。
 350Wでは冷蔵庫や電子レンジは動かせませんでした。テレビや扇風機は動きました。

 ポータブル蓄電池も同様に容量の上限があります。
 装置の設計の問題ではありますが、蓄電池容量が小さい物は出力容量も小さい傾向にあります。
 小さい貯留槽から短時間に大量に出してしまえば、すぐに枯渇してしまいますので、仕方ない事ですが、大きな出力を得たければ、大きな蓄電池を買わざるを得ないのが現状です。

保有機の容量

  カタログ値ですが、LATICAの方が400W、RAVPowerの方が100Wまでの出力に対応しています。
 400Wはかなり用途が広いです。

 例えば8kgのドラム式洗濯機は約200Wです。インバーター駆動であれば始動電流は定格の2倍程度なのでギリギリ動きそうです。
 ガス給湯機はリモコン等の制御系などで電力を必要としますが最大でも300W程度です。
 停電生活経験者としては給湯器と洗濯機があれば日常生活に近い衛生状態を維持できると考えています。

 停電時の生活まで考えるのであれば、400W程度の出力があるポータブル蓄電池がお勧めです。

LATICAのカタログ値
RAVPowerのカタログ値



市販機比較

大容量タイプ

 私たちの手元にはLACITAのENERBOX-SPがありますが、調達にあたってはこれ以外の機種も比較検討しました。

 比較検討した機種はJackeryとAnkerです。JVCケンウッドの製品はJackeryのOEM商品ですので、電池容量の違い以外はJackeryと同等だと見ています。

 各社共通して『充電しながら電気を取り出す』ことができる『パススルー』機能を搭載しており、ユーザビリティとしてパススルーの需要が高い事が窺えます。
 ただし、充電可能回数を消費しながら使うパススルーは、製品寿命を浪費しているとも言えますので、無停電電源装置として使うならば専用機を使った方が良いのではないかと思います。

 電源種はAC100V(正弦波)、DC12V、DC5V(USB)が使える事は共通、候補外の機種ではUSB-CのPD対応を前面に出す機種もあります。PDは大電流を流せるためスマホ用バッテリでは不足感があり、今後のポータブル蓄電池に必須コネクタになるのかなと思います。

 横並びの中、今回の決め手となったのは重量です。

ブランドLACITAJackeryJVCケンウッドAnker
商品名ENERBOX-SPポータブル電源 700BN-RB6-CPowerHouse II 800
Amazon価格72,80079,80071,28074,800
電池容量120,000mAh
444Wh
192,000mAh
700Wh
172,000mAh
626Wh
216,000mAh
778Wh
電池リチウムニッケルコバルトアルミニウム(NCA)リチウムイオンリチウムイオンリチウムイオン
日本法人株式会社ポスタリテイト株式会社Jackery Japan株式会社JVCケンウッドアンカー・ジャパン株式会社
PSE認証
パススルー(?)
防水IP44(?)(?)(?)
100V出力
100V容量400W500W500W500W
(瞬間最大)(?)1000W1000W1000W
100V口数3222
100V波形正弦波正弦波正弦波正弦波
USB-A
Aポート3334
USB出力10.5W×330W(?)30W
USB-C
Cポート2
PD対応
車用DC12V
12Vポート1111
12V出力110W120W120W
ソーラー
保証1年
(3年)
2年2年2年
サイズ303*134*18430×19.3×19.119.3x30x19.2300*185*204
重量5kg6.3kg6.4kg8.3kg
LACITA ENERBOX-SP
ラチータ(LACITA)のポータブル電源(エナーボックス)の2020年版です。120000mAh、防塵・防沫のIP44防水規格、5kgの重量で持ち運びしやすいです。
Jackery ポータブル電源 700 192,000mAh/700Wh
192000mAh/700Wh PSE認証済 純正弦波 AC500W、瞬間最大1000W DC/USB出力 4つの充電方法 液晶大画面表示 24ヶ月保証
JVCケンウッド ポータブル電源 BN-RB6-C 626Wh
高性能リチウムイオンバッテリー搭載、大容量626Wh、最大電力500W、スマートフォン(15W)が約35回、LEDランタン(12W)が約44時間、小型炊飯器(360W)が約3回。国内品質 「Tuned by JVC」モデル。注文日から24ヶ月保証
Anker PowerHouse II 800 216,000mAh/778Wh 純正弦波AC500W
216,000mAh (778Wh)、最大770W高出力。純正弦波AC出力。USB-Cポート×2、USB-Aポート×4、シガーソケット。最大24ヶ月保証


