医療機関や福祉施設の『減災』についてご紹介するシリーズです。今回は『ケアミックス病院』にフォーカスします。

ケアミックス病院の特徴
ケアミックス病院とは、療養病床と一般病床が混合するような病院です。例えば、下記のような組み合わせです。
- 一般+療養
- 一般+回復期リハビリテーション
- 一般+療養+回復期リハビリテーション
- 一般+地域包括ケア+療養
- 一般+緩和ケア+精神科
- 療養+回復期リハビリテーション
最初からケアミックス病院で開院したというよりも、一般病床の一部を療養に転換した、療養病院が一般病床も持つようになったというケースが散見されます。診療報酬の改定も影響しています。
減災という視点で言うと、急性期も慢性期も診ている、入院期間が短い人と長い人が居る、といった混在や混合という診療環境の特殊性があります。
看護師をはじめとするスタッフの配置も、一般病床のみの病院に比べて少ない、あるいは日勤帯に限ればリハビリスタッフが非常に多いのでマンパワーが充足している、といった特徴があります。
ケアミックス病院の分布は地域差があります。兵庫県但馬医療圏は下表のとおり公立朝来が典型的なケアミックス病院と言えますが、多くは一般や精神などに偏った病院です。
名称 | 病床数 | 一般 | 療養 | 精神 | 結核 感染 |
---|---|---|---|---|---|
公立豊岡病院組合立豊岡病院 | 528 | 473 | 0 | 51 | 4 |
公立八鹿病院 | 380 | 338 | 35 | 0 | 7 |
但馬病院 | 255 | 0 | 0 | 255 | 0 |
大植病院 | 250 | 0 | 0 | 250 | 0 |
公立豊岡病院組合立朝来医療センター | 149 | 104 | 45 | 0 | 0 |
医療法人杏風会浜坂七釜温泉病院 | 80 | 0 | 80 | 0 | 0 |
公立豊岡病院組合立豊岡病院出石医療センター | 55 | 55 | 0 | 0 | 0 |
公立香住病院 | 50 | 50 | 0 | 0 | 0 |
公立浜坂病院 | 49 | 49 | 0 | 0 | 0 |
公立村岡病院 | 42 | 42 | 0 | 0 | 0 |
さくらクリニック | 19 | 0 | 19 | 0 | 0 |
宮崎県延岡西臼杵医療圏を見ると延岡共立病院をはじめケアミックス病院が多く在ることがわかります。
名称 | 病床数 | 一般 | 療養 | 精神 |
---|---|---|---|---|
県立延岡病院 | 406 | 406 | 0 | 0 |
医療法人隆誠会延岡保養園 | 381 | 0 | 0 | 381 |
吉田病院 | 307 | 0 | 0 | 307 |
医療法人和敬会国見ケ丘病院 | 256 | 0 | 0 | 256 |
医療法人伸和会延岡共立病院 | 195 | 145 | 50 | 0 |
医療法人久康会平田東九州病院 | 125 | 65 | 60 | 0 |
高千穂町国民健康保険病院 | 120 | 120 | 0 | 0 |
延岡市医師会病院 | 108 | 108 | 0 | 0 |
延岡リハビリテーション病院 | 80 | 0 | 80 | 0 |
黒木病院 | 76 | 76 | 0 | 0 |
医療法人中心会野村病院 | 65 | 0 | 65 | 0 |
岡村病院 | 57 | 57 | 0 | 0 |
医療法人康仁会谷村病院 | 54 | 54 | 0 | 0 |
医療法人早田病院 | 51 | 34 | 17 | 0 |
日之影町国民健康保険病院 | 50 | 0 | 50 | 0 |
医療法人昭和会黒瀬病院 | 42 | 0 | 42 | 0 |
田原病院 | 40 | 16 | 24 | 0 |
五ヶ瀬町国民健康保険病院 | 32 | 32 | 0 | 0 |
医療法人社団杉杏会杉本病院 | 26 | 26 | 0 | 0 |
医療法人社団育生会井上病院 | 22 | 22 | 0 | 0 |

