カテゴリー
BCP BLOG 医療機器・設備・環境 療養住環境 電気工事

調べづらい(私見) | NES’s blog

 先日、発電機や蓄電池のデータベースを公開しました。

 供給側がわかりやすくなると、負荷側のわかりやすさも重要になりそうなので、負荷側の仕様を調べることにしました。

 すると、調べづらい、判りづらいといったものが発見されましたので、その様子をまとめたいと思います。

 『○○づらい』は私見、主観ですので、そのつもりで読み進めて頂けますと幸いです。




Astral

 フクダ電子の人工呼吸器『Astral』の消費電力やバッテリについて調べました。

 ウェブサイトで製品情報を見てみます。


 公式ウェブサイトの製品ページにある電源情報はこれだけでした。

電源 AC100-240V/DC12-24V


 製品ページには、添付文書へのリンクは張られていないようでしたので、PMDAのサイトへ移動して検索することになります。


 製品ページにJANコードの記載があったので、JANで検索しました。


 弊社でもJANコード検索ツールを提供しているので、そちらでもヒットしました。当然ですが。

医療機器JANコードを入力

 添付文書には、以下の記載がありました。

3.電気的定格

AC アダプタ:AC 100-240V 50/60Hz 1.0-1.5A
AC 110V 400Hz 1.5A
本 体: DC 12-24V 90W


 添付文書上では、内蔵バッテリの容量や動作時間についての記述はありません。一方で、注意書きが冒頭から200文字近く使って書かれています。

  • 内蔵バッテリは、主電源として使用することを意図していない。たとえば電源の切り替え時等、他の電源が使用できない時に限り使用するか、必要に迫られた際に一時的に使用すること。
  • 万が一、外部電源に問題が発生した場合、本装置はアラームを鳴らし、内蔵バッテリを使って動作することをユーザーに知らせる。換気は継続するが、ユーザーはできるだけ早く代わりの外部電源(AC電源など)に接続する必要がある。

 現在最新の第8版の添付文書の冒頭の警告文は下記の通りです。


 2016年の第3版の頃は、バッテリに関する記述はありませんでした。


 恐らくですが、2016年の大規模な回収が関係しているかなと思います。

 製造元より、内蔵バッテリにて駆動中に、バッテリの残量低下を注意喚起する「低バッテリアラーム」が作動することなく「全電源消失アラーム」が作動し装置が停止した事象があったことが報告されました。調査の結果バッテリが原因と判明し、単一の不具合ではなく出荷したすべてに発生する可能性が否めないため、自主回収を実施しバッテリを交換いたします。

医療機器回収(クラスⅡ)成人用人工呼吸器 クリーンエアASTRAL

医療機器回収(クラスⅡ)成人用人工呼吸器 クリーンエアASTRAL

 医療機器には回収・改修・患者モニタリングという制度があり、不具合が確認されている機器を流通させたままにしないように法整備がなされています。

 医療機器が安全であると言われる、根底にある法律とも言えます。

 一方で、この回収情報の『危惧される具体的な健康被害』では、以下のような文言が使われています。

危惧される具体的な健康被害

 全電源が消失した際には、アラームにより、介護者/医師に警告を発し、直ちに換気を復旧させないと、重篤な健康被害、又は死亡に至るおそれがありますが、取扱説明書及び/又は注意事項等情報に従って外部電源に接続して使用する限り、全電源消失の発生、及び本事象の発生を防ぐことは可能です。また、全電源が消失した場合でも、外部電源を接続すれば、本品の換気は再開致します。このことから、重篤な健康被害に至るおそれはないと考えます。

 なお、現在までのところ、海外、国内共に本件に起因する健康被害の報告は受けておりません。

医療機器回収(クラスⅡ)成人用人工呼吸器 クリーンエアASTRAL

 在宅で使われる人工呼吸器ですのでアラームの警告を受けるのは『介護者』と表現している、主に家族であると考えられます。

 その警告を知った家族が、直ちに換気を復旧させないと死亡に至る恐れがあると記しています。

 さらに、取扱説明書及び/又は注意事項等情報に従って外部電源に接続して使用すれば重篤な健康被害に至るおそれはないと製造販売業者は考えているので、もしも重篤な健康被害に至った場合には、介護者の過失である、と読むこともできてしまいます。

