カテゴリー
BCP 医療機器・設備・環境 療養住環境

総合病院 | 医療機関減災 | NES株式会社

 医療機関や福祉施設の『減災』についてご紹介するシリーズです。今回は『総合病院』にフォーカスします。




  1. 特徴
  2. 脅威
  3. 減災の焦点
  4. 減災実務(想定)
  5. 研修・訓練
  6. 実務経験とコンサルティング




総合病院の特徴

 以前は医療法第4条に総合病院の規定がありました。

  • 患者100人以上の収容施設を有する
  • 診療科名に内科、外科、産婦人科、眼科及び耳鼻いんこう科を含む
  • 設備の諸規定を満たす
  • 都道府県知事の承認を得ている
  • 病院

 1996年の医療法改正で総合病院の規定は廃止されたので、総合病院を名乗るのは病院の自由となりました。
 産婦人科を標榜していなくても病院名に『総合病院』を使っているケースもあるので、旧規定を踏襲する必要はありません。

 ここでは、専門(単科)病院ではなく、複数の診療科を標榜する、100床以上の病院をイメージしています。

 地域によっては『そんなことまでするの?』と驚くような200~300床規模の総合病院があります。20km先まで見渡しても、同等以上の病院が無い場合、中核となる総合病院では外科手術も化学療法も分娩も、何もかもを引き受けざるを得ない状況にあります。

 総合病院は多能であると見ることができます。

 緑内障手術は眼科クリニックでも行っていますが、透析患者となると総合病院を紹介する、といったケースも見られます。総合病院は単科ではないことが特徴です。

^ Page Top ^




脅威

 総合病院を脅かすものは、病院の機能を維持できなくなることです。

 受付や精算ができないだけでも混乱します。電子カルテが開けなくなると新たな診療を中止せざるを得ない場合があります。

 電力が足りないだけでも診療機能を著しく損なう可能性があります。CTやMRIが使えなければ検査ができない、それによって手術や退院が遅れることもあります。
 停電すれば生命維持管理装置などに影響するだけでなく、通信やエレベーターも停止する恐れがあり、診療に多大なる影響を及ぼします。

 スタッフが出勤できない、人手が足りないといったことも業務継続を脅かします。地下鉄サリン事件の日は、地下鉄だけでなく道路も閉鎖される場所が多く、移動に支障がありました。
 大量に離職してしまうということも脅威になります。

 評判を落とすような事件が起こり、患者が来ないと、診療する相手が居ないので業務継続は難しくなります。事件や事故の対処を誤ることも、のちに危機的状況を招く恐れがあります。

 総合病院は仕事が多様であるがゆえに、脅威も多様です。

^ Page Top ^




減災の焦点

 総合病院の減災は、浅くても良いので広く、満遍なく備えることが第一歩、次いで地域のニーズに応える備えを強化していくことで減災が進むと考えます。

 Specialist と Generalist が居るとすれば、総合病院は Generalist 的な存在でると思います。オールラウンドプレイヤーでも多能工でも言い換えは自由ですが、色々なことに対応することが期待される存在です。

 例えば診療科が10以上あるとして、それぞれに専門の医師が居て、配属されている看護師らが居るとします。診療科を問わず支援する技術系医療従事者も居るとします。
 それぞれの業務に重要性があると思いますが、その優先順位を総合病院全体として、地域全体を鑑みて決めなければならないとすれば、非常に難しい判断を迫られることになります。

 ゆえに、細々であったとしても全体が業務継続できるように広く浅い対策を講じると、ある程度の備えができた感が生まれます。

 『ウチが診なければ、患者はどこへ行けば良いのか』という診療科や病態があれば、それを平時並みに業務継続できるように強化していきます。

 まずはベースをつくる、次にメリハリをつける、これが総合病院のBCP/BCMの基本的な進め方の1つです。

^ Page Top ^




減災実務(想定)