脅威
病院なので入院患者が居ます。生命維持管理装置を使っていれば止まることが生命危機に直結しますし、手術や処置も生命や健康に何らかの影響を及ぼします。
停電や断水などのエネルギーインフラの途絶は脅威になり得ます。
自立した患者群ではない可能性が高く、医療側のマンパワー不足も脅威になり得ます。
社会からみて『ケアミックス』というと馴染みがなく、優先順位が下がる可能性があります。二次救急告示病院であっても、療養のイメージが強ければ急性期患者が居るとは考えにくいかもしれません。
地域における優先順位が脅威になることもあります。
関連して、自院が機能喪失した際に患者を受け入れてもらえるかどうかが脅威になり得ます。
例えば鳥取県西部医療圏にはケアミックス病院が多くあります。ケアミックス病院が相互に連携することができれば、受け入れ先を見つけやすいかもしれません。
名称 | 病床数 | 一般 | 療養 | 精神 | 結核 感染 | ※ |
---|---|---|---|---|---|---|
鳥取大学医学部附属病院 | 695 | 649 | 0 | 40 | 6 | 混 |
独立行政法人労働者健康安全機構山陰労災病院 | 363 | 363 | 0 | 0 | 0 | |
医療法人勤誠会米子病院 | 270 | 0 | 0 | 270 | 0 | |
独立行政法人国立病院機構米子医療センター | 270 | 270 | 0 | 0 | 0 | |
養和病院 | 230 | 0 | 60 | 170 | 0 | 混 |
社会医療法人同愛会博愛病院 | 199 | 161 | 38 | 0 | 0 | 混 |
鳥取県済生会境港総合病院 | 195 | 165 | 30 | 0 | 0 | 混 |
南部町国民健康保険西伯病院 | 178 | 49 | 30 | 99 | 0 | 混 |
医療法人友紘会皆生温泉病院 | 161 | 0 | 161 | 0 | 0 | |
医療法人育生会高島病院 | 119 | 60 | 59 | 0 | 0 | 混 |
日南町国民健康保険日南病院 | 99 | 59 | 40 | 0 | 0 | 混 |
日野病院 | 99 | 99 | 0 | 0 | 0 | |
米子東病院 | 95 | 0 | 95 | 0 | 0 | |
医療法人元町病院 | 76 | 26 | 50 | 0 | 0 | 混 |
鳥取県立総合療育センター | 69 | 69 | 0 | 0 | 0 | |
大山リハビリテーション病院 | 60 | 0 | 60 | 0 | 0 | |
医療法人萌生会伯耆中央病院 | 60 | 0 | 60 | 0 | 0 | |
錦海リハビリテーション病院 | 48 | 0 | 48 | 0 | 0 | |
新田外科胃腸科病院 | 31 | 0 | 31 | 0 | 0 |