 介護者(ケアラー)である家族にとって、家族が重篤な健康被害を受けた上に、業務上過失傷害などで警察に逮捕される、なんてことも起こり得るということになります。

 話は戻ってバッテリについてですが、公式ウェブサイトの製品ページの特長欄にある『8時間の内蔵バッテリを搭載』の記述が唯一の手掛かりになりそうです。


 ネット上で得られる情報をまとめると、商用電源で使う場合は1.5Aを見込んでおく、本体はDC12V~24Vで90Wの消費電力であること、内蔵バッテリだけで8時間動作できることがわかりました。

  • AC アダプタ:AC 100-240V 50/60Hz 1.0-1.5A
  • AC 110V 400Hz 1.5A
  • 本 体: DC 12-24V 90W
  • 8時間の内蔵バッテリを搭載

 添付文書を調べてみてわかったことが1つあります。

 製造販売業者はフクダ電子やフクダライフテックではなく、レスメドでした。検索上で困ることはありませんでしたが、見間違えないように注意が必要だと思いました。




Vivo 60

 チェストの人工呼吸器『Vivo 60』の消費電力やバッテリについて調べました。

 公式ウェブサイトで製品情報を見てみます。


 こちらの『電源』の所には以下のような記載があります。

AC100~240V(50/60Hz、300VA)
内部バッテリー(2.6Ah、リチウムイオン)
着脱式バッテリー(5.2Ah、リチウムイオン)


 交流電源(AC)の100Vや200Vで使った場合の消費電力は300VAということです。100Vなら300Wと読み替えてもよさそうです。

 バッテリ動作については、電池容量しか書いていないので、どれだけの時間使用できるかわかりません。

 まったく記載がない訳ではなく、特長という項目にはサラっと記載があります。できれば、仕様のところに書いて欲しいですが。

内部バッテリーは約4時間・着脱式バッテリーは約8時間の作動が可能


 詳細は添付文書にあるだろうと考え、公式ウェブサイトの製品ページにある『医療機器添付文書』をクリックしました。


 添付文書が現れる事を期待しましたが、まさかの検索用ページ、しかも検索ワード欄は空欄です。自分で探してくださいというセルフサービスです。


 公式ウェブサイトの製品ページに戻って、製品名を間違わないように『Vivo60』の部分をドラッグしコピー、PMDAの医療機器添付文書検索ページに移動して貼り付けて検索しました。


 その結果です。

条件に該当する添付文書はありませんでした。


 所感として、不親切です。

 試しに、数字の前にスペースを入れ『Vivo 60』として検索してみました。7件ヒットです。今回の目的となる製品の添付文書はリストの最下位でした。

  1. 汎用人工呼吸器
    スマートベンチレータ Vivo 50_60_65_45LSの付属品 マウスピースインターフェース付呼吸管
  2. 汎用人工呼吸器
    スマートベンチレータ Vivo 50_60_65_45_45LSの付属品 CO2センサ用アダプタ
  3. 成人用人工呼吸器
    スマートベンチレータ Vivo 50_60_65 の付属品 リークポート
  4. 成人用人工呼吸器
    スマートベンチレータ Vivo 50_60_65の付属品 呼気弁
  5. 成人用人工呼吸器
    スマートベンチレータ Vivo 50_60の付属品 CO2センサ本体
  6. 成人用人工呼吸器
    スマートベンチレータ Vivo 50_60の付属品 FiO2センサ
  7. 成人用人工呼吸器
    スマートベンチレータ Vivo 60

 電気の仕様が記載されている点については、良い添付文書だと思います。

 『商用電源使用時』の記載については問題ないかと思います。

 『外部電源使用時』については、もう少しわかりやすくしないと添付文書を読むユーザーには理解しづらいかなと思いました。

[電気的定格]

  • 商用電源使用時
    • 定格電源電圧:AC100V (+10/-20%)
    • 定格電源周波数:50/60Hz
    • 電源入力:300VA
  • 外部電源使用時
    • 定格電源電圧:DC24V
    • 電源入力:140W
    • Xpac:DC24V
      • 99.4Wh(Xpac シングル)
      • 198.8Wh(Xpac デュアル)

 添付文書内で『外部電源』の初出は1ページ目の上述の部分です。『外部電源』の言葉の定義は行われていません。

 のちに『使用上の注意』の中で『外部電源』が出てくるのが2回目、これは最終ページの下方です。

外部電源

  • Xpac は無停電電源装置としての使用は意図されていない。
  • Xpac の電源コネクタと患者を同時に触れないこと。

 外部電源についての注意書きはありますが、そこに出てくる『Xpac』がわからないと思います。

 添付文書内で『Xpac』の初出は1ページ目の構成品という項です。2回目に出てくるのが先述の外部電源使用時というところです。『Xpac』の言葉の定義は行われていません。

