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病床停電対策 ~スモールユニットという考え方~ | NES株式会社

 医療機関の災害対応というと、大型の発電機、大容量の貯水槽など数千万円から数億円という設備投資が必要になることがあります。


 自家発電設備については建築基準法や消防法の定めにより、建築設備に合わせた容量が求められて大型化することもあります。

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 迅速に起動することを重要視しているかもしれませんが、生命維持管理装置などの重要機器は電池を内蔵しているため、起動までの時間よりも、起動後の稼働時間が長いことが求められます。

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小型化

 発電設備は10kW以上の出力の製品を備える場合、主任技術者を配置する必要があります。

 大きな病院であれば職員の中に有資格者が居る、あるいは設備管理を外部委託しているので包括的に発電機の管理も委託しているため、さほど問題にはならないと思います。


 小規模な医療機関であれば、わざわざ主任技術者を配置してまで発電機を置きたくないというケースもあると思います。

 10kW未満の発電機、すなわち小型の発電機を備えることで管理費も抑えることができ、手軽さや簡便さが増すと思います。

【参考】経済産業省:電力の安全

【参考】経済産業省:非常用発電設備等の購入者に対する電気事業法に基づく規制の周知について(2022年5月17日)




バイク1台のスペース

 10kW未満の発電機は下図のように駐輪場に設置できます。外寸は400ccのバイク1台分くらいです。

 エンジンが動いて排気ガスが出るので置場に配慮は必要ですが、バイク置場であれば換気もある程度はできているだろうと思いますので、設置工事もさほど難しくないと思います。




ICUベッド×4床

 8kWの発電機を据えた場合、100Vで80Aまで使えます。

 ICUのベッド回りでは人工呼吸器、喀痰吸引器、ベッドサイドモニター、電動ベッド、深部静脈血栓予防システムなどが使われています。1台あたり100W~300W程度、無駄遣いしなければ1床あたり1500W~2000Wの範囲に収まります。

 すなわち、1ベッドあたり15~20A程度です。

 80A供給できればICUベッドが4床までまかなえることになります。

 例えばICUが6床という病院があれば、8kWの発電機を2台設置し、専らICUにのみ供給するように施工すれば、ICUの裁量下に16kW分の電力があり、臨時でベッド数を増やしたり、血液浄化装置やPCPSなど熱を使う装置を利用することも可能になります。

 特にICUでは超音波診断装置のように大きな電力を使う機器を頻繁に利用したいというニーズがあり、一時的であっても電力をセーブしなければならない状況において、ICU内で完結できる意義はあります。




救急外来8kW + 緊急外来8kW

 救急外来には平時から重症患者が搬送されてきますが、災害時はさらに多くなります。

 患者殺到が想定される場合は『緊急外来』や『臨時外来』など呼び名は色々ですが、仮設の救外が設けられる場合があります。それは、エントランスホールやテントなど様々な場所です。

 機能的な救急外来はそのままに、野戦病院のような仮設外来にも電源が必要です。

 それを実現するためには、2つの外来に別々の小型電源があると良いです。




分娩(産婦人科)

 急性外傷など災害時特有の診療とは別に、平時からの診療で止められないものの1つに分娩があります。

 弊社でコンサルティングした母子医療センターの周辺では、1日に55人の赤ちゃんが生まれています。それを一手に引き受けるとなると分娩55回分の電力や水が必要になります。

 55回の分娩は55人のお母さんと、55人の赤ちゃんが存在することになります。
 翌日も55回の分娩があれば、110人増えることになります。母子ともに院内に留めたいところですが、そのためには相応の電力も必要になります。

 1~2人の医師で運営している産婦人科医院でも分娩は行われます。妊婦さんが行き場を失わないようにするためには、電力と水が必要になります。

 母体への産後ケア、新生児への一定のケアが必要になるため、瞬時的な分娩のための電力以外にも需要があるため、8kW程度の小型発電機があると利便性は高いです。




発電機を軸にした分け方

 一般的にはエリア毎の停電対策、発電機からの電力供給を検討すると思いますが、非常時(停電時)のマネジメントを考えると発電機を軸に考えた方が円滑です。

 発電機の容量でまかなえる病床数や機器数があるていど推定できますので『4階は発電機Aで対応』と明示することで、そのエリアには裁量が与えられ、自律的なマネジメントが実践されると考えます。




保安用の小型発電機

 発電機を分類すると、下図のようになります。

 平時に使うか非常時に使うか、その両方を兼ねるのかで大きく分かれます。可搬型か据置型かという外観的なことでも分けられます。

 非常用として考えた時、自動的に動き出すのかどうかや、その使用目的が消防法などの法令に基づくのか、自衛としての非常用電源なのかでも機種選定や配線工事が変わってきます。




リスク分散

 2021年の学会では小型発電機によるリスク分散の発表がありました。これは弊社からの研究発表です。


 発電機のエンジンがかからない可能性が1%であったとします。それは、セルが回らずまったく発電できない状況に陥ることとします。

 出力40kVAの発電機が1台あったとします。エンジンさえかかれば、院内の主要な電力はまかなえるとします。
 同様に、8kVAの発電機が5台あったとします。5系統に対して5台の配備です。