減災の焦点
ケアミックス病院の減災は、基本的な備えと、長期戦への備えが重要になると考えます。
今年、大きな山火事があった愛媛県今治医療圏には以下の病院があります。同圏には災害拠点病院が1軒しかなく、それがケアミックス病院である愛媛県立今治病院です。県や国の支援先は県立今治が最優先となることが想定されます。
残るケアミックス病院は支援が行き届くまでに時間がかかりそうです。すなわち、長期間の孤立無援を想定した備えが必要になります。
名称 | 病床数 | 一般 | 療養 | 精神 | 結核 感染 | ※ |
---|---|---|---|---|---|---|
愛媛県立今治病院 | 320 | 270 | 0 | 50 | 0 | 混 |
公益財団法人正光会今治病院 | 293 | 120 | 173 | 0 | 0 | 混 |
社会福祉法人恩賜財団済生会今治病院 | 191 | 191 | 0 | 0 | 0 | |
放射線第一病院 | 110 | 110 | 0 | 0 | 0 | |
医療法人慈風会白石病院 | 100 | 60 | 40 | 0 | 0 | 混 |
美須賀病院 | 99 | 29 | 70 | 0 | 0 | 混 |
瀬戸内海病院 | 97 | 97 | 0 | 0 | 0 | |
今治第一病院 | 90 | 90 | 0 | 0 | 0 | |
医療法人滴水会吉野病院 | 90 | 47 | 43 | 0 | 0 | 混 |
木原病院 | 73 | 49 | 24 | 0 | 0 | 混 |
広瀬病院 | 57 | 30 | 27 | 0 | 0 | 混 |
今治南病院 | 55 | 25 | 30 | 0 | 0 | 混 |
今治市医師会市民病院 | 55 | 55 | 0 | 0 | 0 | |
医療法人補天会光生病院 | 51 | 51 | 0 | 0 | 0 | |
医療法人平成会山内病院 | 50 | 0 | 50 | 0 | 0 | |
医療法人圭泉会菅病院 | 40 | 0 | 40 | 0 | 0 | |
消化器科久保病院 | 39 | 0 | 39 | 0 | 0 | |
整形外科藤井病院 | 39 | 0 | 39 | 0 | 0 | |
波方中央病院 | 37 | 0 | 37 | 0 | 0 | |
鈴木病院 | 36 | 0 | 36 | 0 | 0 | |
医療法人仁明会内科・消化器科羽鳥病院 | 33 | 33 | 0 | 0 | 0 | |
高山内科病院 | 31 | 0 | 31 | 0 | 0 | |
社会福祉法人恩賜財団済生会今治第二病院 | 30 | 30 | 0 | 0 | 0 | |
高木眼科病院 | 30 | 30 | 0 | 0 | 0 | |
三木病院 | 30 | 30 | 0 | 0 | 0 | |
きら病院 | 30 | 30 | 0 | 0 | 0 | |
大三島中央病院 | 28 | 0 | 28 | 0 | 0 | |
村上病院 | 22 | 0 | 22 | 0 | 0 |
備え方として、一般病床とそれ以外の病床を分けて、まったく別々の備えをするのか、まとめて1つとするのか、熟考が必要になります。
誰を、どのようにして守るのかを考えることで、焦点が絞られて行きます。

減災実務(想定)
自院の特徴、地域での役割を分析します。特に、地域において欠かせぬ存在である診療科などは、継続に係る期待が高いため、そのための減災を考えていきます。
電力や水の予備は不可欠ですが、その量については急性期病院や総合病院ほどではないかもしれないので、このあたりの精査が必要です。
資金が潤沢であれば数千万円の発電機や、井戸を掘っても良いですが、自院の身の丈にあった程度の備えで十分です。
医療機器や設備があまり多くないケアミックス病院では、ヒトへの依存度が高くなります。スタッフや関係者の養成が減災と直結することになります。
何かを運ぶ、観察するといったことはヒトにもできますが、一定のスキルが必要であったり、優先順を見極める必要があります。
人材育成が減災のカギとなります。

研修・訓練
医療機関やエッセンシャルビジネスに共通して行うべき教育研修メニューを用意しております。
ケアミックス病院に特化した図上演習のシナリオなど、専門的な研修や訓練にも対応します。土砂災害が起きるとどうなるのか、そのとき職員は何をすべきなのか、その行動に必要なツールやスキルは在るのか、座学だけでなく図上演習や実地訓練を通じて院内実装しています。

実務経験とコンサルティング
弊社代表(西謙一)は、病院での勤務経験に加え、4,000床の介護施設を統括する部署の実務経験もあります。
ケアミックス病院での減災・災害コンサルティングの受注実績があり、地域の災害拠点病院が機能しなくなった場合の自院への影響シミュレーションなど、現実路線を走る減災コンサルティングを実践しています。
ケアミックス病院のBCP・BCMのコンサルティングは、弊社が得意とする分野の1つです。

ご用命ください
弊社では医療機関や福祉施設などのエッセンシャルビジネス向けの減災コンサルティングサービスを提供しています。
補償金などカネで解決することが難しい、生命や健康、倫理など特殊事情に関わる現場に特化した、専門的なコンサルティングを展開しています。
コンサルタントには臨床経験があります。ある程度は医療用語が理解でき、実務が想像できます。実際、共感を得るような刺さる提案にご好評いただいております。
これまでに国公立病院、民間病院、災害拠点病院、ケアミックス病院、介護医療院など様々なタイプの医療機関で減災のお手伝いをして参りました。社会福祉協議会や訪問看護ステーション、医療的ケア児・者の患家などにも対応しております。
減災について、弊社には独自のノウハウがあります。