 その後、使用方法のところでも『Xpac』が出てきます。その記述は下記の通りです。

Xpac の使用

  • Xpac のバッテリーの残量を確認する。必要に応じてXpacにXpac電源アダプタを接続し充電する。Xpac の充電は患者環境では行わないこと。
  • 本体と Xpac を Xpac Vivo 50/55/60/65 用ケーブルを使用し接続する。

 ここでようやく、『Xpac』にはバッテリが搭載されていることがわかります。充電できるバッテリのようです。

 上記の次に出てくるのは、先述の外部電源のところです。これでは意味不明です。

外部電源

  • Xpac は無停電電源装置としての使用は意図されていない。
  • Xpac の電源コネクタと患者を同時に触れないこと。

 『Xpac』は定義されていませんが、仕様は以下の通りです。

 シングル型が99.4Wh、デュアル型が198.8Whだそうです。24Vで140Wということがわかるので、何らかの計算ができそうです。

  • 外部電源使用時
    • 定格電源電圧:DC24V
    • 電源入力:140W
    • Xpac:DC24V
      • 99.4Wh(Xpac シングル)
      • 198.8Wh(Xpac デュアル)

 割り算をしてみましたが、以下の所で停まってしまいます。もし、このバッテリから人工呼吸器への電流値が1Aならばシングル型4時間、デュアル型8時間ということでしょうが、電流値が不明なのでこれ以上の計算ができません。

99.4Wh÷24V=4.14Ah

198.8Wh÷24V=8.28Ah


 ちなみに、公式ウェブサイトの製品ページでは、以下の記載がありました。シングル型のバッテリは4.14Ahではなく、2.6Ahです。

内部バッテリー(2.6Ah、リチウムイオン)

着脱式バッテリー(5.2Ah、リチウムイオン)


 ということは、以下の計算が成り立ちます。リチウムイオンバッテリの定格電圧を3.8V前後と考えれば、10セル直列接続なのかもしれません。

99.4Wh÷2.6Ah=38.23V


 公式な仕様としてのバッテリ駆動時間は不明なままですが、シングルで4時間、デュアルで8時間と見ておけば良いのだろうと思います。




トリロジー EVO

 フィリップスジャパンの人工呼吸器『トリロジー Evo』の消費電力やバッテリについて調べました。

 ウェブサイトで製品情報を見てみます。


 仕様という項目がありますが、電源についての記述がありません。


 しかしながら、よく見ると『Show all specifications』というボタンがあるので押下すると、電源仕様が現れました。


 電源仕様について詳細に見ると、以下の通り記述されていました。

 少しわかりづらいですが、商用電源の場合、100Vなら1.7A、240Vなら0.6Aということだと思います。

 DCの場合、12Vでも24Vでも6.5Aということはないと思いますので、おそらく12Vなら6.5Aで、24Vはもっと少ないと思います。

 バッテリは、1個なら7.5時間、2個あれば倍に延長するということで15時間と表記されているようです。

電源仕様

  • AC電源
    • 100V~240V、50/60 Hz、1.7~0.6A
  • DC電源
    • 12/24V 6.5A
  • 着脱式バッテリ
    • 15時間
      • IEC 80601-2-72における公称合計駆動時間、7.5時間駆動のバッテリ×2個
  • 充電時間(内部+着脱)
    • 0%~80%:2.5時間、0%~100%:3.5時間


 これで十分に理解できたのですが、念のため添付文書を調べてみます。

 添付文書内の記載は以下の通りでした。バッテリについては記述がありますが、AC電源、DC電源については不記載でした。

  • 作動原理
    • 本品はAC電源、外部DC電源、着脱式バッテリ及び内部電源を使用して動作する。
  • バッテリ仕様
    • リチウムイオンバッテリ駆動時間
      • 内部バッテリ:公称7.5時間
      • 着脱式バッテリ:公称7.5時間
    • リチウムイオンバッテリ充電時間
      • 0%から80%まで:2.5時間
      • 0%から100%まで:3.5時間