 リソースやインフラについて、重要度を評価していきます。その際、量や質の評価も加えます。

 『水は重要だ』という発想は容易に出てくると思いますが、何のための水が、どれほど重要であるのかを評価しなければ精緻な計画は立てられません。
 手術をするためには手洗いが必要ですが、非常事態において実施すべき手術とは何かを定義しなければ、水の消費量は推定できません。
 水洗トイレに水は欠かせませんが、ドライトイレなら水は要りません。また、トイレを流すだけなら排水を再使用しても問題ないかもしれません。量と質、両方の検討が必要です。

 水、電気、通信、設備、材料、人員、資金など、平時業務を最小化した際に求められる量や質を想像していきます。

 地域の医療提供体制を調査します。

 下表は岡山県津山・英田医療圏の病床数です。療養病床を併せ持つケアミックス病院が多く、精神科専門も2軒あります。津山中央病院は結核病床を10床持っていますが、ほぼ一般病床です。津山第一病院、田尻病院は一般病床のみの病院です。
 この3病院で非常時の患者を案分できるのか、津山中央病院の立場でシミュレーションしてみます。
 医師数を見ると津山中央病院は常勤126人・非常勤127人、津山第一病院は常勤10人・非常勤64人、田尻病院は常勤4人・非常勤76人です。
 病院ホームページで外来診療表などを確認しながら、受入可能な患者数や病態を想像し、自院が担うべき役割を深掘りしていきます。例えば脳神経外科を見ると津山第一病院は『鳥大医師』と個人名ではない1人の医師が担当、田尻病院は週1回の外来のみですので、津山中央病院が担う役割は垣間見えます。

病院名総病床数一般病床療養病床精神病床
津山中央病院50749700
一般財団法人江原積善会積善病院29500295
希望ヶ丘ホスピタル24000240
総合病院津山第一病院19919900
さとう記念病院17991880
中島病院11055550
芳野病院11052580
鏡野町国民健康保険病院8848400
津山中央記念病院8141400
美作中央病院800800
美作市立大原病院8040400
医療法人東浩会石川病院6828400
日本原病院600600
医療法人晴顕会大谷病院480480
医療法人三憲会柵原病院480480
医療法人三水会田尻病院434300

 診療科別、機能別に詳細を追うことで、自院が優先すべき業務が顕在化します。反対に、自院が提供を中止しても良い業務も顕在化します。

^ Page Top ^




研修・訓練

 医療機関やエッセンシャルビジネスに共通して行うべき教育研修メニューを用意しております。

 例えば、地域の災害拠点病院が浸水により孤立し救急搬送先として使えなくなったとします。その状況が起こりそうな兆候を示し、どう対処するかというシーン設定から始める図上演習があります。

 総合病院に特化した図上演習のシナリオなど、専門的な研修や訓練にも対応します。土砂災害が起きるとどうなるのか、そのとき職員は何をすべきなのか、その行動に必要なツールやスキルは在るのか、座学だけでなく図上演習や実地訓練を通じて院内実装しています。

^ Page Top ^




実務経験とコンサルティング

 弊社代表(西謙一)は、病院での勤務経験があります。臨床系も管理系も経験しました。総合病院での技士長経験もあります。

 災害拠点病院、国公立病院、民間病院、ケアミックス病院、介護医療院など様々な医療機関での減災・災害コンサルティングの受注実績があり、現在も継続的に研修や訓練のために訪院しています。

 総合病院のBCP・BCMのコンサルティングは、弊社が得意とする分野の1つです。

^ Page Top ^




ご用命ください

 弊社では医療機関や福祉施設などのエッセンシャルビジネス向けの減災コンサルティングサービスを提供しています。

 補償金などカネで解決することが難しい、生命や健康、倫理など特殊事情に関わる現場に特化した、専門的なコンサルティングを展開しています。

 コンサルタントには臨床経験があります。ある程度は医療用語が理解でき、実務が想像できます。実際、共感を得るような刺さる提案にご好評いただいております。

 これまでに国公立病院、民間病院、災害拠点病院、ケアミックス病院、介護医療院など様々なタイプの医療機関で減災のお手伝いをして参りました。社会福祉協議会や訪問看護ステーション、医療的ケア児・者の患家などにも対応しております。

 減災について、弊社には独自のノウハウがあります。

^ Page Top ^