小型携帯型

 小さいタイプはビジネスバッグに収まるサイズで機種選定をしました。

 AC100Vの正弦波が出力され、持ち運べる程度の外形、重量となるとかなり機種が絞られました。
 2020年12月31日、Amazonで15,999円で売られていたRP-055を購入しました。
 PD充電に対応した30,000mAhです。

RAVPower 30000mAh 100W AC出力 PD 60W RP-PB055
リチウムイオン電池を搭載。AC100W出力・30000mAhの充電に対応。60W出力のUSB-Cポート。3時間で満充電。軽量1kg




停電シミュレーション

停電には自助が必要

 停電が発生したとき、どのような対応をとる用意があるでしょうか。

 停電は災害ではないため、原則として『誰も助けてくれない』非常事態です。

 災害対策基本法では以下のように災害を定義しており、停電は災害では無いと読み取る事ができます。
 実際に2018年9月の台風21号では、台風のための避難所は開設されても、停電のための避難所は開設されませんでした。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 災害
暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。

 ゆえに、停電への備えは『自助』として重要な位置にあり、備えを怠ると大変な不便や不都合が生じる事になります。

 自助とは自身のために、自身で自身を助ける事です。対比的に公助や共助という言葉があります。
 公助は行政等による救援物資や避難所開設、見舞金給付などが該当します。
 共助は隣近所や自治会、会社など公設ではない組織や団体による互助のような手助けです。自衛消火隊なども共助に含まれますが、飲み水を分け合う、お弁当を代わりに取りに行ってあげる、そうした小さな活動も共助には含まれます。

[Link] 内閣府 防災情報のページ:災害対策基本法

停電の影響

 停電すると、日常生活はストップします。

 あらゆる家電品が動きません。

 信号機は消灯し、バス等は運休、一般車両は混雑、救急車到着は遅延します。そもそも119番通報ができないかもしれません。

 お店のレジも冷蔵庫も停止し、多くの商店が休業します。自動販売機も停止します。通信を使う電子決済は取引停止となります。

停電を理由に休業(実際の停電中)
停電を理由に休業(実際の停電中)

一日の生活と電力

 ぜひ、1日の生活と電力の関係を見つめなおしてください。

 就寝中にスマホを充電します。そのスマホを目覚まし代わりに使う人も多いと思います。ニュースなど情報収集にはスマホ端末と通信回線を使います。

 トイレや洗面の水、水道管から直圧であれば停電は無関係ですが、マンション等ではポンプ停止で高置水槽が渇水となります。
 ウォシュレットや自動水栓は停止します。
 ドライヤーは使えません。洗髪用のお湯も、給湯器が動かなければ給湯できません。

 朝食にポットやトースターなどは使えません。
 冷蔵庫内は冷たさは残っていますが、新たに冷やす能力はありません。
 電子レンジも炊飯器も使えません。ガスであればコンロが使えますがIHなら加熱調理全般ができません。

 洗濯機には電源が要ります。
 コインランドリーの洗濯機も恐らく動きません。

 電車に乗るための自動改札には電源が必要です。
 切符を買う券売機も電気式です。
 そもそも電車を動かすには動力にも信号制御にも電気が必要です。

 職場の自動ドア、エレベーター、ゲートのセキュリティなどは電気式です。
 パソコン、サーバー、複合機、ビジネスフォン、どれも電気が必要です。
 トイレの水、照明、自動水栓、換気扇、やはり電気が必要です。

 夕食の材料を買うスーパーマーケットは看板、自動ドア、エスカレーター、冷蔵庫、冷凍庫、照明、レジ、在庫管理システム、勤怠管理システム、どれをとっても電気が必要です。
 特に在庫管理システムは未入力で販売してしまうと膨大な棚卸作業が発生しますので休業した方が合理的・経済的です。
 それ以前に生鮮食品は冷凍冷蔵庫停止で壊滅的、信号消灯によりデイリー食品は未入荷、スタッフも出勤困難で販売員も販売商品も無い状態になります。

 夜、入浴するにも給湯器が動きません。
 トイレも流せないまま、就寝の時間を迎えます。

 翌朝、もうスマホの充電がありません。
 世の中、どうなっているのかもわかりません。

自動水栓でも手桶で流せる
冷凍食品は壊滅的被害

非常時用の電源があれば

 非常時に電源があれば助かります。当たり前のことです。

 では、どのような電源があれば、どのように助かるでしょうか。

 よくあるシンプルな壁掛ガス給湯器は消費電力は50W以下です。浴槽一杯にお湯を沸かすのに30分かかるとすれば50W×0.5hrで25Whrの電力を消費します。RAVPowerの携帯型電源RP-PB055は定格で111Whrですので4回は風呂を満杯にできる計算になります。