トリロジー 200 plus

 フィリップスジャパンの人工呼吸器『トリロジー 200 plus』の消費電力やバッテリについて調べました。

 フィリップスジャパンの公式サイト上では、製品ページを見つけることができませんでした。

 海外サイトでも、同様です。


 仮に、生産終了や販売終了となった製品であっても、現場ではそこから10年や15年は使われ続けるので、掲載は続けてもらえるとありがたいです。

 英語のサイトでは『Trilogy 200』が『This product is no longer available.』というラベル付きで掲載されていました。本当は『200 plus』の情報が欲しいのですが、ここは『200』でよしとしました。


 各種ドキュメントはいまだに配信されているようです。

  1. Philips Trilogy200 Ventilator: Checkout procedure
  2. Philips Trilogy200 Ventilator: Ventilator perfomance record
  3. Philips Trilogy200 Ventilator: RTCA/DO-160F TEST REPORT
  4. Philips Trilogy200 Ventilator: Caregiver competency checklist


 『Specifications』(仕様)を見ると、『Show more』ボタンがあるので押下すると、さらに多くの項目が現れました。


 電源に関する項目が見当たらないので、公式ウェブサイトの製品ページには、情報がないということかもしれません。


 海外サイトで調べていると、下記URLに一覧表が載っていました。

https://www.philips.com/c-dam/b2bhc/master/Products/Category/ventilation/group/philips-ventilation-specifications-comparison-chart.pdf


 これによると、『Battery Time』は『6 hours』となっていたので、6時間は動作するようです。


 添付文書内の記載は以下の通りでした。バッテリについては記述がありますが、AC電源、DC電源については不記載でした。

  • 作動原理
    • 本品は、マイクロプロセッサ制御のポータブルタイプ陽圧人工呼吸器であり、鼻マスクや鼻口マスクなどの非侵襲的ルート或いは気管切開などの侵襲的ルートの患者インターフェイスに接続して使用する。本品はAC電源、外部バッテリ、着脱式バッテリ又は内部バッテリを使用して動作する。
  • バッテリ仕様
    • リチウムイオンバッテリ駆動時間
      • >8時間
        • トリロジー駆動時間テスト条件:S/T モード、IPAP圧15cm H2O、EPAP 圧5cm H2O、呼吸回数12回、吸気時間0.8秒、パッシブ回路、コンプライアンス20、抵抗20
    • リチウムイオンバッテリ充電時間
      • 3~4時間




ミニックⅢ-SB

 新鋭工業の喀痰吸引器『ミニックⅢ-SB』の消費電力やバッテリについて調べました。

 ウェブサイトで製品情報を見てみます。


 製品ページでは、バッテリに関する記述がありましたが、電源に関する記述はありませんでした。

  • バッテリ作動時間
    • ノーマルモード 約60分
    • サイレントモード 約120分

 カタログを見てみると、こちらには電源の記載もありました。

  • 電源
    • 100V~
  • 消費電力
    • 100VA
  • バッテリ作動時間
    • ノーマルモード 約60分
    • サイレントモード 約120分


 次に、添付文書も調べてみました。既に情報は集まっていますが、法の規制を受ける添付文書がどうなっているかの確認です。


 販売名『ミニック』は12件のヒットがありました。このうち、永島医科器械の『ミニックス』は偶然の一致のようなものなので、実質的には11件です。

 リストの通り、製造販売業者は新鋭工業ではなく、三幸製作所です。

  1. 電動式可搬型吸引器
    パワーミニックII
    株式会社 三幸製作所
  2. 電動式可搬型吸引器
    パワーミニック VL-60
    株式会社 三幸製作所
  3. 電動式可搬型吸引器
    ミニックDC-II
    株式会社 三幸製作所
  4. 電動式可搬型吸引器
    ミニックDC-II
    株式会社 三幸製作所
  5. 電動式可搬型吸引器
    ミニックDC-II
    株式会社 三幸製作所
  6. 電動式可搬型吸引器
    ミニックIII-S
    株式会社 三幸製作所
  7. 電動式可搬型吸引器
    ミニックIII-S
    株式会社 三幸製作所
  8. 電動式可搬型吸引器
    ミニックIII-W
    株式会社 三幸製作所
  9. 電動式可搬型吸引器
    ミニックIII-W
    株式会社 三幸製作所
  10. 電動式可搬型吸引器
    ミニックS-II
    株式会社 三幸製作所
  11. 電動式可搬型吸引器
    ミニックW-II
    株式会社 三幸製作所