 40kVAの発電機が故障したとき、5系統の回路は全滅です。供給率0%です。
 8kVAの発電機が1台故障したとき、1系統だけ停電なので供給率80%です。


 供給率80%(8kVA×4=32kVA)の中から、延長コードを使うなどして院内での融通が実現すれば、発電機1台の故障でも診療は継続できる可能性があります。

 実際、一括供給される非常用電源をマネジメントすることは容易ではありません。
 100V・400A(40kVA)の供給先には20~30床、50台以上の機器が接続される可能性があります。もし、供給不足になりそうなとき、どの機器を休止すべきか検討するだけでも大変ですが、それを実行することも簡単ではありません。

 小型発電機による分散管理は、非常時のマネジメントも分散できるため、非常時対応としては良い点が多くあります。




メンテナンス付リース

 小型発電機を複数台保有して分散型管理を実施する場合、課題となるのが平時の維持管理です。

 そこで役立つのがメンテナンス付リースです。発電機自体の資産は外部、定期的な試運転や保守点検は業者任せにすることで『ある瞬間に発電機を利用できること』というコト消費、状態を買う事で煩わしさから解放されます。




発電機カタログ

 国内では非常に少ない10kW未満の発電機を製造・販売している昭栄さんから、カタログをいただきました。


ガス電くん(SGS-4000BT)

 単相3線式100/200V、5kVA(5kW)の出力があります。
 外寸は幅693×奥行1,390×高1,160mm、重さ330kgです。ホンダのバイクCBR400Rが幅760×奥行2,080×高1,145mmなので単車1台分のスペースに収まります。

【参考】HONDA CBR400R


ガス電くん(SGS-8100BT)

 連続72時間稼働、単相3線式、50Hzなら8kVA(8kW)、60Hzなら9kVA(9kW)のガス発電機です。
 架台を含む外寸は幅810×奥行1,750×高1,243mm、重さ450kgです。

 8kW型なので、主任技術者の配置は不要です。


ガス電くん(SGS-8000BGS)

 連続72時間稼働、三相4線式、8kVA(8kW)の発電機です。。
 架台を含む外寸は幅730×奥行1,670×高1,170mm、重さ390kgです。

 8kW型なので、主任技術者の配置は不要です。


ガス電くん(SGS-40S)

 単相3線式100/200V、40kVA(40kW)の出力があります。
 外寸は幅1,140×奥行3,424×高1,480mm、重さ1,470kgです。おおよそ軽トラくらいの大きさです。
 エンジンはV型6気筒の4,294ccです。

【参考】DAIHATSU HIJET


ガス電くん(SGS-50S)

 単相3線式100/200V、46kVA(46kW)、230Aの出力があるV型8気筒、5,736ccのエンジンを積んだガス発電機です。
 外寸は幅1,140×奥行2,960×高1,970mm、重さ1,600kgです。


ガス電くん(SGS-60K)

 三相4線式200V、50Hzなら48kVA(38kW)、60Hzなら60kVA(48kW)のガス発電機です。
 電流値で60Hzなら173Aまで出せるので、かなりのエネルギーをえることができます。
 エンジンは4,294cc、本体重量は1,470kgあります。

【参考】SUZUKI CARRY


ガス電くん(SGS-75K)

 三相4線式200V、50Hzなら60kVA(48kW)、60Hzなら75kVA(60kW)のガス発電機です。
 エンジンは5,736cc、本体重量は1,550kgあります。
 外寸は幅1,140×奥行3,424×高1,480mmです。軽トラが幅1,500×全長3,400×高1,800mmほどなので、軽トラ1台分のスペースに収まります。

【参考】SUBARU SAMBER


ガス電くん(SGS-125K)

 三相4線式200V、50Hzでは130kVA(104kW)・375A、60Hzでは156kVA(125kW)・450Aの出力があるガス発電機です。
 V型8気筒8,800ccのエンジン、外寸は幅1,321×奥行3,429×高2,184mm、重さ2,100kgあります。
 ダイハツのハイゼットが全幅1,475mm、全長3,395mmなのでほぼ同じサイズです。排気量658cc、重量は800kgほどなので重量感は歴然とした差があります。

【参考】DAIHATSU HIJET




おわりに

 弊社は電気工事業者としての登録を受けており、電気工事の施工や管理を実施する能力はあります。


 医療福祉施設の電気設備に明るいことから、コンサルティングやマネジメントのお仕事をいただく機会が多くあります。


 電気工事や物品販売などの業務については他社との連携や提携も多く、自社で行うことはほとんどありません。

 したがって、業者さんからのお問い合わせも増えております。

 弊社には医療機器について理解する能力、負荷としての医療機器や診療業務を見据えた停電対策を提案するノウハウがあります。
 停電対策でお困りの医療機関様、高齢者施設様、患者様、施工業者様、販売業者様などお気軽にご相談ください。