 43インチの4Kテレビで定格消費電力が85Wという商品がアイリスオーヤマ(43UB10P)から発売されています。111WhrのRAVPowerを使うと1.3時間、約78分間視聴できる事になります。
 ただし、TVが光回線であれば停電中は映りません。屋根のアンテナであってもブースターなどの機器に電力供給できなければ結局映りません。

 停電中に何をしたいのか、どれだけの期間の停電を見込むのかで備えるべき非常用電源の種類は大きく変わります。

シャワーの湯にも電力
停電中にビデオ視聴(実際の停電中)

停電は終わりが見えない

 計画停電であれば、計画どおりに停電は終わります。

 落雷ないよる局所停電であれば概ね数時間で解消します。

 しかし広域の暴風雨雪で何百万戸も停電すると先が見えません。

 2018年の台風21号では同じ町丁内でも明暗が分かれ、弊社は52時間停電しましたが、お隣さんは29時間で解消しています。
 丸1日も差が出るほど大規模停電の解消は不透明です。

停電解消地域(中央奥側)と停電中の地域(手前全域)

LACITA ENERBOX-SPでシミュレーション

 444Whをどう使うか、考えてみました。
 3日間・72時間の停電と仮定しました。

 浴槽の湯沸かし3回で50W×0.5hr×3回=75Wh、残り369Whです。

 スマホ1台あたり10Wh、家族4人が2回ずつ充電したとして10Wh×4人×2回で80Wh、残り289Whです。

 洗濯機を1日1回、洗濯とすすぎを1回ずつで30分、平均200Wを1回だけ使って200W×0.5hで100Whr、残り189Whです。

 台風シーズンで暑いと思いますので40Wの扇風機を使うと189Whでは189Wh÷40W=4.725h、すなわち4時間43分30秒だけ扇風機の風を受ける事ができます。
 間違えて扇風機をつけて寝落ちしてしまうと444Whフル充電でも11.1時間で電池切れになります。

 お風呂に入れて、洗濯ができて、スマホが充電できる、これだけでも比較的質の良い生活ができると思います。

充電式非常用扇風機
停電中の湯沸かし(実際の停電中)

太陽光発電併用

 もし、家の屋根に太陽光パネルが載っていれば、もしかするとリモコン操作で自立運転ができるかもしれません。

 これは、太陽光パネルで発電した電力を売電には使わず、自宅の自立運転専用コンセントで使うものです。

 年代や機種にもよりますが350Wか700Wのいずれかが最大電力である可能性があります。

 昼間は太陽光で洗濯機やスマホ充電、同時にポータブル蓄電池にも充電。
 夜間は蓄電池で扇風機等を動かせば、24時間、何かしらの電源を使う事ができます。

 朝8時頃から16時頃まで8時間も発電できれば、蓄電池にはそこそこの電力が溜まっていると思います。

太陽光は日没で発電終了
自立運転中の太陽光発電

専用ソーラーパネルで蓄電

 屋根のソーラーパネルではなく、蓄電池専用のソーラーパネルを使って充電することもできます。

 キャンプ場などで昼間蓄電、夜に消費という場合に使います。

 パネルが一式で2.5万円くらいなので、買う価値のある人は買った方が良いですが、家に太陽光パネルがあり、停電時のみ使用という事であれば家のソーラーでも十分です。

Lacita ソーラーパネル エナーボックス citasr-01
折畳式、81W発電18V/4.5A、夏場の晴天時では約8時間でエナーボックスが満充電。USB出力10W(5V2A)、発電効率20%、ケーブル長3.5m、展開時サイズ350mm×2310mm×25mm、3.3kg。アウトドアメーカー採用もあるポリエステル600D生地を採用、パネル表面フッ素樹脂コーティング。

自助に自助を重ねる

 前にも述べた通り停電は災害ではないので、公助は期待できません。

 共助といってもエネルギーを分け合う事ができないので、トイレや食糧の貸し借りをする程度だと思います。

 ポータブル蓄電池は停電中の生活の質向上に役立ち、さらにソーラーパネルなどがあるとその強さを増します。

作業灯(AC100V)
ローソク

 2018年の停電時、私たちは照明器具を使っていました。
 電源が無ければローソクで過ごしていたことでしょう。

 9月のまだ暑い日、私たちは窓を閉め、エアコンをつけて就寝しました。近所では皆、窓を開けて暑さにうなされながら寝るか、車中泊をしていました。

 自助ゆえに、誰も電気を分けてくださいとはきませんでしたが、スマホ数台の充電程度であれば供給できる程度の余剰電力はありました。

 エネルギーの重要性を知る機会を設け、ポータブル蓄電池の有用性についても深く考えていきたいと思います。