 リスト上では『ミニックⅢ-S』が2つありますが、その片方が今回の対象の『SB』でした。

電動式可搬型吸引器 ミニックIII-S 株式会社 三幸製作所

電動式可搬型吸引器 ミニックIII-S 株式会社 三幸製作所


 試しに開いてみると、こちらは『ミニックⅢ-S』でした。


 電源についてはAC100V、100VAということで、約100W、1Aということになります。重量は3.4kgです。


 他方が『ミニックⅢ-SB』でした。


 電源についてはAC100V、110VAということで、約110W、1.1Aということになります。

 こちらの機種は電源方式が3つあり、『自動車用電源使用時』と『バッテリ使用時』の記載が加わっています。

 重量は3.5kgです。


 2つの機種の電撃保護について、AC100Vに対しての『クラスⅡ』は共通しますが、SBの型番の方は『内部電源機器』も加わります。ここが大きな違いです。

 添付文書の本文中に『バッテリ』という言葉がゼロ回の方と、20回くらい出てくる方で、明らかな記載内容の違いがあります。

ミニックⅢ-S

  • AC100V 100VA
  • 電撃保護形式
    • クラスⅡ
  • 電撃保護装着部分類
    • B形装着部

ミニックⅢ-SB

  • AC100V 110VA
  • 自動車用電源 DC12V 4.1A
  • バッテリ DC12V 1,900mA
  • 電撃保護形式
    • クラスⅡ
    • 内部電源機器
  • 電撃保護装着部分類
    • B形装着部




Dr.酸素7L-Ⅱ

 山陽電子工業の酸素濃縮器『Dr.酸素7L-Ⅱ』の消費電力やバッテリについて調べました。

 ウェブサイトで製品情報を見てみます。


 これまでフクダ電子かと思えばレスメド、新鋭工業かと思えば三幸製作所といった発売元と製造販売業者が異なる事例は見てきましたが、この酸素濃縮器は異色でした。


 人工呼吸器のところでも出てきた、フィリップスが『Dr.酸素』を取り扱っています。


 人工呼吸器のところでも出てきた、チェストも『Dr.酸素』を取り扱っています。


 ボンベに充填した酸素の供給を行っている大陽日酸も『Dr.酸素』を取り扱っています。太陽日酸は傘下にIMIという人工呼吸器で知られる企業があります。


 ボンベに充填した酸素の供給を行っているエア・ウォーターグループであり、酸素濃縮器メーカーであるエア・ウォーター・メディカルも『Dr.酸素』を取り扱っています。


 ネット上にはカタログが掲載されており、そこには電源に関する記載もありました。

  • 電源
    • 交流100V
  • 電源入力
    • 600VA以下
  • 消費電力
    • 2.0L/分以下 平均115Wh
    • 3.0L/分時  平均120Wh
    • 4.0L/分時  平均170Wh
    • 5.0L/分時  平均2200Wh
    • 6.0L/分時  平均280Wh
    • 7.0L/分時  平均315Wh
  • 電撃保護
    • クラスⅡ機器
  • 電撃保護装着部分類
    • BF形装着部


 添付文書の記載は似たような感じでした。

  • 電源 100V 600VA
  • 電撃に対する保護分類 クラスⅡ 移動形機器
  • 電撃に対する保護程度 BF形装着部


 酸素濃縮器については、PMDAのページでリスト化されているので、ここを見ればだいたいの機種は網羅できると思います。




電撃保護

 医療機器の電源を調べていて出てくる電撃保護に関する記述ですが、これは医療機器が人体に悪影響を及ぼさないようにするための策をどのように講じているかで決まります。

 医療機器の安全性・危険性に応じた薬機法上の分類にあるクラスⅠ~Ⅳとは無関係です。


クラスⅠ

 クラスⅠの電撃保護は、基礎絶縁と保護接地です。

 基礎絶縁だけに依存した場合、その絶縁が破壊されれば感電する恐れがあります。例えば、絶縁破壊により筐体に電気が流れてしまった場合、その筐体に保護接地が施されていれば接地側に電気は流れていきます。

 電気工事の基本的な接地工事であるD種接地は、接地抵抗は100オーム以下です。人体の表面の抵抗は500オーム程度なので、接地側の方が5倍以上流れやすいことになります。


クラスⅡ

 クラスⅡの電撃保護は、二重絶縁または強化絶縁です。

 特筆すべき点は、接地に依存していない点です。

 すなわち、アースピンの付いていないプラグ(コンセント)を使うことができるのです。

 これは、在宅医療においては非常に重要で、アースが無い部屋でも、当該医療機器を使用できる利点があります。

 一軒家であれば、壁をぶち抜けばアースは取れるかもしれませんが、マンションなど集合住宅では容易な話ではありません。

 在宅医療では、クラスⅡの電撃保護が施された医療機器を選択する、ということも重要かもしれません。


内部電源機器

 内部電源機器とは、外部の電源を用いずに動作させる機器を対象としています。外部電源は使いませんが、内部に電気エネルギーがありますので、保護は必要になります。


総括表

クラス分類クラスⅠクラスⅡ内部電源機器
保護手段基礎絶縁基礎絶縁基礎絶縁
追加保護手段保護接地二重絶縁
強化絶縁
内部電源
摘要いわゆる3Pプラグを使う。絶縁が二重になっている。
アースの無い2Pプラグが使える。
機器内部に電源がある。
外部電源使用(併用)中は、クラスⅠやクラスⅡに分類。




電撃に対する保護の程度による装着部の分類

 電撃に対する保護の程度による装着部の分類は、以下の3つに分類されています。

 この規格の基本的なこととして、医療機器は接続部が過大な電圧または電流にならないように、2つの保護手段(MOP: means of protection)を備えていなければなりません。
 MOPとはすなわち、機器に接触する可能性のある回路と機器間の絶縁保護です。保護接地(protective earth connections)、電気絶縁(electrical insulation)、沿面距離(creepage distances)などがあります。

 MOPはさらに患者保護手段(MOPP: means of patient protection)と術者保護手段(MOOP: means of operator protection)の2つのカテゴリーに分けられます。

 漏れ電流の許容値は、体表面と体内で大きく異なります。桁で言うと1桁ですが、10マイクロアンペアはかなりシビアです。
 片線が断線するような単一故障状態では許容値が5倍まで広がります。


B形(Body)

 体表にのみ装着する機器です。

 患者がすぐに手を離すことができる装置など、感電が重篤な健康被害に至らない可能性のある機器などがB形に該当します。

 B形の装置は接地(アース)させることができます。

 許容される漏れ電流は0.1mA(100μA)、単一故障状態では0.5mA(500μA)です。


BF形(Body Floating)

 患者との導電性接触が中~長期に及ぶ機器に適用される分類です。

 例えば、超音波診断装置(エコー)や血圧計などがあります。

 BF形の装置は接地(アース)させず、電気的にフローティングの状態になります。

 B形に比べて、より多くの患者保護手段(MOPP)が求められます。

 許容される漏れ電流は0.1mA(100μA)、単一故障状態では0.5mA(500μA)です。


CF形(Cardiac Floating)

 心臓に直接的に導電性接触が起こり得る機器に適用される分類です。

 例えば、人工透析装置や電気メスなどの外科用手術機器があります。

 CF形の装置は接地(アース)させず、電気的にフローティングの状態になります。

 最大級の患者保護手段(MOPP)が求められます。

 許容される漏れ電流は0.01mA(10μA)です。単一故障状態では0.05mA(50μA)です。


総括表

分類B形装着部BF形装着部CF形装着部
患者漏れ電流
(正常状態)
0.1mA0.1mA0.01mA
適用部位体表のみ体表のみ心臓直接適用
外部からの電流流入保護保護なしフローティングフローティング
摘要単独使用複数同時使用心臓直接適用

参考資料

Methods of Achieving CF Patient Leakage Isolation in a Medical Device




消費電力に対応したバックアップ電源

 弊社のデータベースでは、発電機や蓄電池の最大出力(電力)から機種選定することができます。


 例えば、1,500W以上の出力が欲しいと思えば、1.5kVAで絞込をすれば対象リストが表示されます。

数値絞込の項目選択:
最大出力




おわりに

 今回は、在宅医療の周辺機器の消費電力等が調べやすいかどうかを、調べてみました。

 医療機器と電気設備を生業としてきた筆者には、ある程度の知識はあるつもりですが、そのレベルにおいて『調べづらい』と感じるものでした。

 医療機器は専門家向けに提供されるものですが、在宅医療ではそれまでお父さんやお母さんであった人が、家の中でケアラーとして働くことになり、免許はないもののプロ並みの仕事を求められるシーンがあります。

 その、免許のない人、ある特定の機器しか触らない人に、幅広い知識を求めるのは非合理ですので、メーカー等からの情報提供には、もう少しルールを設けた方が良いのではないかと思いました。

 そのような政治力はないので、これから医療機器のデータベースも構築していきたいと思います。

 今回、良い気づきになりました。